ぎるぺな

氷雨涼

第1話 人生の転機は全力疾走している(脚本)

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〇教室
  『ガラガラガラ』
男性教師「陽影はいるかー?」
陽影 伶「えっ、はーい。なんですか先生?」
男性教師「聞いたぞ、大変だったな」
陽影 伶「いや、何がですか」
男性教師「転校だよ」
陽影 伶「誰か転校するんですか?」
男性教師「お前だよ」
陽影 伶「え、何が? いつ?」
男性教師「先程ご両親から連絡があってな」
陽影 伶「えっ、あいつら今エジプトに仕事に行ってるはずですけど」
男性教師「ああ、エジプトから連絡を頂いたんだ」
男性教師「何でも遺跡の調査で数週間の予定でエジプトに行ったらしいな」
陽影 伶「はい、後十日程で帰ってくる予定のはずですけど?」
男性教師「それがな、新たな遺跡を複数見つけてしまったとかで、後三年は帰れないと言ってらっしゃった」
陽影 伶「さん・・・ねん・・・?」
陽影 伶「三年!? はぁ!? なんですかそれ!?」
陽影 伶「そもそもなんで俺に連絡もしてないのにいきなり先生からそんな事聞く事態になってるんですか!?」
男性教師「あー・・・その・・・ご両親がな、『あいつに言ったら怒られそうだからヤダ』とな」
陽影 伶「内容じゃなくて言わない事に怒ってるんだよボケ親が!!!!」
男性教師「お前も・・・なかなか苦労してるな」
陽影 伶「一本の電話だけで分かって頂けて幸いです」
男子生徒「なになに、なんか深刻そうに何の話ししてんのー」
男性教師「今日をもってな、転校することになったんだ」
男子生徒「えっ、誰が?」
陽影 伶「お前が」
男子生徒「なんでオレが転校するんだよ!?」
男子生徒「というか当日にいきなり転校を宣告されるわけねーだろ、何バカな事言ってんだよー」
陽影 伶「まあ、普通はそう思うよな」
男性教師「あのな、転校するのは本当なんだ」
陽影 伶「俺がな」
男子生徒「は?」
男性教師「それを今さっき知ったのも本当なんだ」
陽影 伶「俺がな」
男子生徒「・・・ん? 陽影転校すんの?」
陽影 伶「そうらしい」
男子生徒「えっ、今日?」
男性教師「これから迎えが来るという話だったな」
男子生徒「はぁっ!? ついさっき突然転校するって聞かされたってこと!?」
陽影 伶「まぁそうだな」
男子生徒「お前もうなんか悟りを開いたみたいになってんぞ・・・」
陽影 伶「みんな今までありがとう、これからの御多幸を草葉の陰から御祈り申し上げます」
男子生徒「おいもうそれ死んでる死んでる!!」
???「・・・ーちゃーん・・・」
???「・・・れーちゃーん!!」
  『ガラガラガラッ!! ドンッ!!』
暁 灯可里「れーちゃん!!」
陽影 伶「あ、叔母さん久しぶり」
暁 灯可里「もうっ!? れーちゃんこんなに憔悴しきってるじゃないの!! イジメ!? イジメなの!?」
陽影 伶「まあある意味そうかもしれない」
暁 灯可里「誰っ私の可愛いれーちゃんをこんな目にさせたのはっ!?」
陽影 伶「あんたの姉夫婦だよ」
暁 灯可里「あっ、えーっと・・・やっぱりれーちゃんも全然聞いてなかったの?」
陽影 伶「仕事の事? 転校の事? まぁどっちもというか何もかもついさっき突然先生経由で聞かされたよ」
暁 灯可里「ごめんねごめんね、姉さんはもういつもあんな感じだし、義兄さんも・・・似た者夫婦だものね」
陽影 伶「うん、十六年程付き合ってるから分かってるはずだったんだけどね」
暁 灯可里「と、とにかく飛行機の時間があんまり余裕無いの、タクシー待たせてるからすぐに来てね」
陽影 伶「おおぅ・・・」
男子生徒「マジなんだな陽影」
陽影 伶「そうらしい」
男子生徒「突然過ぎてもうよく分からんけどさ、今まで楽しかったぜ、元気でな!!」
陽影 伶「ああ、お前も元気でな。何気無い日常ってのがどれだけ幸せかよくわかっただろ?」
男子生徒「重いわぁー・・・」
女子生徒「ひ、陽影君・・・最後だけど実は、君に言えなかった事があるんだ・・・」
男子生徒「えっ、ちょっおい、まさか・・・!!」
女子生徒「実は私・・・陽影君の・・・陽影君の」
女子生徒「机に毎日落書きしてたの!! ゴメンネ」
陽影 伶「あの四コマ漫画を俺の机に連載してたのお前だったのか!? 面白かったわありがとうな!?」
女子生徒「ストーリー的にはもうしばらく続くからさ、私のSNSで載せてるからそっち見てよね、絶対だよ」
陽影 伶「うん、楽しみにしてるよ」
陽影 伶「じゃあ時間無いらしいし行くよ、皆元気でな」
「うん、陽影も元気で!!」

