第一話 後悔(脚本)
〇通学路
現在、日本国内の空き家は800万戸を超え
全住宅の1/7を占めると言う事態に陥っている
〇住宅街
治安悪化や老朽化による倒壊など
様々なリスクを孕んだ空き家問題
〇高級住宅街
そんな空き家にも、
かつては人々の幸せな営みがあったはずなんだ‥‥
〇黒背景
第一話 後悔
〇綺麗な一戸建て
〇豪華なリビングダイニング
最上修悟「ううう‥ごめん‥ごめんよ‥」
最上修悟「うう‥うっ!」
最上修悟「ぐぅっ!」
〇オフィスビル前の道
数日後‥
〇オーディション会場の入り口
振興ビル アートギャラリー
柴咲恭写真展「ある日常」
〇レンタルギャラリー
柴咲 恭「‥‥」
柴咲 恭「暇だ‥」
柴咲 恭「あっ、もしもし」
〇雑誌編集部
田之倉大悟「おう、お疲れー!どう?客の入り?」
〇レンタルギャラリー
柴咲 恭「それ‥わかってて言ってますよね?」
〇雑誌編集部
田之倉大悟「あははは! まあ、予想はしてたけどね」
田之倉大悟「それはそうと、この間はどうもね よく撮れてたよ!表情もバッチリで」
〇レンタルギャラリー
柴咲 恭「ああ、いえ」
〇雑誌編集部
田之倉大悟「編集長も褒めてた、勘が良いってさ」
田之倉大悟「なあ、会ってみない?編集長に? 専属でって話しが出てんだよ」
〇レンタルギャラリー
柴咲 恭「専属ですか‥」
〇雑誌編集部
田之倉大悟「まだフリーにこだわってんのか‥」
田之倉大悟「その個展も3年だろ?客来ないのに‥」
〇レンタルギャラリー
柴咲 恭「来ますよ‥たまには」
〇雑誌編集部
田之倉大悟「昔の事、後悔してんなら‥」
〇レンタルギャラリー
柴咲 恭「後悔は‥」
柴咲 恭「‥してないですよ」
〇雑誌編集部
田之倉大悟「‥なら、いいけど」
田之倉大悟「なあ?悪くない話だと思うよ 稼ぎも安定するし」
〇レンタルギャラリー
柴咲 恭「はい‥」
〇雑誌編集部
田之倉大悟「‥とにかくさ」
新保まゆ「田之倉さーん! 6番!」
田之倉大悟「おう!」
田之倉大悟「悪い、急ぎが入った! また連絡する!」
〇レンタルギャラリー
柴咲 恭「ふぅー‥」
柴咲 恭「あれ?お客さん?」
〇雑誌編集部
田之倉大悟「じゃあ、そんな感じでよろしくー」
新保まゆ「田之倉さん、さっきの電話 もしかして柴咲さん?」
田之倉大悟「そうだけど」
新保まゆ「入れ込みますねー、彼に」
田之倉大悟「何だよ?いいだろ 才能あんだよ、あいつ」
新保まゆ「また「奇跡の一枚」の話ですか? 協会賞の準大賞の?」
田之倉大悟「そうじゃないけど 新保だって、それ見た事あんだろ?」
新保まゆ「確かにすごいですよ、あの写真 でも、彼が学生時代の作品でしょ?」
新保まゆ「なーんか最近は全然じゃないですか?」
田之倉大悟「まぁ、最近はな‥ でもうちの編集長も腕を買ってんだよ」
新保まゆ「じゃあ、うちに来ればいいのに?」
田之倉大悟「そう言ってんだけど‥こだわってんだよ フリーに」
新保まゆ「何でです?」
田之倉大悟「あるんだよ、色々と‥昔の事だけどな‥」
〇レンタルギャラリー
多聞 玲「‥‥」
柴咲 恭「あー‥その作品なんですけど」
多聞 玲「‥‥」
柴咲 恭「えーっと、その‥」
柴咲 恭「そこ、空き家なんですよ」
多聞 玲「空き家?」
