閉じの巫女

Saphiret

エピソード1(脚本)

閉じの巫女

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〇黒背景
  まさか、こんなことになるなんて・・・
  私はただ
  夏美を助けたいだけだったのに──

〇屋上の隅
根木真琴(ねぎまこと)「お願い もう許して!」
片野晶子(かたのあきこ)「謝って済むならケイサツはいらないんだよ」
柳川るみ(やながわるみ)「そうそう だいたい私たちのことチクっておいて「ごめんね」だけで終わらそうなんて甘いよ」
戸田瀬里奈(とだせりな)「根木のでっちあげのせいで お馬鹿なセンセーたち、ウチラがイジメてるってカン違いしちゃうでしょ」
根木真琴(ねぎまこと)「嘘じゃない! 片野さんに、 私は・・・いじめられて・・・」
片野晶子(かたのあきこ)「あ? なんだって?」
根木真琴(ねぎまこと)「あ・・・」
根木真琴(ねぎまこと)(私は・・・ 片野さんに睨まれると、怖くて何も言えなくなる)
片野晶子(かたのあきこ)「ったく、あんたってマジいらつく」
片野晶子(かたのあきこ)「もういいから、そこから飛び降りなよ それで勘弁してやるよ」
根木真琴(ねぎまこと)「えっ!」
  ここは5階建ての校舎の屋上で
  舌はちょうど裏庭だった
  そこから20メートルくらいの高さはある。
  飛びおりたら・・・
根木真琴(ねぎまこと)(死んじゃうよ・・・ 片野さんは『死ね』っていってるの?)
柳川るみ(やながわるみ)「それイイね!」
戸田瀬里奈(とだせりな)「大丈夫! 先回りして遺書、書いておいてあげたから、ねっ?」
根木真琴(ねぎまこと)「そんな・・・」
片野晶子(かたのあきこ)「さっさとしなよ」
  片野さんが一歩迫ってきて瞬きもせず見下ろしてくる
  たまらず背後の鉄柵を掴むけれど、錆びた柵はぐらぐら揺れて今にも壊れそうだ
根木真琴(ねぎまこと)(ど、どうしよう・・・!!)
  その時・・・
浅野夏美(あさのなつみ)「何しているの!?」
根木真琴(ねぎまこと)「夏美!」
  夏美は駆け寄ると、私と片野さんたちの間に立った
片野晶子(かたのあきこ)「邪魔すんなよ、学級委員 ウチらはここで遊んでただけだよ」
浅野夏美(あさのなつみ)「・・・今、真琴をここから落とそうとしてなかった?」
片野晶子(かたのあきこ)「言いがかりヒドイね?」
浅野夏美(あさのなつみ)「真琴、どうなの?」
根木真琴(ねぎまこと)「わ、私は・・・」
  夏美は私の掴んだ鉄柵を見つめた
  柵はカタカタを小さな音を立てていて、それが震える自分の手のせいだと気づきたけれど、止めることができない
根木真琴(ねぎまこと)「あ・・・」
  夏美が私の手を握った
浅野夏美(あさのなつみ)「真琴・・・ 帰ろう」
根木真琴(ねぎまこと)「で、でも・・・」
片野晶子(かたのあきこ)「待ちなよ! まだ話は終わっていないんだよ」
浅野夏美(あさのなつみ)「話? ああ、それっていじめを告発されたこと?」
片野晶子(かたのあきこ)「なんで知ってんの」
浅野夏美(あさのなつみ)「それ、私が真琴にすすめたから」
片野晶子(かたのあきこ)「はああ?」
根木真琴(ねぎまこと)「夏美! いいよ、それは・・・」
片野晶子(かたのあきこ)「ちょっと、それどういうこと!?」
  片野さんが夏美に掴みかかった時──
  ガシャッ!
  夏美の背中が当たった場所の鉄柵が壊れ、菜摘が真っ逆さまに落ちてしまう
浅野夏美(あさのなつみ)「あっ!」
根木真琴(ねぎまこと)「夏美!」
  身体を回転させ、下に向かって手を伸ばすけど・・・
浅野夏美(あさのなつみ)「真琴!」
  手は届かず、
  両手をこちらに向けながら落ちていく真琴を見た
  まるでスローモーションのようだ
  そしてドサッという音と
  ちょうど裏庭の植え込みのところに仰向けをむいたまま夏美は動かなくなった
根木真琴(ねぎまこと)「夏美!!」
片野晶子(かたのあきこ)「・・・」
柳川るみ(やながわるみ)「・・・死んだ?」
戸田瀬里奈(とだせりな)「やばくない?」
  私は片野さんたちの声をどこか遠くで聞きながら全力で屋上のドアまで走り、そのまま階段を駆け下りていった

