波乱のデビュー戦(脚本)
〇トレーニングルーム
高柳ハヤテ「あれ凄かったな、こないだの!」
藤川アキト「カレンちゃん、だろ? 篤斗さんの愛娘さんっていう」
高柳ハヤテ「デビュー前から、あの身の軽さと 篤斗さんのパワーを備えてるって めっちゃ凄くね?」
高柳ハヤテ「しかもさ、俺、花恋ちゃんと デビュー戦で タッグ組むことになったんだ! 超〜嬉しい〜!」
井上ナオト「おう、お前ら。 我が団体の冠番組が JAQテレビでの放映で決まったぞ!」
高柳ハヤテ「ホントですか!すげーや!」
藤川アキト「ワールズプロレスの対抗番組ですね」
井上ナオト「そうだ、興行に加えて、 忙しくなるぞ! 身体ちゃんとしとけ!」
「うーす!」
〇病室のベッド
サッ
龍牙「・・・」
カレンの母「いつも来て頂いて ありがとうございます。 貴方も、ツラいのでしょう?」
カレンの母「入院費も出してくださっているんでしょう?あなたのファイトマネーなのに」
カレンの母「そんなに、していただかなくも よろしいのですよ? ワタシは充分わかってます」
カレンの母「主人の事故は、あなたのせいでは ないのですから」
龍牙「いえ、やらせてください。 そうすることで俺は生きてココにいられるのてすから」
カレンの母「・・・そう、そこまで。 では、ひとつお願いがあるのです」
龍牙「お願い?」
カレンの母「花恋のことですわ」
龍牙「花恋さん!?」
カレンの母「あなたの所にお世話になるそうですね。 井上代表さんから聞きました。 お嬢さんをウチに預けてくれって」
カレンの母「わざわざ来て頭を下げてくださったの。 あれだけの方が・・・」
龍牙「井上代表が・・・」
カレンの母「まだあの娘は子どもです。 あの娘や妹達を見守っていて欲しいのです。道を踏み外さないように」
カレンの母「というのも・・・」
カレンの母「花恋や子どもたちにナイショですが、 ワタシはステージ4のガンと 診断されました」
龍牙「なんですと!」
カレンの母「花恋には過労で倒れたとしか 伝えてません。 もうすぐ専門病院に転院の予定です」
カレンの母「あと、どれだけワタシが 頑張れるかは、わかりません。 ですけど、くじけません」
カレンの母「彼女が立派になる姿をワタシも見届けたいのです」
龍牙「わかりました」
〇病院の廊下
カッカッカッカッ
カッ
カレン「あっアナタは!」
龍牙「・・・やぁ」
カレン「て、天敵・・・」
龍牙「元気そうだね」
カレン「な、なによ!」
カレン「ワタシ!レスラーになるの! あなたに負けませんから!」
カレン(なに言ってるんだろうワタシ)
龍牙「楽しみだな」
カッカッカッカッ
カレン(・・・負けないんだからねっ)
カッカッカッカッ
〇病室のベッド
カレン「ママ、ワタシね、 伝えなきゃいけないことが あるの」
カレンの母「なあに?」
そういえば・・・
お医者「驚かすようなことは、言わないでください」って言われてたんだっけ。
カレンの母「・・・どうしたの?」
カレン「えっとね、ヨーコさんの所で アルバイトすることになったの」
カレンの母「そう、頑張ってね」
カレン(本当のことは、まだ言えない。 まだ一人前にもなっていないのに)
カレン(ワタシがいつか、 立派なレスラーになったら、 その時は胸を張って言おう)
〇ボクシングジムのリング
ヨーコさん「はっはっ」
ヨーコさん「ふぅ」
カレン「はっはっ」
カレン「ふぅ」
ジャンピングスクワット50×10回、
腕立て伏せ100回、腹筋100回
ブリッジ柔軟、あとはランニング20キロ
スパーリング、筋トレ。
それが練習生の基本メニュー。
そして付き人として、
先輩たちの準備なども行う。
休む暇もなく、過酷である。
それは特別扱いとされる
花恋も同じである。
カレン「ヨーコさん!準備が終わりました!」
ヨーコさん「よし!」
レディマサコ「このコが〜新しく入ったコ?」
ヨーコさん「マサコさん」
カレン「よろしくお願いいたします!」
レディマサコ「今度のデビュー戦ね〜 アナタと対戦するかもなのよ。 よ・ろ・し・く」
カレン「ワタシの対戦相手・・・」
ヨーコさん「そうよ、頑張ってね」
〇格闘技リング
ワーワー
さぁ!選手入場です!
