ぎるぺな

氷雨涼

第2話 転校生①(脚本)

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〇学校脇の道
陽影 伶「この道を真っ直ぐ行って、突き当たりを右に行けば校門があるって聞いたんだけどな・・・」
陽影 伶(確かに学園の敷地っぽいフェンスに突き当たって右に曲がって、もう十五分は歩いているのに、校門が見えてくる気配が無い)
陽影 伶(一応前の方に同じ制服の生徒が歩いてるから間違ってはいないと思うんだけど、ちょっと広すぎないかこの学園)
  さらに五分程歩いた所でようやく校門が見えた
陽影 伶「あっ、あれ校門だよな? あったのはいいけどこれは徒歩じゃ面倒だぞ、叔母さんが自転車用意しておくとか言ってた気がするけど」
陽影 伶「転校が突然過ぎたからなぁ・・・ 昨日引越して今日から登校とかおかしいだろ」

〇名門校の校門(看板の文字無し)
  ようやく辿り着いた校門はとても立派で、かなり奥の方に校舎が見える。校門には早足の生徒達が次々に吸い込まれている。
陽影 伶「ようやく到着かぁ・・・参ったな、ちゃんとパンフレット読んでおけばよかった、大きい学園だとは聞いてたけどここまでとは」
女子生徒「せんせーおはよー!」
女子生徒「おっはー、先生今日もちっちゃくてカワイイねー」
  校門を通る女生徒達が挨拶しながら歩いて行く、どうやら教師が校門前に居るようだ
八千代 飛鳥「おはよう! ちっちゃく無いですよ!」
女子生徒「あははーちっちゃいよー」
女子生徒「うんうん、挨拶ちゃんと出来て偉いねー、ナデナデしてあげる」
八千代 飛鳥「先生をナデナデするんじゃありませんよ!」
女子生徒「アハハハ、怒ってるかわいー」
八千代 飛鳥「もうっ、あの娘達はいつもいつも・・・」
陽影 伶「・・・小学生?」
八千代 飛鳥「んなっ!?」
八千代 飛鳥「さすがにそれは言い過ぎですよ!! これだけまろび出る大人の魅力に気付かないなんてこれだからお子様達は!」
陽影 伶「あはは、こんなちっこいのに何言ってんの、まろび出てるのなんて可愛さだけじゃん」
八千代 飛鳥「かっ!? 可愛い・・・ 最近の子はこれだからもう!もうですよ!」
陽影 伶「ああ、可愛いは普通に嬉しいのか」
八千代 飛鳥「・・・あれ? 毎日校門に立って挨拶してたのに、君に会った記憶が無いですよね? どのクラスで・・・」
  『キーンコーンカーンコーン!!』
  予鈴が鳴っていて、いつの間にか周囲に生徒も居なくなっている
八千代 飛鳥「ああっ!! 予鈴鳴っちゃってます!? 早く校門閉めて教室に行かないと! 君も早く行きなさい、遅刻になっちゃいますよ」
  そう言い残すとトテトテ校門へ走っていく、急いでいる様子なのに妙に遅くて可愛らしい

