キミトココロの物語~バーチャルiTuberの日常~

泡沫彷徨

第05話 【ホラゲ実況に挑戦】(脚本)

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〇古い洋館
希美都ココロ「む、無理! これはやっぱりダメかもしれない!!」
希美都ココロ「コロリン、今からでも遅くないよ! 引き返そう!?」
  真っ暗な夜の森にたたずむ、
  不気味な洋館。
  これがVRホラーゲームと分かってはいても、その臨場感は現実と区別がつかない。
希美都ココロ「うええぇ、ホラー無理ぃ。 ホラー苦手だって言ったよね? 言ったよねぇ!?」
希美都ココロ「今回の動画、 もうコロリンだけで良くない?」
  今回はホラゲ実況にコンビで挑戦という企画で、正樹もいつものぬいぐるみ―通称コロリンの姿となって、収録に臨んでいた。
紺野正樹「ダメだよ! 視聴者のみんなは、頑張る ココロちゃんの姿が見たいんだから!」
希美都ココロ「う~。鬼だぁ、ひどいんだぁ・・・。 うぅ、それじゃ、あの・・・とりあえず、この洋館に入ればいいのかな」
  渋々、洋館の正面に立ったココロと
  一緒に、玄関の錆びた鉄の扉を慎重に
  開いていく。覗くと、中は真っ暗だった。
紺野正樹「ココロちゃん、 アイテム欄に懐中電灯があるみたいだよ」
  宙にウィンドウを開き、所持品の選択画面から【懐中電灯】という表記にタッチすると、手の内に心許ない光源が出現した。
希美都ココロ「全然、奥まで明かりが届かないよぉ・・・」
  ゆっくり、館の中へと足を踏み入れる。

〇洋館の玄関ホール
  中に入ると、背後で大きな音を立て、
  玄関の重い扉が勝手に閉まった。
希美都ココロ「あにゃあああああああ!!」
  絶叫してその場に倒れ伏すココロ。床に
  しがみつくようにして丸くなっている。
希美都ココロ「もう無理! 二度と立ち上がれない! 一歩も動けない!!」
紺野正樹「まだ中に入っただけだよ!」
希美都ココロ「これ以上に怖いことが待っているなんて 信じられない! 耐えられない!」
紺野正樹「ほ、ほら、どこから探索する? 上への階段もあるみたいだし、 廊下の向こうに扉もあるよ!」
紺野正樹「あ、手分けしようか?」
希美都ココロ「なんて恐ろしいことを言うんだコロリン! こんなところでバラバラになったりしたら、一人ずつ殺されちゃうよ!?」
紺野正樹「あー、うん。今のところは編集でピー音を入れておこうね」
希美都ココロ「えっと・・・まずは一階の安全を 確保して、防衛拠点にしたい・・・」
紺野正樹「考え方がホラゲっぽくないけど、 先に一階を探索するのは賛成」
  廊下を、少しずつ先へ進んでいく。
  怯えながらついてくるココロを振り返り、
  正樹はぬいぐるみの姿で飛び跳ねた。
紺野正樹「大丈夫、何かあったら ココロちゃんのことは僕が守るよ!」
希美都ココロ「・・・えへへ、ありがとうねぇ」
  恐怖のあまり、おばあちゃんのような
  姿勢でジリジリと歩くココロ。
  ようやく扉に辿り着いて恐る恐るノブを
  回すと・・・

〇洋館の階段
希美都ココロ「あああ開いた! 開いちゃった!」
紺野正樹「・・・中は階段になってるね。 下に続いてるみたいだ。 地下室があったのか」
  階下からは時折、何かの呻き声の
  ようなものが漏れ聞こえてきていた。
希美都ココロ「あひいぃぃ!」
紺野正樹「むがっ」
  ココロがぬいぐるみ姿の正樹を抱え上げて膝をつく。
  その胸元に埋まってしまい、
  正樹は恐怖を感じるどころではない。
希美都ココロ「絶対ヤバイ! コロリン、この先は絶対 ヤバイよ! ビンビンにヤバさ感じる!」
紺野正樹「おおお落ち着いてココロちゃん! むぎゅっあああ当たってる、当たってるから!」
希美都ココロ「当た・・・? あ! え、えっと・・・あうぅ」
  顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに、
  ココロが正樹の身体を手放す。
希美都ココロ「ああぁ・・・あの・・・その、ごめんね。だ、だって!」
希美都ココロ「こんなの、何かにギュッとしてないと 耐えられないよぉ。ね、もう帰ろう?」
紺野正樹「よし、下りてみよう」
希美都ココロ「どーして! どーして!」
  ヤダヤダしか言えなくなってしまった
  ココロをなだめつつ、
  一段ずつ慎重に下りていく。

〇洋館の廊下
紺野正樹「思ったより広いな・・・廊下は長いし、 扉もいっぱいある」
希美都ココロ「絶対、出るよ・・・来るよ来るよ・・・」
紺野正樹「コ、ココロちゃん、そんなに しがみつかれると、また、その・・・」
希美都ココロ「そんな! 見捨てる気なのぉ!?」
紺野正樹「違うよ! じゃあ、ほら、手を繋ごうよ。 そしたら、少しは平気じゃない?」
希美都ココロ「うぬ・・・そうすりゅ・・・」
  ごにょごにょと言いながら、
  ココロが正樹の手を握った。
  今の正樹はぬいぐるみ姿なので、
  片手でココロの手にぶら下がっている
  ような形になってしまった。
紺野正樹「手前の部屋から探索しよっか」
希美都ココロ「うん・・・」
  一番近くの扉に近づこうとしたココロが、ふと立ち止まり、固まる。
  その手が凄まじい速度でガクガクと
  震えていた。
紺野正樹「どうしたの? ココロちゃん・・・」
  彼女の視線を追った先に、青白い光に
  包まれた、長髪の女性と思しき影が、
  ゆらゆらと浮いていた。
  てっきり、ココロが甲高い悲鳴を上げて
  逃げ出すものと思っていた。
  けれど彼女は顔面蒼白となり、
  浮かぶ影を見つめている。
希美都ココロ「ア、アイリス・・・?」
紺野正樹「えっ?」
  ココロの口からこぼれた言葉に、
  心臓がドクンと跳ねた。

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