❷Master of Puppets(脚本)
〇黒
前回までは
〇学校の屋上
君島カオリ「私はもうこの衝動を抑えるのに疲れたの!」
〇学校の屋上
アキト「って、おい!」
〇教室の外
アキト「たまげたなコリャ」
アキト「落下してぶつかった拍子に」
アキト「魂の一部が分離してコイツに宿ったのか」
〇教室の外
アキト「どうだい」
アキト「自由を手に入れた気分は」
アキト「人体模型くん?」
〇理科室
君島カオリ「色々聞きたい事あるよね?」
〇理科室
早瀬ハル「人間を」
早瀬ハル「殺したいんですよね?」
〇シックなリビング
アキト「アイツは近いうちに死ぬ」
早瀬ハル「え!?」
アキト「魂の分離はそれほど危険だ」
早瀬ハル「じゃあ早く戻してあげて!」
〇シックなリビング
アキト「魂を戻すって事は」
アキト「殺人衝動も一緒に、って事になる」
早瀬ハル「あっ」
アキト「結局アイツは死を選ぶ」
〇事務所
組員「テメェぶっ殺す!」
〇事務所
〇ハチ公前
人を殺す事で衝動を発散させる
これは魂の浄化作業
〇可愛らしい部屋
君島カオリ「これからよろしくね」
君島カオリ「早瀬くん」
〇ハチ公前
僕はこれからも悪人を殺す
この魂を返すために
〇黒背景
〇拷問部屋
???「はぁ、はぁ・・・」
???「クソッ、放せ!」
???「放せよ!」
???「いい加減にしやがれっ!」
???「この悪魔どもがぁーーーっ!!」
〇ハチ公前
──二時間前
アキト「残業のお知らせ」
アキト「今夜はもうひと暴れする」
「今度はどんな悪い人?」
「同じヤクザだよ」
「ふぅん」
タカオ・ルナクレシェンテ「母ちゃん・・・」
タカオ・ルナクレシェンテ「立派な家、建ててやっからなぁ」
〇高速道路
〇車内
アキト「いつもの清掃業者がダウンしちまったから」
アキト「今日は俺らで後始末までやる」
早瀬ハル「そっか」
早瀬ハル「業者さん、大丈夫なの?」
〇魔物の巣窟
「あぁ」
「ただの胃もたれだとよ」
〇車内
早瀬ハル「あまり無理はしないでほしいね」
アキト(お前がハイペースで殺しまくってるのが原因なんだけどな)
アキト「まっ」
アキト「それよか問題は」
アキト「あの全身凶器ヤロウだ」
〇高速道路
「あ、運転中にそれダメなんだよ」
「うるせー!」
「人間の法律を俺に当て嵌めるな!」
「目ぇつぶってたって安全に走れるわ!」
〇車内
人間社会に潜り込んで悪態をついているアキトだけど
実は二つの顔を使い分けている
ひとつは
数百年生きてる割に大人気ない普段の顔
そしてもうひとつの顔は──
〇動物
チャンネル登録者数300万人を誇る
『きまぐれニャンダフル日和』の人気ネコ
アキ様だ
〇パチパチ
アキト「最初はただの暇つぶしだったんだけどな」
アキト「登録者を増やすのがゲーム感覚で楽しくて」
アキト「すっかりハマッちまったのよ」
──という事らしい
〇撮影スタジオ
そんなアキ様の活動を僕もお手伝いする事があって・・・
アキ様「もっとアップだ!」
「え?」
アキ様「もっと寄れって言ってんだよ!」
「こ、こう?」
アキ様「バカ!」
アキ様「今度は寄り過ぎだ!」
アキ様「引け引け引けっ!」
アキ様「引くこと覚えろ!」
笑顔で怒るのやめてほしいなぁ
気味が悪いから
〇車内
動物カテゴリーでは敵無し状態
まさに順風満帆に思えた矢先
異変は起こった
〇動物
それは彗星の如く僕らの前に現れ
瞬く間に動物動画界を席巻
今やアキ様の地位を脅かす存在になりつつある
〇車内
その者こそが
全身凶器ヤロウこと──
ハリネズミのハリーだ
アキト「クソッ」
アキト「また最新の再生数で負けたっ!」
チャンネル登録者数こそアキ様に一日の長があるものの
