指先に魔法はいらない

星月 光

chapter02 青天の霹靂(脚本)

指先に魔法はいらない

星月 光

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〇英国風の部屋
サフィ「あのキラキラはやらないのですか?」
アストリッド「この程度の怪我ならね」
アストリッド「治癒の魔術は得意じゃないから あまり使いたくないんだよ」
サフィ「そうなのですか?」
アストリッド「いったん出てってくれない?」
アストリッド「服の下をあらためるから」
アストリッド「・・・脱がせるから部屋を出ろ」
サフィ「はっ、はい!」
アストリッド(この痣、今日の怪我じゃない)
アストリッド(・・・こうして見ると 人間と変わらないな)
アストリッド「・・・スペルロイド、か」

〇雪山
「この子はわたしたちの子よ!」
「お腹を痛めて産んだ わたしとあなたの・・・!」
「その魔力、その目の色! 人間なはずがない!」
「ワーズワースかロンサールで スペルロイドを買ったんだろ!」
  ・・・・・・
「恋をするのよ」
「あなたが人間だってわかってもらうために」
「そうすればあの人も──」

〇英国風の部屋
アストリッド「・・・チッ」
アストリッド(あいつらの顔も名前も 自分の本当の名前も)
アストリッド(もう思い出せないのに)
ピオノノ・ダイン「うぅ・・・」
ピオノノ・ダイン「ち・・・父上・・・ お許しください・・・」
アストリッド「・・・はあ」

〇おしゃれな廊下
サフィ「アストリッド! ピオは・・・」
アストリッド「寝てるよ」
サフィ「あの・・・」
サフィ「そばについていたら迷惑になりますか?」
アストリッド「好きにすれば?」
アストリッド「少し席を外す」
サフィ「はい・・・!」

〇立派な洋館(観測室の電気点灯)

〇大聖堂
ジュリアン・ダイン「兄上・・・」
シーラ・オブ・ワーズワース「・・・ジュリアン」
ジュリアン・ダイン「・・・こんばんは、殿下 こんな夜分にどうされました」
シーラ・オブ・ワーズワース「ピオノノのこと・・・」
シーラ・オブ・ワーズワース「わたくしの力及ばず 本当にごめんなさい」
シーラ・オブ・ワーズワース「ピオノノは悪くないと 父上に何度も申し上げたのに」
ジュリアン・ダイン「その件なら心配無用です」
ジュリアン・ダイン「ひとまず手は打ちましたから」
ジュリアン・ダイン「それより殿下 ご婚礼の準備を進められては?」
シーラ・オブ・ワーズワース「ジュリアン! わたくしの気持ちを知りながら・・・!」
ジュリアン・ダイン「ご自分の立場をわかっているのですか!」
ジュリアン・ダイン「兄上が流刑に処されたのは 殿下の浅慮ゆえではないですか!」
ジュリアン・ダイン「そのこと、ゆめゆめお忘れなきよう!」
シーラ・オブ・ワーズワース「・・・ごめんなさい・・・!」
ジュリアン・ダイン「・・・ふん」
ジュリアン・ダイン(相変わらず、頭の巡りが悪い女だ)
ジュリアン・ダイン(兄上に懸想など、分不相応も甚だしい!)
ジュリアン・ダイン(・・・まあいい いずれ異国に嫁ぐ女だ)
ジュリアン・ダイン(それより、次の手を考えないと)

〇海辺

〇英国風の部屋
ピオノノ・ダイン「うーん・・・」
ピオノノ・ダイン「・・・はっ」
ピオノノ・ダイン「・・・サフィ?」
サフィ「うぅん・・・?」
サフィ「・・・ピオ!」
ピオノノ・ダイン「サフィが看病してくれたのか?」
サフィ「ううん、アストリッドが やってくれたんです」
サフィ「あたし、なにもしてない・・・」
ピオノノ・ダイン「・・・いや」
ピオノノ・ダイン「目を覚ましたとき 誰かがそばにいてくれる」
ピオノノ・ダイン「そんなこと、今までなかったんだ」
ピオノノ・ダイン「ありがとう、サフィ」
ピオノノ・ダイン「さっきも今も、そばにいてくれて」
サフィ「えっと、あたし・・・」
アストリッド「起きてたんだ」
ピオノノ・ダイン「アストリッドさん!」
ピオノノ・ダイン「助けていただき、ありがとうございます」
ピオノノ・ダイン「ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
アストリッド「・・・・・・」
ピオノノ・ダイン「相応の対価をお支払いすることは 今のボクにはできません」
ピオノノ・ダイン「でも、いつか! いつか必ず、このご恩を返します!」
ピオノノ・ダイン「ですからどうか・・・!」
アストリッド「先に言っとくけど」
アストリッド「魔術を覚えてどうするかはおまえ次第」
アストリッド「冤罪が晴れなくても責任は取らないよ」
ピオノノ・ダイン「あ・・・」

