精霊の湖

桜木ゆず

第3話 つかぬ間の休息(脚本)

精霊の湖

桜木ゆず

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〇黒
ホープ「・・・」
ホープ「あ、おじいだ~! こっちこっち!」
おじい「────」
ホープ「えっ?なに? 聞こえないよ?」
おじい「──て・・・」
ホープ「なあに? もう一回言ってよ!」
おじい「生きて・・・幸せに・・・なりなさい──」
ホープ「えっ? わたし・・・は・・・」
ホープ「・・・──」

〇英国風の部屋
  チュンチュン・・・
ホープ「・・・」
ホープ「ここ・・・は?」
ホープ「頭が痛い・・・」
ホープ「あれ、私── どうなったんだっけ・・・?」
  何か大事なことを忘れている・・・
  心に大きな穴が空いている・・・
  なぜなのだろう・・・
ホープ「だ、だれ・・・!」
ルーフェン「・・・起きたのか」
ホープ「こっ、こっちに来ないで下さいっ!」
ルーフェン「そんなに怯えなくても大丈夫だ 何もしやしないさ」
ルーフェン「体は?平気か?」
ホープ「えっ?は、はい・・・」
ホープ「あっ、あなたは誰ですかっ? ここはどこですかっ?」
ルーフェン「ここは宿だ ナユタの村の宿さ」
ホープ「宿屋? どうして・・・」
ルーフェン「森で倒れていたお前を ここまで運んできたからだよ」
ホープ「森で・・・?」
  大事なことを忘れている・・・
ホープ「森で・・・」
ホープ「雪の降る森で・・・私は・・・ いや、”私たち”は──」
ホープ「おじい・・・!」
ホープ「おじいはどこですかっ!?」
ルーフェン「・・・」
ルーフェン「あのじいさんは・・・ 助けられないと思ったから 置いてきてしまったんだ」
ルーフェン「すまなかった」
ホープ「・・・どうして」
ホープ「どうして私だけ助けたの!」
  私は男の胸ぐらを掴んだ
ホープ「私もあのまま 死ねば良かったんだわ!」
ホープ「どうして私だけっ!」
ホープ「どうして・・・」
ルーフェン「・・・」
ルーフェン「すまないな・・・」
ホープ「どうしてっ・・・!」
ホープ「どうして・・・」
ルーフェン「・・・」
  私は男の胸の中で
  わんわんと泣き叫んだ
  男は何も言わずに私の背中を
  ただ、いつまでもさすっていた・・・

〇英国風の部屋
ホープ「・・・」
ルーフェン「どうだ? 落ち着いたか?」
ホープ「はい・・・ すみません・・・」
ホープ「あなたは助けてくれたのに・・・」
ルーフェン「別に、大丈夫だ 気にするな」
ルーフェン「そうだ、ボウズ 名前は何て言うんだ?」
ホープ「えっ?ええっと・・・」
ホープ(”ボウズ”って、 もしかして男と思われてる・・・?)
ホープ(た、確かに胸もないし 声も低い方だけど・・・)
ルーフェン「俺はルーフェン ルーフェン・ディンだ」
ホープ「ルーフェン・ディン・・・」
ルーフェン「ボウズは?」
  ──世の中には女っていうだけで
  下に見てくる奴もいる
  気をつけろホープ──
  おじいの言葉だ
  私は女であり子どもでもある・・・
ホープ(この人は悪い人には見えないけれど 女であることは隠しておこう)
ルーフェン「もしかして奴隷には名前がないのか?」
ホープ「いえ、名前はあります。 ホープと言います」
ルーフェン「そうか、ホープ、か」
ルーフェン「腹は空いてるか、ホープ?」
ホープ(これ以上この人に迷惑はかけたくない・・・)
ホープ「い、いえ、お腹は・・・」
ホープ「ぐぅ~」
ホープ「・・・っ」
ルーフェン「空いてるみたいだな」
ホープ「・・・ご、ごめんなさい」
ルーフェン「子どもは遠慮しなくていい 何か食べ物をもらってこよう」
ホープ「あ、ありがとうございます・・・」

