ツかレる

結城 直人

第二話 ツカレビトの選択(脚本)

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〇個別オフィス
  影山探偵事務所
影山遊馬「なるほど、それは大変でしたね」
貴島あおい「もう探偵さんしか頼る人がいなくて」
影山遊馬「そういえば、相談フォームに記載されていた脳内にチップを埋め込まれたとかって話なんですけど」
貴島あおい「なんですかそれ?」
影山遊馬(まったく、これだからAは)
貴島あおい「それより聞いてください、実は私、最近誰かに尾行や監視されてるみたいで」
影山遊馬「え?」
貴島あおい「おそらくある秘密結社が関係してると思うんです。私が特別な存在だから」
影山遊馬(貴島あおい、典型的なAの依頼者だ こんな風に常に奇天烈な妄想話を繰り返し、自身もその発言を記憶に留めていない)
影山遊馬(しかしなかなかいい女だ・・・少し若いけどな)
貴島あおい「それでね探偵さん」
影山遊馬「大丈夫、私が必ずあなたを守りますから」
貴島あおい「ふふ、約束ですよ」
影山遊馬「おなか減ってませんか?よかったらこの後、店でお話聞きましょうか?」
貴島あおい「探偵さんはなんでこの仕事始めたんですか?」
影山遊馬「え?それは儲か・・・」
貴島あおい「・・・」
影山遊馬「やりがいですよ、こんなに誰かの役に立てる仕事は他にないでしょう?」
貴島あおい「でも疲れませんか?」
影山遊馬「確かにかなり疲れる仕事ですが、それでも依頼者のためになるのなら」
貴島あおい「探偵さんって人を騙す人間の事、どう思います?」
影山遊馬(また唐突に話が・・・Aはこれだからな)
貴島あおい「私、昔から騙されやすい性格で、苦労してきたんですよ」
影山遊馬「・・・」
貴島あおい「探偵さんは苦しいほど人に騙された事ってありますか?」
影山遊馬「ありますよ・・・親友だった人にね」
貴島あおい「親友が騙したんですか?」
影山遊馬「宝石ビジネスをやるつもりだったんです。でも親友が二人で投資した金を持ってとんずらしましてね」
貴島あおい「ひどい、そんなの初めから親友じゃないですよ」
影山遊馬「彼には莫大な借金があったんです、私には見せなかったが追い込まれてたんでしょう そういえばずっと疲れた顔をしてたな」
貴島あおい「そうですか・・・」
影山遊馬「心が追い込まれたら人は変わってしまうものです、まるで別人のようにね、僕だってそうだった」
貴島あおい「私、わかります」
影山遊馬(おっと、Aにこんな話してどうする。本当に疲れてるのかもな)
影山遊馬「じゃあ出ましょうか、近くに美味しい中華の店がー」
貴島あおい「必ず見つけ出してくださいね」
影山遊馬「え?」
貴島あおい「私を付け狙ってる秘密結社ですよ!」
影山遊馬「ええ、もちろん」
貴島あおい「じゃあまたね、探偵さん」
影山遊馬「まいったな・・・」

〇雨の歓楽街
影山遊馬(こいつが秘密結社の人間だぁ?どう見ても普通のおっさんにしか見えんぞ)
影山遊馬(まぁいい、さっさと調べて帰るか。ある程度の報告書さえ作れば彼女の被害妄想もおさまるだろう)
影山遊馬(ん?路地に入ったぞ、あんなとこ何もないはず)

〇入り組んだ路地裏
影山遊馬(あれ、あいつどこに・・・)
影山遊馬(いた・・・あんなところで何を、え?)
中年男「金は例の場所でいつものやつに」
黒服①「了解しました」
影山遊馬(おいおい、嘘だろ?あいつ本当に)
黒服①「それより次回からはもう少し慎重に行動して頂きたい。追跡には重々気を付ける様、お伝えしておいたはずです」
中年男「何?」
影山遊馬「え?」
影山遊馬「がっ・・・」
黒服②「・・・」

〇飲み屋街
赤山「ったっくまた大負けだよ、こりゃそろそろ博打も潮時だな」
青谷「兄貴んとこで働くか?金にはなるしよ」
赤山「ありだけどよ、捕まるリスクもでけーだろ」
青谷「何言ってんだ、俺らに捨てるもんなんかねーだろが」
赤山「はは、確かに、俺ら二人いなくなった所で誰も困らないしな」
青谷「おい!痛ぇよ!」
「・・・」

