2 鮫島姉妹(脚本)
〇大衆居酒屋
アズ「今日もお疲れ様コウ君!」
コウ「あぁ、お疲れ!後ちょっとで新しい魔法使えるな!」
佐藤博之「へいらっしゃい!今日も仲が良いねお二人さん!」
アズ「あ!店長さん御無沙汰です!」
コウ「おやっさん、俺等何時もの奴で」
佐藤博之「まいど!おぉい霧斗!何時ものお客さんで、焼き豚定食と焼き魚定食だ!」
桐宮霧斗「はい!師匠!」
家族と縁を切ったあの日から10年が経った。あの日から俺は中学で兎に角勉強にも励み、師匠で在る佐藤さんから高校にも
行かせて貰えた。そこから本格的に料理や掃除を教えて貰ったが、最初は心から逃げ出したいと思う事が多かったが、
今ではこうして厨房を任せて貰える程にまで腕を上げていた。死ぬ程辛かったけど、師匠には感謝してもし切れない。
桐宮霧斗「お待たせ致しましたお客様。焼き豚定食と焼き魚定食に成ります」
コウ「どうも有難う!」
アズ「焼き魚頂きます!」
コウ「アズ、お前も偶には肉食いなよ」
アズ「私脂っこいの嫌いだから」
桐宮霧斗「それではごゆっくり」
有吉正義「ひっく・・・ひっく・・・」
佐藤博之「らっしゃーせー!って正義の課長さんじゃねぇか!何か有ったのかい?」
有吉正義「店長さん、ビール一杯」
佐藤博之「まいど!霧斗!ビール一杯!」
桐宮霧斗「分かりました!」
桐宮霧斗「お客様、お待たせしました」
有吉正義「あぁ、有難う御座います」
桐宮霧斗「それではごゆっくり」
佐藤博之「それで課長さん。今日は何が有ったんだい?」
有吉正義「私より上の階級を持った若造に、全てを否定された・・・」
佐藤博之「どう言うこったか知らねぇが、嫌な事なんて美味い酒飲んで忘れなよ!」
桐宮霧斗「お待たせ致しました、ご注文の、焼き肉定食です」
沢渡隼也「有難う御座います」
桐宮霧斗「若社長さん。その後進展は有りましたか?」
沢渡隼也「う〜ん・・・最近売上が安定して来たのは嬉しいんですけどね。咲にも友香ちゃんにも幸せに成って欲しいから、」
沢渡隼也「こっちの方は何とも言えなくて」
桐宮霧斗「モテるってのも辛いですね。でも優柔不断も過ぎると愛想尽かされちゃいますよ」
沢渡隼也「そう成らない様に良く考えます」
〇大衆居酒屋
沢山のお客様を出迎えて、俺と師匠は全力で皆を迎え入れた。閉店時間間近と成り、俺は一人洗い物に没頭する。
佐藤博之「霧斗!今日も上出来だったぜ!」
桐宮霧斗「有難う御座います。全部師匠のお陰です」
佐藤博之「な〜に言ってらぁ!霧斗が最後まで諦めなかった結果だろうよ!」
佐藤博之「まぁ最初内は本当褒められたもんじゃ無かったがな」
桐宮霧斗「本当、お恥ずかしい限りです」
佐藤博之「でも、俺は嬉しいぜ!お前が此処まで料理に嵌ってくれたんだからな!明日も宜しく頼むぜ!」
桐宮霧斗「はい!!」
佐藤博之「おっと、俺とした事が、入口を締め忘れた見たいだ。霧斗、直ぐ戻るぜ」
桐宮霧斗「大丈夫です。こっちは任せて」
佐藤博之「さて、間違えて誰か入って無いかな?お客様、申し訳有りません。本日の業務は終了しました・・・って・・・」
鮫島サヤカ「おじさんこんばんわ。お店の人ですか?」
佐藤博之「あ、あぁ、そうだが、どうしたんだいお嬢ちゃん?パパやママは一緒じゃ無いのか?」
鮫島サヤカ「サヤカは今日お姉ちゃんと一緒にお出掛けしてたんだけど逸れちゃって。私のお姉ちゃん見てませんか?」
佐藤博之「う〜ん・・・今日も何人か君より年上のお姉さんは来てたけど、それっぽい人は見て無いな」
鮫島サヤカ「そうですか。あの、此処ご飯屋さんですよね?」