柴咲 恭「あっ、はい」
柴咲 恭「空き家で撮らせてもらったんです」
多聞 玲「‥ふーん」
柴咲 恭「そこに暮らしてた家族の名残りみたいものを感じて、それを捉えてると‥」
柴咲 恭「‥思うんですけど」
多聞 玲「‥‥」
柴咲 恭「あの‥こういう作品、お好きなんですか?」
多聞 玲「なに?」
柴咲 恭「あっ、いや‥好きなのかなって」
多聞 玲「別に‥」
柴咲 恭「あー‥」
柴咲 恭「ごゆっくり‥」
多聞 玲「‥買うわ」
柴咲 恭「‥は?」
多聞 玲「買うって言ったの」
柴咲 恭「えっ?あの作品を?」
多聞 玲「違う‥この撮影を買うの」
柴咲 恭「撮影を?‥撮影の依頼って事ですか?」
多聞 玲「‥そうね、そうなるのかな? はい、これ」
柴咲 恭「多聞不動産‥不動産屋さん?」
多聞 玲「まあ、一応」
柴咲 恭「あの‥何を撮るんです?」
多聞 玲「さっきのあれを撮ってほしいの」
柴咲 恭「あれ?」
多聞 玲「あなたの言ってた、家族の名残り」
柴咲 恭「名残り‥」
柴咲 恭「いやでも、そんな簡単に撮れるわけじゃ‥」
多聞 玲「撮れたら10万」
柴咲 恭「10万‥えっ?」
多聞 玲「使えるなら、プラス10万ね」
柴咲 恭「‥使える?」
多聞 玲「そう使える お金になるかってこと」
柴咲 恭「金に‥それ、家族の名残りと何の関係があるんですか?」
多聞 玲「まあ‥お金になる物って 意外と形が無かったりするのよ」
柴咲 恭「形が無い‥」
多聞 玲「そうね、継続して撮影をお願い出来るなら、詳しく話してもいいけど」
多聞 玲「それに撮影の出来次第で 専属の社員扱いでも構わない」
柴咲 恭「専属‥」
多聞 玲「悪くない話だと思うけど」
柴咲 恭「あのー‥」
多聞 玲「なに?」
柴咲 恭「俺‥写真家なんですよ」
多聞 玲「だから?」
柴咲 恭「だから‥あくまで写真家として 撮影の依頼なら‥」
柴咲 恭「でもその‥社員とかは‥」
多聞 玲「ふーん‥」
多聞 玲「その写真家って、スキャンダルの隠し撮りするのも仕事なの?」
柴咲 恭「なっ!?」
多聞 玲「それよりはよっぽどマシだと思うけど」
柴咲 恭「何でそれを?」
多聞 玲「一応ね、調べたのよ あなたの写真家としてのお仕事を」
柴咲 恭「あれだって‥ちゃんとした仕事ですよ」
多聞 玲「‥‥」
多聞 玲「‥じゃあ、社員扱いの件は忘れましょう で、どう?請けてくれる?」
柴咲 恭「‥請けますよ、写真家として」
多聞 玲「そう、じゃあ詳細は後で伝える」
柴咲 恭「はい」
多聞 玲「よろしくね、写真家さん」
柴咲 恭「‥‥」
柴咲 恭「何かむかつく‥あの女」
柴咲 恭「‥家族の名残りか」
〇高級住宅街
一週間後‥
柴咲 恭「この辺‥」
〇綺麗な一戸建て
柴咲 恭「ここか」
柴咲 恭「この番号‥」
柴咲 恭「はい、もしもし?」
〇個別オフィス
多聞 玲「どう?着いた?」
〇綺麗な一戸建て
柴咲 恭「ああ、まあ」
〇個別オフィス
多聞 玲「シャキッと返事してよ!写真家さん」
〇綺麗な一戸建て
柴咲 恭「何だよ!着いたよ!」
〇個別オフィス
多聞 玲「じゃあ、今から詳細送る 撮影よろしく、写真家さん」
〇綺麗な一戸建て
柴咲 恭「何か嫌みっぽく聞こえるけど?」
