これが我が一族の能力

葉月櫂斗

プロローグ〜慶士サイド〜(脚本)

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〇月夜
武蔵慶士(ぼくはキミがいればあとは何もいらないんだ。 キミのいる世界に生まれ変わったとわかった時。 ぼくはキミを捜した)
武蔵慶士(約束したから。 あの日。 あの場所で。 キミと同じ世界に生まれ変わったら。 また会おうと)
武蔵慶士(ぼくはネタのように転勤の先々で『武蔵坊弁慶の生まれ変わり』だと言った。 そして。 キミを見つけた)
武蔵慶士(『水城明里』。 それがキミの名前。 ぼくの受け持つクラスに名前があったけど、キミはまだ、あちらの世界に行ってなかった)
武蔵慶士(それから。 しばらくして。 おばあさんからしばらく休むという連絡が。 キミがあちらに行ったのはわかりました)
武蔵慶士「キミがあれを経験するのかと思えば心が痛みますが。 今のぼくには何もできないから」

〇学校の廊下
武蔵慶士(そして。 夏休み前。 キミは戻ってきました)
武蔵慶士(最初は霊力が定まっていないようで体調悪そうで、しばらくは休みがちでした。 ぼくはそんなキミに我慢ができなくなり)
武蔵慶士(『やっと見つけた』 そう呟いた。 キミは驚いていた)
水城明里「弁慶?」
武蔵慶士(あの頃のようにキミは呼んでくれた。 ぼくは囁くように言った)
武蔵慶士「はい。キミの弁慶ですよ」
武蔵慶士(教師と生徒。 しかも受け持ちの。 学校にバレたらぼくは教師をできないでしょう。 それでも、キミのそばに居たいんです)
武蔵慶士(そう思って付き合って欲しいと言いました)
水城明里「そんなの今さら聞かなくても私は弁慶、あなたのモノ」

〇城の回廊
女子生徒Ⅰ「あんたさー、1年のくせに生意気なんだよね」
  これを聞いたのは偶然。
女子生徒Ⅱ「そうそう。武蔵先生の迷惑も考えなさいよ!あんたなんかと釣り合うわけないでしょうが!」
女子生徒Ⅰ「黙ってないでなんとか言いなさいよ!」
水城明里「・・・・・・・・・・・・」
  それから。
  明里さんは生徒たちの気がすむまで何も言わずに耐えた。
  それを見て明里さんを守る方法はこれしかない。
  だから。
  あの場所で記憶を塗り替えたいんだ。

〇雪に覆われた田舎駅
水城明里「慶士!」
武蔵慶士「明里。待ちました?」
水城明里「全然」
武蔵慶士「じゃあ、行きましょうか?」
水城明里「うん!」
武蔵慶士(手をつなぐとかなり冷えていた)
武蔵慶士「全くこんなとこに冷えているのに」
水城明里「私が楽しみで早く来ちゃっただけなの!!」
武蔵慶士(明里、キミはっ。 そんな可愛いことをこんなとこで言わないで欲しい)
水城明里「へっ!? ちょっ慶士?」
武蔵慶士「誰も見てないですから」
水城明里「で、でもっ」
武蔵慶士「じゃあ行きましょうか??」

〇温泉旅館
武蔵慶士(東京から電車で8時間ちょっと。 途中2、3回乗り継ぐ)
水城明里「うわぁ! すっごく綺麗だね」
武蔵慶士「喜んでもらえてなによりです。 先に旅館に行きましょうか」
  旅館に荷物を置き、平泉の町を歩いてまわることに。

〇広い和室
武蔵慶士「明里。 寒いからきちんと着込まないと」
水城明里「大丈夫だよ。 それに寒かったら・・・・・・慶士がぎゅってしてくれるでしょ?」
武蔵慶士「・・・・・・・・・」
武蔵慶士(その上目遣い誰から教わったの? 全く 無自覚に煽ってくれて)
武蔵慶士(明里は頷いてくれるだろうか? 明里のために買った指輪。 サイズは大丈夫なはず!)
武蔵慶士(あの時果たせなかった約束を。 言えなかったセリフを。 ぼくのお嫁さんになってほしいと)
水城明里「楽しかったね、慶士」
武蔵慶士(明里と平泉の町を散策してまわった。 あの頃のあの時の話をせずに。 楽しかったとはしゃぐ明里は年相応だと思う)
武蔵慶士(いや。 年相応より 少し? いや、かなり幼く見える。 その姿がとても愛しくて仕方ない)
武蔵慶士「明里。 お風呂の前に夜景見に行きませんか??」
水城明里「夜景? 行く!見に行く!」
  しばらくして。
  夕飯の時間らしく部屋に運ばれてきた。
水城明里「魚、すっごく美味しそう」
武蔵慶士「明里に喜んでもらえて嬉しいです」
武蔵慶士(明里は食べる時は美味しそうに食べる。 見てるこっちが嬉しくなるように)

〇東京全景
武蔵慶士「明里。 そろそろ行きましょうか?」
水城明里「うん!」
武蔵慶士「・・・・・・また、そんな薄着で」
水城明里「えー寒くないよ」
武蔵慶士(明里は寒いのに何故か着込むというのをしない)
武蔵慶士「せめて、これ着て」
武蔵慶士(セーターぐらい着てくれないと、風邪ひいちゃうから)
水城明里「うわぁー! 慶士、綺麗」
  教えてもらった場所は街が見渡せるぐらいに綺麗だった。
武蔵慶士「喜んでもらえてなによりです。 明里、話があります」
水城明里「なに?」
武蔵慶士「これを」
  俺はジュエリーケースに入った婚約指輪を渡す。
水城明里「え、これって」
武蔵慶士「そうです。 明里、あの時はできなかったけど。 ぼくと結婚して下さい」
水城明里「いいの? 私、慶士のお嫁さんになって」
武蔵慶士「あの時は頼朝殿がいたから言えませんでした。 でも、本当はキミを俺のお嫁さんにしたかったんです」
武蔵慶士「明里、ぼくの家族になってくれませんか?」
  そういうと明里は抱きついてきた。
水城明里「返事は決まってるよ!私、慶士の家族になる!」
武蔵慶士(元気いっぱいに返事してくれた。 キミはこれからもぼくが守りますから。 そして。 明里の額に軽くキスした)
水城明里「額にだけ?」
武蔵慶士「唇がよかった?」
  ぼくがそういうと明里は恥ずかしいからか、ぼくの胸元に顔を埋めてきた。
水城明里「慶士の意地悪」
  明里の唇に軽くキスをした。
武蔵慶士「これ以上はお預け」
水城明里「えー」
武蔵慶士「これ以上は明里のご両親に挨拶して、許可もらってから」
武蔵慶士(明里のご両親への挨拶が最大の難問なんですが)
水城明里「あんな人たちに挨拶なんかいいよ! おばあちゃんと弟と愁一郎様にだけしてくれたら」
  ほら。
  明里はご両親が嫌いだから。
  
  
  
  それよりも。
  スミレ殿にも龍輝くんにも挨拶はしますよ?
  でも、愁一郎さんにはする必要ないでしょ?

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