第九話 面接番号三番 独占欲強め妹 雪根佳乃子 その3(脚本)
〇綺麗なリビング
ハートママ「ハートちゃん!!」
佐藤恋心「なに?」
ハートママ「私、今日は、お友達と遊んでくるからね」
佐藤恋心「はいはい」
ハートママ「お昼ご飯は作っておいた方がいい?」
佐藤恋心「あー」
佐藤恋心「公園横のスーパーまで」
佐藤恋心「買いに行ってくるからいいよ」
ハートママ「はーい」
ハートママ「じゃ、よろしくね!!」
佐藤恋心「うん」
〇広い公園
宮坂皐「ということで」
宮坂皐「面接番号三番さんの面接を開始しますね」
宮坂皐「では、お名前をお聞かせください」
雪根佳乃子「雪根佳乃子と言います!」
雪根佳乃子「よろしくお願いします!」
雪根サトシ「えぇ?」
宮坂皐「どうしたんですか?」
宮坂皐「雪根さん」
宮坂皐「いや」
宮坂皐「サトシさん」
雪根佳乃子「どーしたの?おにーちゃん」
雪根サトシ「あのさぁ」
雪根サトシ「なんで佳乃子が面接を・・・・・・」
宮坂皐「それはもちろん」
宮坂皐「佳乃子さんも受験者だからですよ」
???????
雪根サトシ「はぁ??」
雪根サトシ「意味わかんないんだけど・・・・・・」
雪根サトシ「だって、佳乃子は俺の妹で」
雪根サトシ「彼女っていうのはおかしいじゃないか」
宮坂皐「いいえ、おかしくありません」
宮坂皐「兄と妹の禁断カップルなんて、フィクションの世界でよくあることじゃないですか」
宮坂皐「なにをそんなに辟易しているんですか?」
雪根佳乃子「そーだよ!おにーちゃん!!」
雪根サトシ「でも、さすがにこれは・・・・・・」
雪根佳乃子「え・・・・・・?」
雪根佳乃子「そんなに佳乃子のこと嫌なの?」
雪根佳乃子「佳乃子より、昨日の女の人がいいの?」
佳乃子は、俺の命を縛り付ける、例のリモコンをこちらに見せつけてくる。
雪根サトシ「い、いや・・・・・・別にそんなことはないんだがな」
こんなの、反駁できるわけないだろ!
雪根サトシ「あとさぁ」
雪根サトシ「ここ公園だよ」
雪根サトシ「こんな場所で面接とか」
雪根サトシ「完全に不審者じゃん・・・・・・」
宮坂皐「そうですか!」
宮坂皐「では、前置きが長くなりましたが」
宮坂皐「面接を開始しますね!」
雪根サトシ「人の話聞けよ!!」
雪根サトシ「はぁ・・・・・・」
宮坂皐「では、繰り返しにはなりますが、面接番号とお名前を教えてください」
雪根佳乃子「はい!!」
雪根佳乃子「面接番号三番、雪根佳乃子といいます!」
雪根佳乃子「よろしくお願いします!」
宮坂皐「はい、よろしくお願いします」
宮坂皐「と、言いたいところなのですが」
宮坂皐「私ともう一人、面接官を用意しました」
雪根サトシ「え?」
雪根サトシ「それって俺のこと?」
宮坂皐「正解!」
宮坂皐「もちろん、違います!!」
???
こいつ、いま、「正解!もちろん違います」って言わなかった??
文の構造が世紀末なんだけど
宮坂皐「では、よろしくお願いします」
見覚えのある容姿、聞き覚えのある訥々としたしゃべり方
なつ夏喜「よ、よろしくお願いします」
雪根サトシ「な、なんで君が・・・・・・」
なつ夏喜「今回は、僭越ながら、私も面接官として参加させていただきますね!」
雪根サトシ「マジかよ・・・・・・」
ものすごくばつが悪い・・・・・・
ていうか、昨日あんなことがあって
次は面接官側って・・・・・・
宮坂皐「ということで、今回は面接官二人体制で進めていきますね!」
宮坂皐「まず、雪根サトシさんに好意をもった理由を教えてください」
雪根サトシ「えぇ??」
雪根佳乃子「そ、そんなの覚えてないよ」
雪根サトシ「今、俺のこれまでの人生が、崩れ落ちるような言葉が、聞こえた気がするんだけど」
宮坂皐「気のせいでしょう」
気のせいなのか??
