〇保健室
長江 宗太「で！」
長江 宗太「みんなの声も、書いてある文字も「文字化け」してる中」
長江 宗太「金子の声だけちゃんと聞こえるんだよ！」
金子 蘭「へえー」
長江 宗太「なあ、頼む、治るまで俺の通訳やってくんないかな」
長江 宗太「お前だけが頼りなんだよ」
金子 蘭「ヤダ。さよなら」
長江 宗太「ちょちょちょ、待って！」
長江 宗太「え、なんで。助けてよ、クラスメイトじゃん」
金子 蘭「理由は簡単」
金子 蘭「私、アンタのこと嫌いだから」
金子 蘭「どいて」
長江 宗太「おい、待てって！」

〇学校の廊下
長江 宗太「お前、なんでそんな冷たくできんだ」
長江 宗太「ちょっとは同情の気持ちとか無いわけ」
金子 蘭「私には関係ない」
金子 蘭「こんな時だけ友達づらして、調子良すぎるのよ」
長江 宗太「そりゃ、今まで仲良くしてたわけじゃないけどさ・・・」
黒沢「＃‘＄＠：D！」
長江 宗太「え、あ、おう！」
金子 蘭「・・・・・・」
黒沢「＠：＊＃＄Kぉさ？」
長江 宗太「あー、うん、そうだな！」
長江 宗太「なぁ金子、黒沢の奴、なんて言ってんだ？」
金子 蘭「さあ？」
長江 宗太「お前、ふざけんなよ・・・！」
黒沢「＃＆‘＠＊もVこ？」
金子 蘭「はぁ!? 何言ってんの？」
長江 宗太（なんだ、黒沢のやつ、金子になに言ったんだ？）
黒沢「＄％＠：DぽV？」
金子 蘭「むしろ私の方がコイツに付きまとわれてんの」
金子 蘭「「文字化け」するとかなんとか、訳の分かんないこと言われて──」
長江 宗太「だあぁぁ、ちょ、あの・・・」
長江 宗太「黒沢、また後でな！」

〇学校の屋上
長江 宗太「お前ふざけんなよ、「文字化け」のことバラそうとしただろ」
金子 蘭「あいつが悪いのよ」
金子 蘭「私がアンタに付きまとってるみたいな言い方するから」
金子 蘭「てか、さっさと医者行けばいいじゃない」
長江 宗太「いや、そんな大げさなことは・・・」
金子 蘭「なんなの、煮え切らないでイライラする」
長江 宗太「医者とか行って、周りにそのことバレたら」
長江 宗太「なんてごまかしたらいいか分かんないじゃん」
金子 蘭「アホくさ。もう行くわ」
長江 宗太「あー、待って、見捨てないで！」
金子 蘭「医者、行くの、行かないの？」
長江 宗太「・・・分かった、行くから」
長江 宗太「頼むからそれだけ一緒に付いて来てくれ！」
金子 蘭「・・・はぁ、めんどくさい」
金子 蘭「じゃあ、うちの近所によく行く精神科の病院あるから」
金子 蘭「そこなら付き合ってあげる」
長江 宗太「え、精神科・・・？」
金子 蘭「何？」
長江 宗太「いや、別に・・・」
金子 蘭「別に私が心に闇を抱えてるとか、そんなんじゃないから」
金子 蘭「深く潜るには、自分の心をよく知らなきゃいけないだけ」
長江 宗太「深く潜る？」
長江 宗太「保健室でも言ってたけど、その潜るってなんだ？」
金子 蘭「言いたくない」
金子 蘭「じゃあ、さっさと病院行くよ」
長江 宗太「え、授業は!?」
「サボる」
「ほら、行くよ」
長江 宗太「ちょ、えええっ」

〇病院の診察室
医者「＃＄（！）＠：ＦＧ？＋＞」
金子 蘭「体に異常はないんですね」
金子 蘭「じゃあ、心因性のものですか？」
医者「＄＆％“ＫＦ＊＋」
長江 宗太「え、何て？」
金子 蘭「親御さんや友人に話して、ケアしてもらう必要があるって」
長江 宗太「え、なんでそうなるんだよ！」
医者「＄＆％」“＝＠：Ｆ」
金子 蘭「突発性難聴とか、ストレスが原因で体に異常が出るケースはよくある」
金子 蘭「ストレス軽減には周囲のケアが必要なの」
長江 宗太「いや、無い無い無い！」
長江 宗太「そんなん頭おかしくなったと思われるじゃんか！」
金子 蘭「十分おかしいと思うけど」
長江 宗太「はぁ？」
金子 蘭「自分のことおかしくないと思ってるなんて」
金子 蘭「おめでたい奴」
長江 宗太「・・・ちっ。もういいわ」
長江 宗太「帰ります。来るんじゃなかった」
金子 蘭「ホントに、どうしようも無いな」

〇公園のベンチ
長江 宗太「なんだよ心因性のものって」
長江 宗太「要はなんも分かんないってことだろ」
金子 蘭「心の問題ってことでしょ」
長江 宗太「俺はおかしくなんかない」
金子 蘭「あっそ」