戯れの協奏曲(脚本)
〇テーブル席
美由紀「そうそう、前にアンタに解説してもらった 「ブラジル風バッハ」さ、 You▼ubeで聴いてみたんだけど」
わたし「・・・どうでしたか?」
美由紀「想像よりもさらに濃ゆかった・・・ でも独特の魅力があって、クセになるかも」
美由紀「それと、8分の11拍子のフーガ、 想像と違ってビックリした!」
わたし「9番の第2楽章ですね」
わたし「フーガって技巧重視で線が細いイメージが 持たれがちですけど、アレは違いますよね」
美由紀「スマートな知的イケメンを想像していたら ムッキムキの筋肉が出てきたって感じ!」
美由紀「でさー、ブラジル風バッハに興味出てきて 解説文なんかを調べて読んでいたら、」
美由紀「ブラジル風バッハのことを 「ブラジル版ブランデンブルク協奏曲」 って言う文がやたら目に付いたのよ」
美由紀「ブランデンブルク協奏曲って J.S.バッハの曲ってことは知ってるけど、 ちゃんと聞いたことがないのよね」
美由紀「その2つって、やっぱり似ているの?」
わたし「確かに、共通する点が幾つかありますね」
わたし「例えば、ブランデンブルク協奏曲は 第6番まであるのですが、 6曲が全く関連性が無かったり、」
美由紀「ブラジル風バッハも、 9曲あっても全く別物だったからね」
わたし「楽器編成も6曲全部違っていたり・・・」
美由紀「あっ、それも一緒だ!」
美由紀「で、肝心の曲調はどんな感じ? アンタの好みなの?」
わたし「一言で言えば、名曲の詰め合わせですね」
わたし「軽やかで親しみやすい曲揃いで、 もちろん私も大好きです」
わたし「そのためか、よくCM曲やBGMなどで 使われることも多いです」
わたし「現在だと、飲料メーカーの紅茶のCMで 第3番の第1楽章が使われていますし」
わたし「数年前には、コンタクトのCMで 第5番の第3楽章が使われていましたね」
美由紀「やっぱりメジャーな曲なんだ・・・」
わたし「はい、ポリフォニーの要素を持ちながら かなり聴きやすいものですから、 J.S.Bachの手始めとしてもオススメです」
美由紀「第6番まであるみたいだけど、 アンタはどれをオススメしているの?」
わたし「相手の音楽的趣味や音楽経験によりますね」
わたし「例えば、吹奏楽経験者のように 管楽器に馴染みのある人には、 1・2番を勧めてます」
わたし「どちらも、独奏楽器の構成のうち 管楽器の割合が多いですし」
わたし「特に第2番は、独奏楽器(トランペット・ リコーダー・オーボエ・ヴァイオリン)、 それぞれ聴かせ所のソロパートがあります」
わたし「あたかも吹奏楽の作品で、各パートに ソロの見せ場が設けられているがごとく」
美由紀「なるほど、だったら吹奏楽経験者も 馴染みがあるってモンだね」
美由紀「じゃあさ、アタシへのオススメは何番?」
わたし「間違いなく、第5番です」
わたし「ピアノを愛する美由紀さんには、 同じ鍵盤楽器であるチェンバロを 堪能してほしいですから」
チェンバロ
(独:cembalo、英:harpsichord、仏:clavecin)
ルネサンス・バロック期には主たる鍵盤楽器の地位を築いた。じきにピアノに取って代わられマイナー化。
わたし「何を隠そうこの第5番、 これまで合奏曲では脇役のチェンバロが 初めてメインキャラ昇格した作品なんです」
わたし「そして、J.S.Bachはその後 チェンバロ協奏曲を作曲するようになり」
わたし「そして、多くの作曲家がさらに発展させて ピアノ・コンチェルトを作曲していきます」
わたし「つまりは、この曲が、世界中で愛される ピアノ・コンチェルトの大元なんですよ」
美由紀「音楽史上、大事なヤツだー」
わたし「歴史的価値という面だけでなく、 音楽的にも本当に良い曲なんですよ」
わたし「私自身、ブランデンブルク協奏曲の中で 第5番が一番好きですし、」
わたし「何なら、高校時代からずっと、 この曲が J.S.Bach の一押し曲と 公言していましたから」
美由紀「家に帰ったら絶対に聴いてみるね」
美由紀「ちなみに、楽器編成はどんな感じなの?」
わたし「独奏楽器が、 ヴァイオリン・フルート・チェンバロ 合奏楽器が、 ヴァイオリン・ヴィオラ・ チェロ・ヴィオローネ です」
美由紀「独奏楽器、チェンバロだけじゃないんだ」
わたし「物語で言えば、メインキャラ3人の ストーリーって感じですね」
わたし「でも、チェンバロは美味しいトコを ちゃんとかっさらっていきますから」
美由紀「そりゃ楽しみだね!」
わたし「第1楽章の Allegro では、 tuttiと独奏楽器ソロが交互に現れ展開し、 後半はチェンバロの見事なカデンツァが」
わたし「そして、叙情的な第2楽章の Affettuoso 溌剌とした第3楽章の Allegro へ続きます」
美由紀「へー、聴くのが楽しみ」
わたし「ぜひ聴いてみてください」
美由紀「あっ、ちょっと気になったんだけど・・・」
わたし「何ですか?」
美由紀「アンタって、第5番が ”最推し” で、 高校時代から布教活動していたんだよね?」