〇グラウンドの隅
根木真琴(ねぎまこと)(夏美・・・ 夏美!)
  夏美が倒れている植え込みまで駆けつけるとあたりはもう血だまりになっていた
根木真琴(ねぎまこと)「き、救急車・・・」
  急いでスマホを使おうとするが手が震えてしまう
根木真琴(ねぎまこと)「あっ・・・」
  スマホが血だまりに落ちてしまう
  夏美は、その顔の横に落ちたスマホと同じようにシンとして動かない
根木真琴(ねぎまこと)「あ、あ、 ダメだ、死んじゃう・・・」
  夏美を抱き上げると私の制服もたちまち血で赤く染まった
根木真琴(ねぎまこと)「夏美、しっかりして! お願い!」
根木真琴(ねぎまこと)(イヤだイヤだ! 死ぬなんて・・・ 夏美死なないで!)
根木真琴(ねぎまこと)(ううん、死なない。 夏美は絶対死なない。 1人だけ私を助けてくれた強い夏美を 私が助ける、助けるんだ!)
根木真琴(ねぎまこと)(夏美が死ぬわけない 死なないよ ううん、死なせない 死なせない、絶対に!)
根木真琴(ねぎまこと)「私が死なせない、絶対に!」
  その時──
  頭の奥でシーンという無機質な音がしたような気がした
  そして──
疎の長(そのおさ)「開き、得たり」
根木真琴(ねぎまこと)「えっ・・・」
  すぐ後ろで誰かに声をかけられたような気がして振りかえると
根木真琴(ねぎまこと)(誰もいない・・・)
浅野夏美(あさのなつみ)「・・・ううん」
根木真琴(ねぎまこと)「夏美!? 気が付いたの?」
  さっきまでぴくりとも動かなかった夏美のまぶたが動き、突然カッと目が見開かれた
  その一瞬の目のぎらつきが鋭くて思わずびくっとしてしまう
根木真琴(ねぎまこと)「えっ!!」
浅野夏美(あさのなつみ)「ここは・・・?」
根木真琴(ねぎまこと)「あ・・・ ああ、気が付いてよかった! 大丈夫!? 屋上から落ちたんだよ」
浅野夏美(あさのなつみ)「そう・・・」
根木真琴(ねぎまこと)「とりあえず病院に行こう! 血がいっぱい出てるし」
  すると夏美はすっと立ちあがり
浅野夏美(あさのなつみ)「それには及ばない」
根木真琴(ねぎまこと)「え? いやいや怪我、してるでしょう?」
浅野夏美(あさのなつみ)「頭の傷はもうふさがった」
浅野夏美(あさのなつみ)「そして打ち身も」
根木真琴(ねぎまこと)「そんなことないよ 何言ってるの? きっと頭を強く打ったんだね ちゃんとお医者さんに診てもらわないと」
浅野夏美(あさのなつみ)「真琴こそ何言ってるの? さあ、帰ろう」
  夏美は血だらけの手を渡しに差し伸べてきた

次のエピソード:エピソード2

コメント

  • とても緊迫感のある屋上シーンでの悲劇、血だまりの中の夏美さんはケロッと!? 真琴さんんの力とは?夏美さんは元の彼女と同一なのか? 続きが色々と気になります!

  • 疎の長によって、封印された真琴の能力が開いて「巫女開き」が起きたのでしょうか。本来ならば死者であるはずの夏美が生者に蘇った後はどうなるのか…。興味をそそられるラストでした。

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