異界転生 ~あの日見た英雄の名を僕たちはまだ知らない~(脚本)
〇宇宙空間
〇荒廃した街
兵士「河まで逃げろ! 救難艇が待っている!」
兵士「くそ! たった数時間で、王都がこの有様か。化物め!」
星歴1581年──
人類と魔族の拮抗は突如として破れ、魔王軍は一気に王都まで攻めあがった
この大侵攻には、精鋭擁する王都の兵をもってしても、数時間と経たずに王都は陥落したのだった
兵士「おい、何してる! さっさと逃げろ!」
兵士「む、娘が逃げ遅れたんだ」
兵士「諦めろ。魔王軍は、目の前まで来てるんだぞ」
兵士「で、でも」
兵士「助けられないものは切り捨てろ! それがこの国で生き残る為のルールだ」
「おいおい、人の覚悟に水差すなよ」
兵士「がはぁっ!」
勇者「ヒャッハー! 勇者参上!」
兵士「だ、大丈夫ですか?」
兵士「あ、あぁ、風圧で倒れただけだ」
勇者「おっさん、安心しな。娘は無事だぜ。ほら」
???「ケケケケケ!」
兵士「誰?!」
勇者「あ、間違えた。こっちだ」
兵士「無事だったのか! あ、ありがとう!」
勇者「それじゃあ、さっさと逃げな」
勇者「喧嘩に巻き込まれないようにな」
勇者「ざっと2、30匹か? どうする、師匠」
白金「ある異界の英雄は言った」
白金「『そうだ、嬉しいのだ、これが生きる喜びだ。例え、どんな敵が相手でも』」
白金「どんな敵が相手であろうと、戦いこそが生きる喜びである! 恐れることなど何もなし! という意味だ」
勇者「何か違う気がする! あと一般人も斬ってるぞ」
白金「ふむ。最近、目が霞んでの」
勇者「年のせいにしてんじゃねぇ」
白金「ふむ? なら、くっつけておけ。体組織は傷ついてないから、すぐ治る」
勇者「いや、そんな」
兵士「はっ、俺は一体?」
勇者「なんで治るの?」
兵士「何者だ、こいつら。恐ろしく強いが」
勇者「だから、勇者だって」
兵士「勇者? いや、しかし、黄金(こがね)の勇者の次代は見つかってないとか、見なかったことにされたと聞いているが」
勇者「見なかったって何?」
兵士「いや、待て! そっちの剣士、思い出したぞ。その長刀に、太刀筋すら見えない剣技」
兵士「魔王殺しの大罪人か」
〇基地の広場(瓦礫あり)
勇者「ったく、助けてやったのに、相変わらず罪人扱いかよ」
白金「気にするな。年寄りはこの程度で怒りはせん」
勇者「じゃあ、この前、師匠の饅頭を勝手に食べたの許してくれるんだな?」
白金「それは許さん」
勇者「なんでだよ」
17年前、この国に一つの法が生まれた
『聖剣を携えし勇者以外の、魔族討伐を禁ずる』
魔族は何度殺されても、より強くなって甦る。その輪廻を断てるのは、唯一、勇者の扱う聖剣のみである
それが分かったのは、皮肉にも剣聖が魔王を打ち倒した日のことだった
勇者「俺は辺境のスラム育ち、礼儀も品格もねぇ、なんで聖剣に選ばれたのかも分からねぇクソガキだ」
勇者「そんなのを勇者として認めねぇ奴が多いのは仕方ねぇ」
勇者「けどよ、師匠は違うだろ。なんで、人の為に戦った英雄が蔑まなけりゃならねぇんだよ」
白金「異界の英雄は、自らの顔を食料として与え、民の為に戦ったという」
勇者「顔が食料とか、やべぇ世界だな」
白金「その英雄は『愛と勇気だけが友である』と言ったそうだ」
勇者「友達いないの、そいつ?」
白金「誰に理解されずとも、人の為に戦うという意味だ。主もいずれ分かるだろう」
勇者「俺はチヤホヤされないまま終わる、そんなのは嫌だ。もっと黄色い歓声とか欲しい」
白金「魔獣の咆哮なら貰えたな」
勇者「この戦いが終わる頃には、全部、黄色い歓声に変えてやるさ。勇者様ーってな」
白金「正しくは、鬱金の勇者だ」
勇者「うんこの勇者? 何それ」
白金「うこんだ。王家は勇者に名を授ける慣例があってな。鬱金は、王子が主に授けた勇者の名だ」
勇者「おいおい、俺にも勇者の名前くれたのかよ?」
勇者「って、うんこ勇者ってなんだよ、くそが。嫌がらせか?」
白金「だから、うんこではなく、うこん」
勇者「もし俺が死んだら、『勇者は魔王に敗れたのではない、王子のパワハラに敗れたのだ』って後世に残してやる」
白金「なんだ、負けるつもりか?」
勇者「まさか」
勇者「しゃーねぇな! パワハラの文句は直接、王子に言ってやるか」
〇基地の広場(瓦礫あり)
白金「我こそは魔王殺しの大罪人・白金の剣聖」
勇者「俺はスラムのクソガキ! 史上最低最悪、うんこの勇者!」
白金「鬱金な」
魔族「調子に乗るな、人間! 百の魔族、千の魔獣が──」
勇者「魔王の首、貰い受けに来たぜ!」
勇者「人間も魔族も関係ねぇ! 俺達の力に度肝を抜かれな!」
勇者「ヒャッハー! いいぜ、いくらでも相手に──!」
勇者「おいおいおい、なんだよ、あれ」
〇闇の要塞
勇者「デカすぎだろ! あんなんどうしろってんだよ!」
〇基地の広場(瓦礫あり)
白金「くるぞ」
勇者「仲間の巻き添え関係なしかよ」