〇英国風の部屋
ホープ「ふぅ・・・」
ホープ(お腹一杯だ)
ホープ(なんて幸せなんだろう・・・)
  空腹が満たされるなんて
  いつぶりだろうか
ルーフェン「食べ終えたか」
ホープ「はい。ごちそうさまでした ありがとうございます」
ルーフェン「じゃあ俺は出てくるよ」
ホープ「どこかに・・・行くのですか?」
ルーフェン「そんな顔をするな ただ服を買いに行くだけだ」
ホープ「あの、追っ手の騎士は・・・? ここに来ることはないのですか?」
ルーフェン「・・・お前は森の中を抜けた先の スナトルの屋敷の奴隷だろう?」
ルーフェン「この辺りの貴族の屋敷は そこしかないと聞いた」
ホープ「その通りです」
ルーフェン「この辺りは小さい村が多い だから騎士も探すのに時間がかかるはずだ」
ルーフェン「しばらくは大丈夫だろう」
ルーフェン「俺は今の間にお前の服を買ってくる」
ルーフェン「どこへ行くにしても、 奴隷のその服じゃ目立ちすぎるからな」
ルーフェン「お前は少し眠れ。かなり顔色が悪い 移動するにもお前の体力が必要だからな」
ホープ「え、ええ・・・」
ルーフェン「大丈夫だ。すぐに戻る 約束する」
ホープ「・・・はい」
ルーフェン「じゃあな」
ホープ「あの!」
ルーフェン「ん?」
ホープ「助けてくれて、ありがとうございます」
ルーフェン「あぁ」

〇英国風の部屋
ホープ「・・・」
ホープ「・・・」
ホープ「・・・」
ホープ「おじい・・・ 話したいよ、寂しいよ・・・」
ホープ「泣いたらダメだ・・・ おじいが心配しちゃう・・・」
ホープ「・・・」
ホープ「・・・」
ホープ「・・・」
ホープ「ルーフェンさんの言う通り、 少し眠ろう・・・」
ホープ「・・・」
ホープ「──」
ホープ「・・・」
ホープ「眠れそうにないや・・・」
ホープ「夕方・・・かぁ」
ホープ「他のみんなはどうなったんだろう」
ホープ「無事に国境を越えたのかな・・・」
ホープ「きっと三人とも、 しばらくは身を隠すはず」
ホープ「離れた時に落ち合う国も町も、 決めてなかったなぁ」
ホープ「いや、 皆と離れた時は死ぬ時だと思ってたから、 私は運がいい・・・」
ホープ「これから私、どうなるんだろう・・・」
「ホープ、俺だ入るぞ」
ホープ「は、はい!」
ルーフェン「服と靴を買ってきた これに着替えるといい」
ルーフェン「今の服は・・・ 血だらけ、だからな」
ホープ「ええ、ありがとうございます・・・」
ホープ「・・・」
ルーフェン「ふぅ・・・」
ルーフェン「荷物の整理でもしておくか」
ホープ「・・・」
ホープ「ここで着替えたら、 女であることがバレてしまう・・・!」
ホープ(どうしよう・・・)
ルーフェン「ん?どうした?」
ホープ「ええっと・・・」
ルーフェン「ああ、もしかして喉が乾いたのか?」
ホープ「・・・っ! そうです!」
ルーフェン「分かった、何かもらってこよう」
ホープ「ありがとうございます!」
ホープ「ふぅ! 今のうちに!」

〇英国風の部屋
「よいしょっと・・・ こんな感じかな・・・?」
ホープ「すごい!服のサイズぴったりだ!」
ホープ「ルーフェンさんって、 服のスペシャリスト・・・?」
ホープ「旅人っぽい服ね それに男の子が着るようなデザインかぁ」
ホープ「ま、でも、着心地は悪くない、かな」
「ホープ、開けるぞ」
ホープ「はい!」
ルーフェン「ホープ、よし着替えたか 宿を出るぞ・・・!」
ホープ「えっ・・・ どうしたんですか?」
ホープ「っ! まさか!」
ルーフェン「あぁ、追っ手が来た」
ホープ「えっ!」
ルーフェン「このまま宿を出るぞ」
ホープ「で、でも! そんなに直ぐに見つからないだろうって!」
ルーフェン「あれはお前に安心して 眠ってもらうために言ったんだ」
ホープ「えっ・・・」
ルーフェン「もう少し猶予があると思ってたんだが、 しかし、俺が甘かったようだな」
ルーフェン「お前にとっては 嘘をついたようになってしまったな」
ルーフェン「すまなかった」
ホープ「・・・」
ルーフェン「そんな顔をするな 大丈夫だ・・・」
ルーフェン「すぐ出るが、体は? 大丈夫そうか?」
ホープ(・・・少しフラフラするけれど)
ホープ(今はそんなこと言ってる場合じゃない・・・)
ホープ「・・・大丈夫です」
ルーフェン「・・・」
ルーフェン「無理をさせて悪いな・・・」
ルーフェン「よし、行くぞ」

次のエピソード:第4話 生きるための戦い

コメント

  • ルーフェンの心優しさに癒されます。しかし彼はどうしてホープと共にどこかへ行こうとしているのか、彼も脛に傷持つ者なのか気になります。

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