〇学校の校舎
陽影 伶「あかりねーちゃん、お待たせ」
暁 灯可里「うん、もう大丈夫? ちゃんとお別れ言えた?」
陽影 伶「大丈夫大丈夫、電話なりメールなりどうとでもなるしね」
暁 灯可里「・・・うん、じゃあ行こうか」

〇飛行機内
  こうしてある日突然両親からの遠距離爆撃を受け、その日のうちに転校どころか引っ越しまですることになった
  転校先は『月陽学園』
  二十年程前に凄く話題になったらしい千葉県の近くの洋上に造られた人工島にある学園で、小・中・高等部が一緒になった巨大学園
  普通は有り得ない事だろうが、なんと明日から学園に通うらしい、もう訳が分からない
  叔母のあかりねーちゃんは学園の高等部で売店の店長をしているらしく、理事長にも伝手があってなんとかなったらしい
  両親には昔からずっと・・・何度も、何度でも、ここぞという時にこそ迷惑をかけられ続けて来たが
  これもまたいつも通りと言えばいつも通りだ、楽しく・・・そう、楽しく過ごそう

〇一人部屋
暁 灯可里「じゃーーーん!! ここがれーちゃんのお部屋よ!!」
陽影 伶「あれ? あかりねーちゃんも数時間前にこの話聞いたはずだったよね?」
暁 灯可里「え? そうよ、丁度用事があって東京に居たからすぐにれーちゃんの元に飛んで行ったのよ」
陽影 伶「なんでこんな普通に色々揃ってる部屋用意されてるの?」
陽影 伶「あ、彼氏の部屋とかだった?」
暁 灯可里「私が愛しているのはれーちゃんだけよ!?」
陽影 伶「いや、あんなんだけど母さんも愛してあげてよ」
暁 灯可里「イヤよ、姉さんの功績はれーちゃんを産んでくれた事だけよ」
陽影 伶「・・・」
暁 灯可里「この部屋はね、れーちゃんがいつでも家にお泊まりにこれるようにって、ずーっと準備してあったの♪」
陽影 伶「えぇー・・・ドン引きだわぁ・・・」
暁 灯可里「あ、机の上に学園のパンフレット置いといたから、読んでおくのよ」
陽影 伶「ああ、あれね」
暁 灯可里「ゴメンだけど明日は私かなり早い時間に行かなきゃいけないから、学園に案内は出来ないの」
陽影 伶「大変だね、気にしないでいいよ。 教えて貰った通りに行けば迷わないような道なんでしょ?」
暁 灯可里「うん、それは大丈夫、真っ直ぐ行ってフェンスに突き当たったら右に曲がってフェンス沿いに行くだけだからね」
陽影 伶「さすがにもう五回は聞いたから大丈夫だよ、そろそろ明日早いんだし寝なよ」
暁 灯可里「うんありがと、ゴメンネ」
陽影 伶「・・・」
陽影 伶「本当にねーちゃんには昔から世話になりっぱなしだよなぁ・・・」
  綺麗に整頓された机に置いてあるパンフレットを手に取り、ぱらぱらと開いて見る
  突然色々起こったせいで疲れてる、瞼がとても重い・・・
  パンフレット・・・読んでおか・・・ないと、明日から通う・・・だめだ
  抗いがたい眠気に負けて意識を・・・
  
  失った・・・

〇明るいリビング
陽影 伶「・・・お、ふぁーーー、よう」
陽影 伶「ま、誰もいないけどね」
  リビングのテーブルの上には手紙が置いてある
  れーちゃんへ
  おねーちゃんは先に学園に行ってます、冷蔵庫に食事があるからちゃんと食べてから行く事、戸締まり忘れずにね
陽影 伶「ふぁーい・・・ふう、眠い」
  冷蔵庫の中にあったサンドイッチを出して食べる
陽影 伶「あー、結局寝ちゃってパンフレットほとんど読んでないや」
陽影 伶「・・・まぁ誰かしらに聞けば何とかなるさ」
  スマホの通知音が静かな部屋に鳴り響いた
陽影 伶「あ、あの娘のSNS更新されてる・・・」
  いつも通り面白い四コマ漫画と共に、いつもとは違う誰かへ向けた激励のメッセージ
  朝から心が暖かくなった、きっと今日もいい日になるだろう
  朝食の後片付けを済ませ、最後の身支度を整え、新しい生活の第一歩を踏み出した

次のエピソード:第2話 転校生①

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