カルキノス

安藤・R・ゲイツ

第6話 『午後十時の鐘の音』(脚本)

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〇洋館の玄関ホール
???「あはは」
梵嵐「いやぁぁぁーーーーー!!」
黒いなにか「ふふっ」
岡崎大志「・・・挟まれたぞ!」
鎧坂蕗子「皆、こっちへ!」
  蕗子が二階へと続く階段に向かって走る。
  階段の裏側にまわると、そこには戸棚が死角となって隠れていた扉があった。

〇洋館の廊下
  扉の先には明かりがなく、闇に沈んで先の見えないどこか寒々しい廊下が続いていた。
  全員が廊下へ駆け込んだのを確認し、蕗子は背中で扉を閉める。
鎧坂蕗子「はぁっ・・・はぁっ・・・」
  蕗子が呼吸を整えていると、嵐の背後でまた別の扉が静かに開いた。
  灯りの落ちた部屋をじっと見つめると、暗がりに何かが微かに蠢(うごめ)く。
鎧坂蕗子「嵐、後ろ!!」
梵嵐「・・・え?」
黒いなにか「ふふっ」
梵嵐「あ・・・あ・・・」
  ガシャリと音を立てて、部屋から踏み出した黒いなにかが嵐の右手を掴んだ。
梵嵐「!」
  黒いなにかは、そのまま嵐を部屋に引きずり込もうと引き寄せる。
岡崎大志「くそッ!」
鎧坂蕗子「嵐!」
  蕗子と大志は嵐の元へ駆けつけると、彼女の腰に手を回し全力で踏ん張った。
黒いなにか「ふふふっ」
  しかし黒いなにかの力は凄まじく、三人まとめて引きずり込もうとする。
岡崎大志「・・・マジかよ!」
鎧坂蕗子「うぅっ・・・!」
梵嵐「や・・・やだ・・・助けてぇぇーーー!!」
  嵐は絶叫したあと──ふっと困惑した表情に変わって呟いた。
梵嵐「え・・・?」
  嵐が黒いなにかを見つめると、黒いなにかもまた嵐を見つめ返した。
正岡きらり「みんな伏せてぇぇぇーー!」
  その瞬間、正岡が花瓶を大きく振りかぶって黒いなにかに殴りかかった。
  遠心力で勢いのついた花瓶は、黒いなにかの肩口に直撃してガシャンと砕け散ちる。
  しかし黒いなにかはびくともしていない。
正岡きらり「う、あ・・・」
黒いなにか「・・・・・・」
  正岡は手にしていた花瓶の残骸を落とす。
  床に落ちた花瓶の破片は、その一部が黒い結晶と化していた。
黒いなにか「ふふっ──ふふふっ!」
  腰を抜かして床にへたり込んだ正岡は、声も上げられないほど震えている。
鎧坂蕗子「正岡さん、逃げて!!」
  黒いなにかが正岡の方へと手を伸ばした、その直後――
  カチッ
  柱時計の長針が12の文字を過ぎる音と同時に鐘が鳴りやんだ。
  鐘の音が鳴りやむとともに、黒いなにかはピタリと動きを止めた。
黒いなにか「・・・・・・」
  身を守るように身体を縮こまらせていた正岡が、黒いなにかを恐る恐る見上げる。
正岡きらり「・・・?」
  その瞬間、バキッと音をたてて黒いなにかの身体が崩れていった。
  一同の驚愕の眼差しの中、次第に崩れ落ち、細かく砕け散っていく黒いなにかの体。
  やがてそれは、闇へ溶けるように跡形もなく消え去った。
正岡きらり「・・・消え、た」
鎧坂蕗子「嵐!」
  蕗子が嵐に駆け寄り抱きしめる。
鎧坂蕗子「・・・よかった」
梵嵐「・・・・・・」
  大志は撥ねるように立ち上がると、周囲の扉を開けて各部屋の中を手早く確認する。
岡崎大志「・・・大丈夫だ。どこにもいねえ」
正岡きらり「・・・た、助かったの?」
正岡きらり「けど、なんで急に崩れて・・・」
鎧坂蕗子「・・・鐘、鳴り止んでる」
岡崎大志「鐘・・・本当だ」
岡崎大志「前と同じじゃねえか? 観測室の時と」
岡崎大志「あん時も、鐘が鳴り止んだら消えたよな」
鎧坂蕗子「鐘の鳴る時が、あれの出現タイミングってこと?」
正岡きらり「じゃあ次に出てくるのは・・・」

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