直近の再生数ではハリーの後塵を拝している
アキト「なぜだぁ・・・」
アキト「編集もカメラワークも素人同然!」
アキト「芸もしなけりゃ、愛想もねぇ!」
アキト「なのになぜだぁーーーっ!?」
アキト「これまでもライバルと呼べる存在はいた!」
アキト「高速で回し車をまわす、発電ハムスターのハムチュウ!」
アキト「見事な擬態で、ほぼほぼ風景動画だった、カメレオンのミスターインビジブル!」
アキト「あまりに流暢に話すため、飼い主のアテレコ疑惑が浮上して引退に追い込まれた、オウムのヒデオくん!」
アキト「全員叩きのめしてきたのに、なぜっ!?」
アキト「なぜヤツは折れないっ!?」
早瀬ハル(ヒデオくんに関しては自滅なんじゃ・・・)
アキト「しかもなんだ」
アキト「『ハリネズミのハリーch.』などという」
アキト「なんのヒネりもないチャンネル名はっ!?」
早瀬ハル「そこがいいのかも」
アキト「なに!?」
早瀬ハル「変に狙ったりしない」
早瀬ハル「自然体な感じが視聴者にウケてるんじゃないかな?」
アキト「なんだと?」
アキト「じゃあ俺が」
アキト「あざとく人間に媚を売ってるとでも言うのか?」
早瀬ハル「そうは言ってないけど」
早瀬ハル「本来、こういう自由さとか奔放さって」
「ネコであるアキ様の専売特許な気がするんだけど」
「そ、そんなバカな・・・」
アキト「俺のアイデンティティーまで」
アキト「ヤツによって歪められたというのか・・・」
早瀬ハル「はい?」
〇高速道路
「チクショーーーッ!!」
「うわぁっ」
〇屋敷の門
アキト「さて・・・」
アキト「気を取り直してやりますか!」
早瀬ハル(情緒が・・・)
アキト「ハル」
アキト「わかってるよな?」
早瀬ハル「敵対する組同士の抗争に見せかける」
早瀬ハル「でしょ」
アキト「つまり」
派手にやれって事だ
〇怪奇現象の起きた広間
組員「ひぃぃぃっ!」
アキト「盛り上がってるかーい?」
組員「死ねコラァッ!」
〇怪奇現象の起きた広間
組員「ケケケッ!」
組員「切り刻んでやるよぉっ!」
〇怪奇現象の起きた広間
組員「なめんじゃねぇぞコラァッ!」
アキト「ん?」
アキト「お前、なんかツンツンしてて」
「ハリネズミに似てるな・・・」
アキト「ちょうどムシャクシャしてたんだよ」
組員「へ?」
〇怪奇現象の起きた広間
組員「喰らえっ!」
組員「必殺 千本突きっ!!」
組員「うおおぉぉぉぉっ」
〇怪奇現象の起きた広間
アキト「忌々しいトゲだぜ」
組員「ひぃやあああぁぁぁぁっ!」
〇怪奇現象の起きた広間
「あああぁぁぁぁぁーーーーっっっ!!」
〇怪奇現象の起きた広間
組員「うおおおおおぉぉぉぉぉっ!!」
組員「おおぉぉぉっ・・・」
組員「お、おぉっ・・・」
まるで手応えが無いんですけど
早瀬ハル「気は済みましたか?」
〇怪奇現象の起きた広間
アキト「なにが」
組員「ひぃっ!」
アキト「自由と」
組員「ぐえっ!」
アキト「奔放だ」
組員「あひぃっ!」
アキト「俺は俺の好きなようにやるからな」
アキト「ハリィーーーーッ!!」
組員「だから誰っすかソレーーーッ!!」
〇怪奇現象の起きた広間
アキト「はー、スッキリしたっ!」
アキト「これであらかた片付いたか?」
早瀬ハル「向こうに階段があるよ」
〇日本家屋の階段
アキト「地下室か」
アキト「一応チェックしとくか」
〇黒背景
〇拷問部屋
アキト「へぇ」
アキト「こいつはまた・・・」
「アキト」
???「だ、誰だ?」
アキト「と、言われてもねぇ」
???「組の者じゃねぇな・・・」
???「と、とりあえず」
???「コイツを解いてくれ!」