〇薄暗い廊下
「勘違いなんだ! ほどいてくれ!」

〇組織のアジト
浦島太一郎「勘違い?じゃあおまえはエスパーか何かか?」
黒服①「財布から名刺が見つかりました、こいつ探偵のようですね」
浦島太一郎「成程、じゃあさっさと情報源ぶちまけてくれるか?口内から血をぶちまけないうちにな」
影山遊馬「依頼されたんです、あの男をつけるようにと」
浦島太一郎「ほう~それは何故?」
影山遊馬「僕だって理由を聞きたいくらいです!自分があの男に付け狙われてるとか言ってました」
浦島太一郎「それはどんな奴だ?」
影山遊馬「お、女の子です18歳の普通の女の子」
浦島太一郎「面白れぇな、お兄ちゃん」

〇倉庫の搬入口
「ちょっと出してくれ!これ冷凍車だよ!死んじゃうって!」
黒服②「失礼します」
浦島太一郎「ふ~今日はちょっと寒いな」
黒服②「もう冬ですからね」
浦島太一郎「この時期は嫌いだ、仕事が増えるからな」
黒服②「いい事じゃないですか」
浦島太一郎「あまり頑張るもんじゃねーぞ、特に俺たちのような人様不幸にして稼ぐ仕事はな」
黒服②「自分は他人がどうなろうが金稼げりゃいいですけどね」
浦島太一郎「若けぇなぁ・・・でも一つ教えといてやる」
黒服②「は、はい」
浦島太一郎「どんな人間だろうとな、人を追い込んだり不幸にさせてるといつの間にか疲れてくるんだよ・・・心がな」
黒服②「はは、浦島さんらしくない事言われるんですね」
浦島太一郎「そして心が完全に疲れ切ってしまうと、人は怪物になるか廃人になるかどちらかの道しか選べなくなる」
黒服②「俳人?俳句のやつですか?」
浦島太一郎「おまえ面白れぇな」
「出してくれ!まじで誤解なんだって!」
浦島太一郎「いつだったかな、深淵をのぞきだしたのは」
黒服②「シンエン?」
浦島太一郎「おまえは俺が人に見えてるか?」
黒服②「・・・」
浦島太一郎「この社会は俺にとって巨大な怪物だった」
黒服②「・・・こいつ、どうします?このまま終わらせますか?」
浦島太一郎「探偵さんよ、そろそろ口割ってくれないか?これ以上人間やめたくねぇんだ」
「誰か助けてくれ!」

〇車内
影山遊馬「うぅ・・寒い」
阿久津九楽「大丈夫か、もうすぐ着くからゆっくり湯につかれ」
影山遊馬「なんで俺が捕まってるの知ったんです?」
阿久津九楽「・・・やつから連絡があったんだ、探偵を捕まえたから素性を教えろってな、まっ俺も顔が広いもんでね」
影山遊馬「あんなやつらと付き合ってるんですか?」
阿久津九楽「俺らの稼業に付き合いの相手なんざ選べねぇよ」
影山遊馬「でも殺されかけたんですよ、やばいですってあいつら」
阿久津九楽「やばいやつなんて世の中にゴロゴロいるだろ、それこそ普通の顔した怪物がな」
影山遊馬「でもおかげで助かりました」
阿久津九楽「で、なんでやつらの事なんざ調べてたんだ?」
影山遊馬「Aっすよ!妄想の対象がたまたまあんな危ない奴らで・・・ったくついてねぇ」
阿久津九楽「・・・逆だな」
影山遊馬「えっ?」
阿久津九楽「いや、なんでもねぇよ」
影山遊馬「・・・」
  僕はとんでもない世界に足を踏み入れていたのか
  そんな不安が同時に体の震えを強くした
  普通の顔をした怪物
  そんな存在には巡り合わないよう
  震えた手をこすり合わせ強く祈った
  三話へ続く

次のエピソード:第三話 各々の業

コメント

  • ますます怖いですね
    それにAの彼女、ただ妄想があるようにも思えないですね
    タイトルのツカレルに惹かれて読みましたが疲れるだったんですね

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