〇森の中の小屋
ピオノノ・ダイン「ありがとうございます!」
アストリッド「騒ぐな 近所迷惑だ」
サフィ「この家の周り、誰も住んでないですよね?」
アストリッド「・・・明日から始めるよ さっさと寝ろ」
ピオノノ・ダイン「はい!」

〇森の中の小屋

〇森の中
ピオノノ・ダイン「よろしくお願いします!」
アストリッド「その前に聞きたいことがある」
アストリッド「おまえ、魔術使えたことある?」
ピオノノ・ダイン「・・・いえ」
アストリッド「そう」
アストリッド「ルクス輝石が活性化してないのかな」
ピオノノ・ダイン「おそらく・・・」
アストリッド「なら、活性化の儀式をやろうか」
ピオノノ・ダイン「待ってください」
ピオノノ・ダイン「王都で何度か儀式を受けましたが 一度も成功しなかったんです」
ピオノノ・ダイン「気分が悪くなるばかりで・・・」

〇貴族の応接間
ピオノノ・ダイン(思い出したくもない)
ピオノノ・ダイン(父上には殴られて 食事は抜きにされたっけ)
ピオノノ・ダイン(まあ、気持ちが悪すぎて 食事どころじゃなかったけど)

〇森の中
アストリッド「そいつらの腕が悪かったんでしょ」
アストリッド「魔術の天才であるわたしを そこらの凡百と一緒にしないでくれる?」
ピオノノ・ダイン「ワーズワース王家が誇る 宮廷魔術師なのですが・・・」
アストリッド「嫌ならやらないけど」
ピオノノ・ダイン「いえ、お願いします!」
サフィ「ピオ・・・」
ピオノノ・ダイン「心配するな、サフィ」
アストリッド「おまえ、ちょっと離れてろ」
サフィ「はい・・・」
アストリッド「じゃあ、いくよ」

〇空

〇森の中
ピオノノ・ダイン「ぐっ・・・!」
サフィ「ピオ!」
ピオノノ・ダイン「だいじょうぶ・・・」
アストリッド「身体に異変は?」
ピオノノ・ダイン「・・・・・・」
ピオノノ・ダイン「身体の中に、魔力の流れを感じます」
ピオノノ・ダイン「宮廷魔術師でも成し得なかったことが こうも簡単に・・・」
サフィ「アストリッド、すごいです!」
アストリッド「まあね」
サフィ「ところで、ルクス輝石ってなんですか?」
アストリッド「スペルロイドを造るのに 必須の魔晶石が2つある」
アストリッド「恋愛感情と性欲を排除するアビス閃石」
アストリッド「そして魔力を生成するルクス輝石」
ピオノノ・ダイン「だからスペルロイドの目は紫色なんだ」
サフィ「紫?」
ピオノノ・ダイン「サッ・・・サフィ!?」
サフィ「んー・・・? ピンクに見えますけど」
ピオノノ・ダイン「サフィ・・・!」
ピオノノ・ダイン「その、そんなに近くで見られると・・・」
サフィ「あっ、ごめんなさい!」
アストリッド「・・・ところでおまえら 買い物頼まれてくれない?」
サフィ「魔術の練習はしないのですか?」
アストリッド「まず魔力の奔流に慣れないと」
アストリッド「いきなり魔術を使うと 魔力の負荷に耐えられず──」
アストリッド「ルクス輝石がひび割れて 視力障害や心停止が起きるかもね」
ピオノノ・ダイン「・・・そういう事例もありましたね」
サフィ「そんな危ないことを ピオは何度もやったんですか!?」
ピオノノ・ダイン「・・・・・・」
サフィ「どうして!」
アストリッド「壊れたらまた造ればいいって 思ってるんじゃない?」
アストリッド「眼球が破損しても 他のパーツは流用できるからね」
サフィ「ひどい、そんなの!」
アストリッド「スペルロイドは魔術を使うための道具」
アストリッド「人間にとっては鍋やペンと同じだ」
サフィ「でも・・・」
ピオノノ・ダイン「・・・サフィ、行こう」
アストリッド「ちょっと待て」
アストリッド「これ」
アストリッド「昔使ってたやつだけど」
ピオノノ・ダイン「ありがとうございます」
ピオノノ・ダイン(あれ、この剣・・・)
アストリッド「おまえはこれ」
サフィ「貸してくれるんですか?」
アストリッド「単独行動するなよ 夜になる前に戻れ」

