第13話 『私の最善』(脚本)
〇豪華なベッドルーム
蕗子たち三人は、ガンッ、ガンッと叩かれる入口の扉を押さえていた。
彼らの前には、身体が砕けて上半身だけになった黒い蓮介の姿がある。
あはは
上半身をずるずると引きずりながら、黒い蓮介はゆっくりと蕗子たちの方へと進む。
鎧坂蕗子「・・・どうすれば・・・!」
岡崎大志「・・・俺が囮になる、お前らは行け!」
鎧坂蕗子「大志君!?」
岡崎大志「凪の心を表す『手がかり』があればなんとかなるんだよな!?」
正岡きらり「そ、そのはずです、でも・・・」
岡崎大志「凪の事なら鎧坂、お前が一番よく知ってんだろ」
岡崎大志「それに正岡さん・・・あんたを信じるよ」
正岡きらり「・・・!」
鎧坂蕗子「でも大志君は!?」
岡崎大志「俺は大丈夫だ」
鎧坂蕗子「ひとりで大丈夫なわけ──」
岡崎大志「このままだと全員捕まって終わるだけだろ!!」
次の瞬間──三人が押さえつけていた扉がバゴッと音と立てて開いた。
「!!」
扉の開いた衝撃で後ずさる三人。
扉の外に立っているのは黒いなにかだ。
黒いなにか「・・・ふふっ」
次の瞬間、大志は扉の外の黒いなにかに向かって飛びかかった。
岡崎大志「行けえええ!!」
鎧坂蕗子「大志君!!」
正岡は咄嗟に蕗子の手を取って走り出した。
鎧坂蕗子「正岡さん!?」
正岡きらり「い、行きましょう・・・! 行くしかないです、岡崎君の為にも!!」
扉の向こうでは、大志の体が徐々に黒い結晶へと変化していくのが見える。
鎧坂蕗子「・・・っ!」
蕗子は唇を噛みしめつつも、正岡とともに走り去っていった。
〇洋館の廊下
黒いなにか「・・・・・・」
黒いなにかが抱きしめるように大志の背中に手を回すと、背中も黒い結晶に変化していく。
岡崎大志「・・・うッ!!」
さらに体を引きずり現れた黒い蓮介が大志の足を掴むと、足も結晶化し始める。
岡崎大志「凪、お前・・・何がしたいんだよ」
岡崎大志「・・・わかんねえんだよ、どんだけ考えても。 お前は本当に俺達を憎んでんのか?」
黒いなにか「・・・・・・」
岡崎大志「嵐も蓮介もお前のことをずっと想ってたんだぞ!」
岡崎大志「そんなやつらを、本当に・・・」
黒いなにか「・・・・・・」
岡崎大志「・・・なあ、俺たちはお前に何をした? それほどお前を追い詰めてたのか・・・?」
黒いなにか「・・・・・」
岡崎大志「なんとか言えよ、凪!!」
黒いなにか「これが、私の『最善』」
岡崎大志「!!」
〇観測室
岡崎大志「凪、お前また学校行くことにしたんだってな」
梵凪「うん。大志君もありがとうね。 私、皆のおかげで──」
岡崎大志「焦んなよ」
梵凪「・・・え? べ、別に私、焦ってなんか」
岡崎大志「お前、自分が変わったと思ってるんだろ。 人間なんてそんな簡単に変われねえ」
梵凪「・・・そ、そんなことないよ! だって私──」
岡崎大志「お前は結局、鎧坂に逃げてるだけだ」
梵凪「!!」
梵嵐「ちょっとあんた──」
割り込んできた嵐を大志が手で制す。
岡崎大志「凪、今のお前は鎧坂に好かれる為だけに学校へ行こうとしてるように見えんだよ」
岡崎大志「それじゃあ、結局同じことを繰り返す」
梵凪「・・・私、そんな」
岡崎大志「変わりたいんだろ・・・なら少しでいい、自分で考えてみな」
岡崎大志「お前には今、何が『最善』なのか」
梵嵐「・・・『最善』」
梵凪「・・・大志君は『最善』だから学校を辞めたの?」
岡崎大志「ああ。無意味じゃないが無駄は多いと思った。 だから辞めた」
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