第四涙 想う事(脚本)
〇後宮の廊下
紫苑(しおん)「次はどうする?兄者?」
萱草(かんぞう)「・・・そうだな・・・」
萱草(かんぞう)「儂は、もう少し味付けの濃い方が好みだ」
紫苑(しおん)「了解♪」
紫苑(しおん)「じゃあ、次は・・・ 『あの記憶』を蘇らせてみるか・・・」
〇後宮の庭
雨は嫌いだ
君の涙が・・・
隠れてしまうから・・・
見ているだけは・・・
もう嫌だった
自分に出来る事は
『君の記憶を消す』事だけだから・・・
それで・・・
君がこの先・・・
笑顔で暮らせるならば・・・
喜んで・・・
自分が・・・
手を下そう
〇太子妃の御殿
夕顔(ゆうがお)「瑚蓮さま・・・ お帰りなさ──」
瑚蓮(これん)「ただいま!!!!!!」
夕顔(ゆうがお)「・・・瑚蓮さまがプリプリするなんて・・・ 明日は雨かしら?」
〇後宮の一室
瑚蓮(これん)(何よ!! 佐須良に私の気持ちなんて・・・ わからないんだからっっ!!!!!!)
瑚蓮(これん)(・・・誰だろ? 佐須良だったら・・・ 今は会いたくないな・・・)
瑚蓮(これん)「・・・」
菖(しょう)「瑚蓮・・・」
瑚蓮(これん)「あ・・・菖さん・・・!?」
菖(しょう)「何? アタシじゃ悪かったかしら?」
瑚蓮(これん)「い、いえ!! そんな事は!!」
菖(しょう)「・・・ちょっと・・・ お邪魔するわよ?」
瑚蓮(これん)「どうかされましたか?」
菖(しょう)「佐須良がしょげて帰って来たわ・・・ ケンカしたの?」
瑚蓮(これん)「・・・あれは・・・ 佐須良が悪いんです!!」
菖(しょう)「・・・」
瑚蓮(これん)「何も知らない佐須良が・・・ 私の記憶の事を悪く言うから!!!!」
菖(しょう)「・・・ねぇ?瑚蓮」
瑚蓮(これん)「はい?」
菖(しょう)「レッスン1よ!」
瑚蓮(これん)「???」
菖(しょう)「自分が見ている目線だけで物事を判断しては・・・真実は見えないわ・・・」
瑚蓮(これん)「???」
菖(しょう)「『・・・この人がくれた言葉の裏には・・・ 何が隠されているんだろう?』」
菖(しょう)「『・・・もしかしたら・・・ 言葉通りの意味じゃないかもしれない・・・』」
菖(しょう)「心配で言った言葉も・・・ 悪意ある意味で言った言葉も・・・」
菖(しょう)「それを良くも悪くも捉えるのは・・・ 本人だから・・・ 言葉は・・・ 受け取った本人しか 噛み砕けない・・・」
瑚蓮(これん)「・・・佐須良の言葉にも・・・ 何かあると?」
菖(しょう)「・・・そこは自分で考えなさいな・・・ ・・・でも・・・」
菖(しょう)「怒る前に一度 想像してみるといいわ・・・」
菖(しょう)「『何故、この言葉をくれたのか?』って・・・ 怒るのはその後でもいいじゃない」
瑚蓮(これん)「・・・」
瑚蓮(これん)(・・・佐須良が・・・ 私を・・・ 心配してくれたのは わかってる・・・)
菖(しょう)「・・・ま、お堅い話はここまでとして・・・」
菖(しょう)「瑚蓮、今日からしばらく・・・ アタシが一緒に寝てあげるわ!」
瑚蓮(これん)「えっ!?」
菖(しょう)「なぁに? アタシじゃ不服? じゃあ、佐須良に頼む?」
瑚蓮(これん)「いやいやいや──!!!!!! どうしてそうなるんですか!? 私!一人で寝れますっ!!!!」
菖(しょう)「そんなヒドイ顔で・・・ 何を言ってるの!!」
菖(しょう)「皆・・・心配しているのよ?」
菖(しょう)「一緒に寝るって言っても・・・ 側にいるだけよ・・・ 瑚蓮が寝付くまで・・・ 見守っていてあげるから」
菖(しょう)「アタシの事は空気だと思って・・・ しばらくは・・・ 我慢してちょうだい」
〇豪華な王宮
佐須良(さすら)「閻魔ー!!!! いるかー!?」
閻魔(えんま)「何だ? 佐須良か・・・ どうした?」
佐須良(さすら)「あの小鬼共の居場所を教えてもらおうと思ってな!」
閻魔(えんま)「・・・小鬼・・・?」
佐須良(さすら)「萱草と紫苑・・・ あの兄弟鬼は・・・ 今、何処にいる!?」
閻魔(えんま)「奴等がまた何か悪さしたのか!?」
佐須良(さすら)「瑚蓮の記憶が一つ蘇った!! 夢に介入出来る鬼は奴等しかおらんだろう!?」
閻魔(えんま)「・・・」
佐須良(さすら)「閻魔!! 彼奴らは、かつてそなたの部下だったかもしれんが・・・ 度がすぎるぞ!!!!」
佐須良(さすら)「・・・瑚蓮の父母の時といい・・・ ・・・菖の時といい・・・ 彼奴らは瑚蓮が絡むと見境がなくなる!!!!」
佐須良(さすら)「何故! 何故、野放しにするっ!?」
閻魔(えんま)「・・・瑚蓮は・・・今?」
佐須良(さすら)「記憶が蘇っただけで・・・無事だ!! 菖が側に付いている!!」
閻魔(えんま)「・・・」
閻魔(えんま)「沙羅の國と扶桑の國の山間に・・・ 人が忘れた祠がある・・・ その奥の洞窟に・・・」
佐須良(さすら)「小鬼共がいるのだなっ!!!!!!」
閻魔(えんま)「だが・・・佐須良!! 萱草と紫苑には近付くなっ!!」
閻魔(えんま)「・・・佐須良・・・」
閻魔(えんま)「・・・瑚蓮の事は・・・ ・・・もう・・・ 諦めろ・・・」
〇後宮の一室
菖(しょう)(・・・寝た・・・みたいね・・・)
菖(しょう)(今日はゆっくり寝てちょうだい・・・)
菖(しょう)「佐須良・・・ お帰りなさい で? 収穫は?」
佐須良(さすら)「沙羅の國と扶桑の國の山間に・・・ 忘れ去られた祠があるらしい・・・ その奥の洞窟に・・・」
菖(しょう)「奴等がいるのね!?」
〇後宮の一室
瑚蓮(これん)「ふぁ・・・!! よく寝た!!」
瑚蓮(これん)(最初は・・・菖さんがいるから緊張して寝れなかったけど・・・ 結局、寝ちゃったな!!)
