カルキノス

安藤・R・ゲイツ

第2話 『天体観測会』 (脚本)

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〇豪華な客間
梵嵐「・・・凪?」
梵嵐「凪なの? ねえ!?」
醍醐蓮介「嵐! ひとりで行くな!!」
岡崎大志「チッ・・・単細胞どもが!」
正岡きらり「や、やだ、置いてかないで」
鎧坂蕗子「私たちも行きましょう!」

〇洋館の廊下
  廊下の突き当りには、樫材(かしざい)の大扉があった。
醍醐蓮介「ここ」
鎧坂蕗子「観測室」
正岡きらり「えっ、入るの? 嫌よ絶対!」
正岡きらり「も・・・もうやだぁ! なんなのほんとなに!?」
正岡きらり「ねぇ、ここから出ようよ!」
岡崎大志「勝手に行け」
正岡きらり「うぅ・・・ひとりはやだから言ってるのに」
醍醐蓮介「・・・入ろう」
岡崎大志「突っ立ってても埒が明かねえしな」
梵嵐「うん」
  大志たちが部屋に入っていくが、正岡は体が震えて動くことができない。
  そんな彼女の前にスッと手が差し出された。
鎧坂蕗子「行きましょう。ひとりにならない方がいい」
正岡きらり「あ、ありがとう・・・」
  正岡は蕗子の手をとると、彼女の手が微かに震えていることに気づいた。
正岡きらり「手・・・震えて」
鎧坂蕗子「大丈夫です、私がついていますから落ち着いて」
正岡きらり「あ・・・はい」
正岡きらり(この子も怖いんだ)
  蕗子は正岡の手を引きながら、観測室へと続く扉の中に入っていった。

〇観測室
醍醐蓮介「特別変なところはなさそうだけど」
岡崎大志「『凪』っつってたけど、あいつがいるわけないだろ」
梵嵐「私が見間違えるわけない。 それにあの声、凪だし」
岡崎大志「自分の声じゃねえの、そっくりだし」
正岡きらり「そっくり?」
醍醐蓮介「これ」
  蓮介は棚から写真立てを取り上げると、正岡に手渡した。
正岡きらり「あ・・・双子」
正岡きらり「えっと、こっちの右の子が凪ちゃん?」
梵嵐「それは私。凪のほうが丸顔じゃない」
岡崎大志「いや、わかんねえから」
梵嵐「あんたはなんでそうデリカシーないの!」
正岡きらり「で、その凪ちゃんが、あの・・・なんで化けて出る、みたいになってるの?」
  正岡の言葉に嵐はぐっと睨(にら)み返すが、途端にしゅんとしてしまう。
梵嵐「・・・・・・」
岡崎大志「自殺したからだよ」
正岡きらり「あ、ごめ・・・」
梵嵐「死んでない」
醍醐蓮介「正確には自殺未遂なんだけど、まだ目が覚めてないんだ」
鎧坂蕗子「心因性のものじゃないかと言われているんだけれど・・・」
岡崎大志「そもそも化けて出るとか言われても復讐されるような覚えはねえけどな」
梵嵐「だから死んでないって言ってる!」
岡崎大志「・・・わかってるよ」
岡崎大志「あいつは死んでもねえし、復讐なんてガラでもねえ」
岡崎大志「だからこそ、お前の見た『凪』は何なのかって話だ」
梵嵐「・・・それは」
鎧坂蕗子「なにかはわからない。 でも、あまり歓迎はできないわね」
正岡きらり「・・・それで、結局その声の子はどこにいったの?」
正岡きらり「この部屋にはいないんですよね・・・?」
梵嵐「・・・知らない。 ただ声を追っかけただけなんだから」
醍醐蓮介「あっ!!」
正岡きらり「えっ!?」
  蓮介が声をあげて正岡の背後を指さすと、その場の全員が驚いて振り返った。
醍醐蓮介「冗談」
岡崎大志「おまえな・・・」
醍醐蓮介「でも、張りつめてばっかりだと身が持たないだろ?」
醍醐蓮介「ちょっと抜こう。綺麗だぞ」
  蓮介の指は窓の外を示していた。
  東側のガラス窓の向こう側には、満点の星空と広いルーフバルコニーが見える。
正岡きらり「あ・・・すごい眺め。気づかなかった」
鎧坂蕗子「この辺りは、宇宙航空研究機構の観測センターがあるほど星が綺麗なんです」
鎧坂蕗子「知らないということは、正岡さんはこの街の方ではないのですね」
正岡きらり「みたい、ですね・・・」
正岡きらり「でも、これはちょっと外の空気吸いたいかも」
鎧坂蕗子「出てみましょうか」
鎧坂蕗子「確かに蓮介君の言う通り、気持ちを切り替えたほうがいい」
  蕗子は蓮介に近づいてこっそり耳打ちした。
鎧坂蕗子「ありがとう」
醍醐蓮介「いえいえ、どういたしまして」
  一同はガラス面に備え付けられたルーフバルコニーへと続く扉へと歩いていく。
  そのとき、遠くから柱時計が鳴る音が聞こえてきた。
  ボォン・・・ボォン
  正岡はバルコニーへの扉を開けようとしてノブに手をかける。
正岡きらり「あれ、開かない」
鎧坂蕗子「そんなはずは」
  正岡に代わってドアを開こうとする蕗子を蓮介が制した。
醍醐蓮介「俺が」
  蓮介は蕗子に代わってドアノブを捻(ひね)ろうとするが、やはり扉はびくともしない。
醍醐蓮介「なんで──」
岡崎大志「どけ!」
  椅子を持ち上げた大志が、扉に向かって思い切り投げつけた。
  扉にぶつかった椅子は衝撃で歪(ゆが)むが、扉は傷ひとつつかなかった。
正岡きらり「なにこれ、なんなのよこれ」
  蕗子はハッとして観測室の入口へ駆けていく。
  扉に手をかけ、グッと力を込め──
鎧坂蕗子「・・・!」
  扉は勢いよく開き、蕗子はその反動で尻餅をついた。
鎧坂蕗子「よかった・・・」
正岡きらり「あ、う、後ろ・・・後ろ!!」
鎧坂蕗子「え」
  ふふ

次のエピソード:第3話 『第一の事件』

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