ぎるぺな

氷雨涼

第4話 転校生③(脚本)

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〇学食
坂尻 達見「という事でここが学食だっ!!」
  生徒数が多いせいかかなり広い学食だ、今のところ席は六割ほど埋まっていてそれなりに選べる余地はある
坂尻 達見「今日はそんなに混んでないな、雨の日とかタイミングが悪いと席が見つからない事もあるんだぞ」
陽影 伶「へー、本当に広いな、ここって食券なのか?」
坂尻 達見「そうそう、あっちの食券自販機で買ってカウンターに半券を渡して、受け取りカウンターで残りの券と引き換えで受け取るんだ」
陽影 伶「なんというか・・・レトロ?」
坂尻 達見「ははは、なんか古臭いシステムだよな、オレは好きだけど、まあ特に問題も無いからずっと変わってないんだろきっと」
陽影 伶「いやー、こんな感じの所で飯食べるの久しぶりだからなんか嬉しいな、何食べようか・・・」
  バキッ・・・ガタッ!!
  何か揉め事が起きているような音が響き渡り、その付近を中心にざわざわとざわめきが広がっていく
坂尻 達見「何だろうな、食券機の辺りで何か騒いでるな」
不良生徒A「おうゴラ!! テメェ今なんつったんだオイ!!」
男子生徒「ぼ、僕が並んでたんだから・・・」
不良生徒A「ああん!? 何だとゴラァ!!」
不良生徒A「テメェは俺様が横入りしたとでも言いやがんのかああん!?」
男子生徒「僕が並んでたのにぶつかってきて、よろけてずれた所に入ったじゃないか・・・」
不良生徒A「あんだとテメェ!? 言い掛かりつけてんじゃねえぞ!!」
不良生徒A「なら誰か見てんだろ!? オイ、誰かんなの見た奴居んのかオオウ!!」
  周囲の生徒は遠巻きに見ていて黙っている、下手にかかわると巻き込まれて何をされるかわからず、声をあげたくないのだろう
不良生徒A「オラ見ろ!! 誰もんなもん見てねぇじゃねぇか!!」
男子生徒「そ、それは・・・」
不良生徒A「俺様は横入りなんぞしてねぇよな!?」
不良生徒B「してねーしてねー、えっちゃんはさいしょっからそこ並んでたっしょー」
男子生徒「ええっ、なっそんな!?」
不良生徒A「オラてめぇ、これでわかっただろ!! 俺様に言い掛かりつけておいて只で済むと思ってねーよなぁ!!」
男子生徒「待って!? 誰か・・・見て!?」
坂尻 達見「あいつら・・・最近あんな事ばかりやってるんだ・・・!!」
陽影 伶「面白い頭してるのに面白くないな」
坂尻 達見「ちょっと、オレが・・・!!」
陽影 伶「見てたのか?」
坂尻 達見「え?」
陽影 伶「あいつらが何やってたかなんて俺達は見てない、だから庇う根拠がない」
坂尻 達見「だからってあんな、許せんだろう!?」
陽影 伶「見た目が面白いからって悪者かどうかはわからない、少なくとも俺達には真偽が判別出来ないだろ」
坂尻 達見「なっ、そうかもしれんがあんな!!」
陽影 伶「まあ、まず間違いなく赤と黄色が悪いだろうけどな」
坂尻 達見「だったら!?」
陽影 伶「見てもいないのに違ったらどうする?」
坂尻 達見「いや・・・くそっ!!」
坂尻 達見「だったらどうすれば・・・!!」
陽影 伶「あっち見てみな」
坂尻 達見「え?」
  陽影があらぬ方向を指差し、つられて坂尻がそちらを見た瞬間
  陽影がテーブルの箸入れからズバッと箸を引き抜きそのままスパッと投げる
  『スココココココ!!!!!!』
「あだだだだだだっ!?!?!?」
  放物線をほとんど描かず飛んだ十数本の箸はほぼ二人の不良に命中して軽快な音を立てた
不良生徒A「チクショウ!! ナンダコレぁ!?」
  当然二人の不良は箸が飛んできた方向、こちらをバッと振り返り向かって来た!!
不良生徒A「オイゴラ!! 今のテメェか!?」
陽影 伶「えっ?」
不良生徒A「今の箸だよ!! わかってんだろテメェ!!」
陽影 伶「凄かったね、滅茶苦茶当たってたもんな」
不良生徒A「そうだよ!! テメェだろうが!!」
陽影 伶「ああ、投げた人ならそっちの扉に凄い勢いで走って・・・」
不良生徒A「チッ!! 逃がさねーぞクソヤローが!!!!」
