いきなり戦闘開始!?(脚本)
〇闇の要塞
──かつて、王国は魔王によって滅亡の危機に陥っていた。
しかし、一人の勇気ある騎士によって
魔王は滅び、
世界に平和が訪れた。
〇教会の中
その後、騎士は褒賞として王家の姫を
妻に娶ることとなった。
後日、騎士は王家から『公爵』の地位と
『勇者』の称号が与えられた。
騎士は公爵となってからも、民の為に
剣を振るい、善政を尽くした。
王家の姫も、『公爵夫人』となって
夫を支え続けた。
そして、騎士と姫はいつまでも
幸せに暮らしました。
〇暖炉のある小屋
エンブ「その勇者様がアルバさんのご先祖様ですね」
エンブ「子供の頃、 よくその絵本を読んでいたんですよ」
アルバ「ああ、俺も子供の頃、 両親からたっぷり聴かされた」
アルバ「ご先祖様は偉大だってな」
エンブ「なんで今は落ちぶれたんですかね?」
アルバ「俺は知らん!」
エンブ「ともかく、御夕飯にしましょう!」
エンブ「今夜はウサギのシチューですよ」
アルバ「・・・なぁ、いくらアンタの元で修行すると云ってもさ」
アルバ「誰とも知れない赤の他人を あっさり家に上げるのはどうかと思うぞ?」
エンブ「そうですか?」
アルバ「貴族の家じゃ、泥棒が入ったり、 色々あるからな」
アルバ「ましてここは、貴重な武具が沢山揃っている」
アルバ「警戒心無さ過ぎないか?」
エンブ「それは大丈夫ですよ」
エンブ「アルバさんには絶対できませんから!」
アルバ「・・・それは俺がキミより弱いからか?」
エンブ「それもありますが、違いますよ」
アルバ(弱い事は否定しないのか・・・)
エンブ「最初に私、貴方に 能力鑑定の魔法かけましたよね?」
〇鍛冶屋
エンブ「”──”」
〇暖炉のある小屋
エンブ「実はその魔法、相手の経歴や性格等、個人情報が見える魔法なんですよ」
アルバ「え!個人情報!?」
エンブ「例えば、 おねしょ癖が7歳まで続いてたとか」
アルバ「なっ・・・」
エンブ「貴族を招いてのパーティーに、 緊張で失神していたり──」
アルバ「・・・・・・」
エンブ「ほかにも──」
アルバ「・・・なんで俺の嫌な所ばかり付いてくるんだ?」
エンブ「ごめんなさい、嘘は嫌いなので」
アルバ「個人情報丸見えのすごい魔法なんだな」
エンブ「でも、その中で見えた貴方の性格は素敵だと思いますよ?」
アルバ「え?」
エンブ「『義理固い』」
エンブ「『人情に厚い』」
エンブ「『罪を憎んで、人を憎まず』」
エンブ「そんな性格の持ち主が泥棒なんてする筈がありません!」
アルバ「・・・ありがとう」
エンブ「さぁ、シチューが冷めないうちに いただくです」
アルバ「そうだな!」
「いただきます!」
〇森の中の小屋
〇テントの中
エンブ「外で悪いですが、 しばらくここで寝泊まりしてください」
エンブ「店の中は狭いし、鍛冶の音でうるさいと 思いますので、ご容赦ください」
エンブ「その代わり、トイレとお風呂は中で使用しても大丈夫ですから」
アルバ「ああ、構わないよ」
アルバ「ここに来るまで、しばらく野宿だったし 問題はないよ」
アルバ(尤も、年頃の男女が同じ家で 寝泊まりすると、色々問題あるしな・・・)
エンブ「それでは、今日はもう休んでください」
エンブ「明日は朝一でやる事ありますから!」
アルバ「はーい」
エンブ「おやすみなさい」
アルバ「ふー」
アルバ「今日一日ですっかり筋肉痛だ・・・」
アルバ(旅してきたせいか、しばらく鍛錬を怠っていたのが原因か?)
アルバ「・・・寝るか」
アルバ「ふわぁ・・・」
〇森の中の小屋
〇森の中の小屋
〇テントの中
ん・・・
もう、朝か・・・
!?
