苦渋の決断(脚本)
〇けもの道
──シルビアが見た一瞬の光景、それはとある村のある男にも見えていた。
〇炎
〇西洋風の部屋
イザーク・フェイン・リッダ「んっ!?」
フレイア・フェイン・アイン「どうしたのイザーク兄(にぃ)、本読んで椅子に座ってたのに、具合でも悪いの?」
イザーク・フェイン・リッダ「・・・いや、なんでもないよフレイア」
フレイア・フェイン・アイン「そっ、ならよかった」
イザーク・フェイン・リッダ(いま炎の・・・獣を感じたが・・・獣を宿す、者・・・そんなはずは)
〇山中の川
──空気が抜けたようにフラフラなリトナにシルビアは肩を貸して近くの川で休憩していた。
アイン・イヨ・リトナ「プハーッ、シルビアさん助かりました、ありがとうございました」
シルビア・ヤン・オードリー「別に」
アイン・イヨ・リトナ「シルビアさんもどうぞ」
シルビア・ヤン・オードリー「うん」
シルビア・ヤン・オードリー「あ、美味しい」
アイン・イヨ・リトナ「では、私はこれで」
シルビア・ヤン・オードリー「ちょっとっ、あんたを連れてるときにも話したでしょ、あんたは4人の【獣を宿す者】の1人。つまりあたしと同行するのよ」
アイン・イヨ・リトナ「そ、そんな、急に」
シルビア・ヤン・オードリー「嫌なの?」
アイン・イヨ・リトナ「私にも目的がありまして」
細目で睨むようなシルビアの目に入ったのは小さくも暖かそうに光る赤い玉。
アイン・イヨ・リトナ「これをヴォルムに持って行けとおじいちゃんが」
シルビア・ヤン・オードリー「そっ」
アイン・イヨ・リトナ「『そっ』て」
シルビア・ヤン・オードリー「それなら丁度いいわ、私もあんたに会う前にこの山を越えた先に向かおうと思ってたから」
アイン・イヨ・リトナ「え、そうだとしても私はまだなにも〜」
シルビア・ヤン・オードリー「ヴォルムに、向かうわよ」
〇けもの道
──その日の夜、骸の群れが倒されたデス・キラーの破片を持ち出し何処かへと去っていく。
〇暗い洞窟
やがて洞窟へ。
ケルス「デス・キラーよ、まさか負けるとは・・・」
破片は不気味な紫の魔法陣に中に。
ケルス「よみがえれ、【アン・デッド】ッ!!」
叫ぶと、骨が浮きありのままの姿へと戻っていく。
デス・キラー「グゥ・・・」
デス・キラー「グッ、グガァァァーッ!」
ケルス「落ちつけデス・キラー、お前は一度破れ、私が蘇生した」
デス・キラー「グッ、グッ〜」
ケルス「あの赤髪の女戦士は何者だ・・・まさか獣を宿す者?」
デス・キラー「グァァァッ!」
ケルス「そんなに悔しいか、そう言うと思って舞台は既に用意してあるぞデス・キラー」
〇山並み
──ヴォルムに向かって1日。
シルビア・ヤン・オードリー「なんて数・・・」
シルビア・ヤン・オードリー「魔物の数は10、20匹、このままじゃ」
アイン・イヨ・リトナ「はっ!」
シルビア・ヤン・オードリー(そういえばさっきから)
シルビア・ヤン・オードリー「ねえリトナ、あんたを狙ってない?」
アイン・イヨ・リトナ「私を・・・」
アイン・イヨ・リトナ(たしかに今度の魔物達は私ばかりを見ている)
アイン・イヨ・リトナ「シルビアさん逃げてください」
シルビア・ヤン・オードリー「ええっ!?」
アイン・イヨ・リトナ「先程から斬ってもきっても次々と現れて切りがありません」
シルビア・ヤン・オードリー「ならあたしも戦うわ!」
アイン・イヨ・リトナ「くぐっ」
シルビア・ヤン・オードリー「リトナ!」
アイン・イヨ・リトナ「それよりも、シルビアさんはヴォルムに向かって救援をお願いします!」
シルビア・ヤン・オードリー「救援って、街までまだ半日は掛かるのよ!」
アイン・イヨ・リトナ「街まで行けずともこの騒ぎならもしかしたら近くに人がいるかもしれません、頼みます」
シルビア・ヤン・オードリー(まずい、残りの何匹かはあたしを狙ってる)
シルビア・ヤン・オードリー「くっ!」
アイン・イヨ・リトナ「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
アイン・イヨ・リトナ「もう・・・腕が・・・」
疲労したリトナは魔物に連れ去られてしまった。
シルビア・ヤン・オードリー「リトナ・・・・・・なんでこうなるのよっ!」
〇牢獄
洞窟の奥に連れてこられたリトナを躊躇なく何もない部屋に投げ捨てる。
アイン・イヨ・リトナ「ぷぎゃっ、(鼻にあたって痛い〜!)」
アイン・イヨ・リトナ「周りは土壁、鍵は当然掛かってる。どうやら閉じ込められてしまったようですね」
アイン・イヨ・リトナ「・・・・・・」
アイン・イヨ・リトナ(シルビアさんはうまく逃げたでしょうか・・・)
アイン・イヨ・リトナ(それと・・・本当に私は獣を宿す者? おじいちゃんは私に一言もそんなことを言っていないのに・・・)
〇暗い洞窟
捕まったリトナ、そんな彼女を水晶玉で見る者が。
ケルス「──よくやった・・・奴が炎の獣を宿す者、か」
ケルス(見た目は普通の娘だな、だがデス・キラーを倒した・・・それはつまり本人の命すらも奪いかねない獣を操ったということ)
「奴がデス・キラーを」
ケルス「ケウロ、そうだ」
ケウロ「ただの女戦士か、とても信じがたい」
ケルス「なにしに来た?」
ケウロ「【クシャガ】が動き出したという部下からの情報を伝えに来た」
ケルス「【クシャガ】・・・ということはもう始まっておるのか」
ケウロ「あの女戦士も、もしかするかもしれん」
ケルス「だとすれば残酷な事をするな」
ケウロ「それとデス・キラーだが」
ケルス「ああ、奴も腕がなるだろうよ」
〇西洋の街並み
シルビア・ヤン・オードリー「──ハァッ、ハァッ、ハァッ、こっ、こんなにっ、全力でっ、走るもんじゃないわっ」
シルビア・ヤン・オードリー(思いっきり走るなんてちょっと前までは考えられなかったのに・・・)
シルビア・ヤン・オードリー(この村・・・【モフ村】か、小さな村ね)
シルビア・ヤン・オードリー(よ、よーし)
シルビア・ヤン・オードリー「あ、あのーっ」
シルビア・ヤン・オードリー「お、お願いします、誰か、力を貸してください!」
ん?