♫〜♪〜♫〜
赤コーナ〜!
187センチ〜、120キロ〜、
ジャガード〜マス〜ク〜!
南アナウンサー「これは感動です! あの伝説のジャガードマスクが 本日!リングに帰って参りました!」
続いて、172センチ〜、68キロ〜、
夏川マサ〜コ〜
レディ〜マサ〜コ〜
ダイナマイトボディマサコだ!
すげえ〜
レディマサコ「ウフフフ」
青コーナ〜!
175センチ〜、65キロ〜、
高柳〜ハヤ〜テ〜
高柳ハヤテ「伝説を俺の手で倒してやるぜ!」
続いて〜154センチ〜35キロ〜
みこがみ〜かれ〜ん〜!
ざわざわ・・・
ちっちぇえ〜
子どもじゃんか〜
〇格闘技リング
シナリオとしては、階級無制限
ジャガードマスクと夏川マサコ(レディマサコ)vs 高柳ハヤテと御子神花恋
死闘の末、ジュニアヘビーの彼らは
ヘビー系の先輩たちには敵わない
花恋は健闘してドローで終わる
という筋書きだったわね。
レディマサコ「シナリオはね。 どうなるか、わからないから 面白いんじゃない」
レディマサコ「ワタシがドローでなんか 終わらせないわ! プロレスの厳しさを教えてあげるの!」
レディマサコ「アイドルスターは一人でいいのよ! アナタを倒すのを見てらっしゃい!」
レディマサコ「今日は放送もあるのよ。 全国にアナタの恥ずかしい姿を 視聴者に見せつけてあげるわ!」
カレン「ワタシだって負けない!」
カーン!
〇格闘技リング
カーン!
プロレスはターン制のゲームで考える。
交互に技を繰り広げて、
相手の技を受けて勝つ!という
受けの美学とされる。
レディマサコ「代表がね、言ったのよ! 勝ったらアイドルスターに してくれるって!」
レディマサコ「だから負けられないの!」
レディマサコ「エイっ」
マサコのエルボーが
カレンに決まった!
カレン「イタタタ」
カレン「ワタシはアイドルスターじゃないもの! プロレスラーなの!」
カレン「お父さんと同じ!」
カレンはロープを使い
バウンドして相手に向かって
飛んだ!
レディマサコ「えっ」
わーーーーー!
カレンのドロップキックが
きれいに決まった!
マサコは立ち上がれない!
あの巨体のレディマサコを
一発で仕留めたぞ!
凄えなあの、ちっちゃいの!
名前は!?カレン!?
井上ナオト「フフフ。やっぱりな」
松永「あの娘は未熟です。 簡単に試合を終わらせてしまうようでは 観客は楽しめません」
井上ナオト「そんな事無いぞ、観客の顔を見ろ。 あんなに輝いた眼をしているじゃないか」
井上ナオト「技や見せ方は未熟だが、 これからが楽しみだろう?」
松永「代表・・・」
レディマサコ「うう・・・タッチ!」
マサコは這いずりながら
コーナーのジャガードマスクに
タッチした!
ジャガードマスク「カレン・・・」
南アナウンサー「おおーっと! ここでデビュー対決! 伝説のジャガードマスクが いま蘇ったぁー!」
カレン「憧れの・・・ジャガードマスクさんと 戦えるなんて・・・夢みたい」
カレン「ワタシ頑張るからね!」
カレン「お父さん!」
カレン選手!
ジャガードマスクに向かっていったあー!
ジャガードマスク「ふんっ」
おおー!さすが鉄壁の巨体!
びくともしません!
カレン「キャッ」
ジャガードマスク!
カレン選手を両手で軽々と
持ち上げたあー!
ジャガードマスク「ほいっ」
カレン「キャッ」
ボスーン
アハハハハハ
南アナウンサー「まるで子どもをあやすように 軽く優しく投げましたね。 観客からも笑いが起こっています!」
高柳ハヤテ「おい!カレン! 俺と交代しろ!」
カレン「もう少し・・・もう少しだけ 戦わせて」
ジャガードマスク「・・・」
カレン「えいっ」
コーナー三角跳びからの
ジャンピングニーアタック!
ジャガードマスク「くっ」
ジャガードマスク!
少しよろめいた!
ジャガードマスク「仕方ない」
ジャガードマスク「よっ」
カレン「わっ」
おおーと!ここで華麗な
ジャーマンスープレックス!
美しい人間橋(にんげんきょう)!
カレン「うぅ」
ジャガードマスク!
トップロープへ登った!
