キミトココロの物語~バーチャルiTuberの日常~

泡沫彷徨

第03話 【コンビ結成】(脚本)

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泡沫彷徨

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〇可愛い部屋
希美都ココロ「というわけで、早速、 お仕事の話をしましょうぞ! ココロ、ビジネスモードに突入します!」
  ホワイトボードの前に立ち、
  彼女はそう、力強く宣言した。
紺野正樹「よし・・・! 僕にできることなら、 何でもするよ! 僕は何を手伝えばいい?」
希美都ココロ「んっふっふー。そうだねぇ。 イロイロやってもらいますよー?」
紺野正樹「い、イロイロ・・・? たとえば?」
希美都ココロ「うーん。撮影のお手伝いとかー、企画会議への参加とかー、営業の電話とかー、 生放送でカンペ出してもらったりとか!」
紺野正樹「おお、それっぽい!」
希美都ココロ「視聴者さんからのお便り整理とかー、 えっと、いっしょに映画を観たりとかー、 エゴサ撃沈時の慰め会の開催とかー」
希美都ココロ「あとはー・・・定期的に、 カワイイって褒めてもらったりだとか!」
紺野正樹「後半が自由! 途中から仕事じゃなくなってない・・・?」
希美都ココロ「いやいや、メンタルケアも大事な立派な お仕事ですよ!」
紺野正樹「そ、そうなのかな・・・」
希美都ココロ「そうなのですよ。それじゃ本格的に話を進める前に、ちょっと着替えてもらおうかな」
紺野正樹「え? 着替える?」
希美都ココロ「うん。それじゃ、いっくよー。えいっ!」
紺野正樹「うわあぁ!?」

〇幻想空間
  彼女の掛け声とともに、
  全身が煙に包まれた。
  やがて視界が晴れてきて、
  すぐに違和感に気づく。

〇可愛い部屋
紺野正樹「・・・? 周囲のものが大きい・・・? いや、僕が小さくなってるのか!?」
希美都ココロ「正樹くん」
紺野正樹「ココロちゃんも大きい! って、うわ!? 声が女の子みたいな声に・・・! これ、何がどうなって・・・?」
希美都ココロ「ハイ、鏡」
紺野正樹「ん・・・? あれ!? えぇ!? 身体が、 やたらプリティーな姿になってる!?」
  鏡に映っていたのは、小さなぬいぐるみのような姿に変身した、自分自身だった。
紺野正樹「これ、どういうこと!?」
希美都ココロ「ちょいと可愛いアバターを着てもらいました。声にもボイスチェンジャーを適用しました」
紺野正樹「どうしてそんなことを!?」
希美都ココロ「その問いに答えよう! キミには、マスコットキャラクターになってもらいます!」
紺野正樹「マスコットキャラ・・・?」
希美都ココロ「最近、自分の動画を見返していて、私 ココロは思ったのです。何かが足りないと」
希美都ココロ「一人でする企画ばかりじゃなくて、ちょっとした掛け合いの相手が欲しいときって、あるんだよね」
紺野正樹「ああ、それは確かに。相方のような存在がいると、できる企画の幅は増えそうだよね。・・・って、まさか!?」
希美都ココロ「その、まさか! キミが相方だ!」
紺野正樹「えー!?」
希美都ココロ「そして、今日の生配信で、 鮮烈なるデビューを飾っちゃおう! さ、準備するよー!」
紺野正樹「えええええー!?」

〇テレビスタジオ
  彼女が撮影に使っているスペースには、
  たくさんのカメラが空中に浮いていた。
紺野正樹「人、人、人、人・・・」
希美都ココロ「そんなに緊張しなくても大丈夫だよー。 今日は、画面の隅に映り込むだけだし! アレは誰だ? っていう思わせぶりな感じで」
紺野正樹「は、ハイ・・・」
希美都ココロ「あはっ! 自分で調整しておいてなんだけど、正樹クンのその声、すっごく可愛い!」
紺野正樹「か、からかわないでよぉ・・・」
希美都ココロ「あー、やばいな。 これ、私より人気が出ちゃうかもなぁ。 ・・・さ、三十秒前だよ!」
紺野正樹「ひぇえ・・・」
  ふと彼女の横顔に目をやると、その真剣な、けれど心の底から楽しんでいるような笑顔に、ドキッとする。
紺野正樹「すごい・・・」
希美都ココロ「んー? 何か言った?」
紺野正樹「ううん。とにかく・・・やってみるよ!」
希美都ココロ「うん! 一緒に、楽しもう!」
  そして──生配信が、スタートした。

〇可愛い部屋
紺野正樹「やってしまった・・・」
  ソファに座って、うなだれる。
希美都ココロ「お疲れー! ・・・って、どしたの?」
紺野正樹「いや、なんていうか・・・出すカンペは間違えるし、企画用のアイテム運んでる最中に転んじゃうし、散々だったけど・・・」
  ぽふっと音がして横を見ると、
  ココロが笑顔で隣に座り、腕を伸ばして、
  何もない宙に指で四角を描いた。
希美都ココロ「ほい!」
  ココロの描いた指の軌跡が浮かび上がり、
  空中に、パソコンのウィンドウのような
  ものが表示された。
紺野正樹「わ!? あ、これ・・・ここに映ってるの、 今日の配信のアーカイブ?」
希美都ココロ「うん。配信中、たぶんコメント見る余裕 なかったよね。ほら見て」
紺野正樹「あ・・・。めちゃくちゃ盛り上がってる」
希美都ココロ「そう! 一生懸命に画面の端で動き回ってるキミの姿が大好評!」
希美都ココロ「ほらココ、可愛いとか偉いとか頑張れ、 って」
紺野正樹「そっか・・・僕の存在がノイズに なるんじゃないかって心配だったけど、 いいアクセントになってたのか」
希美都ココロ「うんうん、そういうこと! あ、ほらもう、あだ名ができてる。コロリンだってー。 これ、そのまま採用しちゃおうよ」
紺野正樹「ココロちゃんの名前と、コロコロしてることと、よく転んでたことを掛けてる・・・みんなよく考えるなぁ」
希美都ココロ「えへへ。こういうの、すっごく楽しいね。今後とも、よろしく! コロリン!」

〇一人部屋
  バーチャル世界でのアルバイト生活が
  本格的にスタートして、
  早くも一週間が過ぎた。
紺野正樹「大学も夏休みに突入っと! よーし、いっぱい働く・・・ん? 通知だ。誰からだろ」
  トークアプリの「LINK」を開く。

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