5/読書感想文から始まる文章執着劇場(脚本)
〇岩穴の出口
俺は今‥‥‥
森で対面した謎の魔道士(?)に
拍手されながら追われています‥‥‥
ギン((もう、いっそこんな弱そうな奴 とっとと切り捨てちまおうか‥‥‥?))
ギン((しかし『拍手』が何かの呪術な場合を 考えたら、攻撃するのは危険だ‥‥‥))
ギン((後ろから、何を出すんだコイツ‥‥!))
???「‥‥‥」
???「‥‥‥サイン下さい」
ギン「‥‥‥」
ギン「それは‥‥‥」
ギン「俺の地元の‥‥‥町内会報誌‥‥‥?」
???「‥‥‥の連載小説『ヘドロを喰らう』の 作者・ギンさんですよね?」
ギン「は、はい‥‥‥」
???「ファンです。サイン下さい」
ギン「う、嘘だろ?」
???「嘘じゃないです」
???「だって、拍手してたじゃないですか」
ギン「‥‥‥は?」
???「『拍手』=『好意』及び『賞賛』だと、 気付いていただけないものでしょうか」
ギン「気付くかっ!!!!!!」
ギン「『無表情のまま、拍手しながら近寄ってくる初対面』なんて‥‥‥ 恐怖しかなかったわ!!!!!!!!」
???「えー‥‥‥」
???「小説書きさんなら、そんな説明なくても 深い洞察力でわかっていただけるものかと てっきり‥‥‥」
ギン「わかるかーーーー!!!!!!!!」
ギン「それにっ! あんたのその目付きと表情には、明らかに ただならぬ殺意や邪悪さがあふれてたし!」
???「無表情は元からですし‥‥‥ あなたを必死で追ったら、そりゃあ こんな死んだ顔にもなりますよ」
???「それに加えて、今の私は 『好きな作家と会えたファン』なんですよ?」
???「緊張してるんですよ? 優しくしてあげてください」
ギン「俺のせいかよ!!!!!!!」
???「‥‥‥‥」
???「で、サインはいただけないものでしょうか」
???「‥‥‥あ。私としたことがすみません。 サインは有償でしたかね?」
ギン「んなモン無償でするよ!!!!!!!! ありがとう!!!!!!!!」
〇岩穴の出口
???「サイン、ありがとうございます。 嬉しいです ワァイ」
ギン「あっ、はい‥‥‥」
???「‥‥‥で」
???「何故『ヘドロを喰らう』は最近 とんと、掲載されていないのですか?」
???「やはり、町内会報誌だから サボってもいいかなと?」
ギン「それはない!」
???「では、原稿料が低くてヤル気が出ないせい?」
ギン「それも、ないない!」
???「では、原稿も書かずに何をそんな ウロウロと? 取材の一環ですか?」
ギン「も、もしかしてソレを伝えるために あなたもこんな所にいたんですか‥‥‥?」
???「だって、続きが楽しみなんですもの」
ギン((何だコイツ‥‥‥))
ギン((不気味で怖いけど‥‥‥好意めっちゃ ストレートに伝えてくる‥‥‥!))
ギン「‥‥‥」
ギン「実は‥‥‥」
〇けもの道
※とりあえず、来た道を戻り中
???「魔物が多くて執筆活動に専念できない‥‥‥と」
???「確かに、最近の魔物の多さは 目に余りますよね」
ギン「そう。 なので、魔物から得た情報を基に 『北』を目指しています」
ギン「その〜‥‥‥ 北にある魔界を行き来できる入り口? を、どうにかしてくるかなぁ‥‥‥という」
???「勇者‥‥‥あのキンさんの血筋の方なので お強い事は存じていましたが‥‥‥」
???「とんでもない事をなさろうとしていますね‥‥」
ギン「それに加えて『アググ・リシュケ小説大賞』 にも挑戦してみたいので‥‥‥」
ギン「大変申し訳ないのですが、町内会報誌の 連載の方はおのずと後回しにしてしまって いる状態です」
ギン「‥‥‥作品に無意識に優先度を 付けてしまっているんだよなぁ‥‥‥」
ギン「すみません」
???「いえ‥‥‥」
???「『ヘドロ』の続きを読めないのは 残念ですが、夢を追う事の方が 大事ですからね」
ギン「どうもすみません」
???「卒業文集に書いた通りに アググ・リシュケ大賞を狙っている なんて、素敵な事ですよ」
ギン「えっ‥‥‥!」
ギン「私の卒業文集をご存知なんすか‥‥‥?!」
ギン「んん‥‥‥? 同級生です‥‥‥?」
???「作者と読者は、お互いにプライベートを 知らないほうがいいと思う派なので 黙秘でお願いします」
〇黒
???((‥‥‥‥))
???((休載は、やる気がないせいではなかったのか))
???((直接の接触はしたくなかったものだが、 これは聞けてよかった))
〇森の中
ギン「街に着けなかった!!!!!!!」
???「あなたがバカみたいに森の奥に 走って行ったからじゃないですか」
ギン「誰が無言拍手でビビらせてくれた おかげだと思ってんだ????????」
ギン「ちきしょう、野営するしかねぇな」
???「‥‥‥何を召し上がってるんです?」
ギン「ひまわりの種とか」
???「えっ‥‥‥」
???「‥‥‥足りてなさげでは?」
???「‥‥‥そういや、あなたって体育と国語と 文章力以外はクソでしたっけ‥‥‥」
ギン「な、何で知ってるんだよ!」
???「もしかして‥‥‥旅立って以降、ずっと そんなレベルの食生活で?」
???「食べます?」
ギン「あ、怪しいから断る!」
???「男なんぞの手作りで申し訳ない以外は、 ただの普通の弁当ですよ」
ギン「‥‥‥‥‥‥」
???「‥‥‥‥‥」
???「時間の無駄だ。黙って食え」
???「とっとと食って、精つけて原稿書けよ」
???「本音を言えば『ヘドロ』の続きを書いて ほしいものだが、もちろんアググ大賞に 向けての方を優先して構わない」
???「そっちの方だって、どうせ きっと面白いんでしょう? 早く見せろよ」
ギン「‥‥‥‥‥」
ギン「え‥‥‥あっ‥‥‥はい」
ギン((こいつ‥‥‥))
ギン((俺の(作品)の事、めちゃくちゃ 好いて下さりやがってる‥‥‥?))
