ウエノ人間園

山本律磨

ウエノ人間園(脚本)

ウエノ人間園

山本律磨

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ウエノ人間園
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〇動物園の入口
  『いやー。今日もいい天気だなー』

〇ゴリラの飼育エリア
俺「バナナも美味いしよ~」
俺「お前らはアレだろ?やっぱ黒くなってるとちょっと口にするの躊躇われるわけ?」
俺「浅はかだね~バナナは黒くなってからが、最高なのによ~」
俺「ほら~また撮った~」
俺「どうせ見返すことなんてねーんだからさ~ちゃんと目に焼き付けといたほうが得だと思うぜ」
俺「こういう、ちょっと臭い所も込みの入場料なんだから。それがリアルってヤツだぜ」
俺「もっとも~」
俺「俺らにしてみりゃお姉さん方の髪とか化粧の方がよっぽど臭いぜ」
俺「あ、そこのオジサン。いい匂い」
俺「特に頭皮なんかね」

〇洞窟の入口(看板無し)
僕「分かるわ~」
僕「皆さん方のクサイが、僕達のいい匂いなんだよね」
僕「そういう意味ではそこの君」
僕「そう。ご主人様(笑)に抱っこされてる、モッフモフの君」
僕「よくその香水とやらに耐えられるね」
僕「同族として尊敬(笑)するよ」
僕「見た所自分で歩く事も面倒臭くなっているようだし、いやはや共存共生の道も万々歳という訳にはいかないようだね」
僕「ともあれせいぜいご主人様(笑)のご機嫌を伺いながら一生を送るといいさ」
僕「え?」
僕「お前だって完全に解体された獲物を飼育員様(笑)にほどこされているじゃないか!だど?」

〇植物園のドーム
ワタクシ「そりゃあ、あれザマス」
ワタクシ「ワタクシ達はみなさまに癒しや興奮など、エンターテインメントを提供しているのですよ」
ワタクシ「つまりは存在そのものが業務なのです」
ワタクシ「食料は断じて施しではなく、業務に対して適切な報酬を頂いているにすぎません」
ワタクシ「ましてワタクシなどは日がな一日あなた方の嫌悪と侮蔑に満ちた眼差しを前身に浴びせられ続けているのです」
ワタクシ「むしろ特別報酬を要求したいほどですわ」
ワタクシ「ただ、アレですわよ」
ワタクシ「部分部分にしか毛の生えてない、猿の出来損ないみたいなそちら様の方がよほど醜悪だと園内ではもっぱらの噂です事よ」
ワタクシ「残念ながら地球上キモイ決定戦(多数決)では皆様が圧倒的に勝利するでしょうね」
ワタクシ「おーっほっほっほ!」
ワタクシ「・・・」
ワタクシ「写メ、撮ってよろしくてよ」
ワタクシ「・・・チッ」

〇岩山
オレ「いや~今日もウジャウジャ集まってるね」
オレ「あ、俺ガキ嫌いだから。あんまり騒がないでね」
オレ「食べちゃうぞ~なんつって」
オレ「まあ、この柵乗り越えてもいいんだけどさ」

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コメント

  • 「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている」の動物園反転バージョンかもですね。人間ほどバラエティに富む珍妙な生物はいないですもんね。人間同士はネットという檻の中で毎日お互いを観察してキーキーピーピーやってますね。熊の方がまだマシとばかりに「来ちゃったよ」の人、気持ちがちょっとわかる。テレビ画面という檻の外からも観察している人間がいるよ、という無限の合わせ鏡みたいなラストにゾッとしました。

  • 動物の視点から人間を見つめれば、 むしろ人間の方が非合理的なんでしょうね。
    動物ではなかったけども…
    色々考えさせられる教訓的な作品ですね!
    ハイペースで人間の暗部を抉る作品を描かれてるのがすごいです。

  • 人間でありながら、その人間の有様に落胆するようなことが多々あるこのご時世に、こんなに簡潔で皮肉的なすごい読み物でした。

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