第二話 連続幼児失踪事件(脚本)
〇お嬢様学校
私立大安学園初等部──
〇教室
給食時間──
天羽春乃「このカレースープおいしいね♪」
紗弥(さや)「うん。でもミネストローネだよ、春乃ちゃん」
天羽春乃「この卵焼きもおいしい~♪」
美佳(みか)「オムレツよ、春乃」
天羽春乃「あれ?」
クライメイトの岩崎弥生(いわさきやよい)は、懸命にスマホを操作している。
その表情には、悲壮感さえ漂っている。
天羽春乃「岩崎さん、給食も食べずに一人でスマホ見てる。ランドセルから出すの禁止だよね」
天羽春乃「いつもすごく真面目で、勉強もできるのに」
天羽春乃「よっぽど面白い動画なのかな?」
美佳(みか)「何言ってんの。嵐田先生から説明があったでしょ」
紗弥(さや)「春乃ちゃん、また別のこと考えてたの?」
天羽春乃「え? なんのこと?」
紗弥(さや)「〈連続幼児失踪事件〉のことは聞いたことある?」
天羽春乃「え? 幼稚園の子が次々と走るの!?」
美佳(みか)「疾走でなく失踪! ニュースでもよくやってるでしょう」
天羽春乃「うちって家族みんな、真面目な番組とか見ないから・・・」
紗弥(さや)「事件のことを簡単に説明するとね──」
〇街の全景
マスコミは事件を〝現代の神隠し〟と形容し、センセーショナルに報道している。
関東地方を中心に、ここ三年で14人もの幼児(3~8歳の男女)が、不可解な失踪を遂げていた。
いずれも保護者が少し目を離した隙に煙のようにいなくなり、目撃者もゼロというのが共通点だ。
身代金の要求や犯行声明は出されておらず、警察は依然として手がかりはつかめていない。
〇大きいデパート
七日前にも、大安町のデパート内にて──
岩崎千尋ちゃん(5)が、同様のケースで行方がわからなくなっている。
〇教室
紗弥(さや)「──ということなの」
天羽春乃「・・・この子たちはどこへ行ったの?」
美佳(みか)「そんなの、あたしたちにわかるわけないでしょう。警察でも見つけられないのに」
紗弥(さや)「デパートでいなくなった千尋ちゃんていう子が、岩崎さんの妹なの」
天羽春乃「えっ!? そうなの!?」
紗弥(さや)「嵐田先生の許可をもらって、岩崎さんはネット上に妹さんの新しい情報が寄せられてないか、ああして調べてるのよ」
天羽春乃「・・・・・・」
〇通学路
天羽春乃「まさか、あたしたちの大安町で、こんなに深刻な〝困り事〟が起きてしまうなんて・・・」
天羽春乃「これまで魔法少女ハルノが守ってきた平和とは、はっきりいって次元がちがう」
天羽春乃「だけどクラスメイトの笑顔を取りもどすためなら、やってやれないことはない!!」
天羽春乃「いなくなった千尋ちゃんは、あたしが必ず見つけ出す!!」
〇可愛い部屋
天羽春乃「え~なんでダメなの?」
ラック「社会的な大事件だからな。警察の捜査も難航してる」
ラック「とうてい、春乃の手には負えんぞ」
天羽春乃「でもクラスメイトの笑顔のために、そこをなんとかするのが魔法少女!!」
天羽春乃「ちがう!? ラックちゃん!!」
天羽春乃「大きな壁があってもあきらめるなって、嵐田先生も言ってたし」
天羽春乃「チャレンジ精神が大事だと思う!!」
天羽春乃「何度失敗しても、エジソンはあきらめずに白熱電球の・・・」
ラック「わかったわかった。ダメもとでやってみよう」
天羽春乃「やった! ありがとう、ラックちゃん!」
天羽春乃「それで、どうやって千尋ちゃんたちをさがしたらいいの?」
〇おしゃれなリビングダイニング
その日の夕食時──
天羽春乃「ねえ、お父さん、お母さん。モグモグ・・・」
天羽春樹「なんだい、春乃。パクパク・・・」
天羽春乃「あれって、ウチにないかな?」
天羽春乃「あれ? 何ていう名前だっけ?」