アキト「そっちの素性を明かすのが先だ」
???「おい!」
???「悪いようにはしねぇから、とっとと縄をほどけっ!」
早瀬ハル「悪い人かな?」
アキト「まー待て」
アキト「おい、アンタ」
アキト「これから訊くことに慎重に答えろよ」
アキト「アンタは悪人か?」
???「な、なにを言ってる?」
アキト「悪人の場合」
アキト「殺さにゃならん」
???「バ、バカを言うな」
???「殺しなんてそう簡単に出来るわけがない」
アキト「あー」
アキト「俺たちがココまでフリーパスで来たと思う?」
???「──!!」
アキト「さぁ、どうなの?」
???「悪人などではないっ」
アキト「へー」
アキト「でもこれって、ただの拉致監禁じゃあないよね」
アキト「アンタは拷問されてた」
アキト「つまりなにかを隠してたわけだ」
アキト「さすがのアイツらも」
アキト「善良な一般市民にここまでやらないでしょ」
???「悪人では、ない」
アキト「ふぅん」
アキト「悪人でもなければ、一般市民でもない」
アキト「となると答えは絞られる・・・」
早瀬ハル「わかった、潜入捜査官だ!!」
アキト「チッ」
アキト「いま俺が言おうとしてたろ!?」
早瀬ハル「この前ドラマで観たんだぁ」
アキト「異議はない?」
???「ぐっ」
早瀬ハル「だったら最初からそう言ってくれればよかったのに」
???「組の人間じゃなくても半グレだろ」
???「おいそれと身分を明かせるか!」
アキト「安心しな」
アキト「手荒な真似はしねぇよ」
アキト(ま、今日の記憶は消させてもらうけどな)
アキト「なんか落ちたぞ?」
アキト「女物のブレスレット・・・」
アキト「他にも持ってるな?」
???「や、やめろ、触るなっ!」
アキト「おー、出るわ出るわ・・・」
アキト「そういやココの連中は」
アキト「首が回らなくなった女たちを」
アキト「売り飛ばしてるんだっけ?」
アキト「アンタ欲をかいたな」
???「だ、黙れっ!」
???「これぐらいの役得あって当然だろうが!」
早瀬ハル「やっぱ悪い人?」
アキト「ぽいなー」
???「ふ、ふざけるなっ!」
???「だ、だいたい聞いてないんだよ!」
???「あんなヤバい連中と関わるなんて」
???「あ~~~っ」
???「なんでこんな事にぃっ!」
アキト「ヤバい連中っていうのは」
アキト「人身売買の取引相手のことか?」
???「中国のマフィアだよっ!」
???「しかも普通じゃねぇ・・・」
???「お前らもこんな事してタダじゃ済まんぞ!?」
???「み、見るな・・・」
アキト「おい、どうした?」
???「見るな、見るな、見るな・・・っ!!」
???「頼む、見ないでくれ・・・」
???「見せないでくれ・・・」
「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
アキト「一体どうなってやがる・・・」
〇寂れた雑居ビル
〇廃ビル
大家「あらまっ」
アキト「よう」
アキト「相変わらず不気味だねぇ、ココは」
大家「人間たちのイメージに合わせてやってんのよぉ!」
大家「それより」
大家「あの件なら、まだ全然つかめてないわよ?」
アキト「あぁ、今日は別件」
アキト「ちょいと厄介事に首を突っ込んだかもしれなくてね」
大家「なにそれ?」
アキト「いや、中国の──」
大家「中国と日本の妖怪大戦争だってぇ!?」
アキト「なんでそうなんだよ」
アキト「はやとちるな」
アキト「あれは妖怪の類じゃねぇ・・・」
〇黒
「そうですか、見えましたか」
〇貴族の応接間
???「えぇ、ハッキリと」
???「ふん」
???「なにが千里眼だ、くだらん」
???「はっ」
