第8話 『嵐の決意』(脚本)
〇洋館の廊下
ボォン・・・ボォン・・・
星明りに照らされた長い廊下。
割れていたはずの窓ガラスが直り、破壊したはずの柱時計の鐘が鳴り響いていた。
正岡きらり「なんで・・・さっき壊したのに・・・なんで鳴ってるの!?」
廊下に面した扉のひとつが音もなく開く。
鎧坂蕗子「・・・来る」
黒いなにか「ふふっ」
岡崎大志「走れ!!」
階段の方へと駆けだす蕗子たち。
梵嵐「はっ・・・はっ・・・」
嵐が走りながら振り向くと、黒いなにかは四人へ向けてゆっくりと歩みを進めている。
嵐の目には、そんな黒いなにかの姿が凪の姿に重なって見えた。
梵嵐「!」
嵐の瞳に映る苦しげな表情をした凪。
それを見て、嵐はふと立ち止まる。
梵嵐「・・・凪っ!」
正岡きらり「止まっちゃダメ!!」
〇洋館の階段
嵐の手を引いた正岡が階段を走り抜ける。
二人は踊り場を通って一階へと駆け下りた。
続いて蕗子と大志も踊り場までやってくる。
そのとき──
黒い蓮介「あはは」
身体が砕けて上半身だけになった黒い蓮介が、どこからか落下してきた。
蕗子と大志は、黒い蓮介に遮られて先へと進むことができない。
梵嵐「蕗子! 大志!」
岡崎大志「嵐たちは先に行け!」
梵嵐「でも!」
黒い蓮介は、ずるずると上体を引きずるようにして蕗子と大志の方に進む。
梵嵐「・・・!」
梵嵐「レンくん・・・!」
鎧坂蕗子「早く行って! 挟まれる!」
梵嵐「え!?」
凪と正岡の背後では、小部屋の扉がゆっくりと開き始めていた。
正岡きらり「か、観測室で待ってます!」
梵嵐「で、でも・・・」
正岡きらり「嵐ちゃん走って!!」
嵐の手を握り締めて正岡が走る。
そのとき、小部屋の中に黒いなにかが姿を現した。
梵嵐「!」
嵐はふいに正岡の手を振り払って立ち止まる。
正岡きらり「嵐ちゃん!?」
梵嵐「・・・やっぱり、ほっとけないよ」
正岡きらり「・・・え?」
嵐は決意したように、二体の黒いなにかを見つめて言った。
梵嵐「凪もレンくんも、私の大切な人だから」
梵嵐「私が凪を止める」
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