アルバ「な、なんだ!?」
〇森の中の小屋
アルバ「ま、魔物!?」
アルバさん、ちょうど良かったです!
アルバ「え?エンブ!?」
エンブ「はい!」
エンブ「しばらくソイツの相手をしててください!」
アルバ「しばらくって・・・」
アルバ「ヒィッ!」
アルバ「ぐぅ・・・!」
アルバ(コイツ、力があり過ぎる・・・! このままじゃ剣が折れる!)
アルバ(エンブの奴、何をしているんだ!?)
アルバ(つ、杖!?)
エンブ「”──”」
エンブ「”──”」
エンブ「アルバさん、離れてください!」
アルバ「は、はい!」
アルバ「せやっ!」
アルバ「今だ!」
エンブ「はい!」
アルバ「な!?」
アルバ「・・・・・・」
エンブ「・・・・・・」
エンブ「ふぅ・・・」
〇森の中の小屋
「エンブ!」
アルバ「エンブ、大丈夫か?」
エンブ「・・・・・・」
アルバ「エンブ!」
エンブ「え?あ、ああ、はい!」
アルバ「エンブ、ケガはないか?」
アルバ「さっき、水の竜が飛んできたけど・・・」
エンブ「あ、ええ! 大丈夫ですよ」
エンブ「アレは『攻撃魔法』なので・・・」
アルバ「そっか、安心したよ」
アルバ(アレ、魔法だったのか・・・)
アルバ「なら、なんで落ち込んでいるんだ?」
エンブ「いえ!大した事ではないのですが・・・」
アルバ「それ、さっきの杖だよな? 折れているけど・・・」
エンブ「これ、私の作った試作品ですが」
エンブ「私の魔力に対応できなかったのです」
アルバ「それで落ち込んでいたのか・・・」
エンブ「まあ、1回の戦闘で壊れるくらいだから」
エンブ「まだまだ修行不足ということです!」
アルバ「・・・エンブの魔力が強すぎだからでは?」
エンブ「何を言いますか!」
エンブ「強者に使いこなせればこそ、究極の武器ができあがるんですよ!」
アルバ「それより、さっきの魔物!」
アルバ「なんでいきなり襲いかかってきたんだ?」
エンブ「ああ!すっかり忘れてました!」
エンブ「コイツでトドメを・・・」
アルバ「!?」
エンブ「ホイ」
アルバ「・・・あの、エンブさん? ナニをしているので?」
エンブ「急所を付いて、息の根を止めたんです」
エンブ「暴れられると、『素材』がキズ付いてしまいますから!」
アルバ「素材って・・・」
エンブ「大型の魔物の素材は、とても高く売れるん ですよ!」
エンブ「魔物の骨と皮は武具の製作に最適だし」
エンブ「又、頭からつま先の毛皮は、 コートや絨毯にしている貴族も多いです」
アルバ(そういや、前に伯爵邸に招かれた時に 敷いてあったのを見たような・・・)
エンブ「残った血肉も高級食材として 珍重されているんですよ」
アルバ「えっ!?コレ食えるの!?」
エンブ「栄養満点、滋養強壮、筋力、体力、 精力増強と、万能食材なんですよ」
エンブ「実は昨日のシチューも ウサギの魔物の肉なんです!」
アルバ「マジか・・・」
エンブ「いやー、『今日』は朝から大収穫です!」
アルバ「・・・ひょっとして、毎日魔物が やってくるのか?」
エンブ「ここは森の中ですからね、 ほぼ毎日やってきますよ」
アルバ「俺は店に来るまで、 運良く魔物に遭遇はしなかったが・・・」
アルバ「外にテント張って寝てた俺は、 魔物に襲われてたかもしれないよな?」
エンブ「テントには、聖水(魔物避け)が かかってますから大丈夫ですよ?」
アルバ「トイレとかで外に出た時はどうなんだ? 一瞬の隙が命取りになるぞ」
エンブ「・・・てへぺろ♪」
アルバ「可愛くごまかすなっ!!」
この時、興奮していた俺は気がつかなかった。
かなりの大声を上げたせいで、
もう一体魔物が出てくることに。
──そして、数分後に
第2ラウンドが開始される。