第16話 勇み足(脚本)
〇地下室
北海道 千歳市 勇舞 空き家地下
あれから2日が経ち、キング達が斎王に今後のことを説明。
斎王はその作戦に賛成するも、エンチャントに何かやり残したことは無いか?と尋ねる
エンチャント魔導法士「まぁあるにはあるが···イヴァン司教の事やロシア正教の事は今はいい。しっかし何か忘れてる気がする···」
鸞「斎王、これ思い出し待ちか?俺は早く行動に移したいんだが」
斎王幽羅「まぁまぁ···一応聞いてみようよ、何かあるかもだし」
フェード「そういえば北海道に入る時にあったあの天使像、軍の輸送品に入ってたのは何の理由があるんだ?」
凪園無頼「これでしょー?俺持ってるー」
鸞「本当に持ってきたのか···エンチャント、あんたが余計なこと言うから···」
キング「なぁ思ったんだけどよ、その天使像『軽くねえか?』凪園の懐に入るって···どうなんだ?」
鸞「大きさ自体は大したこと無いが重さは、まぁまぁあるはずだ。どうなんだ?凪園」
凪園無頼「全然重くねーし、じゃあ持ってみればー?ヘイパース♪」
鸞「よっと··· ··· ···お前なぁ···投げて渡すんじゃなくて手で渡せば···」
鸞「··· ··· ···なんだこれ、軽すぎるぞ。凪園、中身振ったりしたか?」
凪園無頼「うん。なんかおもしれーのねーかなーって思って振ったけど、なんも音しなかったよー?」
鸞「中身が何か確認してみる『音返しの術』」
鸞の目が白く変化し、鸞は適当な言葉を天使像に向け発し続ける
やがて声が大きくなるも、徐々に小声に戻り鸞の目が元の色に戻ると鸞は皆に話始める
鸞「薄い大きな物が複数見えた、恐らく『紙』だ。エンチャント、何か心当たりはないか?」
エンチャント魔導法士「紙か···検討もつかん。割って中身を見てみるべきだな」
鸞「3枚の用紙、日本語とロシア語と中国語で書かれている。フェード、こっち読んでみてくれ」
フェード「どれどれ··· ··· ··· 今天,演习将在日本海一侧举行。 不要以海上封锁阻碍中俄秘密演习···」
エンチャント魔導法士「中国語で言ったてわからんだろうが。日本語に訳して喋ってくれフェード」
フェード「す、すまない···間違えてしまった。では改めて···」
フェード「『本日、中露機密演習を執り行う。日本海側の海域にて残存する船舶は破壊しても問題は無い。』」
フェード「『日本の軍には海上封鎖を頼んだが、今回のテスターは日本の軍隊だ』」
フェード「『前回のプロトタイプは銃弾や砲撃を避けきれず沈んだ。今回はそうならない事を祈る。』」
フェード「『それでは健闘を祈る、ロシア正教と紅色派に栄光を。紅色派 総帥 劉漢清(リュウ・カンシン)』」
鸞「日本語の方には中露演習があるから日本海側を海上封鎖して欲しい。としか書いてないな···」
斎王幽羅「プロトタイプってなんだろう···ロシア語の方に書いてあるのかな···?エンチャントさん、読める?」
エンチャント魔導法士「悪いが読むことはできない、ワシは英語とフランス語と日本語しか覚えてないからな」
キング「十分すげぇじゃねえか!」
斎王幽羅「確かにそうだよね。鸞はどう?」
鸞「悪いが俺もロシア語は読めない、だれか読める人間を探さなきゃならないな···」
斎王幽羅「うーん···ひとまず、海上封鎖するんだよね?軍の輸送品の届け場所は札幌で」
斎王幽羅「札幌から近い海上自衛隊の場所へ行きたいけど···わかる人いる···?」
鸞「斎王、ひとまず札幌に行って聞き込んでみるか?俺とエンチャントなら身バレせず聞き込みできる」
斎王幽羅「それって千歳離れるんでしょ···?札幌の拠点どうするの···?」
鸞「俺に考えがある、ひとまずそこに行ってみよう」
そして斎王達は身を隠しながら札幌市のとある場所まで移動した。
〇広い更衣室(仕切り無し)
数時間後 北海道 札幌市 とあるギルド跡地
エンチャント魔導法士「鸞、お前よくここがわかったな!言われてみればだったな、考えもしなかったわ!」