〇学校の昇降口
陽影 伶「さて、どうしよう・・・」
陽影 伶「確か職員室に行けばいいはずなんだけど、何処にあるのかさっぱりわからないな」
陽影 伶「子供をからかって遊んでたせいで誰も居ないから聞くことも出来ないな・・・」
月詠 諒子「ねえ、こんな所でどうしたの?」
陽影 伶「えっ、ナンパ?」
月詠 諒子「あははー、いいねー彼氏、お茶でもどう?」
陽影 伶「遅刻寸前じゃなければそれも良かったんだけど・・・」
月詠 諒子「そういえばそうだった、なんか今日は予鈴の後も校門閉まるの少し余裕あって助かったんだよー」
陽影 伶「俺は転校初日だから早めに職員室行かないといけなかったのに、まさか外周のフェンスに着いてから二十分もかかると思わなくて」
陽影 伶「校門には先生とか言い張る小学生がいたから遊んでたら予鈴鳴っちゃってさ」
月詠 諒子「し、小学生・・・あははは、流石にそこまで言っちゃあ飛鳥ちゃん可哀想だよー」
陽影 伶「えっまさか、本当に先生なの? あんなにちっちゃくて可愛いのに?」
月詠 諒子「それだとちっちゃくて可愛いかったら先生になれないみたいじゃない」
月詠 諒子「ってかそれより君、転校生なの?」
陽影 伶「ああ、うん。 今日から通うんだけど、職員室が何処かわからなくて、もう誰も居なくなっちゃって聞くことも出来なくてさ」
月詠 諒子「えっ、まだ四月なのに今転校してくるって珍しいね?」
陽影 伶「両親がエジプトに新しく発見された遺跡の発掘に行っちゃってね、三週間くらいの予定だったんだけど」
陽影 伶「更に新しく遺跡発見しちゃったらしくてね、三年はかかりそうだって事らしくて」
月詠 諒子「三年!?」
陽影 伶「そう、それで流石にそこまで長期間一人暮らしさせるわけにはいかないってなってね、叔母に預けられる事になってここに転校さ」
月詠 諒子「えぇー・・・私とお茶飲みに行ってる場合じゃないじゃん・・・」
陽影 伶「むしろ呑んで全てを忘れたい」
月詠 諒子「呑みたい夜もあるよね、今は思いっきり朝だけど」
月詠 諒子「ま、それはそれとして。職員室なら案内してあげるよ、二階の奥なの、こっちだよ」
陽影 伶「えっ、それは助かるけど早く教室に行った方がいいんじゃないの?場所を教えて貰えればなんとか探してみるよ」
月詠 諒子「えーっと・・・それはね・・・」
  『キーンコーンカーンコーン!!』
  チャイムが鳴り響いた、どうやらホームルームが始まるようだ
月詠 諒子「・・・という事で、転校生案内してたって言えばもしかしたらなんとかなるかもだよね」
陽影 伶「なる・・・かなぁ? まぁそれならお願いしてもいいかな?」
月詠 諒子「もう今週は三回妊婦さん病院送りにしてるしなんとかなるよ!」
陽影 伶「妊婦さん多いな!? そして苦しんでるのにとどめ刺したの!?」
月詠 諒子「えぇー、私そんなに非情な暗殺者に見えるの? 普通に救急車呼んで病院に搬送されただけだよ」
月詠 諒子「どの妊婦さんも学園に御礼の連絡してくれて、それでようやく先生も信じてくれたんだ」
陽影 伶「そりゃあね、話聞いただけじゃ流石にそれは苦しい言い訳にしか聞こえないよね」
月詠 諒子「可愛い生徒の言う事を信じてくれないなんて困った先生だよね、まったくもう」
陽影 伶「まったくだ、こんなに可愛いのに」
月詠 諒子「えっ!? なっ!?」
陽影 伶「俺が」
月詠 諒子「えぁっ、あ、うん。 か、可愛い、よ?」
月詠 諒子「あっ、流石にそろそろ行こうか、職員室はこっちね、こっち」

〇学校の廊下
  案内され進む廊下は静かで、時折通り過ぎる教室からは教師の声が聞こえる
月詠 諒子「・・・えっとそれでね、実は私も転校生なんだよ、私は普通に春休みに越してきて通ってるけど」
  横の教室ではホームルームの真っ最中なので小声で話していた、足音も出来るだけ立てずに静かに職員室を目指す
陽影 伶「へーそうなんだ、でも俺だって二週間程度の差だし別に普通だよ、普通」
月詠 諒子「うんうん、遅刻するのも、妊婦さん病院に送るのも、困ってる大企業の会長さん助けるのも普通だよ、普通」
陽影 伶「新しい罪状が出てきた!?」
月詠 諒子「あ、あそこあそこ、職員室だよ」
  指差す先の扉の上に『職員室』と書かれている、他の教室と変わり無いのに何故か威圧感を感じて入りにくい気がするのは何故だろう
  『ガラガラガラ』
  廊下が静かなせいか大きめな音を立てて職員室の扉が開き、男性教師が出て来ると直ぐにこちらに気が付く
  『またか・・・』という雰囲気の、呆れたような諦めたような、微妙な表情でこちらに歩いてくる
男性教師「月詠・・・お前今週遅刻せずに来たの昨日しか無いじゃないか・・・」
男性教師「今日はなんだ? お婆さんの荷物を運んだのか、轢かれそうな猫でも助けたか、迷子を交番に連行したのか?」
月詠 諒子「いえいえ、それはもう先週やったじゃないですかー」
陽影 伶「次から次に罪状が増えていく・・・もう呪われてるんじゃないの」
月詠 諒子「いやいやそんな、私いつもこんな感じだし」
(呪われてるな)
月詠 諒子「あ、それより今日はですね、彼が転校生らしいんですけど職員室の場所が分からなくて迷ってたので案内して来たんです」
男性教師「そういえば今日か、変な時期に転校生が来ると確か聞いたな」
月詠 諒子「ほらほら、やっぱり変だよねー」
男性教師「君の担任は久世先生だ、まだ職員室に居たから行きなさい」
陽影 伶「あ、はい。 久世先生ですね、ありがとうございます」
男性教師「さて月詠、お前はまた話さなきゃならん事が沢山あるな、さっさと教室に行くぞ」
月詠 諒子「えっ先生ちょっと待って!?」
男性教師「待たん、もうこれは親御さんにも聞かないとダメだな」
月詠 諒子「えっ、お母さんはもういつもの事だから特に気にもしてないですよ?」
男性教師「まさかとは思ってたが本当に転入前からいつもそうだったのか・・・」
男性教師「取り敢えず話をする時間が無くなる、さっさと教室に行くぞ」
月詠 諒子「えっ、ちょっまっ・・・」
  親切行為が限界突破している女生徒は、半ば引き摺られる様にして連行されていった
陽影 伶(曲がり角でパンを咥えた彼女とぶつかって出会う転校生じゃなくて良かった)
  心の底から安堵し、助けを求めるようにこちらに伸ばされた手と、売られていく仔牛の様な悲しそうな瞳を無視して振り向き
  少しだけ威圧感が薄れた職員室のドアを開けた

