第一話 生まれたって、怪異。(脚本)
〇血しぶき
はやく立つのだ
一人前の怪異として生きていくために
カイイ「偉そうだな、アンタ」
いい返事だ
最初の標的が決まったよ
カイイ「何者だ?」
堂島泉
名前だけは覚えておけ
この標的を恐怖に陥れろ
そして君は本当の怪異として誕生する
見せつけるのだ、心から震える恐怖を
ハッピーバースデー
いってらっしゃい
〇女の子の一人部屋
堂島泉「この部屋にはパティシエがいるって事?」
阿部レイカ「違う! この部屋でパティシエが自殺したの」
堂島泉「そして夜な夜なメレンゲを立てる音が」
阿部レイカ「しない! 話聞いてた?」
堂島泉「パティシエの十八番スイーツを考えてた」
阿部レイカ「とにかく パティシエの霊を追い出してほしいの」
堂島泉「わかった、任せて」
阿部レイカ「じゃあ、お約束の」
堂島泉「中目白のキャットニー・チュールの 限定マカロンセット!」
阿部レイカ「あたり! さすが、泉・・・」
阿部レイカ「キャッ!」
堂島泉「どしたの? びっくりマカロン?」
「ゴキブリ!」
堂島泉「え?どこ?どこ?」
堂島泉「待てー!」
阿部レイカ「こっちにきた!」
堂島泉「ふう。仕留めたわ」
堂島泉「あ、動いた」
堂島泉「つまんで、ポイッと レイカ!大丈夫だよ!」
「手、洗ってきて!」
堂島泉「怖がりすぎだって、レイカ 蚊みたいなものよ」
「違う!」
阿部レイカ「私の大事な部屋に霊とかゴキブリとか もう、勘弁して欲しい・・・」
「あ、レイカ!」
阿部レイカ「なに?」
「洗面所に5センチくらいの 小さいおじさんいるけど見る?」
阿部レイカ「見ない! ていうか、いない! 頼むから、いないでほしい!」
堂島泉「さ、マカロン食べよ」
阿部レイカ「・・・凄い精神力」
堂島泉「ねえ レイカはどんな怪奇現象にあったの?」
〇女の子の一人部屋
阿部レイカ「息苦しくなって目が醒めたのね そしたら体が動かないの」
阿部レイカ「苦しくて天井しか見れなかった そしたら」
阿部レイカ「何か切れたような音」
阿部レイカ「私は悲鳴も上げられなかった」
阿部レイカ「突然、天井の隙間から 真っ赤な血が垂れてきたの」
阿部レイカ「少しずつ少しずつ から、一気に滝のように」
〇女の子の一人部屋
堂島泉「見て!このマカロン凄い真っ赤! ブラッドオレンジフレーバーだって!」
阿部レイカ「聞いてた?」
堂島泉「ブラッドオレンジって、 果汁が人の血みたいに真紅に染まって いるからそういう名前なんだって」
阿部レイカ「今、その話よくできるね」
堂島泉「天井からブラッドオレンジの果汁が 流れてきたんじゃない?」
阿部レイカ「なんで私の部屋の上の階から 果汁がタラタラ垂れてくるのよ!」
堂島泉「じゃあザクロかな。 割れた頭みたいだし 血の味がする気がするよね」
堂島泉「実は上の階で沢山の人間の頭部が パックリと・・・」
阿部レイカ「ごめん、私帰っていい・・・」
堂島泉「うん、また明日ね」
〇血しぶき
カイイ「この女、恐怖という感情がないのか?」
どうやら、恐怖という感情が
抜け落ちているのかもしれない
カイイ「この女に恐怖を感じさせろと」
そうだ
カイイ「無理じゃね?」
そうか?
カイイ「まだ、生まれたてだぜ、俺」
そうだ
カイイ「まだ俺は怪異として どんな姿になるかも決まっていない」
そうだ
カイイ「最初はチュートリアルから はじめるべきだろ 中ボスクラスだろ、これ」
そうか?
カイイ「・・・あのさ」
カイイ「返事するの面倒になってね?」
そうか?
カイイ「手抜きしてるな」
そうだ
いや、間違えた
そうか?
