小さなレスラー誕生(脚本)
〇黒背景
この物語はフィクションです。
実在の人物や団体などとは
一切、関係ありません。
〇格闘技リング
カンカンカンカン
「おおーっと! コレはどうしたことか!」
「名誉プロレスラー井上率いる団体、 IJW(INOUE JAPAN WARRIOR)タイトルをかけた戦い!」
「これは大変なことになりましたーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
歓声と怒号とともに、鐘は鳴り響いた。
龍牙「アツト!起きろ!起きてくれ! お願いだ!篤斗・・・」
龍牙「俺のせいなのか。 技は完璧だったはずだ・・・」
龍牙「あぁアツト、アツト」
龍牙「なぜ起きてくれないんだ」
龍牙「篤斗、すまん・・・」
男はリングに倒れたまま動かない。
カレン「パパ!パパ!」
〇病院の廊下
カレン「パパ・・・しっかりして!パパ!」
両腕を外側から抱え込み、
後ろに投げる危険な技で頭から落ち、
頸髄(けいずい)損傷と大動脈解離により
まもなく死亡確認。
彼は帰らぬ人となった。
カレン「パパ!パパー!」
カレン「パパーーーーー!」
カレン「ううっひっく」
龍牙「・・・」
カレン「ひっく。 アナタ!パパの対戦相手!」
龍牙「ああ、そうだ」
カレン「パパを・・・ パパを返してよ!!!」
龍牙「・・・仕方が、なかったんだ」
カレン「仕方がないってなによ! ワタシあなたを絶対に許さない!」
カレン「許さないんだからぁ・・・ ふぇっ」
カレン「うわあぁぁーーーーん!」
バタバタバタバタバタ
彼女は止める間もなく
走り去ってしまった。
龍牙「・・・」
カッカッカッカッ
御子神篤斗。(みこがみあつと)
享年38歳。
巨星墜つ
〇トレーニングルーム
彼はニュースを見ていた。
ただ、見つめていた。
龍牙「・・・」
井上ナオト「龍牙、まだ気にしているのか? あれは不運な事故だ」
井上ナオト「お前はやれることをした、 憧れ尊敬していた篤斗さんに 全身でぶつかったんだろう?」
龍牙「井上代表・・・」
井上ナオト。彼はIJW(INOUE JAPAN WARRIOR)を立ち上げた伝説の人。
仮面を被り
ジャガードマスクとして
人気を博すも、膝の故障により
第一線をしりぞく。
以降は団体の代表として、
後進の育成に力を入れている。
井上ナオト「ファンから酷い言われ方をしたかもしれないが、気にするな」
龍牙「俺は、もう引退しようと考えた」
井上ナオト「龍牙!」
龍牙「ファンから酷い罵声を浴び、もちろん死ぬことも考えたんだ」
井上ナオト「しかし、 それをしたら、命がけで戦ってくれた篤斗にも申し訳ないだろう?」
龍牙「俺は逃げたくない」
龍牙「それに自分がいなくなれば、 ファンの怒りや 哀しみの行き場は、 なくなる」
龍牙「ちゃんと、リングに上がって、 皆の見える所で、 全てを受け止めたいんだ」
龍牙「俺にできることは、それだけだ!」
井上ナオト「龍牙。 まだ、戦いたいか?」
龍牙「もちろんです!代表! 俺は死ぬまで戦うしか脳のない漢です!」
龍牙「それしか方法を知らないのです」
龍牙「どんな汚れ仕事でもします! 勝手なのかもしれませんが、 俺の罪を償わせてほしいのです!」
井上ナオト「龍牙・・・」
井上ナオト「お前、 トップロープから飛べるか?」
龍牙「・・・はい!飛べます!」
井上ナオト「よし、じゃあ明日から お前は二代目ジャガードマスクだ!」
龍牙「代表!それは 貴方や団体のシンボルマークでもある 重要なマスク・・・」
井上ナオト「このマスクをお前に託そう。 悪を滅ぼす正義の味方として蘇り ファンの期待に応えるんだ」
井上ナオト「それこそが 真剣に戦ってくれた 篤人への弔いになるだろう!」
ジャガードマスク「ジャガードマスク・・・ 正義の味方。 汚れてしまったオレが?」
井上ナオト「そうだ。 戦うんだ、龍牙」
井上ナオト「戦え!戦うんだ! ジャガードマスク!」
〇狭い畳部屋
ドタドタドタ
カレン「こらっ走らないの! ちゃんと座りなさい!」
ケイ「メイちゃんが、私のお菓子とった〜!」
メイ「キャハハハ!」
カレン「もうお夕飯なんだから お菓子ばっかり食べちゃダメでしょ〜!」
「はーい」
ワタシは
御子神花恋(みこがみ かれん)
15才。
妹二人とこの家で暮らしている。
ピンポーン
ドンドンドン!