瑚蓮(これん)(・・・そう言えば・・・ 寝入る前・・・ 菖さんと佐須良が話す声が聞こえたような・・・?)
瑚蓮(これん)(沙羅の國と扶桑の國の山間に・・・何かあるとかないとか・・・?)
瑚蓮(これん)(扶桑の國か・・・ そう言えば・・・ 父さまと母さまのお墓参り・・・ 最近行ってないな・・・)
瑚蓮(これん)「よし! 夕顔に話して・・・ お墓参りに行こう!!」
〇草原
瑚蓮(これん)(一人で行けたんだけどな・・・)
菖(しょう)「晴れて良かったわねー!」
佐須良(さすら)「おぅおぅ! 瑚蓮の日頃の行いの賜物だな!!」
瑚蓮(これん)(夕顔・・・二人と一緒なら行ってもいいって言ってくれたんだけど・・・)
瑚蓮(これん)(でも・・・正直・・・ 佐須良と微妙に顔を合わせ辛いって言うか・・・気まずいって言うか・・・)
菖(しょう)「ぐわぁ──!! もうっ!! 辛気臭いわねー!!」
菖(しょう)「佐須良! 瑚蓮に何か言う事はないのっ!?」
佐須良(さすら)「ん? 我の嫁は・・・今日も可愛いなっ!! 馬に乗る姿も 颯爽として新鮮だな!!」
菖(しょう)「・・・聞いたアタシがバカだったわ・・・ 次!! 瑚蓮は!? 佐須良に言う事ないの!?」
瑚蓮(これん)「・・・えっと・・・その・・・」
佐須良(さすら)「ん? 何か言いたい事があるのか?」
瑚蓮(これん)「・・・佐須良の・・・バカ・・・」
瑚蓮(これん)「でも・・・この間は・・・ ごめんなさい・・・」
佐須良(さすら)「ど、どうしたのだ!? 瑚蓮が我に謝る事など!! 米粒ほどもないぞ!?」
瑚蓮(これん)「・・・この間は・・・ 佐須良なりに私の事・・・ 心配してくれたんだよね?」
瑚蓮(これん)「・・・だから・・・ その・・・」
瑚蓮(これん)「このまま気まずいのも嫌だし・・・ ごめんなさい!!」
佐須良(さすら)「瑚蓮ッッッ!!!!!! 抱きしめてもいいか!?」
菖(しょう)「はいはい・・・仲直りは・・・済んだかしら?」
瑚蓮(これん)「・・・菖さんも・・・その・・・ ありがとう・・・」
菖(しょう)「ふふ いいのよ・・・ アタシも気まずいの嫌いだし?」
瑚蓮(これん)「ふふ」
佐須良(さすら)「おい、コラ!!そこ!! 我を差し置いて・・・ 距離を縮めるな!!」
菖(しょう)「ところで・・・瑚蓮? どうしてお墓参りに行きたくなったの?」
瑚蓮(これん)「昔はよく・・・ 祈ってたんです・・・」
瑚蓮(これん)「星神さまに・・・ 『父さま母さまに逢わせて下さい』って・・・ 叶わない願いを・・・」
瑚蓮(これん)「何度も何度も・・・」
(・・・知ってるよ・・・)
瑚蓮(これん)「・・・で、その時の記憶を思い出して・・・ お墓参りしなきゃって!!」
瑚蓮(これん)「ずっと・・・祈る事を忘れてて・・・ 今さら・・・薄情だな・・・ 都合が良いなって思うけど・・・」
瑚蓮(これん)「思い出したからこそ・・・ お参りしたいなって!」
瑚蓮・佐須良・菖のキャラクターや感情が色鮮やかに描かれた第四話ですね!菖…何てステキなオネェ😳
その一方で、無彩色の靄で覆われたが如き瑚蓮の過去・記憶……この対比が、双方をより際立たせていて魅力的ですね😊