〇森の中
ギン「おっ、魔物‥‥‥」
ギン「ぎゃっ!」
ギン「おい! お前なんで魔物に 回復魔法かけてんだよっ‥‥」
ギン「わーーーーーー!!!!!!!!!!!」
???「‥‥‥‥‥」
???「回復魔法って、かけすぎると血行が 良くなりすぎて心臓が破裂することが あるんですよ」
ギン「ぎゃあっ!!!!!!!」
???「回復魔法1回で、この魔物みたいな事に なるわけないでしょうが」
???「私は白魔道士なのですが‥‥‥こうして敵を 蹂躙できますし、普通に回復もできます」
ギン「お、おぅ‥‥‥」
???「‥‥‥‥‥」
???「あなたに協力しますから、とっとと 北に行って魔物をどうにかして 小説を書く作業に戻りましょう」
ギン「‥‥‥‥」
ギン「お、お前‥‥‥どうしてそこまで‥‥‥」
ギン「何かもう、怖い域だぞ‥‥‥?」
???「黙秘」
〇城の廊下
???(幼少期)「‥‥‥‥」
キン(父上)「キミ、すごく熱心に壁のコレを読んでるねぇ」
???(幼少期)「‥‥‥この『読書感想文の優秀作』、 どうかしてますよ」
???(幼少期)「本を批判しすぎじゃないです?」
???(幼少期)「何もそんな、ボロクソに言わなくても‥‥‥」
???(幼少期)「挙げ句の果てには『僕だったらこうする』って‥‥‥ すごい自信ですわ」
???(幼少期)「まぁ、現にその案の方が面白そうだし キレもいいしで自信があるのもわかります」
キン(父上)「ま、まぁ‥‥‥。 それだって立派な感想じゃないか?」
???(幼少期)「そうです。 それだって立派な“感想”です」
???(幼少期)「本のあらすじをダラダラと書いて 字数を稼いでいる皆や僕とは違って、 なんなんだコイツ‥‥‥」
???(幼少期)「隣のクラスの『ギン・ユルシャ』って 奴なんですけど」
???(幼少期)「‥‥‥どっかで聞いた事ある名前なんですよね」
キン(父上)「おじさん、その感想文を書いた奴の親父で キン・ユルシャって言うんだ」
???(幼少期)「あっ!」
???(幼少期)「そうでしたか。 過去に魔物の親玉を封印した“勇者”の 家の方の‥‥‥」
???(幼少期)「‥‥‥コイツ、面白いですね」
キン(父上)「おっ! じゃあそんな息子と 仲良くしてやってくれよ!」
???(幼少期)「イヤです」
???(幼少期)「『見ていて面白い人』とは思いますが 『一緒にいて楽しい人』とはちょっと思えないので」
???(幼少期)「それに、隣のクラスですから面倒ですし」
キン(父上)((変わり者同士、気が合いそうな気もするが‥‥‥))
キン(父上)「‥‥‥」
キン(父上)「そうだ! 君、職員室はどこにあるんだい?」
???(幼少期)「下の階にありますよ」
キン(父上)「フロアすら違かった!!!!!!」
キン(父上)「ありがとうな、少年!」
キン(父上)「気が向いたらでいいから、 うちの息子と仲良くしてみてくれよな!」
???(幼少期)「‥‥‥だから、イヤですってば」
😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆
いやいや、おっさんには思いつかない軽快で最高に面白い話ですね‼
父親も良いけど、今回出てきた白魔道士は最高でした。技もひねりが効いて回復で殺すって思いつかないなぁ、すごい‼😮
駄目だ……漫画から入ったから、サインごときで喜ぶマモタン……初デートマモタンが……🤤
未来の旦那であるキンさん(違)とも初邂逅しましたねゲヘヘ……。
あれ、ゼヒ《もしもマモたんがとっととギンくんに話しかけていたらな学校生活IF》も二次創作を……!
変な人…もとい変なファンの人、いいキャラしてますね。「ものぐさなだけで人見知りじゃない無口キャラ」、私も好きです🤝
白魔道士っぽい光魔法ではなく過剰な回復魔法で倒すところがいいですね! RPGでたまにある「アンデッド系の敵に蘇生魔法をかけると一撃で倒せる」的なテクニックを思い出しました✨