カルキノス

安藤・R・ゲイツ

第3話 『第一の事件』(脚本)

カルキノス

安藤・R・ゲイツ

今すぐ読む

カルキノス
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇観測室
  ボォン・・・ボォン
  どこからか柱時計の音が鳴り響く。
正岡きらり「血・・・」
黒いなにか「ふ・・・」
黒いなにか「・・・ふ・・・きこ・・・さん」
鎧坂蕗子「・・・え?」
  全身ガラス質の黒いなにかは、右手を伸ばしながらふらふらとした足取りで歩き始めた。
梵嵐「こっ・・・こっちに来る!!」
正岡きらり「きゃあああぁぁぁーーー!!」
醍醐蓮介「くそっ!」
  蓮介が勢いよく扉を閉じる。
醍醐蓮介「なんでもいい、早く押さえるもの!」
岡崎大志「蓮介!」
  大志は机を横倒しにして扉を押さえた。
梵嵐「わ、わたしも!」
梵嵐「アンタも、何ぼさっとしてんのよ!」
正岡きらり「え、え」
梵嵐「何でもいいから早く持ってきて!」
  五人は室内の椅子や机を持ち出して、即席のバリケードを作り上げた。
  緊張の面持ちで、扉が開かないように強く押さえつける。
正岡きらり「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・」
醍醐蓮介「しっ。静かに」
  蓮介はそっと扉に耳をつけるが、扉の向こうからは何も聞こえてこない。
  いつの間にか柱時計の音も消えていた。
  蓮介は椅子の上に乗ると、扉の上のガラス窓から廊下を覗いた。

〇洋館の廊下
  薄暗く静謐(せいひつ)な廊下には、人の気配はない。
  黒いなにかも、血溜まりさえもなくなり、何事もなかったかのようだ。

〇観測室
醍醐蓮介「・・・いない」
岡崎大志「いないって、消えたのか・・・!?」
醍醐蓮介「血溜まりも、なにも残ってない」
醍醐蓮介「・・・鎧坂、大丈夫?」
鎧坂蕗子「・・・・・・」
正岡きらり「あ・・・あれ、一体なんなんですか!?」
梵嵐「わからない・・・わからないよ!」
  その場の全員が口を閉ざしてしまい、重苦しい沈黙に包まれる。
  揺れる瞳で一点を見つめていた蕗子が静かに言った。
鎧坂蕗子「私・・・私は・・・」
岡崎大志「なんだよ、鎧坂」
鎧坂蕗子「私はあれが・・・凪か、もしくは彼女に関わるなにかではないかと思う」
梵嵐「・・・え? ちょっと、なんでそんな」
鎧坂蕗子「声が凪に似ているだけじゃない」
鎧坂蕗子「あれ、私のことを『ふきこさん』って、しかもあの手首の傷も、凪の・・・」
梵嵐「でも、だって凪は今病院にいるんだよ!?」
梵嵐「それがどうやって──」
正岡きらり「心霊的な現象、とか?」
梵嵐「なによそれ! そんなことあるわけ──」
正岡きらり「今だって十分あり得ない状況ですよ」
正岡きらり「それに嵐ちゃんだって、最初は『凪』って言ってた・・・」
梵嵐「急に声がして思わず口に出ちゃっただけだよ!」
梵嵐「そんな、だって凪は、こんな──」
醍醐蓮介「待った」
醍醐蓮介「みんな、今は出ることだけを考えよう」
醍醐蓮介「あれがなんなのかよりもここから脱出するほうが先決だろ?」
鎧坂蕗子「そう・・・ね。ごめんなさい」
正岡きらり「わたしも、その、嵐ちゃん、ごめん」
梵嵐「・・・凪なわけない」
醍醐蓮介「・・・・・・」
  蓮介が嵐の頭をそっと撫でる。
梵嵐「・・・ぐすっ」
醍醐蓮介「大丈夫。早く出ような」
岡崎大志「で、どうするよ」
醍醐蓮介「扉が開いたってことは、家の中は移動できるんだよな」
鎧坂蕗子「そのはずだと思う」
醍醐蓮介「なら、玄関に行ってみるってのが妥当か」
岡崎大志「玄関まで行けたとして、そこのガラス窓みたいに外には出られないんじゃないのか」
醍醐蓮介「一応確認した方がいいな」
醍醐蓮介「それで出られたら儲けもんだし、俺がぱっと行ってくるよ」
鎧坂蕗子「待って、行くなら全員で──」
醍醐蓮介「ひとりの方がいい。 何かあったときすぐに対処できるしさ」
鎧坂蕗子「でも・・・」
醍醐蓮介「心配してくれてありがとな、鎧坂」
鎧坂蕗子「・・・・・・」
醍醐蓮介「偵察ってのは速さが命」
醍醐蓮介「これでもスポーツ特待なんだから期待してよ」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:第4話 『蓮介の告白』

成分キーワード

ページTOPへ