第7話 『再び観測室へ』(脚本)
〇洋館の廊下
梵嵐「自分は凪だって・・・凪って言ってた!」
「!!」
鎧坂蕗子「あの黒いのが凪・・・なら、もう一体のあれは・・・やっぱり」
梵嵐「・・・レンくん」
鎧坂蕗子「・・・そんな」
梵嵐「凪は『殺す』って・・・みんな殺してやるって、そう言ってた・・・」
嵐が廊下の一点を見ると、そこには砕けた花瓶の破片があった。
かろうじて花瓶の形を留めている一番大きな塊は一部が黒いガラス質に変質している。
梵嵐「ひとりだったら、私も、あのままきっと・・・」
鎧坂蕗子「・・・・・・」
蕗子は黙って嵐の左手を引いて抱き寄せた。
梵嵐「・・・ありがとう」
蕗子は微かに首を振るが、その表情は苦悶に満ちている。
岡崎大志「・・・あの黒いやつが、凪と蓮介」
梵嵐「手を掴まれてるとき、聞こえてきた」
岡崎大志「・・・殺す、か」
正岡きらり「そんな・・・私、凪ちゃんとは会ったことだってないのになんで!?」
岡崎大志「俺らだって殺されるような覚えはねえ」
鎧坂蕗子「嵐・・・蓮介君は、凪に殺されたということなのね?」
梵嵐「・・・・・・」
鎧坂蕗子「・・・蓮介君が」
そう言って俯(うつむ)く蕗子。
皆が口を閉ざし、沈黙があたりを覆う。
岡崎大志「・・・信じられねえな」
岡崎大志「黒いのがあいつらだってのも、殺されるってのも、どっちも信じらんねえ」
鎧坂蕗子「大志君・・・」
蕗子がポケットから携帯を取り出して確認すると、時刻は21時35分を指していた。
鎧坂蕗子「もう5分・・・次の十時の鐘がなる前に何か対策を考えないと」
正岡きらり「・・・鐘」
正岡きらり「あ!」
正岡きらり「鐘の音が鳴って出るなら、そもそも鐘の音が鳴らないようにすればいいんじゃ」
梵嵐「・・・え?」
正岡きらり「そうです、十時になる前に柱時計を壊せばいいんですよ!!」
〇洋館の玄関ホール
玄関ホールにガシャンと大きな音が響く。
ホールの壁際に備えつけられた古めかしい柱時計は、時計盤が砕かれて見るも無残に破壊された。
鎧坂蕗子「次へ。急ぎましょう・・・!」
〇豪華な客間
カチッ・・・カチッ・・・
客間の柱時計は21時45分を示している。
大志と正岡は暖炉用の火かき棒を振りかぶって柱時計に叩きつけた。
バギッという耳障りな音を立てて時計盤がはじけ飛ぶと、柱時計はあっさりと動きを止めた。
正岡きらり「これで・・・大丈夫!」
岡崎大志「ああ」
正岡きらり「すみません鎧坂さん。 その、お家を壊すみたいになってしまって」
鎧坂蕗子「気になさらないでください。 無事に出ることが最優先ですから」
岡崎大志「鎧坂、ちょっといいか。この後だが──」
梵嵐「ちょっと」
正岡きらり「えっと・・・どうしたの?」
梵嵐「さっきの花瓶もそうだけど、意外と攻撃的なのね、あんた」
正岡きらり「あ、あー・・・」
正岡きらり「あはは・・・ストレス溜まったときとか、わーってなっちゃって・・・駄目だなって思ってるんですけどね・・・」
梵嵐「別に、駄目じゃないよ」
正岡きらり「え?」
梵嵐「あの時は、その・・・助けようとしてくれて、ありがとう」
正岡きらり「・・・嵐ちゃん、そんなお礼なんて」
梵嵐「今まで冷たくしてごめんなさい」
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