勇者様は○○したい

氷雨涼

第1話 勇者様は会話したい(脚本)

勇者様は○○したい

氷雨涼

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〇荒廃した教会
  我が国には七人の勇者様がいる
  ある勇者様は仲間達と共に邪龍を討ち滅ぼし姫を救い
  ある勇者様は数多の盗賊団を壊滅させて英雄と称えられ
  ある勇者様は無線飲食で捕まって勇者の称号を剥奪され
  他の勇者様は・・・まあいいとして
  そんな勇者様の中の一人が目の前に居る
  違うな、ある、落ちてる
シフエル「どうしたらいいのこれ?」
  ここは廃墟となった教会。 迷える魂でもいるなら祈りを捧げようとたまたま立ち寄ったんだが、まさかこんな・・・
シフエル「凄くダイエット頑張った人とかじゃないよな」
  さすがに違うことはわかる、しかも強い神力を感じるのだ
  この世で神力を持つのは神自身か、神の加護を受けた勇者か、神の授けた神器、このどれかのはずだ
シフエル「この骨が・・・神様」
シフエル「なわけないよな、勇者が死んでるどころの騒ぎじゃねえわ、世界の終わりだろ」
犬「わふわふ!! ガリガリ、ペロペロ!!」
  犬がどこからともなく現れて、謎の骨をむしゃぶりつくしている
シフエル「こら、やめろやめろ・・・」
シフエル「だがどの勇者だ? 聖勇者が龍殺しで、火勇者が盗賊殺し、無線飲食が地勇者だったよな」
シフエル「残りは情報も無いし特定は難しいか。 もういっそ知らん顔して埋葬だけして」
  『コキッ』
シフエル「ん? なんの音だ、お前か? 犬よ」
  『コキッ』
シフエル「こっちか!!」
シフエル「なにっ!? スケルトンだと!? 仮にも勇者として神力を宿していながら邪神に負けたかっ!!」
シフエル「ディヴァインレイ!!」
シフエル「チッ!! 短縮詠唱では威力が足りんか、ならば真詠唱をっ!!」
???「──!?──カタカタ」
  スケルトンが両手を前に突き出しブンブンと左右に振っている
???「カタカッタカタ!?」
シフエル「ん? 何言ってるのかさっぱりわからん!! その首の上のカスタネットごと消えろ!!」
???「カタ──カタ──・・・」
  スケルトンは両手を高々と上げて無抵抗の意思を示している?
シフエル「どういう事だ、敵対の意思は無いと?」
  スケルトンはウンウンと激しく頭を上下した
シフエル「むう・・・よし、なら両手を上げたそのままで後ろを向いて動くな」
  スケルトンは素直に言うとおりにした
シフエル(完全に無防備に背を向けるか。 さすがにこれを討つ事は出来んな・・・)
シフエル「よし、敵対の意思が無いことは分かった、両手を下ろしてこっちを向いてくれ」
シフエル「それで・・・喋れんのだよな?」
  コクコクと頷く
シフエル「お前は、勇者なのか?」
  コクコク
シフエル「人としての記憶を保っているんだな?」
  コクコク
シフエル「面倒臭いなこれ!?」
シフエル「勇者なら・・・加護もある様だし魔法は使えるだろう?」
  ウーン・・・コクッ
シフエル「なんだ、あまり得意ではないか? まあ詠唱も出来ないから仕方ないか」
シフエル「そんなに難しい魔法じゃない、そもそも無詠唱で使うことが前提の魔法だしな」
シフエル「いいか、まず風魔法でだな・・・」
シフエル「よし、やってみろ」
???「カ・・・コ・・・」
???「・・・コ、コケコッコーーー!!」
シフエル「初めの言葉がそれでいいのかお前は!?」
???「コ・・・」
???「クックドゥードゥルドゥーーー!!」
シフエル「同じじゃねーかっ!!」
???「コ・・・こンにちワ」
シフエル「お、大分マシになってきたな」
???「ぼクの・・・なまエは、まコと」
シフエル「ま、こ、『マコト』だな!?」
???「そウ!!」
シフエル「で、マコトは何の勇者なんだ? 水か風辺りか?」
???「ぼくハ、ほねダよ。 ほネのゆウしゃ」
シフエル「ほね・・・?」
シフエル「骨勇者だと!?」
シフエル(骨勇者という事は、加護神は骨神!? 教会に属する七神に入ってはいるものの、信者もいねぇ司祭もいねぇ謎の神だぞ!?)
骨勇者マコト「ドうシたの?」
シフエル「ん、いや、それよりまだ少し聞き取りにくいな、声帯魔法を調整するぞ」
骨勇者マコト「ボくの名前はマコト、骨勇者デす」
シフエル「よし、まあもう少しだがそれは慣れれば大丈夫だろう」
シフエル「で、俺の名はシフエル、聖神の司祭だ」
骨勇者マコト「ヨろしくね、シフエル」
シフエル「ああ、よろしく」
犬「わふっ!!」
シフエル「戻ってきたのか、マコトよこいつはお前の飼ってた犬か?」
骨勇者マコト「チがうよ、でもいつもボくの骨かじってたね」
骨勇者マコト「ハいどうぞ」
犬「わふっ!! ペロペロ!!」
シフエル「いいのかお前、それお前の体そのものだろうが」
骨勇者マコト「ダいじょうぶだよ、ナんかすぐ治っちゃうんだよね」
  犬が骨を齧る様子を見るが、そもそもが加護の影響か異常に頑丈であり、多少の傷が出来てもすぐに治ってしまっている
シフエル「なんだこりゃ、骨神ってのはこんなことが出来るのか?」
骨勇者マコト「ア、もしかしたら今ナら出来るかも」
骨勇者マコト「ワが世の生命の軌跡、アさひの如く昇り、ヨるの帳に写せ!! 『キ憶転写』!!」