宮坂皐「では、雪根サトシさんの、どこに好意を持っているかについて、教えてください」
雪根佳乃子「そ、そうだな・・・・・・」
雪根佳乃子「いつも、だらけてるところとか?」
雪根佳乃子「いつも、足が臭いところとか?」
雪根佳乃子「いつも、食べ終わった後の食器を洗わないところとか?」
雪根佳乃子「とにかく」
雪根佳乃子「ぜーんぶかな」
雪根サトシ「佳乃子・・・・・・」
雪根サトシ「それ、全部俺のダメなとこじゃん」
なつ夏喜「でも、そういうところも魅力的ですよ」
雪根サトシ「あぁ、フォローありがと」
雪根サトシ「でもねぇ、今無性に死にたいんだよ」
雪根佳乃子「だ、大丈夫?おにーちゃん??」
お前が元凶なんだけど・・・・・・
雪根佳乃子「そんなに、苦しいんだったら」
雪根佳乃子「殺してあげよっか?」
雪根サトシ「佳乃子よ、とても、魅力的なご提案をどうもありがとう・・・・・・」
雪根サトシ「丁重にお断りするよ」
宮坂皐「好きなところが、たくさんあるのは良いことですね!」
宮坂皐「では、次の質問です」
宮坂皐「あなたが彼女になったとき、」
宮坂皐「サトシさんに、どのような貢献ができますか?」
雪根佳乃子「こ、貢献??」
雪根佳乃子「そ、そうだな・・・・・・」
雪根佳乃子「佳乃子は、おにーちy・・・・・・じゃなくて、ニートのお世話なら何でもできる!」
雪根サトシ「妹よ」
雪根サトシ「兄をニートにしないでくれ」
なつ夏喜「わ、私もそれくらいなら・・・・・・できます!!」
雪根サトシ「なんで、張り合おうとしちゃうの?」
宮坂皐「なるほど、ニートの世話ができるのは素晴らしい才能ですね」
雪根サトシ「君たちは、あくまでも俺をニートの設定で進めていくんだね・・・・・・」
宮坂皐「では、次に短所を教えてください」
雪根佳乃子「可愛すぎるところです!!」
なんで、屈託もなくそんなことが言えるんだ??内の妹は・・・・・・少しは謙遜とかしたらどうなんだ?
いや、まぁ、別に可愛くないわけではないんだけど・・・・・・
宮坂皐「では、あなたをひとことで表すなら、何が思い浮かびますか?」
雪根佳乃子「えぇ?」
雪根佳乃子「ひとことって・・・・・・」
雪根佳乃子「例えば、どんなの??」
宮坂皐「外来語とか、四字熟語でもいいですよ!」
雪根佳乃子「な、なるほど!!」
雪根佳乃子「じゃ、”八方美人”!」
雪根佳乃子「かのこ、きれいだから!」
それ、多分だけど、使い方間違えてる・・・・・・
宮坂皐「なるほど!!それは素晴らしいですね!」
なつ夏喜「あ、あの・・・・・・」
なつ夏喜「次は、私の方から質問させていただいてもよろしいでしょうか?」
雪根佳乃子「はい!!」
なつ夏喜「お兄さんの下着の色は?」
雪根佳乃子「黒です!」
なつ夏喜「お兄さんが隠している大人向けの本はどのようなタイプでしょう!」
雪根佳乃子「○○ものです!」
なつ夏喜「おにいさんの好きな食べ物は?」
雪根佳乃子「ティッシュです」
なつ夏喜「お兄さんの嫌いな食べものは?」
雪根佳乃子「机です!」
なつ夏喜「お兄さんの志望大学は?」
雪根佳乃子「おにーちゃんはE判定なので、諦めさせます」
なつ夏喜「お兄さんの好きな服は?」
雪根佳乃子「かのこの服!!」
なつ夏喜「お兄さんの初恋の人は?」
雪根佳乃子「かのこです!」
なつ夏喜「お兄さんの趣味は?」
雪根佳乃子「かのこです!」
なつ夏喜「お兄さんの交際歴は?」
雪根佳乃子「かのこだけ!!」
なつ夏喜「お兄さんのタイプの女性は?」
雪根佳乃子「かのこだけ!!」
雪根サトシ「ちょ、ちょっと・・・・・・」
雪根サトシ「さっきから、とんでもない質問してない??」
雪根サトシ「あと、佳乃子も半分ぐらい嘘言ってるじゃん」
