貧乏貴族な勇者の末裔とチートな武器屋

郷羽 路

日常生活(?)も修行也。(脚本)

貧乏貴族な勇者の末裔とチートな武器屋

郷羽 路

今すぐ読む

貧乏貴族な勇者の末裔とチートな武器屋
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇鍛冶屋
  『なんでも武器屋・古今東西』
  その名の通り、新しい物から古い物まで
  ありとあらゆる武具を備えている
  武器屋である。
  又、店主に依頼すれば、どんな物でも
  即用意。最短で手に入る。
  あまりに手際の良い武器屋なので、利用した客からはこう呼ばれている。
  ──『伝説の武器屋』と。

〇鍛冶屋
  武器屋店主『エンブ』。
  可憐な乙女でありながら、
  鍛冶の腕前は超一流。
  加えて、容姿が美しいという事もあり、
  彼女目当てに利用する男性客も
  少なくない。
エンブ「いらっしゃいませ」
商人「エンブくん、相変わらずお美しいな」
エンブ「おや、山向かい先の商人様!」
商人「ここに並べてある、武器を10個ずつ欲しい」
エンブ「毎度あり! 武器は馬車の方に運んでおきますね」
商人「ついでにキミが欲しいのだが・・・」
エンブ「丁重にお断り致します!」
エンブ「いらっしゃいませ」
農民「やあ、エンブちゃん!」
農民「今日も可愛いねぇ!」
エンブ「やだ、おじ様ったら! お世辞がお上手ですね~」
農民「いやぁ、全然お世辞じゃあないよ」
エンブ「はい、ご注文の品です」
農民「おお、良い仕上がりだ!」
エンブ「またなにかありましたら、ご来店下さい」
農民「おう、毎日でも会いに来るぞ!」
エンブ「奥さんに怒られますよ?」
エンブ「又のご利用お待ちしてます」
アルバ「あの人たち、常連客だよな? 魔物とか大丈夫なのか?」
エンブ「商人様は常に魔物避けの香水を付けているのですよ」
エンブ「農夫のおじ様は、昔ながらの知恵で魔物との遭遇を避けているのです」
アルバ「・・・あの二人、エンブが強い事知っているのか?」
エンブ「知らないと思いますよ」
エンブ「私は『看板娘』だから、 可憐なイメージが大事なんですよ」
エンブ「知っていたら、私に近づかないでしょうし」
アルバ(俺は知ってしまったけど・・・)
エンブ「それじゃあ、この荷物を商人様の馬車へ 運んで下さいね」
アルバ「はーい」

〇森の中の小屋
アルバ「ご注文の品になります」
商人「ありがとう、『バイト』くん」
アルバ「ははは・・・」
  ──俺が、この店に『客』として
  やってきてから早一週間。
  俺は現在『バイト』として、
  色々雑用をこなしている。

〇鍛冶屋
  目当ての武器が見つかったものの・・・
  鑑定魔法の結果、俺は武器を扱うには
  相当修行が必要と云われ──
  俺は武器屋で修行することになったのだ。

〇森の中の小屋
  しかし、ここ一週間でやったことは・・・
  朝晩襲いかかってくる魔物との『戦闘』。
  ・・・もとい、『魔物狩り』。
  その後のエンブ師匠による、
  魔物の解体の助手・・・
アルバ(正直吐きそうになった・・・)
  解体作業中の彼女の恍惚した表情。
  しかも一番イキイキした顔をしている・・・
アルバ「てか、それ何なんだ?」
エンブ「魔力で動かすノコギリです!」
  そして日中は、店の手伝いをしている
  という事だ。
アルバ(彼女の手伝いをすれば、修行費用は 割引すると云われて)
アルバ(住み込みのバイトをしている訳だが)
アルバ(いつになったらまともな修行が できるんだ?)
商人「君、ひょっとして『クロス男爵』かい?」
アルバ「如何にもそうだが・・・ 俺を知っているのか?」
商人「商人の情報網をなめないでくれ」
商人「君の家を贔屓している商人が、最近当主が不在しているから商売にならないって」
商人「前に会った時に、愚痴をこぼしていたよ」
アルバ「・・・そりゃ、悪いことしたな」
商人「しかし、男爵様ともあろう方が武器屋で バイトかい?」
アルバ「今は訳あって修行中の身なんだ」
商人「ま、詳しくは聞かないよ」
商人「いずれ君の領地にも商売に行くと思うから」
商人「その時はよろしく頼むよ?」
アルバ「検討しておくよ」
商人「・・・エンブくんには、手を出すなよ?」
アルバ「出しませんって」
アルバ「ありがとうございました」
アルバ(・・・仮にも、俺は武器を買うために ここに来たんだ)
アルバ(いつまで、武器屋の真似事が続くんだ?)
アルバ(さすがに我慢の限界だぞ・・・?)