佐藤博之「ん?そうだが?」
鮫島サヤカ「これで食べられるご飯作って下さい」
佐藤博之「え???」
佐藤博之「え〜〜〜〜!!!???」
桐宮霧斗「どうしました師匠!?行き成り大声上げて!?」
鮫島サヤカ「おじさん、もしかして足りませんか?」
佐藤博之「あ、あぁ!お金の心配はしなくて大丈夫だからね!ちょっと待っててくれよ!霧斗、こっち来てくれ!」
桐宮霧斗「師匠!一体何がどう成ってるんですか!?」
佐藤博之「俺に聞くなよって言いたい所だが、ありのまま起きた事を話すぜ。お前もさっき見た通り小学生位の女の子が来てな」
佐藤博之「100万円でご飯買えますかって聞いて本当に100万円出して来やがったんだ」
桐宮霧斗「ひゃ、100万円!?何かの間違いでしょ!?」
佐藤博之「俺だって信じられねぇよ!しかも本物の現金だ。子供銀行券とかじゃ無いマジもんだ」
桐宮霧斗「夢とかじゃ無い・・・あの師匠、俺等もしかしてヤバい事に成ってるんじゃ」
佐藤博之「あぁ違ぇねぇ。あの娘はサヤカちゃんって言ってな。あの大金を持ち歩いてるって事は親御さんは金持ちか何かだ」
佐藤博之「お姉ちゃんってのが居る見たいだが逸れて迷子だ。もし有名所だったら大騒ぎにも成るし、俺としては警察に保護して貰いてぇ」
佐藤博之「悪い奴に拐われたら溜まった物じゃねぇ。だけどあの嬢ちゃんは腹空かしてるからこのまま追い返す訳にも行かねぇ」
桐宮霧斗「え?あの娘腹減ってるんですか?良ければ俺やりましょうか?一番時間掛からなくておにぎりですけど」
佐藤博之「いや、上出来だ。嬢ちゃんには、俺が話して置くよ」
佐藤博之「待たせたな嬢ちゃん」
鮫島サヤカ「おじさん!ご飯のお金は!?」
佐藤博之「今若い兄ちゃんにおにぎり作って貰ってるぜ。お金は、おにぎりの所に書いてある300円だ。一万円出したら、残りを返すぜ」
鮫島サヤカ「わぁ、有難う!はいこれ!」
佐藤博之「おう!約束通り残りは返す!無くさない様にな!」
桐宮霧斗「お嬢さん、お待たせしました」
鮫島サヤカ「わぁ、美味しそう。お箸とかは無いんですか?」
桐宮霧斗「う〜ん、おにぎりは手で食べる物だけど、もしかして知らない?」
鮫島サヤカ「え!?私手で食べた事無い!!」
佐藤博之「そりゃマジか!!良い機会だから、ちゃんとおしぼりで手を拭いて、手で食べて見な!!」
鮫島サヤカ「は、はい!!頂きます」
女の子はおしぼりで手を拭いたら、おにぎりを手に取って口へと運んだ。
佐藤博之「どうだい?嬢ちゃん」
鮫島サヤカ「美味しい・・・こんなに美味しいの始めて食べた・・・!!」
佐藤博之「おぉそんなにか!!何てったって、この俺がこの兄ちゃんに教えたからな!!」
鮫島サヤカ「あの、まだ有りますか!?後2個位食べたいです!!」
佐藤博之「だってよ霧斗!」
桐宮霧斗「任せて下さい!」
サヤカちゃんがおにぎりを食べ終えた後、俺達は質問を始めた。
佐藤博之「満足してくれたかい?」
鮫島サヤカ「はい!とっても美味しかった!!」
桐宮霧斗「それは良かった」
佐藤博之「さて、嬢ちゃんに質問だが、お家は何処か分かるかい?」
鮫島サヤカ「お家ですか?えっと・・・」
鮫島花恋「あの、すみません!!此処に小学生位の女の子来てませんか!?もし心当たりが有れば教えて欲しいのですが!!」
鮫島サヤカ「あ!お姉ちゃん!」
鮫島花恋「サヤカ!!お姉ちゃんから離れないでってあれ程言ったじゃない!!」
鮫島サヤカ「ご・・・ご免なさい・・・」
鮫島花恋「もう!本当心配したんだから・・・!!」
