2 離れ行く者(脚本)
〇オフィスのフロア
黒崎瞬「お早う御座います・・・ってわぁ!」
葛城麗華「お早う!瞬!」
黒崎瞬「物は投げるな。一体何回言わすつもりだ?」
葛城麗華「瞬は真面目だなぁ。関心だけど、偶にはそう言うのも有りだと思うよ」
黒崎瞬「麗華に至っては何時もこんな感じに見えるんだが・・・・・・」
黒澤友樹「やぁ、二人共お早う」
黒崎瞬「お早う御座います、先輩」
葛城麗華「お早う御座います!」
黒澤友樹「はぁ・・・・・・」
黒崎瞬「先輩、その感じだと、また社長がやらかしたんですか?」
黒澤友樹「そうなんだよね。昨日社長の知り合いの女性と買い物してたらしくてね。内の収入で爆買いしててさ。昨日に至っては」
黒澤友樹「267万円も損失させられてたよ」
葛城麗華「な、何ですかそれ!?先輩、この前も確か・・・」
黒澤友樹「あぁ、止めたいのは山々なんだけど、社長は聞く耳なんて持ってくれない。本当酷い時は500万から1000万も浪費されるから、」
黒澤友樹「こんな事されてたら一年も保たないよ」
黒崎瞬「内の商品、宝石一つで50万、ちょっとしたアクセサリーで100万。只売るだけならまだしも、内の方から素材の取り寄せや」
黒崎瞬「ライフラインの維持費も有りますから、確かにこのままじゃ破算ですね」
葛城麗華「前から思ってたんだけど、先代の社長さんって皆が憧れる様な人だったんでしょ?なのに、息子さんで在る彼はどうして」
葛城麗華「あんな感じなの?」
黒澤友樹「そうだね。先代は社会人としても人としても素晴らしい人だ。だけど、息子さんのあの感じ、子育ては先代の力を持ってしても」
黒澤友樹「上手く出来なかったとしか言えないんだよね」
葛城麗華「全く、誰にでも良し悪しって有る物ね」
葛城麗華「でも一番肝心なのは、私達のお給料ですよね。あの社長を野放しにしたら」
黒崎瞬「まぁ、最悪自主退職って話に成るな」
葛城麗華「結局はそれね」
黒澤友樹「で、でもまぁ、ちゃんと話せば分かって貰える事も有るから!僕は今から社長室に行くよ!君達の事は僕が守るから!」
黒崎瞬「黒澤先輩。何度も言いますが、無理な事はしないで下さいね。自分の身体も大事ですから」
黒澤友樹「有難う!その事は善処するよ!」
葛城麗華「瞬、私としてはもうこの会社辞めても良い気がするのよ。ペース的に今のままじゃ」
黒崎瞬「だよな。良い機会だからあいつに相談持ち掛けるか」
〇個別オフィス
相葉正孝「五つ星ホテルのレストランのバイキングねぇ。あぁ言うのって貧乏人の行く所だと思ってたけど、麻子ちゃんが行きたいなら行こうか」
相葉正孝「それじゃあね」
相葉正孝「麻子ちゃんと一緒にホテル・・・!!今夜は楽しく成りそうだなぁ!!」
黒澤友樹「お早う御座います、社長」
相葉正孝「何だお前か。まぁ今日も何時も通りやっててよ」
黒澤友樹「いえ、そう言う訳にも行きません。私の話を聞いて下さい」
相葉正孝「あ〜はいはい」
黒澤友樹「社長もご存知の通り、最近我が社の経営が上手く行っておりません。このままだと社の存続が厳しく成るのは明白です」
黒澤友樹「どうか社長も、先代の為にもご自身の行動を今一度見直して、社長としての責務を果たして頂きたいと思います」
相葉正孝「う〜ん・・・それって要は内の商品が売れて無いって事だよね」
黒澤友樹「そう言う事に成ります。ですので、社長には今一度・・・」
相葉正孝「分かった。なら内の商品全部40%値上げね」
黒澤友樹「よ、40%!?待って下さい!とても現実的な方法とは言えません!!」
相葉正孝「まぁ落ち着けよ黒澤。売上が上がらないなら値上げして稼げば良いじゃん。父さんの店の客は皆父さんの宝石の大ファンだし、」
相葉正孝「皆喜んで買ってくれると思うよ」
黒澤友樹「考え直して下さい!内の社員の中には我が社に対する思い入れが有る者も居るんです!ご自身の身勝手でこんな事したら!」
相葉正孝「大丈夫だって!はい決定。もうこの話終わりだから。皆にはお前から話通して置いてね。俺これからディナーの約束が有るから」
相葉正孝「後宜しく〜・・・・・・」
黒澤友樹「・・・・・・仲間に・・・何て言い訳すれば良いんだよ・・・・・・」
〇オフィスのフロア
仕事終わりの時間、俺達は黒澤先輩から社長からの発言を聞かされ、言葉を失っていた。
黒澤友樹「と言う訳で、今後内の商品は社長命令に寄り全商品を40%増しにする事に成った」
男性職員1「黒澤さん!あの人それ本気で言ってるんですか!?」