メイ「誰か来たー!」
カレン「はーい!」
ヨーコさん「こんばんは!カレンちゃん。 お夕食持ってきたよ!」
カレン「いつもありがとう!ヨーコさん! 練習の帰りでしょ?」
ヨーコさん「礼なんかいいよ、 うちのオフクロが持ってけって 肉じゃが沢山あるよ〜」
「わーい! オバちゃんの肉じゃが大好き!」
カレン「本当にいつもありがとう!」
ヨーコさん「そう梨香子さん、入院しちゃったんだろ? 不自由だろうからウチに食べに来てもいいんだよ!?」
カレン「そうママね、 過労で入院しちゃったんだよ」
ヨーコさん「看護士さんだっけ。 夜勤が多いんだろ、大変だったんだな」
カレン「皆んなのために頑張り過ぎなんだよ ママ・・・ ワタシも、もうすぐ16だし 早く働きにいきたい」
カレン「ママは好きなことしなさいって 言うんだけどさ」
ヨーコさん「うーん、そうだなぁ ウチのジムでバイト募集してたけど、ちょっと来てみる?」
ヨーコさん「少しの間だけでもさ お小遣い程度だけど 足しになればと思ったんだケド」
カレン「うん!ありがとう! お願いしてもイイ?」
ヨーコさん「じゃあ見学に来なよ。 妹さん達も連れてきていいよ。 試合を見せてあげる」
メイ「えー!楽しみ! 行く行く!」
カレン「ありがとう! もうすぐワールズプロレスの 番組が始まるから一緒に見ようよ!」
カレン「今日ねぇ、ジャガードマスクの特集なんだ!」
ヨーコさん「うん!おじゃまするよ!」
〇トレーニングルーム
後日・・・
カレン「ここかな〜 こんにちは〜」
ヨーコさん「やぁ!良く来たね! こっちこっち!」
〇ボクシングジムのリング
ヨーコさん「ここだよ。 井上ナオトさんの立ち上げたIJW(INOUE JAPAN WARRIOR)のジムなんだ」
井上ナオト「やあ、良く来たね。 話は聞いてるよ」
ヨーコさん「こちらは井上代表。 ご挨拶してね」
カレン「は、はじめまして! 御子神花恋(ミコガミカレン)です!」
井上ナオト「元気で可愛いお嬢ちゃんだな」
カレン(で、伝説の・・・ ジャガードマスクの人・・・)
カレン(ヤバい、神様が眼の前にいる・・・)
ヨーコさん「彼女は幼少期から器械体操をやっていて 身体も小さく跳び技が得意です」
井上ナオト「なるほど。 じゃあリングに上がらせてみるか」
カレン「へ!?りんぐ!?」
「おねーちゃん、頑張ってー!」
カレン「ええ〜!!!」
〇ボクシングジムのリング
井上ナオト「そうだな、まず先に 試合を直に見てもらう方がいいだろう!」
井上ナオト「ちょうどいいのがいるんだ、 おい!登場しろ!」
♫〜♪〜♫〜
簡易的にBGMが流れる。
普段の試合を意識したイメージトレーニングでもあるのだろう。
ジャガードマスク「ふむ」
メイ「わー動物のマスクさんだー!」
カレン「あれは・・・伝説の・・・ ジャガードマスク!」
ヨーコさん「そう、カレンちゃんは良く知ってるわね。 伝説のマスクマン、ジャガードマスクよ!」
カレン「え?だってジャガードマスクさんの正体は井上さんなのでは・・・?」
井上ナオト「そう、流石よく知ってるな! 俺だよオレ! オレが初代ジャガードマスクだ!」
カレン「ワタシのベスト推し! ジャガードマスクさん!」
カレン「へ?初代? ということは〜」
井上ナオト「そう! 彼は二代目ジャガードマスクだ! もうすぐデビュー戦を控えている」
ジャガードマスク「うす!」
カレン「・・・小さい頃ね、 お父さんとの対戦試合を見て カッコよくてファンになったの」
カレン「またジャガードマスクさんの活躍が見れるってこと?ワタシ嬉しいかも・・・」
カレン(誰だかわからないけど・・・ すごい筋肉・・・ 憧れのジャガードマスクさんが 復活する!すごい!)