佐藤博之「まぁまぁ、あんたがお姉さんかい?余り怒らないでやってくれよ。此処で良い子で待っててくれたんだから」
鮫島花恋「そうも言ってられません。こっちは心底心配してました!ですが、妹を守ってくれて有難う御座いました」
佐藤博之「お、おう・・・」
鮫島花恋「サヤカ、此処で何をしてたの?」
鮫島サヤカ「サヤカ?サヤカは此処でおじさんとお兄ちゃんにおにぎり作って貰って、凄く美味しかったから一杯食べさせて貰ったよ」
鮫島花恋「サヤカ貴方、今何て言ったの!?」
鮫島サヤカ「え?だから、おじさんとお兄ちゃんに、おにぎり作って貰って食べてた」
鮫島花恋「サヤカが、おにぎりを食べたですって!!??」
佐藤博之「お姉さん、一体どう言う事だ?」
鮫島花恋「あ、申し遅れました。私、この娘の姉の鮫島花恋って言います。まだ若いですが、」
鮫島花恋「父の跡を継いで宝石店の社長として店を経営してます」
佐藤博之「鮫島だって!!?鮫島と言やぁ、此処いらでも有名な宝石屋じゃねぇか!!通りで大金持ち歩いてる訳だ!!」
鮫島花恋「あの、此処で起きた事、私にも聞かせてくれませんか?妹の事も話します」
佐藤博之「そうだな!こっちも気に成る事が有るからな。霧斗ぉ!こっち来てくれ!」
桐宮霧斗「はい、師匠」
佐藤博之「さて、若いお姉ちゃん。色々と聞かせてくれないか?」
鮫島花恋「あ、はい!先ずはサヤカを守ってくれた事ですが、心から感謝申し上げます!」
鮫島花恋「あの娘は生まれ付き、極度の拒食症で、どれだけ美味しい料理が作れる一流シェフが作った料理を食べる事が今まで」
鮫島花恋「出来なかったんです」
佐藤博之「成る程ね。それまで栄養とかはどうしてたんだい?」
鮫島花恋「良く有るサプリメント等で栄養を与えてました。一応食べれても味がしない物しかあの娘食べれなくて」
佐藤博之「そうか。世の中にはアレルギーって言葉も有るからな。折角作った料理をアレルギーや拒食症で食えないってのは料理人としては」
佐藤博之「悲しい話だ」
鮫島花恋「ですが、サヤカはこのお店に来て、貴方方が作ったおにぎりを食べた!味付けはしてましたか!?」
桐宮霧斗「はい。ですが事前に言います。今回作ったのは俺ですが、師匠に教えて貰った通りにして、特別な事は何もしてません」
桐宮霧斗「そうだな・・・作りながら美味しく成って欲しいとか、食べて欲しいって気持ちは有りましたけど」
鮫島花恋「え?それって?」
佐藤博之「成る程そう言う事か!霧斗!お前教えた事ちゃんと覚えてたのか!」
桐宮霧斗「えへへ」
鮫島花恋「あの、どう言う事ですか?私にも説明して下さい!」
佐藤博之「あのなお嬢ちゃん。料理人が料理をする時に知識や技術は絶対必要だ。でもそれだけじゃ行けねぇ。料理に必要なのは、」
佐藤博之「愛情だ」
鮫島花恋「あ、愛情ですか・・・?」
佐藤博之「おうよ。霧斗がさっき言った通り、美味しくしたい、食べて欲しい。喜んで欲しいって気持ちが大事なんだ。だから俺等」
佐藤博之「料理人は腕を磨くんだ。昔から、料理は心を込めて作るって言うだろ?俺の憶測だが、サヤカちゃんはそう言う、心を込めて作った」
佐藤博之「料理が食べたかったのかも知れねぇ。こう言っちゃ悪いが、あんたの所のシェフ達はそう言うの、忘れちまってるんじゃ無いかって」
佐藤博之「俺は思うぜ」
鮫島花恋「心を込める・・・」
鮫島花恋「あの、霧斗さんですよね?私にもサヤカが食べたおにぎり、作って貰えますか!?」
桐宮霧斗「俺は構いませんが、師匠、どうしますか?」
佐藤博之「あぁ、気にせずやって来い!」