シルビア・ヤン・オードリー「仲間が魔物に、ハァ、ハァ、連れ去られたんですっ、だから」
皆がシルビア見るも、知らない人だとやな顔をして素通りされる。
シルビア・ヤン・オードリー(・・・やっぱりそう簡単にはいかないわね)
フレイア・フェイン・アイン(これは大変だ)
〇西洋風の部屋
「イザーク兄(にぃ)ー、イザーク兄(にぃ)ーっ!」
イザーク・フェイン・リッダ「どうしたフレイア、そんな慌てて」
フレイア・フェイン・アイン「村の入口で女の子が助けを求めてるの」
イザーク・フェイン・リッダ「助け?」
フレイア・フェイン・アイン「うん、なんだか必死そうだった」
イザーク・フェイン・リッダ「そいつはほっとけないな・・・」
〇西洋の街並み
シルビア・ヤン・オードリー(ゴクッ、ゴクッ、はぁ〜・・・喉乾いてるかなあの子)
全力疾走で乾いた喉を水を飲みながらリトナを思うも、助けるために強い人を探す。
シルビア・ヤン・オードリー「いない・・・」
「やぁ」
シルビア・ヤン・オードリー(鎧、リトナにも負けない赤い髪)
シルビア・ヤン・オードリー「何よあんた」
イザーク・フェイン・リッダ「オレはこの村に住むイザーク・フェイン・リッダ、君かい? 助けを求めてるっていうのは」
シルビア・ヤン・オードリー「ええそう、あたしはシルビア、お願い力を貸して」
イザーク・フェイン・リッダ「おいおい、そんな怖い顔でお願いしたら魔物だって逃げちまうぜ、リラックスリラックス」
シルビア・ヤン・オードリー「怖い顔ってっ!」
シルビア・ヤン・オードリー「・・・ごめん、仲間が魔物に連れ去られて」
イザーク・フェイン・リッダ「仲間が、それは大変だ」
シルビア・ヤン・オードリー「・・・殺されちゃうかもしれないの、力を、貸してイザーク」
イザーク・フェイン・リッダ「OK♪ 困ってる人はほっとけないたちなんでね」
〇西洋風の部屋
フレイア・フェイン・アイン「はい、イザーク兄(にぃ)地図」
イザーク・フェイン・リッダ「ありがとうフレイア」
フレイア・フェイン・アイン「何時ものことだけど、気をつけてね兄(にぃ)」
イザーク・フェイン・リッダ「いつもありがとうフレイア、行ってくる」
フレイア・フェイン・アイン「無事に帰ってきてね」
〇西洋の街並み
イザーク・フェイン・リッダ「よしっ、準備はOKだ」
シルビア・ヤン・オードリー「早く行くわよ」
おばちゃん「あらイザークちゃん、お出かけ?」
イザーク・フェイン・リッダ「おばさん、この人の手助けだよ」
おばちゃん「あらま、相変わらずの人助けね偉いわ」
おばちゃん「・・・あんた」
シルビア・ヤン・オードリー「え、あたし?」
おばちゃん「イザークちゃんに何かあったらあたしたちが許さないからね」
シルビア・ヤン・オードリー「な、なによ!」
イザーク・フェイン・リッダ「まあまあ・・・」
シルビアをそっと押してモフ村を出た。
〇山並み
シルビア・ヤン・オードリー「何よあのおばさん」
イザーク・フェイン・リッダ「すまんね」
シルビア・ヤン・オードリー「ずいぶん慕われてるみたいねあんた」
イザーク・フェイン・リッダ「この村は若者が少ないんだ。だからオレと妹を自分の子のように可愛がってくれるのさ」
シルビア・ヤン・オードリー「ふ〜ん」
おばちゃん「イザークちゃん」
イザーク・フェイン・リッダ「あ、おばさん、外は危険ですよ」
おばちゃん「ほら、これパン、二人で食べなさい、じゃあね」
イザーク・フェイン・リッダ「おばさん、ありがとう!」
シルビア・ヤン・オードリー「・・・行くわよ」