わたし「まぁ、間違ってはないですね 言い方が気になりますが・・・」
美由紀「で、さっき「J.S.Bach の手始め」って 言っていたから、音楽初心者へも かなり布教したんだよね?」
わたし「確かに、J.S.Bach が気になる人には まず間違いなく勧めてました」
美由紀「その際に、初心者さんに 曲についてどういった説明してたの?」
美由紀「まさか、"tutti"とか"カデンツァ"とか 専門用語で説明なんかしてないよね?」
美由紀「アタシなら普通に通じるけど、 初心者にそう言っていたら、 かなり痛いクラオタ扱いされそうだから」
わたし「さすがに、専門用語は極力使わないよう 気を付けていましたよ」
美由紀「でもさ、素人さん相手だったら、 「協奏曲」の意味の説明からして かなり大変だったんじゃないの?」
わたし「そうなんですよ・・・」
わたし「説明が長くなりそうなときは、 楽器を擬人化して物語仕立てにしてました」
美由紀「・・・・・・へっ?」
わたし「ブランデンブルク協奏曲の第5番なら、 独奏楽器3人の学園恋愛モノとかに」
美由紀「・・・・・・はぁ?」
美由紀「ちなみに、どんな風に擬人化?」
わたし「ヴァイオリン :クラスの中心、元気っ子のヒロイン フルート :コミュ障気味の薄幸系美人ヒロイン」
わたし「チェンバロ :知的メガネの大人しい転校生男子 合奏楽器群 :クラスメイト、モブ」
わたし「そんなイメージで聴いてもらいました」
美由紀「それってアンタの趣味?」
わたし「いえ、音楽からイメージされるキャラです」
美由紀「で、どんなストーリーになるの?」
わたし「はい・・・」
わたし「第1楽章 Allegro 休み時間のたびに転校生男子に声をかける ヒロイン2人」
わたし「張り合いながら、どうにか 転校生男子と距離を詰めようとする2人」
わたし「そんな中、昼休みに転校生男子が イケメンムーブをかまし、」
わたし「その姿は、ヒロイン2人のみならず クラス全体が注目し、感動するのだった」
美由紀「何か、それっぽい話になってる・・・」
美由紀「tutti は授業中、ソロパートは休み時間 そう解釈したってコト?」
わたし「はい、tutti とソロの切り替えが、 まさに授業中と休み時間っぽいんですよ」
わたし「第2楽章 Affettuoso 夕陽の射し込む放課後の教室 ヒロイン2人はそれぞれ、転校生男子に 思いの丈を伝える」
わたし「転校生男子は、感情的な2人の言葉を 優しく受け止め、そっと2人に囁く」
美由紀「・・・って、コレって間違いなく アンタの好きなシチュエーションだよね!?」
わたし「・・・ま、まぁ、否定はしませんが」
わたし「第3楽章 Allegro イケメンムーブの影響で クラスの中心的存在となった転校生男子」
わたし「心中の想いを吐露できたことで スッキリ溌剌としたヒロイン2人」
わたし「そんな3人が中心となる明るい学園生活 さあ、恋の行方は如何に!?」
わたし「・・・という擬人化ストーリーです」
美由紀「・・・アンタってば」
美由紀「そんな発想、一体どこから出てくるの?」
わたし「でも、この手の擬人化は概ね好評でしたよ」
わたし「音楽に慣れていない人にとっては、 「取っ掛かり」が大事だったりしますから」
美由紀「まぁ確かに、標題音楽のほうが 絶対音楽より馴染みやすいというからね」
美由紀「だからって、絶対音楽に 無理して意味を持たせなくたって・・・」
<標題音楽>
その曲で「何か」を表現しようとする音楽
代表例としては、
ヴィヴァルディ『四季』
ムソルグスキー『展覧会の絵』 など
<絶対音楽>
標題音楽とは対照的に、音楽そのものと向き合い味わうべきとされる音楽。
美由紀「でもさー、アンタの高校のクラスって、 過激な変態揃いだったよね・・・」
美由紀「ホモフォニーで興奮する阿呆とか・・・」
わたし「"阿呆" って・・・」
美由紀「そんな連中に布教するとき、 さっきの擬人化みたいな 可愛い恋愛模様でホントに納得されたの?」
美由紀「アンタのことだから、 ドギツイ擬人化をしたんじゃないの?」
わたし「・・・はい、実は」
わたし「登場人物、みんな男性にしてました」
美由紀「はぁ、やっぱり・・・」
わたし「そして、チェンバロは、 「メガネ受け(総受け)」に・・・」
美由紀「音楽を汚すなー!」
バッハはピアノコンチェルトの大元を作ったということで凄い偉大だったんですね!
協奏曲はcmでも、使われているんだから自分もどこかで聞いたことあるんだろうなぁ🧐
音楽初心者からすれば、擬人化してストーリー仕立てで説明してもらった方がイメージしやすいですねw
内容がドロドロした青春モノじゃなくて良かったですw
ブランデンブルク協奏曲5番ですね。
帰ってたら聴いてみます🙆
ブラ…デ…舌噛みそう…!
音楽を擬人化といえば、ミッキーマウスの魔法使いの弟子を思い出しました。
学園モノにするのは、分かりやすいし取っつきやすいですね。
って、BL物語に変換されると…🤣🤣🤣