雪根佳乃子「でも、おにーちゃんティッシュ好きじゃん!」
雪根サトシ「好きじゃねーよ!!」
雪根サトシ「あと、食ったことないから・・・・・・」
雪根サトシ「それに・・・・・・」
雪根サトシ「なんだよ、大人向けの本って・・・・・・」
雪根佳乃子「でも」
雪根佳乃子「おにーちゃん、○○もの好きでしょ?」
雪根サトシ「好きじゃねーよ」
雪根サトシ「あと、そんなの内にないから・・・・・・」
雪根佳乃子「でも、E判定なのは事実だよね」
雪根サトシ「・・・・・・・・・・・・」
こんな面接がなかったら、俺は今頃・・・・・・
ちくしょー
宮坂皐「では、最後に、雪根サトシさんに質問はありますか?」
雪根佳乃子「質問・・・・・・か」
雪根佳乃子「そうだね・・・・・・」
雪根佳乃子「じゃ、かのこと、昨日の女の人どっちがいいの?」
雪根サトシ「えぇ・・・・・・」
なつ夏喜「・・・・・・」
なつ夏喜「わ・・・・・・私も気になります!」
佳乃子は気づいてないのか
まぁ、確かに昨日の”彼女”と今日の”彼女”が同一人物とは思えないよな
なぁ、佳乃子、お前が言っている、その女の人
すぐそこにいるんだぜ
と、言える空気ではないだろうな
八方塞がりじゃん
積んだわ。王手かけられてる。
どうすんだよ。この状況!!
宮坂皐「一体、どちらがお好きなんですか??」
煽ってくんじゃねぇよ!
ちくしょー
こういう場合、どうすれば良いんだ・・・・・・
落ち着け・・・・・・落ち着くんだ
宮坂皐「さぁ、答えてください」
宮坂皐「まぁ、別に私でも良いんですけどね」
あぁ、もう・・・・・・
雪根佳乃子「嘘・・・・・・つかないでよ」
雪根佳乃子「本心で言って・・・・・・」
嘘・・・・・・か
〇木造校舎の廊下
数日前の出来事が、急に俺の脳内を支配した。
佐藤恋心「もし、Eくんが、”嘘”でも僕のこと好きっていってくれたら」
佐藤恋心「僕が偽装カップルやったげるからね」
これは、ただの冗談かも知れない・・・・・・
でも、
使える。
〇広い公園
はぁ・・・・・・
なんで、こんなことを思い出してしまったんだ、俺は。
でも、これなら、いくつかの問題を、突破できるかもしれない
こうすれば、この面接を終わらすことができる・・・・・・かもしれない
その代わり、俺は”最低”な野郎になっちまうが・・・・・・
でも、かまわない
ぐちゃぐちゃにしてやる
雪根サトシ「お、俺は恋心(ハート)が好きなんだよぉぉ!!」
雪根佳乃子「え」
なつ夏喜「え」
宮坂皐「・・・・・・」
雪根佳乃子「な、何言ってるの?おにーちゃん」
あぁ、やっちまった
なつ夏喜「ハート?って?なんでいきなり・・・・・・」
なつさんは、ハートを知らないようだった。
それに関しては助かった。
問題は佳乃子だ。
雪根佳乃子「・・・・・・」
雪根佳乃子「・・・・・・」
雪根佳乃子「おにーちゃんのバカ!!」
雪根佳乃子「約束したのに!!」
佳乃子は、リモコンのボタンを押しやがった・・・・・・
雪根サトシ「え」
雪根サトシ「なにも起きない・・・・・・」
宮坂皐「はぁ」
宮坂皐「それは偽物ですよ」
雪根佳乃子「え」
雪根サトシ「え?」
宮坂皐「本物を渡すわけないじゃないですか」
宮坂皐「本物のリモコンは、私が持っています」
雪根サトシ「マジか・・・・・・」
雪根佳乃子「もう、知らない・・・・・・」
雪根佳乃子「もうやだ・・・・・・」
雪根佳乃子「帰る」
雪根サトシ「あ、ちょ、佳乃子!」
宮坂皐「面接番号三番 雪根佳乃子さんは、途中退室で、リタイアということで」
宮坂皐「不合格ですね」
退室っていうか
部屋じゃないんだけど・・・・・・
雪根サトシ「なぁ!待てよ、佳乃子!」
俺は、妹の背中を追いかけ、公園を後にした。