第4話 『蓮介の告白』(脚本)
〇黒
醍醐蓮介「俺は、凪を部屋から連れ出した。 それが彼女の為だと信じて」
醍醐蓮介「でも、それは意味があったのか」
醍醐蓮介「あのまま部屋から連れ出さなければ、凪は傷つかずに済んだのではなかったのか」
醍醐蓮介「俺は自身の軽はずみな善意を悔いている」
〇大きな木のある校舎
〇まっすぐの廊下
〇教室
醍醐蓮介「観測会?」
鎧坂蕗子「蓮介君、前に星を見るのが好きって言ってたでしょう?」
鎧坂蕗子「うちに観測専用の部屋があるんだけど、よかったら見に来ないかな、と」
醍醐蓮介「・・・・・・」
醍醐蓮介「・・・なあ鎧坂」
鎧坂蕗子「なに?」
醍醐蓮介「俺以外のやつもよんでいい?」
鎧坂蕗子「・・・・・・」
鎧坂蕗子「・・・ええ、大丈夫よ」
鎧坂蕗子「こういうのは多いほうが楽しいものね。 でも、誰を?」
醍醐蓮介「従妹」
鎧坂蕗子「蓮介君の、従妹?」
醍醐蓮介「うん」
醍醐蓮介「そいつら──あ、双子なんだけど、親とか学校とかと上手くいってなくて、部屋に引きこもりがちなんだよ」
醍醐蓮介「外に出るきっかけを作ってやりたくてさ」
鎧坂蕗子「・・・・・・」
醍醐蓮介「週に一回、家から出て人と会って喋って、それくらいでもだいぶ楽になると思うんだよな」
醍醐蓮介「今は自分たち以外寄せつけない感じで・・・なんとかしてやりたい」
思案げな蓮介を見て蕗子はふっと微笑んだ。
鎧坂蕗子「本当に優しいわよね、蓮介君って」
〇女の子の二人部屋
凪と嵐は一冊の本をベッドの上に広げ、共有して読んでいた。
梵凪「知らない人がいるならいきたくない、かな」
梵嵐「凪が行かないなら私も行かないよ」
蓮介は本へと視線を戻す凪と嵐から本を取り上げて言った。
醍醐蓮介「俺の顔を立てると思ってさ、な?」
〇観測室
鎧坂蕗子「私は鎧坂蕗子といいます」
鎧坂蕗子「よろしくね、凪さん、嵐さん」
「・・・・・・」
蕗子の端正な顔立ちと柔和な笑みに、凪と嵐は目が釘付けになる。
鎧坂蕗子「こちらへどうぞ」
梵凪「綺麗な人だね」
梵嵐「べ、別に大したことないでしょ」
醍醐蓮介「ほら、行こうぜ」
〇観測室
蕗子が引いた椅子に凪が腰かけた。
梵凪「・・・・・・」
じーっと蕗子を見る凪。
蕗子は慣れた手つきでポットからティーカップへと紅茶を注いでいる。
蕗子が洗練された所作で凪のカップを置くと、凪と目が合った。
鎧坂蕗子「さあ、召し上がれ」
梵凪「はぁ~・・・」
バンッ!
梵凪「!」
岡崎大志「すまん、遅れた」
勢いよく扉が開かれる音とともに部屋に入ってきたのは大志だ。
梵凪「ひっ!」
鎧坂蕗子「大丈夫?」
梵凪「あっ、ごめんなさい!」
鎧坂蕗子「怖いよね、彼の顔」
醍醐蓮介「大丈夫だよ凪、俺の友達だから!」
凪は照れたように頬を赤く染めた。
醍醐蓮介「よし、全員揃ったし、記念すべき天体観測会第一回目、始めますか!」
〇黒
醍醐蓮介「日々は過ぎる」
醍醐蓮介「それでも──そんな慌ただしさの中でこそ、人の心は少しずつ解きほぐされていくのだと俺は思う」
〇神社の石段
梵凪「レンちゃん、蕗子さんまだ来てない?」
醍醐蓮介「落ち着けって、約束の時間まだなんだから」
梵凪「でもこんなに人がいっぱいいるし、蕗子さんならもう待ってるかも」
醍醐蓮介「凪は本当に鎧坂好きだなあ」
梵凪「えへへ」
梵嵐「・・・・・・」
鎧坂蕗子「ごめんなさい! 待たせちゃったわね」
梵凪「いえ、今来たところですよ!」
梵凪「行きましょ!」
醍醐蓮介「元気になったよな、凪」
梵嵐「ふん」
醍醐蓮介「あ、わかった。 取られちゃってさみしいんだろ?」
梵嵐「ち、違う! 別にそんなんじゃない!」
梵嵐「・・・あの子、人一倍繊細なくせにすぐ他人を好きになっちゃうから心配なの」
醍醐蓮介「そうだな」
醍醐蓮介「でも鎧坂、いいやつだろ。 だから嵐だって凪のこと任せてるんじゃない?」
梵嵐「・・・うん」
醍醐蓮介「変わるってのは不安だよな。 でも、いつまでも同じままではいられない」
梵嵐「・・・・・・」
醍醐蓮介「焦んなくていいんだ」
醍醐蓮介「凪に合わせなくても、嵐には嵐のタイミングがあるんだよ」
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