カイイ「おい!」
・・・
カイイ「雷でごまかすな!」
カイイ「なんの正解だ!」
カイイ「幕を降ろすな!」
〇女の子の一人部屋
堂島泉「レイカだ」
今、駅につきました。
あとはよろしくね
堂島泉「はーい。 さ、お風呂でも入ろ」
「あ、まだいるの? 小さいおじさん」
「え? 飛べるんだ!」
三十分後
パティシエ「うう・・・」
堂島泉「あーもう」
堂島泉「これじゃ ちっともお風呂入った気がしない」
パティシエ「う・・・」
堂島泉「・・・」
パティシエ「ああ・・・あ・・・」
堂島泉「あなた 多分、喋れますね」
堂島泉「得体のしれない声だせば 怖がるだろうみたいのやめません?」
堂島泉「そもそもパティシエなんですよね なんでそんな格好してるんですか?」
パティシエ「・・・」
堂島泉「危ないですよ」
堂島泉「危ないですってば」
堂島泉「切れたらどうするんですか!」
パティシエ「お前なんなんだ・・・」
堂島泉「やっぱり喋れる」
堂島泉「パティシエはケーキを切れても 人間はなかなか切れないのよ」
パティシエ「そうなのか?」
堂島泉「そんな事より あれは全部あなたのせい?」
パティシエ「あれ?」
堂島泉「ちょっとこっちにきて!」
〇白いバスルーム
堂島泉「ほら見て!」
堂島泉「血飛沫がこっちまで跳ねてくる」
堂島泉「シャワーからお湯の代わりに 延々と真っ赤な血が出てるでしょ!」
パティシエ「ああ・・・」
堂島泉「あれじゃ困るんです」
堂島泉「シャンプーが泡立たないじゃないですか」
パティシエ「え・・・」
堂島泉「あとこのシャワーの音も止めて下さい」
堂島泉「これじゃシャワーじゃなくてウワーです」
パティシエ「う・・・」
堂島泉「あと、あれ」
堂島泉「湯船に片腕浮かんでますよね」
堂島泉「湯船に浸かってる時に お湯の中から、そろっと現れて」
堂島泉「突然、私の二の腕を掴んできたんですよ」
堂島泉「セクハラです!」
堂島泉「胸とかお尻じゃなくても セクハラになるんですからね!」
パティシエ「は、はい・・・」
堂島泉「湯船に浸かりたいのはわかりますが、 大腿部とか臀部とかにしてください」
パティシエ「なんか、すみません」
堂島泉「許しません」
堂島泉「許して欲しいなら お願い事があります」
〇血しぶき
カイイ「前言撤回していいか? こいつ、ラスボスだ」
カイイ「おい!」
カイイ「おいってば!」
なんだ
まだいたのか
カイイ「頼みがある」
なんだ
カイイ「この女の過去が知りたい」
過去?
どんな
カイイ「なんでもいい」
昨日の夜はハンバーガーを食べた
カイイ「その過去じゃないな」
一昨日の夜もハンバーガーを食べた
カイイ「2日連続?!」
3日前はハンバーガーを
カイイ「3日連続で食べたのか」
食べなかった
カイイ「食べてないのかよ!」
食べてはいない
が、庭に埋めた
カイイ「は? 庭?」
〇一戸建て
コイツは一人でこの一軒家に住んでいる
カイイ「一人で?」
カイイ「家族は?」
いた
今はいない
カイイ「なに?」
カイイ「そのあたり、詳しく教えてくれ」
無料はここまでだ
カイイ「課金?!」
いや、金なんか要らない
カイイ「じゃあ、なにを?」
悲鳴を聞かせろ
人々の恐怖を貯めてこい
そうすれば続きが知れる
カイイ「わかった」
さあ、今度こそいってらっしゃい
〇開けた交差点
阿部レイカ「泉、大丈夫かな・・・」
〇マンションのオートロック
「はーい」
阿部レイカ「レイカです 泉?」
「おはよー」
阿部レイカ「大丈夫? なにもなかった?」
「大した事はないわよ」
阿部レイカ「そう、よかった」
「でも色々あったのよ 最初にレイカが帰った後に 小さいおじさんが空飛んだのね」
阿部レイカ「ごめん」
「え? おじさん飛ばしたのレイカ?」
阿部レイカ「カギ、開けてくれる?」
「あ ごめん」
〇女の子の一人部屋
堂島泉「あの小さいおじさんがね」