鸞「まぁな。国際異能規制の対象は『ギルド』もだから、もしやと思ったが···」
斎王幽羅「ここは元々はどんなギルドだったの···?やっぱ凄いところ···?」
エンチャント魔導法士「昔は7大都市にとんでもない強さの奴がいるって噂でな?」
エンチャント魔導法士「北海道のギルド、まぁここだがな?なんとか『融助』ってのがいたよ」
エンチャント魔導法士「とんでもない手腕で、金勘定が得意なやつだったのを覚えとる。札幌があと一歩!って所を」
エンチャント魔導法士「自分の対外貿易スキルと資金循環をうまい具合にやって、札幌を『巨大都市』に導いたって聞いてるよ」
斎王幽羅「そ、そんな人がいたんだ!?すっごいなぁ···三代目の時代って···」
凪園無頼「ねーねー、そいつ強かったのー?」
エンチャント魔導法士「お前のじいさんが戦って帰ってきた時言ってたが『殴り合いなら余裕で勝てるが、頭脳戦で押されてヤバかった』と言ってたな」
凪園無頼「へー、そうなんだ。やっぱ···俺のじいちゃんすげーなー···」
フェード「おい、いつまで昔話をしている。さっさと海上自衛隊の場所聞き込んでこい」
エンチャント魔導法士「わかったよ、ったく···鸞、行くぞー」
2人が外に出て、斎王達は室内を見て回った
時々ある資料を手に取って読んで、時間を潰していた最中
普段落ち着きがない凪園が珍しく立ち止まり、静かに黙読していた
最初にそれに斎王が気づき、そしてキングとフェードに教え3人でこっそり覗くことに
凪園無頼「··· ··· ···キング、鼻息うぜーんだけど。殺すよ?」
キング「そこまで荒くねぇだろうが!··· ··· ···荒くねぇよな?」
斎王幽羅「お、俺は気にならなかったよ···?フェードもでしょ···?」
フェード「我以为你是猪呢?(ブタかと思ったぞ?)」
キング「おい!イートンってなんだ!?ひょっとして中国語で『豚』つったか!?」
フェード「おや、バレたか」
キング「この野郎~···!」
斎王幽羅「もうやめなって2人とも。凪園の読んでるそれってさっきエンチャントさんが言ってたやつ?」
凪園無頼「うん。かっけーっしょ?俺、ガキの頃からじーちゃんの蹴り技に憧れてんだー」
フェード「何故蹴り技ばかり使うのかと思ったらそんな理由があったのか···」
凪園無頼「俺さー?じーちゃんの技で1番好きなのあってさー?えーと···これー!」
斎王幽羅「ちょっと!これXヒーローの記録書の一部じゃん!ダメだよ持ってきちゃ!!」
凪園無頼「いーじゃん別にー。それよりー、これみてよー。やべー技じゃねー?」
斎王幽羅「アストラル・スターダスト···?どういう技なんだろう?」
フェード「幽体···いや、星状か。『星状の星屑』と言う意味か?連撃技か···?」
キング「書いてあんぞ。えーと···」
キング「『想いを乗せた星状の如く一撃。一撃で大地を割り生まれた焔は星屑の様に飛散し、その様は流星群の様』だってよ」
凪園無頼「すごくねー!?たった一撃で大地を割って、その一撃の衝撃で作った炎が流星群の様に降り注ぐんだってー!」
子供のようにはしゃぐ凪園に対し、斎王は遮るように口を開く
斎王幽羅「確かに凄い。だけど···凪園、これ凪園の技じゃないじゃん」
凪園無頼「あ?何が言いてぇんだよお前」
斎王幽羅「今までの技もそして今覚えようとしてる技も全部おじいちゃんの物でしょ?」
斎王幽羅「俺今まで一度も『凪園らしい技』見てないんだよね。ねぇ、凪園···」
斎王幽羅「凪園は『不帝勇歩の模倣品』じゃないんだよ?おじいちゃんは凄い人だけど、それに縛られすぎじゃないかな···?」
ここでいつもなら怒り出す凪園だが、今日はいやに静かだった。
凪園は近くの棚を蹴り壊した後、奥のほうに逃げるように向かった
斎王幽羅「言い過ぎちゃったかな···傷つけるつもりはなかったんだけど···」
キング「いや、お前が正しいって思うんならそれでいいだろ。本人も図星っぽいしな」