不良生徒B「えっちょっ、えーちゃん待てって!!」
陽影 伶「・・・行ってないんだけど、せっかちだなぁあいつら」
坂尻 達見「陽影・・・お前・・・」
陽影 伶「で、ここの学食のオススメは何?」
坂尻 達見「オムライスだよ!!」
坂尻 達見「・・・」
坂尻 達見「オムライスじゃねぇよ!?」
陽影 伶「えっ、違うの?」
坂尻 達見「いや、オススメは違わねぇんだけど!? お前さぁ・・・」
陽影 伶「なんか見た?」
坂尻 達見「えっ、いや・・・丁度お前が指差した方見てたから、気が付いたら箸が超乱舞してたわ」
陽影 伶「じゃあ俺は何もしてないよね、犯人はあいつらが追いかけて行ったし、逃げ切れるといいよね」
男子生徒「あ・・・あの・・・」
陽影 伶「ん? 何かな」
男子生徒「あ、ありがとう・・・助けて、くれて」
陽影 伶「俺じゃないよ? やったのは今逃げてる奴」
男子生徒「えっ」
陽影 伶「凄い勢いで追いかけて行ったよね、怖いねあんなのに追い回されるなんて」
男子生徒「あっ!!」
男子生徒「あ、そ、その・・・もしあの箸投げてくれた人に会ったら・・・僕が凄く感謝してるって、伝えてもらっていいかな」
陽影 伶「俺もチラッとしか見てないから特徴とかよく覚えてないけどね、会えたら伝えておくよ」
男子生徒「あ、ありがとう!! ・・・あの、僕に出来る事があったら何でもするから」
陽影 伶「ああ、うん。 伝えておくよ」
男子生徒「ありがとう・・・ありがとう・・・」
  何度もぺこぺこと頭を下げて男子生徒は学食を去って行った
坂尻 達見「陽影!!」
陽影 伶「え、何?」
坂尻 達見「今日はオレの奢りだ、好きなオムライス喰え!!」
陽影 伶「オムライス限定!?」
坂尻 達見「種類もあるしトッピングも選べるぞ」
  横にある券売機を見る、ボタンがたくさん並んでいる
陽影 伶「『ふわとろ』『つつみ』『オムぱか』」
陽影 伶「『オムぱか』?」
坂尻 達見「ああ、それはあれだな、中身がふわとろのオムレツを上にのせて、切り開くと中身がとろーっと拡がるヤツ」
陽影 伶「へー、上の卵のバリエーションだけでもこんなに用意してるなんて!!」
陽影 伶「『ケチャップ』『デミグラス』『ハヤシ』『カレー』『マーボー』!?」
陽影 伶「かけるソースの種類? ソースというか最早もうなんて言ったら良いかわからないよ!!」
坂尻 達見「本当に凄いよな、デミとかハヤシくらいは店によっちゃ普通だけど、その先はオレも初めてだったわ」
陽影 伶「『チーズ』『ハンバーグ』『エビフライ』『ソーセージ』『ケバブ』・・・ちょっと待って、多い多い!?」
坂尻 達見「なんか数日見ないといつの間にか増えてたりするんだよ、トッピングはオムライス限定じゃないけどな」
陽影 伶「えーと、『ちょい足しおかずシリーズ』いちにさん・・・三十五種類!?」
坂尻 達見「時々バカな奴らがトッピング全部乗せ頼んで写真撮りまくってるの見るぜ」
八千代 飛鳥「全部乗せですって!?」
「うおっ!?」
八千代 飛鳥「頼むんですか!? 私では食べきれないから断念せざるをえない夢の全部乗せを!?」
陽影 伶「いやいや、そんなのもあるんだなーって話してただけですよ」
八千代 飛鳥「あ、陽影君と坂尻君だったんですね、早速仲良しになってて良かった、お友達になったんですね」
陽影 伶「ト・・・モ・・・ダ、チ・・・?」
坂尻 達見「なんで全く知らない概念を聞いたみたいになってんだよ」
陽影 伶「逆尻は良い奴なんだけど、友達だと思われたら俺まで尻マニアの烙印を押されそうでちょっと・・・」
坂尻 達見「ちょっ、までってなんだ!?そもそもオレが尻マニアじゃねぇわ!!」
陽影 伶「八千代先生も食事に来たんですか?」
坂尻 達見「お前直前までの出来事を全力でぶん投げる技を極めすぎだろ・・・」
八千代 飛鳥「そうですよ、私ここの学食大好きなんですよー」
八千代 飛鳥「職員室で久世先生が戻ってくるのを待ってたんですけど、全然来ないので食事を済ませておくことにしたんですよ」
陽影 伶(久世先生はまだ保健室に入り浸ってるのかな? なんか可哀想だし黙っておくか)
坂尻 達見「あ、じゃあオレらも今からオムライス食う所だったんですけど、飛鳥ちゃんも一緒にどうですか?」