柴咲 恭「あっ‥」
〇個別オフィス
多聞 玲「使えんのかな‥この写真家は」
多聞 玲「さて‥」
多聞 玲「最上修悟‥‥ うちの親と、同じクズか‥」
〇綺麗な一戸建て
柴咲 恭「切ったよあの女‥」
柴咲 恭「おっ?」
元住人 最上修悟(もがみしゅうご)46歳
飲食店経営 妻と娘の3人家族
同僚女性との不倫が原因で妻子と離婚
だが不倫相手とも上手く行かず、結局独り身に
その後、彼はこの家で死亡
死因は急性心不全、独り身になってからの荒れた私生活が原因と思われる
柴咲 恭「哀れなおっさんってことか‥」
亡くなった場所はリビング
部屋の中は出来る限りその当時のままにしてある
柴咲 恭「これ‥事故物件じゃねえの?」
柴咲 恭「俺、呪われたりしないかな‥」
柴咲 恭「はぁー‥行くか」
〇シックな玄関
柴咲 恭「お邪魔しまーす‥」
〇豪華なリビングダイニング
柴咲 恭「ここか‥」
柴咲 恭「えーっと、成仏して下さい‥と」
柴咲 恭「さて、始めるか」
〇豪華なリビングダイニング
〇豪華なリビングダイニング
柴咲 恭「なーんか、いまひとつ‥」
柴咲 恭「ちょっと休憩しよ ソファお借りしまーす‥よいしょっと」
柴咲 恭「いいねー!」
柴咲 恭「広いリビング‥ どんな家族だったんだろ‥」
柴咲 恭「あん?」
ちなみに最上修悟はソファに座った状態で亡くなっていた
柴咲 恭「ソファ‥?」
柴咲 恭「えっ!ここじゃねぇか!」
柴咲 恭「マジかよぉ‥やめてくれよ‥」
柴咲 恭「あれ?壁に貼ってあるの‥」
柴咲 恭「写真‥? 家族のか‥」
柴咲 恭「剥がさなかったんだ‥ このソファから、ずっとこの写真‥」
柴咲 恭「これ見ながら死んでったのかな‥」
柴咲 恭「‥‥」
柴咲 恭「もうちょっと撮るか‥」
〇豪華なリビングダイニング
〇豪華なリビングダイニング
柴咲 恭「今の何だ‥」
柴咲 恭「頭痛てぇ‥これ‥」
柴咲 恭「この感じ‥‥」
柴咲 恭「あの時‥あの奇跡を撮った時と‥」
柴咲 恭「同じだ‥」
〇豪華なリビングダイニング
最上修悟「よーし、みんな並んでー」
最上美海「はーい! ママも早くー!」
最上真優「はいはい、わかりました」
最上修悟「はい、撮るよー!」
最上修悟「あっ、パパ目を瞑っちゃった!」
最上美海「もー!パパは―!」
最上真優「あらあら、うふふふ」
最上修悟「あははは!」
〇豪華なリビングダイニング
最上修悟「ううう‥ごめん‥ごめんよ‥」
最上修悟「美海‥真優‥ごめん‥」
〇豪華なリビングダイニング
柴咲 恭「名残り‥」
柴咲 恭「違う‥これはこの男の‥」
柴咲 恭「後悔だ‥‥」
柴咲 恭「写って‥無いか‥」
〇黒背景
〇綺麗な一戸建て
柴咲 恭「ふぅー‥」
「📞はい」
柴咲 恭「撮り終わった 画像を送ったよ」
「📞どう?うまくいった?」
柴咲 恭「うーん 何て言うか‥」
〇個別オフィス
多聞 玲「まあ、不倫して家族に逃げられた、愚かな男の幽霊なんて写って無ければいいけどね」
〇豪華なリビングダイニング
〇綺麗な一戸建て
柴咲 恭「‥それは、大丈夫かな」
〇個別オフィス
多聞 玲「それに自暴自棄になって自滅したようなもんだし、家族の名残りも何も無いわね」
〇豪華なリビングダイニング