フェード「お前は人をよく見ているな斎王、私では気づけなかったよ。だから自分を責めるなよ?」
斎王幽羅「う、うん···鸞達帰ってきたら様子見に行ってあげようか···」
〇繁華な通り
同時刻 北海道 札幌市 市街地
鸞「お前···それどうやってるんだ···?」
エンチャント魔導法士「『若返りの魔術』だよ。ワシは昔から若返りに興味があって、細胞学を必死こいて勉強してたもんだ」
鸞「··· ··· ···因みにだが動機を聞かせてもらおうか?」
エンチャント魔導法士「ソープで遊びまくる為だが?」
鸞「清々しいほどに不純だな。死ねばいいのに」
エンチャント魔導法士「お前には分からんだろうが男はいい歳こいても『ハッスル』したいもんだよ」
鸞「分かりたくもないな。さて···成果は?俺の方は特定ができた」
鸞「『余市』だ。札幌から左斜め上の場所で海上自衛隊の駐屯地があると聞いている」
エンチャント魔導法士「ワシもそれは特定できた。それと···追加の情報でロシア語の文書について聞いて回った」
エンチャント魔導法士「悪いが情報は掴めんかった。あのロシア語学校の女教師とイッパツすれば聞き出せたんだがな~···」
鸞「ブッ殺すぞクソジジイ」
エンチャント魔導法士「辛辣だな~···お前の方はどうだ?」
鸞「俺も聞いて回ったが聞き出せなかった。どいつもこいつも下心が見え透いてる···」
鸞「ただ気になる事も聞いた、中華系のマフィアが余市の駐屯地に出入りしてるのを見たと言っていた」
エンチャント魔導法士「紅色派か···?ひとまず余市に行って確かめてみるべきだな」
エンチャント魔導法士「それとひとつ聞いておきたいことがある。いいか?」
鸞「···くだらん事聞いたらお前の舌をカラス達に食わせてやるからな?」
エンチャント魔導法士「いや、真面目な話だ。教会でイヴァン司教に襲われたことを皆に伝えたが」
エンチャント魔導法士「実はひとつ伝えてないことがある。お前かキングに話そうと思っていたが」
エンチャント魔導法士「斎王が母親の事を責められながらイヴァン司教に攻撃されていた時、『姿が揺らいだ』」
エンチャント魔導法士「前にもこんなことはあったのか?」
鸞「いや、初めて聞いたぞそんな事。キングの方が斎王と一緒にいる時間が長いからあいつなら何か知っているかもしれん」
鸞「その『姿が揺らぐ』ってのがもし、斎王の覚醒能力だとしたら···トリガーは『母親への最大級の侮辱』だな」
エンチャント魔導法士「イヴァン司教の言い草からして陰惨な死に際だったのは間違いない。だが現場を見ているのは」
エンチャント魔導法士「斎王勇次郎、雪月頼、鬼月冷羅の3人。恐らく斎王は斎王勇次郎と雪月頼のどっちかに」
エンチャント魔導法士「雪月雪羅の死に際を知ったはずだ。この頃斎王はまだ1、2歳だ、遺品もろくに無いはずだ」
鸞「記憶すら曖昧でも、子供というのは不思議と母親をしっかり覚えているものだ」
鸞「たとえ短い時間でもしっかりと愛情を注がれ育ったんだ、斎王の気持ちはわからんでもないな」
エンチャント魔導法士「葬式の時出席したが、勇次郎と頼は混乱してる中斎王は···必死に泣くのを堪えていたのを覚えてるよ」
エンチャント魔導法士「できる事なら抱きしめて、落ち着かせてやりたかった。だが冷羅に止められてしまってな」
エンチャント魔導法士「思えばあいつも雪月雪羅が死んだ日から変わったな。取り憑かれた様に私兵団を作ることに躍起になっていた」
鸞「それだけ··· ··· ···それだけ4代目Xヒーローには雪月雪羅という女性が必要だったんだな」
鸞「どんな女性か知ってる範囲で教えてくれるか···?」
エンチャント魔導法士「『雪のように優しく、太陽のように暖かで、戦闘はへっぽこだが、誰よりも皆の痛みに敏感だったよ』」
鸞「··· ··· ···できた女性なのだな。俺が女として生きていく道があれば、目指したい理想像だ」
エンチャント魔導法士「さて、湿っぽい話は終わりだ!さっさと戻るぞ鸞!!」
To Be Continued··· ··· ···