第04話 【彼女の秘密】(脚本)
〇黒
小鳥遊ことり「今日は、視聴者のみんなが描いてくれた、 非常にアダルティなファンアートたちを 紹介していくぞオラァー!」
小鳥遊(たかなし)ことり。
バーチャルiTuber、自称17歳女性。
中の人はバ美肉オジサン。
その言動と清楚な見た目の
ギャップが売り・・・。
〇可愛い部屋
コラボ動画を出すことが決定した
小鳥遊ことりの動画を眺めながら、
そのプロフィールを改めて検索してみる。
紺野正樹「バーチャル美少女受肉・・・要するに、 中の人が本当は男性だと公言しつつ、 美少女のアバターで活動してる人だね」
紺野正樹「ある意味、ココロちゃんと 真逆の存在というか・・・」
希美都ココロ「前から大ファンで、コラボを受けてくれた時は嬉しかったよぉ~」
紺野正樹「意外だなぁ」
希美都ココロ「そう? 炭酸水で酔っ払っちゃう ところとか、ほんと可愛いよねぇ!」
紺野正樹「中身オジサンだし、多分あれ、 実際はビールだと思うよ。 視聴者も暗黙の了解的な・・・」
希美都ココロ「すっごく綺麗な見た目なのに、どんどん センシティブな発言しちゃうのも、 たまらなく可愛いよね~」
紺野正樹「ココロちゃんの可愛いと思うポイントが、ちょっと分からない・・・」
希美都ココロ「えー。ぷく~」
紺野正樹「まとめサイトにも書いてあるけど、この人、サムネ作りや編集が得意な動画勢、 なんだよね。今回のコラボも動画の予定?」
希美都ココロ「うん。生配信になると緊張しちゃって、 トークも威勢がなくなるし、 ゲームでも実力がフルに出せないんだって」
紺野正樹「・・・ちょっと可愛いな」
希美都ココロ「でしょー!」
紺野正樹「とりあえず企画内容の相談もしたいし、 通話のアポ取ってみようかな」
希美都ココロ「あ、こないだやりとりしたときに、 連絡OKの日を聞いといたんだ。 たしか今日だったと思う」
紺野正樹「あ、そうなんだ。 じゃあ、このあと連絡してみるよ」
希美都ココロ「うん、お願いー!」
〇一人部屋
紺野正樹「・・・通話かけてもいいんだよな? コレ」
音声を繋いでの連絡をしても大丈夫か確認メッセージを送ったところ、小鳥遊ことりからの返信は一言のみであった。
小鳥遊ことり「『うい』」
紺野正樹「フランクというか、なんというか・・・。 とりあえず、かけてみよう。 うぅ、緊張するな・・・」
パソコンで開いたコミュニケーション
ツールの通話ボタンを、思い切って押す。
何コールか待つと、
相手と繋がった音がした。
紺野正樹「もしもし。ココロのサポートをしている 紺野と申しま──」
ふと画面を見て、言葉を失う。
緊張していたせいか、間違えて
ビデオ通話でかけてしまったらしい。
しかも向こうが出てくれたものだから、相手のカメラの映像が映ってしまっている。
???「んあ~。ちづる? ありぇ、どうしたのん、こんな時間にぃ?」
画面には、テーブルに突っ伏した
部屋着姿の知らない女性が映っていた。
服がはだけていて、
目のやり場に困ってしまう。
画面の端に、お酒の空き缶が大量に
転がっているのが見えた。
???「ちづる聞いてぇ・・・ また男に振られたんら・・・ ちっきしょ・・・男なんてなぁ・・・」
紺野正樹(誰だ、この女の人・・・? ことりさんの恋人・・・ ってわけじゃ、なさそうだし・・・)
紺野正樹「あ、あの、こちら、小鳥遊ことりさんの連絡先で間違いなかったでしょうか・・・?」
???「こんちゃー! 小鳥遊ことり参上ー!」
紺野正樹「う、うわ、びっくりした! ・・・あれ? でも、この声・・・え?」
???「小鳥遊ことりはいいよね・・・ 変に女の子ぶる必要がないもん」
???「心の中のオジサンを解放できるもん。 自分をさらけ出せるもん」
紺野正樹「まさか・・・」
???「だから、あたし・・・小鳥遊ことり やってるときの自分、好きなんだぁ・・・」
紺野正樹「ご、ご本人!?」
紺野正樹「あああ、あの、日を改めます!」
そっ閉じした。確実に知ってはならない
事実を知ってしまった。
小鳥遊ことりの正体は実は女性で・・・。
中の人がオジサンだというムーブまで
含めて、ロールプレイだったのか。
紺野正樹「打ち合わせ、どうしよう・・・」
〇可愛い部屋
希美都ココロ「ほんっとゴメン! ゴメンなさい! ことりさんに連絡するって言ってた日付、 完全に勘違いしてた!」
紺野正樹「だ、大丈夫だよ。 今朝、改めて打ち合わせしたし」
紺野正樹「今日は通話が難しいって話だったから、 メッセージでだけど」
向こうも、通話のときのことについては、いっさい触れてこなかった。
そもそも、何も覚えていないのかも
しれないが・・・。
希美都ココロ「何かトラブルになったりしてないよね?」
紺野正樹「う、うん。大丈夫だよ。あはは・・・」
希美都ココロ「・・・?」
紺野正樹「それで、企画内容も決まったし、 こちらのスケジュールの空きを伝えたら、」
紺野正樹「じゃあ明日にでも撮っちゃう? って話になったんだ」
希美都ココロ「おおー! 迅速な対応!」
紺野正樹「うん。なので、明日の15時から、 よろしくお願いします」
希美都ココロ「了解だよ~!」
〇テレビスタジオ
小鳥遊ことり「こんちゃー! 本日はよろしく! 小鳥遊ことり参上ー!」
希美都ココロ「おお! おおおおおお! 本物だぁ!」
小鳥遊ことり「ココロちゃんも本物じゃー!」
ココロのバーチャル空間にログインして
きた小鳥遊ことりと、顔合わせをする。
希美都ココロ「あ! ちょっとカメラ位置の調整してくる! えっと、正樹くんのほうから簡単に、 収録の流れを確認しててくれるかな?」
紺野正樹「あ、うん。わかった」
ココロが離れていく。
すると、凄まじい速度で小鳥遊ことりが、
ぐいっと顔を近づけてきた。
紺野正樹「う、うわっ! ビックリした!」
小鳥遊ことり「紺野正樹さん?」
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