〇散らかった職員室
  『ガラガラガラ』
  職員室はかなり広い、教師も何人も居るが、特徴を聞き忘れていたので久世という教師がどの人なのかわからない
女性教師「あら、もうホームルームは始まってるわよ、どうしたの?」
陽影 伶「あ、今日転入してきた陽影と言います、久世先生の所に行くよう言われたんですが」
女性教師「ああ、君がそうだったのね。 ちょっと待ってなさいね・・・久世先生!久世先生!」
「・・・」
女性教師「もう、久世先生!?」
  女性教師は奥の方へパタパタと駆けていく、どうやらかなり奥の白髪の男性教師が久世先生らしい
「久世先生ってばもう!」
「ふがっ!?」
「転校生の陽影君が来てますよ! 何で寝てるんですか!」
「寝とらん、寝とらんわい、もう飯の時間なのかの」
「寝惚けてるのか呆けてるのかボケてるのか分かりにくいのでやめてください!」
「呆け・・・えぇー・・・」
「ほらほら早く、転校生が待ってるんですから」
「誰も舞っとらんぞ?」
「そんなにダンサブルな感じじゃなかったですよ!」
陽影 伶(変な人ばっかりだなこの学園・・・)
久世 権三郎「・・・はー、まいったまいった」
久世 権三郎「おお、君が・・・」
久世 権三郎「誰じゃったかの?」
陽影 伶「今日からこの学園に通う陽影です」
久世 権三郎「おお・・・おお、そうじゃった。 ワシが君のクラスの担任の久世じゃ」
久世 権三郎「久世先生でも、くぜっちでも、ボケ老人でも、好きに呼ぶとええ」
陽影 伶「はい、ボケ老人」
久世 権三郎(まさかそれを採用する奴が居るとは思わなんだ・・・)
陽影 伶「遅刻してしまって申し訳ありません、職員室の場所が分からなくて案内して貰ってたんです」
久世 権三郎(なんじゃ素直で良い子じゃないか・・・)
久世 権三郎(いや、素直だからって普通ボケ老人は採用せんじゃろ!?)
陽影 伶「あの、久世先生?」
久世 権三郎(聞き間違い、そう、たぶんそうじゃ!)
久世 権三郎「あー、すまんの。 取り敢えずホームルームじゃ、行こうかの」
  かなりヤバめな教師に連れられ職員室を出て教室へ向かった

〇まっすぐの廊下
  階段を上がり二階を進む、2-1・2-2、そして2-3の前で立ち止まる
久世 権三郎「ここが今日からお主が通うくらするーむじゃ」
陽影 伶「・・・あ、はい」
久世 権三郎「取り敢えず此所で待っとれ、すぐ済むからの」
陽影 伶(定番の呼ばれたら入るヤツか、さすがにちょっと緊張してるし少しとはいえ落ち着く間があるのは助かるな)
陽影 伶「はい」
  少しざわざわとしている教室へ久世先生が入って行く
  『ガラガラガラ』
「ほれ、ホームルームじゃぞ、席につかんか」
「なんでお主は毎日逆立ちしとるんじゃ、席にもど・・・逆立ちは続けるんか」
「んなっ、そのまま席に・・・いやもう顔も見えとらんぞ、それじゃ前のおなごの尻しか見えとらんじゃろ」
  『ガタッ』
  『パァン!!』
  『ガゴロッ!!ゴキッ!!』
「・・・えー、連絡事項じゃがな、もうじき四月が終わると部活動勧誘・・・──」
陽影 伶(やっぱりこの学園はヤバいヤツしかいないんじゃないだろうか・・・)
  若干怯えを含んでいる気がする久世先生の声だけが聞こえる
陽影 伶(・・・扉越しのせいで連絡事項がほとんど聞き取れないな、さっさと紹介して貰って座って聞かせて欲しかったもんだけど)
「──・・・なので気を付けるんじゃぞ」
「えー・・・」
陽影 伶「・・・」
  『キーンコーンカーンコーン』
「あー・・・」
「・・・では授業を始める」
  『ガラッ!!』
「待てコラボケ老人!?」

次のエピソード:第3話 転校生②

コメント

  • こんにちは!笑いどころが沢山で楽しく読ませて頂きました!久世先生に担任になって欲しいです!ボケ老人とは呼ばないけど😂

  • 不思議というか、ぶっ飛んでいる感じの学校ですね。ここでやっていくのは大変そうですが…

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