女性職員1「あの人は普段何を見ているのよ・・・信じられない・・・」
黒澤友樹「皆の言いたい事は分かる!だけど・・・!」
男性職員2「黒澤さん、僕も先代の社長には良くして貰いました。ですが、僕にはあの人が彼の息子だと思えないんです」
女性職員2「そもそもこんないい加減なやり方して、会社が持つんですか?分かり切った未来なら、我々が居る理由無いですよね」
この話で職員達は怒りの言葉を現にしていた。あの社長の蛮行には皆疑問を抱いていたのだ。もう止めようが無かった。
女性職員2「私もうやってられません。お給料とかもう良いんで」
黒澤友樹「あぁ、君!!」
男性職員2「黒澤さん。僕はもう限界です。お世話に成りました」
黒澤友樹「ま、待ってくれ!まだ間に合う!」
黒崎瞬「先輩、残念ですがもう手遅れです」
黒澤友樹「いや、だけど!!」
葛城麗華「彼等の決断は私も正しいと思います。こんなふざけたやり方してたら、来る物も来ません。黒澤先輩、先代の気持ちを無下に」
葛城麗華「したく無い気持ちは分かります。ですが、こう成ってしまえばそれも過去の栄光です。諦める事が懸命かと」
黒澤友樹「そんな・・・・・・すまない、僕が無力なばかりに・・・・・・」
黒崎瞬「黒澤先輩、良かったら俺等と一緒に来ませんか?」
黒澤友樹「え?」
黒崎瞬「個人的なダチと相談して、やりたい事やろうと思うんです。先輩さえ良ければ、やって見ませんか?」
黒澤友樹「・・・・・・」
黒澤友樹「分かった!黒崎くん、葛城さん、君達に尽くす事を、君達への償いとして、僕は着いて行くよ!」
黒崎瞬「そう来なくっちゃ!さ、こんな職場辞めましょうか!」
葛城麗華「えぇ!!」
その後、相葉ジュエリーショップの職員はその殆どが退職し、残ったのは必要最低限の人員だけだった。今のやり方でやってれば、
この職場はどの道破滅するしか無かった。
〇ファミリーレストランの店内
浅田麻子「一度このお店に来て見たかったのよ。美味しそうなのがこんなに一杯!」
相葉正孝「今日も好きなだけ食べてってよねぇ!」
自身の発言で職場の社員が辞めて行った事すら知らず、呑気に麻子と共に五つ星ホテルのバイキングに来ていた社長。
麻子にデレデレしながら料理を適当に盛り付けていた。
浅田麻子「わぁ、随分食べるね」
相葉正孝「あぁ、欲しい物取ってたら何時の間にかこう成ってた。さ、食べようか」
麻子と共にテーブルへ座り、食事をする社長。だけど、大量に盛った料理を社長が食べ切る事は無かった。
浅田麻子「あれ?もう食べないの?」
相葉正孝「うん、正直満足。こんだけ食えれば文句無いし。それより麻子ちゃん、もっと食べなきゃ損だよ。折角バイキング来たんだからさ」
浅田麻子「え!?私は大丈夫だから!私も満足!」
相葉正孝「そっか」
佐藤博之「ちょっとお客さん」
相葉正孝「ん?何か?」
佐藤博之「こんなに盛ってくれたのは良いんですけどね。我々としては全部食べ切って頂きたいんですよ。食材を買うにもお金が入りますし」
佐藤博之「食わなかったら、勿体無いでしょ」
相葉正孝「あぁん!?俺はお客様だぞ!お客様は神様なんだよ!折角金払って来てやってるんだから大人しく持て成せってんだ!!」
佐藤博之「い、いやぁ、しかしですね、こんな風に残されちゃあ、こちらとしても割に合わないって言うか・・・」
相葉正孝「グダグダ抜かすな!!お客様を持て成せないなら警察呼ぶぞ!!お前等はお客様を黙って持て成してれば良いんだよ!!」
佐藤博之「あぁ、分かりました。大変失礼致しました」
相葉正孝「たく失礼な奴だな」
浅田麻子「まぁまぁ正君、食事はもう此処までにして、今日はもう帰りましょう」
相葉正孝「え!?もう帰っちゃうの!?」
浅田麻子「うん、私この後用事有るから」
相葉正孝「待てって!今日ホテルの部屋二人分予約してるからさ!もう疲れてるでしょ!ね!?」
浅田麻子「だ、大丈夫よ!今日はどうしても外せないから、ホテルには一人で行ってね。それじゃあ!」
相葉正孝「そうだ!麻子ちゃん!これでどうだ!」
浅田麻子「え?」
相葉正孝「一晩一緒に過ごしてくれたら、これ全部上げるよ!どうだい!?」
浅田麻子「う、う〜ん・・・そこまで言うなら・・・」
相葉正孝「やった、やったぁぁぁ!!!」
その後、社長と麻子は社長が予約していたホテルで一晩過ごす事と成り、翌日の社長はご満悦だとかどうとか。
佐藤博之「世の中、どれだけ愛情込めても伝わらない奴って居るんだな」