桐宮霧斗「はい!」
桐宮霧斗「鮫島さん、お待たせしました!」
鮫島花恋「これがサヤカが食べたおにぎり。店長さんの話が本当なら、特別な事はして無いんですよね?」
桐宮霧斗「はい。内では何時ものやり方でやってます」
鮫島花恋「それじゃあ、頂きます」
鮫島花恋「・・・・・・」
鮫島花恋「あれ?この味何処かで・・・」
佐藤博之「どうした?」
鮫島花恋「いえ!何でも無いです!ですが、ちょっと時間をくれませんか?」
佐藤博之「あぁ、何か知らんが構わんよ」
花恋さんは目を閉じて暫く沈黙して、真剣な表情に成って俺等を見つめた。
鮫島花恋「決めました。店長さん、お願いが有ります!私、霧斗さんを雇いたいです!」
佐藤博之「な、何だって!?」
鮫島花恋「霧斗さんが作ってくれた料理なら、サヤカも喜んで食べてくれます!店長さんの言った通り、どんなに優れた料理でも、」
鮫島花恋「心が込もって無ければ意味が無い。でも霧斗さんにはそれが出来る。だから!」
桐宮霧斗「ま、待って下さい!行き成りそんな事言われても困ります!俺、中学の頃家族に捨てられて、師匠に拾われてから10年間」
桐宮霧斗「ずっと此処で頑張って来たんです!それを行き成り!」
佐藤博之「まぁ待て霧斗、これって案外チャンスなんじゃねぇか?」
桐宮霧斗「師匠!?」
佐藤博之「あのな霧斗。何事も経験って言うだろ?お前はこの10年間良く頑張って来た。前から考えてたんだが、お前にも外の世界を」
佐藤博之「見て回って貰いたいんだ。人生は出会いと別れの連続だ。もしお前が俺に頼り過ぎて、俺が居なく成ったら何も出来ねぇって」
佐藤博之「成ったら、それは師匠として自分を一番許せねぇって事だ。自分の幸せは自分で掴んでこそ意味が有る」
佐藤博之「なぁに!困った事が有れば何時でも俺に頼れ!その上で、自分に何が出来るか、良く考える事だ!」
桐宮霧斗「師匠、俺居なくて、店大丈夫ですか?」
佐藤博之「馬鹿たれ!!弟子に心配される程おちぶれちゃいねぇよ!!折角培った力、困ってる奴に使ってやれ!!」
師匠からの恩義、これまで生きた10年間、この店に対する思い入れ、突然のスカウト。色んな感情が混じって複雑な気分だった。
何時か師匠に追い付きたい。師匠を超えたい。何時しかそんな夢を抱いたが、今俺が一番したい事は、
師匠の気持ちを無駄にしたく無い事だった。
桐宮霧斗「分かりました。俺行きます!」
佐藤博之「はっ!そうで無くちゃな!確りやれよ!」
桐宮霧斗「はい!必ず恩返しに来ます!」
俺は決意を固めて、花恋さんの誘いに乗る事にした。
鮫島花恋「行き成り無理を言ってご免なさい。そして、サヤカの為に尽くしてくれる事、感謝します」
桐宮霧斗「こちらこそ宜しくお願いします。改めて、俺は桐宮霧斗。24歳です」
鮫島花恋「あ、年下なんだ。私は鮫島花恋。25歳よ。鮫島宝石店の社長をやってるわ。宜しくね、霧斗君」
確して俺は、若社長の花恋さんの妹、サヤカちゃんの専属料理人として雇われる事と成った。沢山の思い出が詰まった店を
後にするのは淋しかったが、師匠に背中を押され、俺は前に一歩踏み出すのだった。
料理の修行をして10年ですか!霧斗が立派になっている!しかも過去作品の人物が来店している!お楽しみ要素あるなんて最高のセンスですね!そして再びの急展開!迷子の女の子がいきなり100万円出すとか、それはぶった曲げますねwwお姉さんが来て、真実が分かった次に、金持ちからのスカウト!佐藤さんの言う通り散々邪魔者扱いしてきた家族を見返すチャンスですね!やっぱり何事も努力ですね・・・