最上修悟「ううう‥ごめん‥ごめんよ‥」
〇綺麗な一戸建て
柴咲 恭「‥ああ、うん」
〇個別オフィス
多聞 玲「しょせんはクズよ、他の女に入れ込んで家族を捨てるようなヤツ、ろくな‥」
〇豪華なリビングダイニング
最上修悟「美海‥真優‥ごめん‥」
〇綺麗な一戸建て
柴咲 恭「‥なあ、あんたさ」
「📞は?」
柴咲 恭「あんた、後悔って‥したことないの?」
「📞‥なに?」
柴咲 恭「自分のクズさで失敗して後悔してさ‥ そういうのってないの?」
「📞何の話よ?」
柴咲 恭「そのクズな‥後悔してんだよ‥ 自分のしたこと」
〇個別オフィス
多聞 玲「何言ってんの?」
「📞クズかもしれないけど、それでも家族の事を想ってて、それで‥」
多聞 玲「家族を想う‥あんた、何言ってんの?」
「📞えっ?」
多聞 玲「じゃあ、不倫で苦しめられた家族の気持ち‥それはどうなんのよ!」
「📞それは‥」
「📞‥そうだよ‥あの男は後悔して当然だと思うよ‥」
多聞 玲「だったら、何で同情してんのよ!」
「📞でも‥死んでもさ‥ まだ後悔し続けてるんだよ、あいつ‥」
多聞 玲「‥死んでも?」
多聞 玲「‥‥」
多聞 玲「何で、そんな事がわかるのよ?」
〇綺麗な一戸建て
柴咲 恭「何でって‥そんな感じだったから‥」
「📞そんな感じ?」
「📞‥撮れたの、それ?」
柴咲 恭「‥たぶん」
「📞ふーん‥」
「📞それを早く教えてよ くだらない説教はいいから!」
柴咲 恭「でも、撮ったけど写ってるわけじゃ‥」
柴咲 恭「あっ!切れた‥また切ったよ、あいつ」
柴咲 恭「やばい‥怒らせた‥」
柴咲 恭「金、もらえるかな‥」
〇個別オフィス
多聞 玲「ふぅー‥」
多聞 玲「むかつくあの男 誰に向かって説教してんのよ‥」
多聞 玲「メールに添付‥これか‥」
多聞 玲「‥おっ?」
多聞 玲「あいつはむかつくけど‥」
多聞 玲「これ、使えるか‥」
〇繁華な通り
翌日‥‥
柴咲 恭「あいつだ‥」
画像を確認した
入金したから確認して
柴咲 恭「おお、良かった!怒ってなかった」
また空き家撮影を頼みたい
詳細は事務所で
柴咲 恭「事務所?」
請けてくれるなら
この撮影の詳しい理由を教える
柴咲 恭「理由‥」
〇個別オフィス
了解 今から事務所に行く
多聞 玲「‥ふん」
多聞 玲「‥‥」
多聞 玲「奇跡の一枚‥か」
続く
凄く好きです✨️
人生の残滓を掬っていくヒューマンドラマを感じますね、サイコメトリーに近い能力なのですかね🤔
自分も仕事柄、空き家の前を通ることは多いのですが、空き家や廃墟にも様々な“雰囲気”ってありますねぇ。
投棄された子供用の小さい自転車、台所の窓に透ける生活用品、生い茂る雑草の具合など…
昔はどんなだったのかなぁと、想いを馳せることも多いです🥲
どんな展開になっていくのか楽しみですね😊
ぼんやりとした、とおっしゃってますが、
いくつも気になる謎があってすごく続きが気になりますよ!
なんだか素敵なヒューマンドラマになりそうな予感です😊
こんにちは!
写真を撮ると過去の人物の後悔が見えるなんて驚きました!
主人公がどんな能力?才能を持っているのか更に気になりました!
設定がしっかりしているのでリアリティを感じながら読むことができました!面白かったです!