ぼくらの就職活動日記

大杉たま

エピソード44(脚本)

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〇渋谷のスクランブル交差点
  大通りのパブリックビューイングには瑚白の姿が映っている。
  多くの通行人が足を止めて画面を見ていた。

〇個人の仕事部屋
「失礼します」
中園瑚白「中園瑚白です。よろしくお願いします」
大富春樹「社長の大富春樹(おおとみはるき)だ」
大富春樹「あだ名はずっとトミーだった」
大富春樹「私はそのあだ名が嫌で、婿養子に入って苗字を変えようと思っていたが、妻の苗字も大富だった」
大富春樹「よろしく」
中園瑚白「なるほど」
中園瑚白「私は今まであだ名をつけられたことがありません」
中園瑚白「仕方なく自分であだ名をつけようと、自分のことをハクと呼んでいたらイタイ女だと思われてしまいました」
中園瑚白「よろしくお願いします」
  瑚白の返しに大富はニヤリと笑う。
大富春樹「座りたまえ」
中園瑚白「失礼します」

〇田舎の役場
若山柿之介「あ、あんときのオッサンだべ!」
村人「なんだ柿之介、社長と知り合いかー」
若山柿之介「んだ、おらに受験票さくれたオッサンだ」
若山柿之介「まさか社長さだったとは、びっくりだべ。 今度お礼さしねーとなー」

〇個人の仕事部屋
大富春樹「プレゼンをするのに、何も準備はいらないのかね」
中園瑚白「はい、このままで大丈夫です」
大富春樹「そうか、では始めたまえ」
中園瑚白「はい」
中園瑚白「私は一億円を使って、十億円を稼ぎました」
大富春樹「ほう」
中園瑚白「そのうちの五億円を使って、二次選考で御社に百万円を持ってきた受験生たち全員にお金を返したいと思います」
大富春樹「その必要はないよ」
大富春樹「あれは預かっていただけで、もちろん全員に返すさ」
大富春樹「ただ、最初から返すつもりだと言ってしまっては、受験生たちの本気が見られないからね」
大富春樹「百万を払ってでもうちに入りたい、そんな学生が欲しかったのさ」
中園瑚白「・・・なるほど、そうでしたか」

〇たこ焼き屋の店内
藤原一茶「なんや、せやったんかい」
藤原一茶「ほんならわざわざお気に入りのフィギュアコレクション売らんで済んだやないか」
藤原一茶「レジからナンボか抜き取ったらよかったわ」
  バシッ
藤原一茶「いたっ、冗談やん」

〇個人の仕事部屋
大富春樹「金を受験生たちに返す、だけか」
中園瑚白「残りの五億は、ある目的のために使いました」
大富春樹「何かね?」
中園瑚白「御社の株を、五億円分買わせていただきました」
大富春樹「ふむ、うちの株を」

〇田舎の役場
若山柿之介「えー、瑚白さ、そんなにたくさんカブ買ってどうするべか!」
村人「わかった、カブの味噌汁さ作って、エリートピアの社員さん方に振る舞うんだべ!」

〇個人の仕事部屋
大富春樹「大株主になって、私を脅そうというわけか?」
中園瑚白「いえ、そんな小ズルいことはいたしません」
中園瑚白「私は御社の将来性を見込んで、御社の株を購入しました」
大富春樹「ふ、将来性か」
中園瑚白「はい」
中園瑚白「私が御社に入り、社長になることで、御社は今以上に発展すると考えたからです」
大富春樹「ふ・・・ふははは」
大富春樹「中園、なるほど。 中園か、ふふふ、面白いな」
中園瑚白「・・・・・・」
大富春樹「君の考えはわかった、大いに頑張りたまえ」
中園瑚白「え」
大富春樹「ああ、誤解するな。 まだ内定を出すと決まったわけではない」
大富春樹「もし内定が出たら、その時は存分に社長の席を狙いなさい、という意味だ」
中園瑚白「よろしいんですか」
大富春樹「よろしいも何も、会社の未来をしょってたつ人間が欲しくてこんなお祭りみたいな選考をしているんだ」
大富春樹「それぐらいの啖呵は切ってくれなくては困る」
中園瑚白「なるほど」
大富春樹「私とて、引きずり降ろしてやるぐらいの気持ちで社長の座を狙っていた」
大富春樹「そして、今ここに座っている。同じだ。 努力したまえ」
中園瑚白「わかりました。引きずりおろします」
大富春樹「ああ、よろしく頼むよ」

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