あの小さな身体をその巨体で
押しつぶそうと言うのか!
高柳ハヤテ「カレン!起きろ!カレン!」
カレン「うぅ」
高柳ハヤテ「カレンー!」
巨体が飛んだー!
カレン「・・・」
カレン「はっ」
ズズーーーンン
カレン「はぁ、はぁ、はぁ、」
カレン選手!
ダイビングボディプレスを避けました!
カレン「危なかった〜」
高柳ハヤテ「よし、タッチ!」
ジャガードマスク「ふん!」
高柳ハヤテ「俺のスライディングキックを 受けろ!」
ジャガードマスク「ひょい」
高柳ハヤテ「避けやがった!」
ジャガードマスク「ふん!」
おおっと決まったローリングソバット!
からのクロスチョップ!
高柳ハヤテ「う、うぅう」
高柳ハヤテ「ま、まけてたまるか・・・」
高柳ハヤテ「えいっ」
ペチッ ペチペチペチペチッ
チョップを連続で繰り出すも、
ジャガードマスクには
きかないようだ!
ジャガードマスク「ふんっ!」
ダブルアームで相手を固定!
回転し相手を空中に投げた!
からの!パイルドライバー!
高柳ハヤテ「つぇー」
バタッ
ジャガードマスク!
トップロープに登ったー!
決まったああーーー!
ムーンサルトプレス!
カウント!ワン!ツー!スリー!
カンカンカンカンカン!
カレン「えー試合!負けちゃったの!?」
ちょっと待ったぁーーー!
ジャガードマスク「ん!?」
わーわーわー
誰か乱入してきた!
ジャガードマスクが二人になったぞー!
どっちが本物だー!?
南アナウンサー「こ、これは大変なことに なりましたーーー!」
南アナウンサー「乱入してきたのは、 たった今、勝ちを決めた ジャガードマスクです!」
ジャガー対ジャガーの戦い!
初戦から大混乱の様相です!
くんずほぐれつの大混乱!
もうどっちがどっちか
わかりません!
サッ
龍牙「うわー」
南アナウンサー「おおおー!あれは龍牙選手! ニセジャガーはマスクを剥がされ! その正体は龍牙選手だったー!」
南アナウンサー「これは御子神選手にとっても 運命の相手!宿命の対決! 弔い合戦となるのか!」
ジャガードマスク「カレン!二人でアイツに ドロップキックだ!」
カレン「えっ!はっはい!!」
龍牙「こい!カレン! 俺は、受け止める!」
ジャガードマスク「とりゃああああー!」
ドォーン!
龍牙「うぅ」
バターン!
ドロップキックがキレイに決まった!
ジャガードマスク「フォールだ!カレン!」
カレン「はい!」
南アナウンサー「御子神選手!トップロープに登ったー!!!」
カレン「えーい!」
決まったー!カレン、
トップロープからの
ダブルムーンサルトプレス!
新人とは思えない!
この大技を決めたカレン選手!
新星がココに誕生いたしました!
カンカンカンカンカンカン
わーーーーわーーーー
ジャガードマスク「デビューおめでとう!」
カレン「あっ!ジャガードマスクさん!」
カッカッカッカッカッ
ジャガードマスクは
渡された花束をカレンに渡すと
会場を後にした。
カレン「ジャガードマスクさん・・・」
わーわーわーわー
カレン「ありがとう・・・」
〇病室のベッド
カンカンカンカン
テレビから鐘の音が鳴り響く、
カレンの母「・・・」
ヨーコさん「試合、負けちゃいましたね」
カレンの母「いえ、いい試合だったわ。 ありがとうヨーコさん。 あなたにはお世話になりっぱなしで」
ヨーコさん「いえ、カレンさんを預けてくれて ありがとうございます、」
カレンの母「子どもたちをよろしくね」
ヨーコさん「はい!」
〇ボクシングジムのリング
龍牙「これで良かったのか?」
井上ナオト「おつかれ龍牙!いい試合だったじゃないか」
龍牙「おつかれさまです。 本日はありがとうございました。 またマスクを被ってくださるとは 思いませんでした」
井上ナオト「俺がマスクを被るのは今回限りだ。 あとはお前に任せたんだ。 しっかり頼むよ」
龍牙「悪役、龍牙、 正義、ジャガードマスクとして 戦う覚悟はできました」
井上ナオト「ふたつの仮面・・・ 善と悪の戦い・・・」
井上ナオト「こんな所でクヨクヨしていても 仕方がないぞ、龍牙!」
龍牙「はい!代表・・・」
〇黒背景
つづく