???「自分が半分しか見えてないからって」
???「僻まないで頂けるかしら?」
???「なんだと小娘・・・」
???「なんならアンタを見てやってもいいのよ?」
???「その前に息の根を止める」
「まぁまぁ二人とも」
???「事態に進展がありそうなんです」
???「穏やかにいきましょう」
???「先生がそうおっしゃるのなら・・・」
???「命拾いしましたわね」
???「ふん」
???「さて・・・」
???「非常に興味深いですねぇ」
???「──その青年」
???「今後も実験体は必要になりますし」
???「新たな取引先を見つけがてら」
???「近々ニッポンへ伺いましょう」
〇黒背景
〇廃ビル
アキト「今すぐどうこうって訳じゃないが」
アキト「用心に越した事はない」
アキト「なにか引っかかったら情報流してくれ」
大家「それはいいけどアンタ」
大家「あの子巻き込んでるんじゃないのぉ?」
アキト「ハルの事か?」
大家「そうそう!」
大家「ちゃんと見といてやんなさいよ」
大家「ただでさえ──」
大家「だまくらかしてるんだから」
アキト(今のアイツは糸の付いた操り人形だ)
アキト(だがいずれ、その糸を切り)
アキト(自分の意思で動き出す)
アキト(そんときゃ俺も、覚悟を決めるよ)
大家「あら、303号室さんお出掛けぇ?」
大家「気を付けてー!」
アキト「やっぱ不気味だ」
〇一戸建て
〇シックな玄関
早瀬ハル「ただいま・・・」
さっきのアレはなんだったんだろう
早瀬ハル「ん?」
早瀬ハル「ハ、ハリネズミのハリー!?」
君島カオリ「も~、ハリーったらぁ」
君島カオリ「あら、早瀬くんおかえりなさい」
早瀬ハル「どど、どうしてハリーがココに・・・」
君島カオリ「どうしてって」
君島カオリ「ウチで飼ってるからよ」
早瀬ハル「なはっ!?」
君島カオリ「言ってなかったっけ?」
君島カオリ「早瀬くん」
君島カオリ「アキトとばかり一緒にいるから」
君島カオリ「なかなかハリーと生活サイクル合わなかったしね」
君島カオリ「これからは仲良くしてやってね」
早瀬ハル「いや、それはでも・・・」
君島カオリ「あら?」
君島カオリ「でもどうして名前は知ってたの?」
早瀬ハル「あいや、それはチャンネルを・・・」
君島カオリ「あぁ、そうなんだ」
君島カオリ「まぁ、あれはなんとなくでやってる事だから」
君島カオリ「再生数とかも全然チェックしてないのよ」
これが
王者の余裕──
早瀬ハル(アキ様には黙っておこう・・・)
君島カオリ「ハリーと私は同じだったの」
君島カオリ「その針で周りを傷つけないように」
君島カオリ「自らひとりぼっちを選んでた」
君島カオリ「本当は仲良くしたいのにね」
君島カオリ「似た者同士、引き合うものがあったのよ」
君島カオリ「でも今は早瀬くんのおかげで」
君島カオリ「針を気にせず暮らせてるわ」
そうだ
もう大丈夫
そしてこれからも、きっと
だからもっと
殺さなくちゃ
〇一戸建て
「ふーん」
「人体模型とひとつ屋根の下、か・・・」
???「君島カオリさん」
???「今のところ」
???「アナタの一歩リードってところね・・・」
???「でもね」
???「オカルトヒロインは」
???「学園に二人もいらないの」
〇黒
アナタもそう思うでしょ?
──金次郎
悪の幹部みたいな人たちが出てきた!😳
別のオカルトヒロイン?そして、金次郎?
謎が深まる二話でした。
動画チャンネルは色々と意外でした😂ハリーも今後活躍するのかな?
色々謎が増えて、先の展開も益々謎めいて引き込まれますね!
ハリーのように周りに影響されず、自分らしくやり続けるのが大事だと教訓を得ました😆 ありがとうございます!