阿部レイカ「小さいおじさんの話はいいわ 霊は大丈夫だったの?」
堂島泉「全然大丈夫だよ」
堂島泉「それよりお腹空いてない?」
阿部レイカ「美味しそう! 食べる食べる!」
「いただきまーす!」
阿部レイカ「泉、プロみたいだね」
堂島泉「このジャムも美味しいよ さっきつまみ食いしちゃった」
阿部レイカ「わかる 作りながら食べちゃうよね」
阿部レイカ「泉がこんなパンケーキ作れるなんて 意外だったわ」
阿部レイカ「ジャムも作れるなんて 私の嫁になってよ」
阿部レイカ「美味しっ」
堂島泉「私、作ってないよ」
阿部レイカ「え?」
堂島泉「ザクロのジャムはじめて食べた 血の味なんかしないね」
阿部レイカ「あのー、泉?」
堂島泉「なに? ジャム足りない?」
阿部レイカ「これ、誰が作ったの?」
堂島泉「パティシエだよ」
阿部レイカ「え?」
〇開けた交差点
「危ない!」
「誰か、救急車!」
「警察も呼んで!」
カイイ「恐怖、こんなもんかな」
カイイ「もう、運転手死んでるよ」
〇女の子の一人部屋
堂島泉「ねえ、見て! 事故かな?」
阿部レイカ「・・・」
堂島泉「近くだよね、心配」
堂島泉「ちょっと見てくるね!」
阿部レイカ「泉!」
阿部レイカ「ねえ」
阿部レイカ「パティシエって、どういう事よ」
阿部レイカ「キャッ!」
パティシエ「すみません、 派手にジャムこぼしちゃいました」
パティシエ「おっちょこちょいで すみません」
パティシエ「あれ? 泉さんは?」
〇マンションのオートロック
堂島泉「あっちかな?」
カイイ「待て、堂島泉だな?」
堂島泉「?」
カイイ「堂島泉だよな?」
堂島泉「違いますよ?」
カイイ「いや、おまえは確かに堂島泉」
堂島泉「むしろ堂島泉どこにいるか知りません?私も堂島泉を追ってるんです」
カイイ「は?」
堂島泉「私、ドッペルゲンガーなんです 堂島泉を消滅させるために来ました」
カイイ「そ、そうなのか?」
堂島泉「はい ドッペル歴25年です」
カイイ「先輩ですね! すみません、偉そうな口を聞いて」
カイイ「僕、生まれたてなんです だからまだ怪異の事よくわかってなくて」
堂島泉「まあ、勘違いは誰にでもあるから」
カイイ「勉強になります! ドッペル先輩!」
〇血しぶき
で、帰ってきたと
カイイ「ドッペル先輩はヤバい」
カイイ「色々と武勇伝を聞かせていただいた」
カイイ「俺もドッペル先輩みたいな 怪異になりたい」
カイイ「いや、なる!」
なるか
カイイ「そうだ!」
嘘だよ
カイイ「え?」
お前、だまされやすいなぁ
あいつこそが堂島泉だよ
カイイ「ええ?」
堂島泉にドッペルゲンガーはいない
お前がなるって言うなら
最初のドッペルゲンガーになれるけどな
カイイ「俺は、だまされた?」
残念
仕方がない
交差点での恐怖にちなんで
情報公開してやろう
堂島泉の家族は、全員殺された
カイイ「誰に?」
情報はここまでだ
〇手
堂島泉「第一話はここまで!」
堂島泉「カイイは私を恐怖に陥れる事が できるのか?」
堂島泉「私の家族は、なぜ殺された?」
堂島泉「ハンバーガーは、なぜ庭に?」
堂島泉「生まれたての怪異と マカロン好きの女」
堂島泉「第二話、お楽しみに!」
泉さん、強すぎる…!!思わずカイイ君を応援したくなりました😂 ホラーとミステリーとコメディが絶妙な加減で合わさっていて自然と惹き込まれていく1話でした✨あの泉さんに一体どんな過去があるのか気になります!
シュールさがすんごいww😂 泉さん、中ボスどころではないのでは……と思っていたら、やはりラスボス認定された😂
ドッペル先輩がツボでした😂 意外(?)に重い設定の家族の秘密は開示されるのか? カイイくんの課金に期待します!😂
これはなんとも独特で面白い……ホラー?
すぐ騙されるカイイくんの奮闘がなんだか可愛いです😂
強者感満載の泉ですが、家族が殺されたとは一体……
コミカルな中に、謎がひんやり漂ってますね。