八千代 飛鳥「わあっ、私オムライス大好きなんですよ、ここのオムライス種類沢山あって毎日でも飽きない位ですよね」
  早速各々券売機に並び食券を購入する
陽影 伶「えーっと、初めてだしスタンダードなので・・・いいかな」
陽影 伶「『つつみ』・・・『ケチャップ』で、トッピングは、と・・・」
陽影 伶「あれ、なんかどこか違うボタン押しちゃったっぽいな?」
陽影 伶「やり直しは・・・どれを・・・んー、まあいいか奢りだし、わからないのも面白そうだな」
  食券をカウンターに渡してすぐにその先のカウンターで注文品を受け取る、驚く程の早さだった
陽影 伶「まさかほぼ待たずに即渡されるとは思わなかったよ」
八千代 飛鳥「ここのおば様方は凄いんですよ、達人揃いなんです!!」
学食のおばちゃん「おや、飛鳥ちゃんにそんな事言って貰えるなんて嬉しいねぇ!!」
八千代 飛鳥「あれ、おば様お仕事はいいんですか?」
学食のおばちゃん「お仕事よお仕事、早く席に行くわよ」
八千代 飛鳥「え? え?」
  パワフルに促されて戸惑いながらも空いている席につく
学食のおばちゃん「さて、『つつみ』『ケチャップ』でトッピングに『ケバブ』は・・・あんただね」
陽影 伶「あ・・・あぁ、はいそうです」
坂尻 達見「いきなりケバブからいくとはなかなかやるな陽影」
学食のおばちゃん「陽影? もしかしてアンタが飛鳥ちゃんのとこに入った転入生かい?」
陽影 伶「はい、そうですね」
学食のおばちゃん「そうかい、なら!! これは飛鳥ちゃんにやって貰うのがいいんじゃないかね!!」
八千代 飛鳥「コレ?」
  おばちゃんが手に持っていた食券をこちらに見えるように突き出してくる
  № 0143
  『オムライス』『つつみ』『ケチャップ』
  『ケバブ』『もえキュン』
陽影 伶「『もえキュン』・・・?」
坂尻 達見「えっ、お前あれ注文したの!?」
陽影 伶「いや、あ、そういえばなんか間違って違うボタン押しちゃったんだけどあれだったのかな」
坂尻 達見「お前チャレンジャーにも程があるだろ」
陽影 伶「いや、だから間違ったんだって、何? これ」
坂尻 達見「あれだよあれ、メイドカフェとかでやってるって聞いたことくらいあるだろ」
「あぁ~!!」
学食のおばちゃん「あんたで今年度二回目の御注文さ!!」
陽影 伶「少なっ」
学食のおばちゃん「初めての注文のあの日・・・学食は阿鼻叫喚に包まれて、三日ほど客数が八割減だったねぇ・・・」
「えぇ!?」
坂尻 達見「オレも聞いた話しだとかなりヤバかったって聞いたな、みんなパニックになって凄かったらしい」
陽影 伶「いや、メイドカフェのサービスごときでなんでそんな事になるんだよ」
学食のおばちゃん「だからね、前に飛鳥ちゃん話してくれたじゃない、メイドカフェに行ったお話し」
八千代 飛鳥「あ、はいはい。お友達が行ってみたいって言ってて一緒に行ってきたんですよ、エプロンドレスが可愛かったんですよ」
学食のおばちゃん「その経験を見込んで、今回は飛鳥ちゃんにやってもらいたいのよ!!」
八千代 飛鳥「へっ?」
学食のおばちゃん「『もえキュン』をよ!!」
八千代 飛鳥「えぇーーーーー!?」
八千代 飛鳥「いやいやいや、なんで、なんで」
学食のおばちゃん「本場の『もえキュン』を体験してきた飛鳥ちゃんにアタシらの為に見本を見せて欲しいのよ!!」
八千代 飛鳥「お付き合いで一度行っただけですよ!?」
学食のおばちゃん「それにこの子は新しく飛鳥ちゃんの教え子になるんでしょ、歓迎の気持ちよ、気持ち」
八千代 飛鳥「いやっ、それとこれとは・・・」
陽影 伶「先生・・・先生はボクを、歓迎してくれてないんだ・・・」
八千代 飛鳥「ちょ、なんでそんなに雨に濡れたワンちゃんみたいな哀しみに満ちてるんですか!?」
八千代 飛鳥「いや、先生は嬉しいですよ!! 陽影君いい子ですし、とっても歓迎してます!!」
陽影 伶「じゃあ・・・いいですよ、ね?」
八千代 飛鳥「なんでそんな・・・鮮やかで流れるような見事なおねだりを・・・むぐぐ」
坂尻 達見(さっきの叔母さん相手に色々やってたんだろうなこいつ・・・)