〇教会の中
骨神「よっし、これで君に我の加護を宿せたべや」
骨神「いんやいんや、加護を宿すのなんて三百年ぶりくらいだし、ちょっと張り切っちゃったっしょ!!」
骨神「なんせ、初めの邪神封印して貰った勇者以来だもんで、上手く出来たかわかんねよこれ」
骨神「どだ? なまらパワー感じるっしょ?」
骨神「よっしよっし、したっけちょっと魔法試してみるべや、神力だけじゃなくて魔力も大分増えたはずっしょ!!」
骨神「魔法はこうな、こうするっしょ」
骨神「しゃっこい!! なまらしゃっこい!?」
骨神「あー、なまらびびった・・・」
骨神「あ、大丈夫大丈夫、びびっただけっしょ」
骨神「他にも後で色々教えてやっからけっぱってな」
骨神「したっけな、頼みたい事があっ────」

〇荒廃した教会
シフエル「くっ・・・!!」
シフエル「い、今のは・・・記憶転写、伝承に残ってる魔法だぞ。 まさか使えるとは・・・」
シフエル「おいマコト、今のはどういう・・・」
シフエル「まっマコトーーー!!」
シフエル「魔力が枯渇寸前じゃないか!! 伝説級の魔法を使った上にまさかの神の姿を写しやがったんだからな!?」
シフエル「だがまだ神力は減った様子が無いな、人が神力をこれだけ宿せるなどと信じられん・・・」
骨勇者マコト「アーびっくりした・・・」
シフエル「そりゃこっちの台詞だ!! 神を写すなんぞ存在が消滅してもおかしくないぞ、もう絶対に止めろ」
骨勇者マコト「ウん、ヤらないよ」
シフエル「それにしてもマコトよ、あれは骨神なんだよな?」
骨勇者マコト「ソうそう、あれは加護ヲ貰った時だよ」
シフエル「そう・・・あれが骨神・・・」
シフエル「骨一本もねーじゃねーか!?」
骨勇者マコト「ア、無かったね」
シフエル「ねじゃねーよ、なんで無いの?」
骨勇者マコト「エ? 知らないけど」
シフエル「まあそりゃそうか、神が人の尺度で判断出来るわけねーわな」
シフエル「それでだ、多分魔力枯渇のせいで途中で終わったんだが、骨神の頼みはなんだったんだ?」
骨勇者マコト「エっと、それはね────」

〇草原の道
シフエル「くそっ、まさか邪神が復活するとはな・・・」
  マコトが言うには、骨神からは邪神が復活するので再び封印するのを手伝って欲しいという事なのだそうだ
シフエル「お前はその頼みを受けたんだな?」
骨勇者マコト「ウん」
シフエル「だが、それで授けられた加護によりその体になってしまった・・・」
骨勇者マコト「スかすかだよね!!」
シフエル「俺ら司祭は、勇者の助けになるよう修行を欠かさず続けて来たんだ」
シフエル「骨司祭なんぞ・・・聞いたことが無い」
シフエル「司祭どころか信者がいるとも聞いたことが無いし、教会も無い」
骨勇者マコト「ア、教会ならさっきまでいタあそこだよ!!」
シフエル「完全に廃墟だったじゃねえか・・・」
骨勇者マコト「ダよねぇ・・・」
シフエル「だからな、骨司祭が見つかるまでは俺がお前のサポートをしてやる」
骨勇者マコト「ホんとう!?」
シフエル「ああ、よろしくな」
骨勇者マコト「ウれしい!! じゃあこれからモいっぱいお話デきるね!!」
シフエル「ん? まあ別に話くらいいくらでもしてやるよ」
骨勇者マコト「ウわーい!!」
シフエル「話くらいでそんな・・・お前、あそこでどれくらいあんな状態だったんだ?」
骨勇者マコト「エっと、覚えてないけド・・・」
骨勇者マコト「タぶん五年か十年くラいかな?」
シフエル「邪神まだ復活してねえの?」
骨勇者マコト「サあ?」
シフエル「まあいいや、取り敢えず情報が必要だな」
犬「ひゃんひゃん!! ワフッ!!」
骨勇者マコト「ハいどうぞ」
犬「ワフッ!! ガリガリ!!」
シフエル「付いて来るのか? お前」
犬「バウバウ!! ワフーン!!」
シフエル「わかんねぇ」
シフエル「ま、ついてくるなら好きにしろ」
シフエル「じゃ、名前つけてやれよ」
骨勇者マコト「ボくがつけていいの?」
シフエル「どう見てもお前に夢中だろ」
骨勇者マコト「ジゃあね・・・『ホネスケ』!!」
ホネスケ「わっふぅーん!!」
シフエル「いいのか・・・? まあ嬉しそうだしいいか」
シフエル「よし、まずは町だな、行くぞ!!」
  こうして俺と、変な骨と、妙な犬の旅が始まる
ホネスケ「ワフッ、ガリガリ!!」
骨勇者マコト「ワっ!? 直接齧るのはヤめてよー」
  ホネスケが来るのは
  マコトが好きだからなのか?
  マコトの味が好きだからなのか?
  どっちなんだろうな

次のエピソード:第2話 勇者様は食事したい

コメント

  • 無駄にイケメンな死増えるじゃなくてシフエル、カタコトでカタカタしている骨勇者マコト、隣の晩ご飯じゃなくて隣の骨をかじりにくるホネスケの珍道中が楽しみです。骨神が北海道出身だとは知りませんでした。てか、そもそも骨神ってなんだろう。

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