〇闇の要塞
白金「異界の英雄は、星すらも砕いたという。それに比べれば、この程度」
白金「児戯に等しい」
勇者「えー・・・」
白金「こいつを足場に、一気に魔王の間まで行くぞ」
勇者「あ、おい、俺を置いてくな」
〇謁見の間
勇者「ヒャッハー! 勝負だ、魔王!」
魔王「勇者に剣聖、また立ち塞がるか」
白金「我が守りを固める。主は攻撃に集中せよ」
勇者「了解」
魔王「我は魔王! 我が敗北は一族の死と同義!」
魔王「我が死は、奪ってきた命を無意味とすることと同義!」
白金「それでも終わりの時だ」
魔王「否! これまでも、これからも、生き残るのは──」
勇者「悪いな、魔王! 生き残るのは俺達だ!」
魔王「させるか!」
勇者「がはっ!」
白金「勇者!」
勇者「勇者の根性なめんな!」
魔王「そん・・・な・・・馬鹿な」
魔王「あああぁぁぁ!」
白金「終わったな」
勇者「・・・へ、へへ! 楽勝」
勇者「世界を救ってやったぜ」
勇者「これでちっとは、生まれがどーとか、大罪人がなんだいう奴は減るだろうよ」
勇者「ざまーみやがれ」
勇者「師匠!」
仮面「弟子を庇って手傷を負うか。そいつを見捨てて、反撃に転じれば、私を殺せたろうに」
勇者「師匠、しっかりしろ! くそ、血が、血が止まらねぇよ」
仮面「刃に死を纏わせたからな、その傷口は塞がらんよ」
勇者「もっと、ちゃんと息しろ! 英雄がだらしねぇぞ!」
勇者「くそが! 俺達、世界を救ったんだぞ! こんなとこで終わりにすんなよ!」
仮面「世界を救った? 笑わせる」
勇者「てめぇ!」
仮面「空を見ろ」
〇宇宙空間
仮面「魔王の天蓋はまだ残っている」
〇謁見の間
勇者「嘘だろ! 魔王は確かに浄化したんだぞ」
仮面「貴様程度、言ったところで分かるまい」
仮面「下らんお喋りもここまでだ。その聖剣を渡せ。白金に免じて、命だけは助けてやる」
勇者「さっきから、一方的に言いたいことだけ言って、勝手に切り上げたと思ったら、今度は聖剣を渡せだ?」
勇者「俺は馬鹿だから、こういうとき何するのが正解かなんて分からねぇけどよ」
勇者「弟子は師匠の仇とるのが筋なんだよ! 誰がてめぇの言う通りにするか、クソ野郎!」
仮面「先達に対して、口のきき方がなってないな」
勇者「俺の一撃を受け止めた?!」
仮面「言ったはずだ、刃に死を纏わせていると」
仮面「死は全てに平等だ。命だけではない、力も、破壊も、全て──」
仮面「死に至る!」
勇者「くっ!」
勇者「師匠!」
白金「機を逃すな! 奴を討て!」
勇者「了解!」
仮面「白金ー!」
仮面「がぁっ!」
仮面「ぐ、うぅ!」
勇者「なんだ、こいつ! 浄化を耐えてやがる!」
仮面「くくっ! 私に聖剣を触れさせたな」
仮面「この時を待ちわびていた!」
勇者「な、なんだこりゃ。吸い込まれる」
仮面「魔王を浄化した聖剣、有難く使わせてもらったぞ」
仮面「これぞ、魔王の魔具那の力。異界転生」
白金「異界転生だと?」
仮面「生者も死者も、生物も無機物も、全て異界へ転生させる秘術だ」
仮面「喜べ、白金! まもなく、この世界は全て! 魔族に奪われた命さえも全て、異界へ転生される」
仮面「異界を我らの国に塗り替えるときが来たのだ」
白金「異界と戦争するつもりか」
仮面「魔族がいる! 魔王の力を得た私がいる! なにより、転生の力を使えば、我らは何度死んでも甦る」
白金「そこまで堕ちたか?!」
白金「くっ!」
勇者「ダメだ、吸い込まれる!」
仮面「白金よ、転生とは本来、祝福を授けるのだ。魔族が転生するたびに強くなるのは、祝福によるものだ」
仮面「だが、貴様らに祝福はない。代わりに呪いをくれてやった」
仮面「この世界全ての転生が終わるのは、異界の太陽が影に喰われる日」
仮面「それまで呪われた身で、異界を彷徨うがいい」
〇幻想空間
勇者「うわぁー! 助けてくれよ、師匠!」
白金「えーい、ひっつくな!」
勇者「嫌だー! 離さないでー!」
〇霧の立ち込める森
「ここは・・・?」
(異界に転生したのか?)
(痛みは・・・ない。むしろ、肩こり、腰痛、神経痛までなくなっている)
(何か、近づいてくる)
玲緒「え?」
玲緒「よ、幼女が落ちてる?!」
(幼女・・・?)
白「幼女だと?!」
圧倒的な力を持つ師匠と勇者の二人を手玉にとった仮面の男とは一体……幼女に転生したけどこの先にも色々と波乱が待ち受けていそうですね。
どんな世界でどんな展開が待ち受けているのか、楽しみにしています😆😆😆
師匠と弟子というよりもコンビの相方同士みたいな二人のやりとり、読めば読むほどクセになりますね。転生して姿形が変わった後の珍道中も楽しみです。彼らの未来がウ○コ色じゃなくてウコン色に輝くことを祈ります。
えっ、幼女!?
幼女に転生しちゃったんですかー!?!?🤣
現代っぽいところに転生しちゃいましたね!
勇者活躍できるんでしょうか、続きが気になりますね!