美白の森

山本律磨

美白の森(脚本)

美白の森

山本律磨

今すぐ読む

美白の森
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇霧の立ち込める森
摩耶「・・・」
摩耶「・・・?」
摩耶「・・・声?」
摩耶「私を笑ってるの?」
摩耶「それとも・・・」

〇黒
美堂「・・・」
美堂「また一人やって来る」
美堂「時を止めに・・・」

〇白
  美白の森

〇皇后の御殿
美堂「美堂です」
摩耶「凄い・・・まるで」
美堂「映画のようですか?」
摩耶「セットとかではよく見かけますが。全部、本物ですよね」
美堂「まあ、ここで暮らしておりますので」
美堂「どうぞ、しばしおくつろぎを」
摩耶「失礼します」
美堂「なにか温かいものでもお持ち致しましょう」
摩耶「いえ、大丈夫です」
摩耶「早速はじめて下さい」
美堂「・・・」
美堂「早速と言われましても・・・まあ手術するという訳でもありませんし」
摩耶「魔法・・・でしたっけ?」
美堂「・・・はい」
美堂「できれば馬鹿馬鹿しいと笑ってお帰りいただきたいものですが・・・」
摩耶「笑いません」
摩耶「そしてもう、二度と戻る気もありません」
美堂「・・・」
美堂「笹森さん。再度お伺い致します」
美堂「あなたには『美』しか残らない」
美堂「それでも宜しいですか?」
摩耶「・・・」

〇日本庭園
アイドルくずれ「ちょっと~今ってなに待ち~?」
モデルくずれ「笹森変身化粧待ちよ」
女子アナくずれ「え~これが噂のアレですか~?」
アイドルくずれ「だから無理あるんだって。なんでうちらとあの人が同じ年齢って役柄なわけ?」
モデルくずれ「一回だけのゲストで良かったわね」
女子アナくずれ「大御所って訳でも無し数字持ってる訳でも無し。何の枕なんでしょーね」
  『笹森さん入りまーす!』
  『・・・♪』
「おはよーーございまーーす。おつかれさまでーーす」

〇ホテルの部屋
大物P「おーい。摩耶ちゃーん」
大物P「まだー?」
大物P「メイクとかいいからさー」
  『・・・』
大物P「・・・チッ」
大物P「頼むよ。オバちゃーん」

〇校長室
社長「いつまでも若い役に拘っているから、次の仕事に繋がらないのよ」
社長「いっそ結婚でもする?」
社長「ママタレに路線変更すれば新しい道も見えてくるわよ」
マネージャー「そうは言っても、最近のバラエティ番組は結構難しいですよ」
マネージャー「摩耶ちゃん。イジられるのとか大丈夫?」
社長「って、この時点で機嫌悪くなってるくらいだから無理ね」
社長「だったらもう、被害者役とかママ友その1とかをこなしてくしかないわね」
マネージャー「主婦なんて歳相応じゃないか」
  『・・・!』
社長「いい加減にしなさい!もうアイドルだった時代は終わったのよ!」
  『・・・!』
社長「摩耶!」

〇お台場
女子「ねえ今すれ違ったオバサン。笹森麻耶じゃない?」
女子「え?誰?」
女子「XYZ99の初期メン」
女子「そんなの覚えてないよ。うちら小学生だったじゃん」
女子「ま、どうでもいいけど」
男「ん?今のオバサン誰だっけ?」
男「よくドラマで見かけんだけどな~」
女「私テレビ見ないからよく分かんな~い」
男「間違いねーよ。昔アイドルだった・・・」
女「あんまりオッサン化進んだら別れるよ」
男「女、怖え~」
アイドルくずれ「だから無理あるんだって。なんでうちらとあの人が同じ年齢って役柄なわけ?」
モデルくずれ「笹森変身化粧待ちよ」
女子アナくずれ「大御所って訳でも無し数字持ってる訳でも無し。何の枕なんでしょーね」
大物P「頼むよ。オバちゃーん」
マネージャー「主婦なんて歳相応じゃないか」
社長「いい加減にしなさい!もうアイドルだった時代は終わったのよ!」

〇お台場
  『・・・雪』
摩耶「・・・きれい」
摩耶「このままずっと降り続ければいいのに」
摩耶「ずっと・・・永遠に・・・」

〇華やかな広場
摩耶「・・・」
美堂「私は思うんです」
美堂「森はいつだって美しい」
美堂「春の緑、夏の青、秋の赤、冬の白」
美堂「その全てが、いつも」
美堂「もう一度、見つめてみませんか?白以外の美しさを」
摩耶「・・・」

〇広い公園

〇稽古場(椅子無し)

〇一戸建て

〇アパートの中庭

〇中庭

〇華やかな広場
摩耶「・・・」
摩耶「嫌よ」
美堂「そうですか」
美堂「・・・では」

〇華やかな広場

〇白
摩耶「・・・」
摩耶「・・・きれい」

〇華やかな広場
美堂「凍りついた世界の中で時を止める」

〇霧の立ち込める森
男「そんなものがどうして美しいんだ?」

〇霧の立ち込める森

コメント

  • 時折インサートされる笑い声が本当に怖かった。人は罵倒されるよりも嘲笑される方が心をえぐられるんですね。「美」しか残らない「空白の場所」だから美白の森なのか…。ルッキズムとエイジズムの犠牲者が永遠に閉じ込められている森は樹海より怖くて切ない。ラストシーンで魔法の世界から現実に読者を引き戻す手法もお見事でした。

  • 最後のワンシーンでタイトルピッタリの神秘さと恐怖がスッと頭に入ってきました。自分自身を客観視できない大人は少なくないかもですね。

ページTOPへ