〇鍛冶屋
エンブ「アルバさん、お疲れ様です」
アルバ「なぁ、俺はいつになったら まともな修行ができるんだ?」
エンブ「はい?」
アルバ「俺は伝説の武具が欲しくて、 店にやってきた」
アルバ「しかし武器を使うには実力不足と判断され、ここで修行することを選んだ」
アルバ「あれから一週間経過したが、 修行と呼べるものをしたことがない」
アルバ「俺は武器屋になりたいんじゃない」
アルバ「戦士としての修行がしたいんだ!」
アルバ「まさか今までの生活自体が修行とでも 云うのか!?」
エンブ「そうですよ?」
アルバ「どういうことだ?」
エンブ「試しにこれを持って下さい」
アルバ「斧?」
エンブ「片手で数回振ってみて下さい」
アルバ「なっ!?」
エンブ「動きが軽いでしょう?」
アルバ「確かにそうだが、本物そっくりの玩具 じゃないのか?」
エンブ「武器屋が本物と偽物を間違える訳ないです」
エンブ「アルバさんの『腕力』が上がった証拠です」
アルバ「そうなのか?」
エンブ「ここ一週間、毎日魔物退治していたから 能力が上がったんですよ!」
アルバ「実際、退治したのはエンブだろ? 俺は手伝っただけだ」
エンブ「何を言いますか!」
エンブ「魔物退治したら、仲間にも同じ経験値が 入るのは、『RPG』のお約束ですよ!」
アルバ「・・・『RPG』ってなんだ?」
エンブ「あっ、古代文明の用語なので そこは気にしないでください!」
エンブ「あと、毎日魔物の肉も食べているので、 その分能力が向上しているのですよ」
アルバ「そうなのか!?」
エンブ「そうですよ!」
エンブ「実際、先程商人様の荷物を簡単に 運べたのが何よりの証拠です!」
アルバ(そういえば、武器数種類を10個ずつ 注文していたな)
アルバ(軽い訳ではないが、持つのは苦しくなかったような・・・)
エンブ「日常生活もまた修行の一環です」
エンブ「能力鑑定の結果を紙にまとめましたから、参考にしてください」
アルバ「どれどれ・・・」
  『アルベール・バルド・クロス
  レベル5⇨レベル15』
  『体力D⇨C+、腕力D⇨C、防御力C+⇨B』
エンブ「具体的な数字は省きますが」
エンブ「ランクを『ABC』に分けるとこんな感じです」
エンブ「因みに『A』に近い程、ランクは高いです」
アルバ「・・・上がったのは嬉しいが」
アルバ「俺の初期能力が低かったことに ショックが大きいのだが」
エンブ「『騎士候補生』だと、それ位が普通ですよ」
エンブ「むしろ、防御力が平均よりやや上回って いるから誇っていいですよ!」
アルバ(嬉しくない・・・)
アルバ「因みにエンブの能力はどの位だ?」
エンブ「それはノーコメントです」
エンブ「教えてもいいですが、アルバさん知りたいですか?」
エンブ「ショックを受けると思いますが」
アルバ「怖いから遠慮します!」
  自分のステータスに落胆したものの、
  能力が上がった事に俺は興奮した。
  そして、更に一週間後・・・

〇暖炉のある小屋
エンブ「いやぁ、今日もよく働きました」
エンブ「アルバさん、能力上がった事ですし、 そろそろ次のステップいきましょうか?」
アルバ「ほ、本当か!?」
エンブ「ええ、明日からちょっと遠出での修行に なります」
アルバ(日常生活でさえ、能力が上がったんだ)
アルバ(遠出ともなればもっと強くなれる!)
エンブ「実は鍛冶に使う素材が不足していまして」
エンブ「その素材を一通り集めるのが目的ですね」
エンブ「各地にあるので結構大変ですが、大丈夫ですか?」
アルバ「ああ、何だってやってやる!」
エンブ「では同意書にサインを」
アルバ「へ?」
エンブ「ここから先は 『命の保証』ができかねますので」
エンブ「同意書にサインして欲しいです」
アルバ「・・・エンブさん、冗談キツいですよ?」
エンブ「・・・私は嘘が嫌いですよ?」
エンブ「素材集めといっても、魔物がいるダンジョンに潜り込むので結構命懸けなんですよ」
エンブ「あ、断っても大丈夫ですよ? 店先でも十分修行になりますしね」
アルバ「・・・・・・」
アルバ「・・・いや、俺は行く!」
エンブ「おおっ、まさかの同意!?」
アルバ「騎士は、主君や民の為に剣を振るい、 戦うもの・・・」
アルバ「危険があろうとも、剣を振るわずにいるのは、騎士の名折れ!」
アルバ「我がクロス家『初代当主』に誓って、 必ず成し遂げる!」
エンブ「初代当主は『古の勇者』様! 本気なのですね!」
エンブ「・・・でもかっこいい事言ってますが」
エンブ「アルバさんは騎士『候補生』であって、 正式な騎士ではないですよね」
アルバ「・・・余計な事は言わんでいい!」
エンブ「まぁ、同意は得られましたし」
エンブ「今日はゆっくりお休み下さい」
アルバ「ああ!」
  店に来て約半月、ようやくまともに
  修行ができそうだ。

〇森の中の小屋
  とはいえ、次はダンジョンか。
  どこのダンジョンに行くのか、
  どんな魔物と遭遇するか・・・
  一抹の不安を感じつつ、
  俺は明日に備えて休む事にした──。

次のエピソード:外伝、『古の勇者物語』

成分キーワード

ページTOPへ