〇西洋の市場
ピオノノ・ダイン(雲が晴れてきたな)
ピオノノ・ダイン(さっきの雷雲 アストリッドさんの魔力に喚ばれたのか)
ピオノノ・ダイン(やはりアストリッドさんは 偉大な魔術師なんだな)
ピオノノ・ダイン(えーっと、キャベツにオニオン・・・)
ピオノノ・ダイン(スクイ―ドってなんだ?)
ピオノノ・ダイン(・・・今日からどこで寝泊まりしよう)
ピオノノ・ダイン(サフィはこれからどうするんだろう)
ピオノノ・ダイン(・・・元気がないな)
ピオノノ・ダイン「サフィ、さっきの・・・」
ピオノノ・ダイン「アストリッドさんの話を気にしてるのか?」
サフィ「だって・・・」
ピオノノ・ダイン「気にするな」
ピオノノ・ダイン「ボクたちスペルロイドは 人間のために造られたんだから」
ピオノノ・ダイン(――そう)
ピオノノ・ダイン(ボクがダイン家の養子になったのも・・・)
サフィ「でも!」
サフィ「ピオは生きてるじゃないですか!」
サフィ「だって、ほら」
サフィ「手だってこんなにあったかいです!」
ピオノノ・ダイン「サフィ・・・どうして」
サフィ「あたし! ピオに傷ついてほしくないです!」
ピオノノ・ダイン「どうしてそこまで・・・ボクを・・・」
サフィ「だってピオは優しい心を持ってるのに」
サフィ「そんな人が道具みたいに使われて 壊れたらいつか捨てられちゃうなんて」
サフィ「あたし、そんなの・・・!」
ピオノノ・ダイン「サッ・・・サフィ! 買い物・・・しないと・・・」
「あら?」

〇島の家
アストリッド(さて・・・)
アストリッド(あいつらが帰ってくる前に いろいろ準備しないと)
「魔王様ー!」
配達員「魔王様にお手紙です」
アストリッド「配送日、今日だっけ」
配達員「緊急の大事なお手紙でして」
アストリッド「・・・誰から?」
配達員「中をみていただければわかるかと」
配達員「では失礼します!」
アストリッド(ワーズワース王家の封蝋・・・ いや、少し似てるけど違う)
アストリッド(これ、ダイン家の封蝋か?)

〇西洋の市場
マーサ・ミラー(島民)「あなたたち、見ない顔だけど」
マーサ・ミラー(島民)「その帽子、魔王様のものよね」
ピオノノ・ダイン「え、ええ」
ピオノノ・ダイン「魔王様に師事するために 王都から来たんです」
マーサ・ミラー(島民)「そう」
マーサ・ミラー(島民)「王都の人なら、治安が悪くて驚いたでしょ」
ピオノノ・ダイン「ええ、まあ」
マーサ・ミラー(島民)「4年前、魔王様が来る前は もっとひどかったのよ」
マーサ・ミラー(島民)「魔物は増える一方だし 罪人は流れてくるし」
マーサ・ミラー(島民)「女や子どもは生きていけなかった」
ピオノノ・ダイン「魔物・・・」

〇岩穴の出口
ピオノノ・ダイン(あれも魔物だったのか?)
ピオノノ・ダイン(でも、なんで宝箱を守ってたんだろう)

〇西洋の市場
マーサ・ミラー(島民)「子どもが2人で出歩けるなんて つくづく平和になったわね」
ピオノノ・ダイン(これで・・・?)
マーサ・ミラー(島民)「でも王都と比べれば危険ではあるから」
マーサ・ミラー(島民)「あなた、その子を守ってあげてね」
ピオノノ・ダイン「はっ、はい」
マーサ・ミラー(島民)「魔術を使う人形なんて 得体が知れないと思ってたけど」
マーサ・ミラー(島民)「いてくれると助かるわね」
ピオノノ・ダイン「アス・・・魔王様は スペルロイドなのですか?」
マーサ・ミラー(島民)「魔術を使える人間なんかいないわ」
マーサ・ミラー(島民)「小さい子が魔力を持っているのは たまにあるみたいだけど」
マーサ・ミラー(島民)「ふつうは5歳くらいで恋をして 魔力を失うらしいわ」
ピオノノ・ダイン「恋・・・」
マーサ・ミラー(島民)「さ、なにをお求め?」
マーサ・ミラー(島民)「魔王様の知り合いならおまけしちゃう」
ピオノノ・ダイン「ありがとうございます」
サフィ「・・・・・・」

〇おしゃれな居間
アストリッド「魔術による炙り出しか」
アストリッド「この技法を使えるのは 魔術師とスペルロイドだけ」
アストリッド「こんな細工をしてまでなにを・・・?」
アストリッド「差出人は・・・」
アストリッド「・・・ジュリアン・ダイン?」

次のエピソード:chapter03 愛憎の泥濘

コメント

  • お久しぶりの2話でした!やっぱりキャラクターたちが可愛くて癒やされます☺️
    そしてピノに魔力が宿りましたね!ですが何やら島の外では動きが…🤔
    うーん、どうなるのでしょう?

  • 島内での3人それぞれの事情や、抱える感情などが重層的に織り成されていて、どんどんとお話に引き込まれてしまいました✨ さらに、島の外でも動きが見られ、ますます興味をそそられます😊

  • ニ話目も楽しませて頂きました!
    サフィとの関係が今後どうなっていくのかきになります💕
    今までピノは父親からも暴力を、受けていたようですが魔力が宿って良かったです

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