第12話 『唯一の手がかり』(脚本)
〇洋館の玄関ホール
正岡きらり「おかしくなったって思わないでください。 もしかしたら、ここ・・・」
正岡きらり「現実の世界ではない、のかも」
岡崎大志「現実じゃ・・・ない? ・・・なんだよそれ!?」
正岡きらり「あの黒いなにか・・・あんなのがいるなんてそもそもおかしいでしょ!?」
正岡きらり「やっぱり現実じゃあり得ないです!!」
岡崎大志「そりゃ・・・そうだけどよ!」
正岡きらり「蕗子さん、このお屋敷で凪ちゃんに関係がありそうな場所を教えて下さい!」
鎧坂蕗子「え・・・観測室・・・と、後は私の部屋くらいです」
鎧坂蕗子「玄関ホールからなら私の部屋の方が近い」
正岡が柱時計を見ると、時計の針は9時37分を指していた。
正岡きらり「行きましょう! 急がないと10時になっちゃう!」
鎧坂蕗子「ま、待ってください! ちゃんと説明を──」
正岡きらり「この状況、なんとかできるかもしれないんです!!」
岡崎大志「待て!!」
〇洋館の廊下
薄暗い廊下の光源は、窓から差し込む星明かりのみだ。
蕗子たちは急いで階段を駆けていった。
〇豪華なベッドルーム
やってきた蕗子たちが周囲を見回す。
正岡きらり「蕗子さんの部屋、なにか違和感はありませんか!?」
鎧坂蕗子「違和感、と言われても・・・」
正岡きらり「一言で言うと、ここは凪ちゃんの心の中かもしれないんです」
鎧坂蕗子「凪の・・・心の中・・・?」
正岡きらり「今までにあったことを思い返してみてください!」
岡崎大志「今までにあったこと、だと・・・?」
正岡きらり「まず、観測会のメンバーが『気づいたら』集まっていた」
正岡きらり「重要なのはここが皆さんに特に関わりが深いということなんです」
正岡きらり「この場所は観測会で使っていた鎧坂邸」
正岡きらり「しかもこの時期は外の星座が示す通り、春に行われた観測会・・・」
正岡きらり「そして、あの黒いなにかの存在」
正岡きらり「今までの行動から考えて、皆さんが言う通り彼女が凪ちゃんだとすれば──」
岡崎大志「ここがあいつの心の中だって言うのか」
正岡きらり「はい、だとすれば今までに起きた様々な不自然な事柄が結び合わせられる!」
鎧坂蕗子「あの、ここが凪の心の中ということはつまり、私たちは凪に呼ばれてここに来た、ということ・・・?」
正岡きらり「・・・はい」
鎧坂蕗子「凪が、私たちを、呼んだ・・・」
岡崎大志「わけわかんねえな・・・くそっ」
正岡きらり「時間がありません、今はとにかく信じて! 何とかできるかもしれないんですよ!!」
正岡きらり「このお屋敷の凪ちゃんに縁のある場所、つまり観測室かこの蕗子さんの部屋に、なにか『手がかり』があるはずなんです」
正岡きらり「凪ちゃんの心を表す『手がかり』が・・・。 それさえ見つけられれば──」
岡崎大志「ここから出られるのかよ・・・!?」
正岡きらり「おそらく! 蕗子さん!!」
鎧坂蕗子「・・・は、はい」
正岡きらり「もう一度、お部屋をよく見て下さい!」
正岡きらり「なにか変わったところ、奇妙なものはありませんか!?」
鎧坂蕗子「・・・変わったところ」
鎧坂蕗子「・・・・・」
蕗子があらためて周囲を見回すと、部屋の隅にあるイーゼルが目にとまった。
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