キミトココロの物語~バーチャルiTuberの日常~

泡沫彷徨

第07話 【憧れの人】(脚本)

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泡沫彷徨

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〇可愛い部屋
希美都ココロ「私にはね。 憧れのバーチャルiTuberがいるんだ」
  正樹を膝枕したまま、
  ココロは語り始める。
希美都ココロ「彼女の名前はIris」
紺野正樹「・・・!」
希美都ココロ「正樹くんなら・・・知ってる、よね」
紺野正樹「・・・うん。世界最初の、 バーチャルiTuberだからね」

〇黒
  突如として現れ、
  「バーチャルの世界から来た」
  と語って、
  動画を投稿する活動をしていた少女
  ──アイリス。
  だが、あの頃は、彼女を受け入れるだけの時代が整っていなかった。

〇可愛い部屋
紺野正樹「まだ、バーチャルiTuberという 概念すらなかったから・・・」
希美都ココロ「そう。彼女には、他に似たような仲間も いなくて、孤独で、それでも楽しい動画を上げようとしていた」
紺野正樹「・・・そうだね」
  少女の笑顔が、正樹の脳裏に
  浮かび上がっては消えていく。
希美都ココロ「でも世界は、楽しいだけが詰まっている 宝石箱じゃなかった・・・」
紺野正樹(・・・そうだ。どこまでも純真だった 彼女を迎えたのは、世界の悪意だった)

〇モヤモヤ
希美都ココロ「見慣れない、 変わったものをからかいたい・・・」
希美都ココロ「それどころか、否定して貶めたい、 そんな人々が集まって・・・」
希美都ココロ「彼女の投稿には、心ないコメントが 多く寄せられるようになった」
希美都ココロ「根も葉もない噂が独り歩きして、 彼女を攻撃した」
希美都ココロ「そういった声に塗り潰されるみたいに、 優しい視聴者の数は減る一方だった」
紺野正樹(配信を荒らす人間が増えて、それを 見たくない人たちは去っていった・・・)
希美都ココロ「彼女が一生懸命になればなるほど、 それを冷たく笑うみたいに・・・」
希美都ココロ「中の人は誰だと、 そればかり特定しようとしたり、」
希美都ココロ「その・・・卑猥な言葉を言わせようと したり、実際に浴びせたり」
紺野正樹「ああ・・・」
  つい、片手を伸ばして顔を覆った。
  もう、あんな光景は見たくないと思った。
  人の悪意と、夢を追うことの残酷さ。
紺野正樹「知ってる。あの頃、僕は・・・ 彼女を追いかけていたから」
  正樹自身が絵を描くことについて伸び悩んでいた気持ちと重なって・・・まるで自分のことのように心を痛めた日々だった。
紺野正樹「純粋に、すごいと思ったんだ。 新しいことをしていると思った」
紺野正樹「まっすぐで、熱を持っていて・・・。 でも、彼女は」
希美都ココロ「やがて、突然アカウントがBAN・・・ はく奪されるという結末とともに・・・ あの人は活動を停止、その姿を消した」
  そうだ。
  彼女は、どこにもいなくなってしまった。
  すべてのSNSアカウントが凍結され、
  行方を知る者は誰もいない。

〇可愛い部屋
希美都ココロ「・・・彼女はね。私よりも先に、 この世界に誕生していた、AIだったんだ」
紺野正樹「え?」
  耳を疑い、ついに正樹は上体を起こした。
  ココロは目を伏せたまま、
  ふっと嘆息する。
希美都ココロ「でも、アイリスは消えてしまった・・・」
紺野正樹「消えたって・・・」
  そこで、ハッとする。
紺野正樹「ココロちゃん、前に言ってたよね。 バーチャル世界の管理者が定めた ルールについて・・・」
希美都ココロ「・・・・・・」
紺野正樹「現実からの観測数が減ったら、 不要なAIと判定されて、 消されちゃうっていう・・・」
紺野正樹「そして・・・アイリスちゃんは、 AIだった。それじゃあ、まさか・・・」
希美都ココロ「うん。彼女はただ、引退したんじゃない。消えちゃったんだ」
希美都ココロ「あの人はもう、この世界の、 どこにもいない」
  強い衝撃に打ちひしがれて、正樹は姿勢を正しているのが、やっとだった。
  活動をやめて、それでも今は別の道で
  元気にやっているかもしれない。
  そんな期待に、心のどこかで、
  すがっていたからだった。
希美都ココロ「正樹くん」
  ココロが呼びかけてくる。
  その声は、どこか優しく、哀しげで、
  けれど力強さも備えていた。
希美都ココロ「前に、私には叶えたい夢があると 言ったよね」
希美都ココロ「人気配信者になれば叶えることのできる、夢」
紺野正樹「・・・言ってたね」
  張りついた喉をこじ開けるようにして、
  返事をする。
紺野正樹「その夢が叶う場所まで辿り着きたいから、もっともっと大きくならなくちゃって」
希美都ココロ「たしかに、私たちAIは、現実からの 観測数が減ったら消されてしまう」
希美都ココロ「それじゃあ、現実からの観測数が 増えた場合は、どうなると思う?」
紺野正樹「増えた場合・・・?」
  話の向かう先が見えず、混乱しつつも、
  手探りで答える。
紺野正樹「観測数が少ないと不要なAIだと 思われるわけだから・・・多い場合は、 必要なAIだと判断される、とか?」
希美都ココロ「正解」
  ココロがわずかに笑みを浮かべる。
  そこに、何か希望のようなものを見出し、
  正樹は心臓が高鳴り始めるのを感じた。
希美都ココロ「そうして必要と判断されたAIは、 バーチャル世界において与えられる 権限が増えるんだ」
紺野正樹「権限って、どんな?」
希美都ココロ「聞いて驚くなかれ!」
  ココロが身を乗り出してくる。
  そこには、先ほどまでの悲壮感を
  拭い去って、未来を見つめる瞳がある。

〇幻想2
希美都ココロ「管理者に要望を出すことが できるようになる」
希美都ココロ「神様に直接お願いごとをできる権利、 みたいなものだよ」

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