学食のおばちゃん「よし、決まりだね!! そうとなったらほれ、こっち来な飛鳥ちゃん!!」
八千代 飛鳥「えっ? えっ?」
「あーれー・・・」
陽影 伶「なんか面白い事になってきたね」
坂尻 達見「面白いけども、お前ホント滅茶苦茶だな」
学食のおばちゃん「さっ、やってやんな飛鳥ちゃん!!」
八千代 飛鳥「ちょっと待って!? なんかこれメイドさんじゃなくて魔法少女っぽくないですかっ!?」
学食のおばちゃん「飛鳥ちゃんちっちゃいからそれくらいしかなかったのよ、気にしない気にしない」
八千代 飛鳥「気になりますし!! ちっちゃくないですし!?むしろなんでこんなのがあるんですか!?」
(ちっちゃいからすげー似合ってる)
学食のおばちゃん「さぁ、いくよー!! 3、2、1」
八千代 飛鳥「えっ!!えっ!?」
八千代 飛鳥「もうっ!! こ、今回限りですからねっ!?」
  ケチャップの容器をキュッと握って気合を入れ、ちょっと歪なハートマークをオムライスに描く
八千代 飛鳥「えっと・・・お、美味しくなぁ〜れっ❤」
八千代 飛鳥「も、もえもえキュンッ❤」
(何この可愛い生き物・・・持って帰りたい)
八千代 飛鳥「えっ、えっと・・・ど、どうで」
「うぉおおおおおおぉーーー!!!!」
男子生徒「オムライスッ、オムライスを買い占めろ!!」
男子生徒「ちょ、ちょっと待てっ!! 何だこれ!?」
  『もえキュン』¥39800
「たっかっ!?!?!?」
女子生徒「フフフ、所詮貴方達はその程度ですわよね」
男子生徒「くっ!? こうなったら、おい!! カンパだカンパ、いくらだせる!?」
男子生徒「えっ、あっ!! な、なんとか三千円くらいなら・・・」
男子生徒「僕は千円だ!!」
男子生徒「言い出したくせに少なっ!?」
女子生徒「フフフ、ワタクシのターンですわ、ドローモンスターカード!! 『ユキチ』を攻撃表示で二体場に召喚ですわー!!」
「な、なんだってー!!!!」
陽影 伶「あははは、あいつら面白いな・・・モグモグ」
坂尻 達見「モグモグ・・・何やってんだかな・・・モグモグ」
八千代 飛鳥「なんでそんなに動じないんですか・・・モグモグ」
陽影 伶「あー美味しかった!!」
坂尻 達見「美味いだろ、他のメニューもいい感じだぞ」
八千代 飛鳥「ご馳走さまでした」
学食のおばちゃん「飛鳥ちゃん、ほらこっちこっち」
学食のおばちゃん「ほら、こっちで着替えてそのまま裏から出なさいな」
八千代 飛鳥「だ、だいじょうぶですかおば様は」
学食のおばちゃん「こっちはどうにでもしとくから大丈夫さ、こんな事気にすんじゃないよ!!」
八千代 飛鳥「ありがとうございます、お二人は・・・」
坂尻 達見「オレらは普通に戻るから大丈夫っすよ」
陽影 伶「先生面白いもの見せてくれてありがとうね」
八千代 飛鳥「も、もうアレは忘れて下さい!?」
陽影 伶「さて、最後の授業って何だっけ?」
坂尻 達見「あー、古文? いや英語だったかな?」
男子生徒「な、何っ!? いつの間に!?」
  『もえキュン』¥59800
男子生徒「くっ、こうなったら今週分の昼飯代を全部注ぎ込んで・・・」
男子生徒「今週もう授業あるの今日が最後だろ!?」
女子生徒「くっ!! ユキチだけではもうパワーが足りませんわ、ドロートラップカード『メダルゲームの横にある機械』!!」
女子生徒「場に存在するユキチ一体を犠牲にしてヒデヨを十体召喚!!」
「両替じゃねーか!?」

〇教室
  五時限目を終え、帰りのホームルームでは捕まった久世先生が八千代先生にお説教をされたお陰で
  皆が簡単な自己紹介をするだけで終わる事になり、陽影はほっと胸を撫で下ろすのだった

次のエピソード:第5話 放課後のお誘い

コメント

  • 伶君と坂尻君が仲良くなっていってるの良いですね
    トモダチ?てボケ笑いました!坂尻テンション高めのツッコミもうまい

    もえもえきゅんのオムライス高いけど私も食べたいです
    可愛い持って帰りたいて発言がやはり幼女へのコメントでした(笑)

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