天羽桜子「あら、クイズね。面白そう、フフッ・・・」
天羽春乃「ほら、キレイな透明の玉で・・・」
天羽桜子「白玉? コンニャク玉?」
天羽春樹「父さんは、半熟煮卵が好きだなあ」
天羽春乃「食べ物じゃないよ。 え~と、石みたいにかたくて大きいの」
天羽桜子「わかった、ボーリングの玉が正解でしょ」
天羽春樹「父さんは、ビリヤードの玉突きのほうが好きだなあ」
天羽春乃「そういう遊びに使う玉じゃなくて・・・」
天羽春乃「そうだ、水晶玉だ! 思い出した♪」
天羽桜子「あら、答え言っちゃった」
天羽春樹「じゃあ、次は父さんが問題を出すよ。ポケットがあって長い牙もあって──」
〇可愛い部屋
夕食後──
天羽春乃「むむむむむ・・・!」
天羽春乃「むむむむむむむぅ・・・!!」
天羽春乃「パーリル マクテク ポーナパルト♡ 水晶玉よ、見せて!」
春乃は、〈クリスタルゲイジング〉と呼ばれる透視魔法をおこなっていた。
ただし天羽家に水晶玉はなかったため、春乃所有の大き目のビー玉でまにあわせているが・・・
天羽春乃「行方不明になった千尋ちゃんは、今どこにいるの?」
天羽春乃「なんにも映らないよ、ラックちゃん」
ラック「捜索の範囲が広すぎる。 やっぱり、まだ春乃には早すぎたんだ」
天羽春乃「魔法って、どうにかしてパパッと上手にならないの?」
ラック「そんな方法があれば世話ない」
ラック「何度も言ってるように、魔法がうまくなるにはコツコツと経験を積むしかないんだ」
天羽春乃「シューン!!」
ラック「しょうがない。ビー・・・水晶玉に清水をかけて清めてみろ」
ラック「魔法アイテムのほうの精度を上げるんだ」
天羽春乃「わかった、やってみるね。どぼどほどぼ~」
天羽春乃「あ、まちがえて、あたしのオレンジジュースかけちゃった」
天羽春乃「まあ、いいか。果汁100パーセントだし」
天羽春乃「あ、なんか見えてきた!」
ラック「おい、ウソだろ!?」
天羽春乃「ほんとだよ。玉ちゃんも甘いものが好きなんだね♪」
ラック「それで、なにが見えるんだ?」
〇原っぱ
天羽春乃「山と・・・そのそばに、すごく大きな森があるよ」
〇可愛い部屋
天羽春乃「これたぶん、あそこだ! テレビで見たことある!」
天羽春乃「電灯をパチッと」
〇可愛い部屋
天羽春乃「さっそく岩崎さんに教えてあげよう」
天羽春乃「あ、電話番号知らないや」
天羽春乃「そういえば、学校でもあんまり話したことなかったっけ」
春乃は他のクラスメイトに電話して、岩崎弥生の電話番号を教えてもらう
天羽春乃「もしもし岩崎さん? あたし春乃」
天羽春乃「またの名を魔法少女ハルノ!」
天羽春乃「ううん、真面目な話だよ。千尋ちゃんの居るところが魔法の占いでわかったの」
天羽春乃「うん。たぶんだけど、ゼッタイまちがいないと思う」
天羽春乃「明日学校休みだから、いっしょにさがしに行こうよ」
天羽春乃「森の中だから、動きやすい服装でね」
ラック(消えた幼児は、森の中か・・・)
ラック(いよいよ、猟奇的な匂いがしてきたな)
ラック(春乃には見せられないような、凄惨な光景が待ってるかもしれん)
天羽春乃「それじゃあ、また明日ね」
天羽春乃「ようし、あたしも明日の準備しよっと♪」
天羽春乃「お菓子は何を持っていこうかな~♡」
ラック「ピクニックとまちがえるな!」
〇黒
つづく♪
次回予告
第三話 不気味な深い森
またみてね!
今後の展開から目が離せませんね
春乃ちゃん、可愛いですね(笑)。森の中に子供たちは本当にいるのか?今後の展開が楽しみです。
水晶の代わりにビー玉。
しかもオレンジジュースをぶっかけるとは……。
本当にビー玉から見えた森の中に手がかりがあるのでしょうか。
続き待ってます。