井上ナオト「そうか。 それが聞けただけでも 成功しそうだな、二代目!」
ジャガードマスク「うす、頑張ります!」
井上ナオト「よし!対戦相手は松永! リングに上がれ!」
♫〜♫〜♪〜
登場曲が流れる。
松永「うーす!」
井上ナオト「よし!30分一本勝負だ! ゴング鳴らせ!」
カーン!
〇トレーニングルーム
藤川アキト「なんか向こうの方で 面白そうなことしてるぜ!」
高柳ハヤテ「見に行くか!」
〇ボクシングジムのリング
松永「くっ」
ジャーマンスープレックスホールドで
フィニッシュだ!
カンカンカンカンカン!
「すごーい!かっこいいー!」
カレン「めちゃめちゃ、かっこいい・・・ 伝説が復活した!」
ヨーコさん「いい試合だったわね。 次はカレンちゃんよ」
カレン「え?ワタシ、 ワタシにできるかしら・・・」
ヨーコさん「大丈夫。 秘密の特訓したでしょ?」
井上ナオト「秘密の特訓?フフフ 見せてもらうぞ!」
〇ボクシングジムのリング
松永「しっかりとした受け身ができてるな。 体幹も強そうだし、身も軽い」
カレン「だって、ヨーコさんと練習したんだもん!」
松永「もう遊びはおしまいに しような!」
男は彼女の両肩を掴んだ!
と、その瞬間にすり抜けて
相手の背後に周り!
松永「なん・・・だと・・・!?」
カレン(ジャガードマスクさんの大技! ワタシもかけてみたい!)
カレン「うっ、思ったより重い!」
カレン「負けてたまるかー!」
カレン「ええいっ!」
松永「おい!嘘だろ!!!」
カレン「やー!」
ドォーーーンン
驚いたことに、その小さな女の子は、
見よう見真似で身につけた
ジャーマンスープレックスホールドで
大男を倒してしまったのだ!
高柳ハヤテ「なんだって!」
藤川アキト「あの子は、何者だ!」
井上ナオト「知らないのか? あの子は、篤斗の忘れ形見だ」
藤川アキト「篤斗さんの・・・!?」
高柳ハヤテ「凄え力だ・・・ あの小さい身体のどこに そんなパワーがあるんだ!」
井上ナオト「フフフフフ これからが楽しみだな」
〇ボクシングジムのリング
井上ナオト「お前のデビュー戦だが、 男女混合タッグマッチに決まった」
井上ナオト「相手は花恋と高柳、お前と夏山のコンビだ!花恋のデビュー戦でもあるな!」
龍牙「男女混合タッグマッチの対戦相手が 花恋と高柳だって!」
井上ナオト「お前の言いたいことは良くわかる。 しかしながら、 やらないというわけにも いかないんだ」
井上ナオト「・・・」
龍牙「カレン・・・」
龍牙「俺は、また あの時と同じ過ちを 繰り返してしまうかもしれない。 それが怖いんだ」
彼の手は震えている。
井上ナオト「興行は観客を楽しませるものだ。」
井上ナオト「決められたシナリオで 八百長だなんだって 言うやつもいるだろう。 だがな、」
井上ナオト「俺たちは いつも死と隣り合わせ。 命をかけた戦いを しているんだ!」
井上ナオト「お前なら、わかるだろう? その辛さが!」
龍牙「あぁ、痛いほどわかるさ。 俺はその重い十字架を背負うために 生きて戦うんだ」
龍牙「戦うしか、術を知らないからな。」
〇狭い畳部屋
カレン「ヨーコさん!きょうはありがとう! とても楽しかった!」
ヨーコさん「練習生採用だって、よかったね。 学校通いながらジムでトレーニングできるよ」
ヨーコさん「ちゃんとした契約はココに書いてあるから、読んでみてね。 それじゃ、また明日」
ガラガラピシャン
カレン「パパ・・・」
彼女は仏壇に線香をあげた後、
両手を合わせた。
カレン「パパ・・・ワタシ」
カレン「レスラーになる!」
〇通学路
カッカッカッ
ヨーコさん「あの子は、必ずスターになる。 茨の道に誘ってしまった責任は取るわ」
ヨーコさん「龍牙、そうでしょう?」
カッカッカッカッ
〇黒背景
つづく
すげー!すげーっす!!マッチョと女子校生のプロレスって振り幅はんぱなくてすっごい胸アツっす!!!プロレスレスの天才女子なんて?ヤワラちゃんも、ヒカルの碁もびっくりです!!熱すぎて目から汗出そうです!!ありがとうございました!!すっごい面白かったです〜