白の世界

司(つかさ)

4話(脚本)

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〇田んぼ
弟「わぁ! すごいすごいよっ」
私「・・・・・・」
弟「毎年見てるけどさ、今年が一番すごいんじゃない?」
私「・・・・・・・・・・・・」
弟「ねぇ聞いてる・・・・・・姉ちゃん?」
弟「花火、やっぱりすごいよね」
私「・・・・・・・・・・・・」
私「もちろん」
私「私・・・こうやって一緒に夏祭りに来れて嬉しい」
私「嬉しくて、嬉しくてしょうがないんだから」
弟「姉ちゃん・・・急にどうしたの?」
私「どうしたのって何が?」
弟「何がって泣いてるじゃん。なんか辛いことでもあった?」
私「これは・・・・・・その・・・感動してるのっ!」
私「花火が綺麗だからっ!」
私「あんたとまたこうして見れるのが嬉しいから」
弟「ふーん。そっか・・・まぁ、いいや」
弟「僕もさ。こうやってまた姉ちゃんと来れて嬉しいよ」
私「・・・・・・・・・」
私「あんたはさ」
弟「ん?」
私「もし私ともう二度と会えないとしたら、どうする?」
弟「なに? 急に」
私「いいからさ例え話だよ。例え話」
弟「うーん。。。あんまり考えたことないなぁ」
弟「まぁ姉ちゃんがいないのは寂しいし、辛いかな」
私「・・・そう、だよね。」
私「あははごめんね。変な事きいちゃ」
弟「──でも、会えなくなっても消えちゃうわけじゃないから」
私「え?」
弟「なんて言うのかな。僕姉ちゃんにずっと甘えてきたから」
弟「姉ちゃんがいなくなったらもっと頑張らなきゃって思うんだ」
弟「この前じいちゃんが死んじゃった時もさ、思ったんだよ」
弟「辛かったけど、今までありがとうって」
弟「僕、じいちゃんの背中が大好きだから今も思い出せる」
弟「じいちゃんの背中をずっと追いかけて来たけど、もう先にじいちゃんはいないんだって」
弟「それなら、僕が誰かに追いかけてももらえるような人にならなきゃって」
弟「これから頑張ろうって、思ったんだ」
弟「だからね。僕がそんな人になるまで、何度だってじいちゃんの背中を思い出すんだ」
弟「僕の中では消えないんだよ」
私「そっか・・・・・・あんたはすごいね」
弟「姉ちゃんの事もそうだよ」
私「・・・・・・・・・」
弟「姉ちゃんともし会えなくなっても、僕の中に姉ちゃんは居てくれるから」
弟「だから僕はもっと強くなれる」
私「・・・・・・うん」
弟「姉ちゃんは違うの?」
私「ううん・・・違わない」
私「私もあんたと同じ気持ちだよ」
弟「なら良かった。姉ちゃんもすごいじゃん」
弟「あっ姉ちゃんあそこ見てっ! なんか流れてるっ・・・・・・」

〇河川敷
私「とうろうながし。私もしてみたかったな」
弟「そうだね。僕もじいちゃんを送りたかった」
私「姉ちゃんもそうだよ・・・・・・ちゃんと、送らないといけないんだよね」
弟「姉ちゃん・・・?」
私「祭りってさ、なんでこんな一瞬で終わっちゃうんだろう」
私「辛い時間ってすごく長く感じるのにさ、楽しい時間は一瞬だよね」
私「楽しいなって思っててもいつの間にかそれは終わって、気が付くと楽しかった分だけ辛くなってる」
私「思うんだ。楽しいって幸せな事なのかな?」
私「楽しい間は気付かないんだよね。これから先に辛い事が待ってるって」
私「それなら楽しい事なんてなかったら良かった」
弟「・・・・・・・・・・・・」
私「ごめん私、また変な事言っちゃったね」
弟「姉ちゃんさ、そんな事気にしてたの?」
弟「楽しい時は楽しい事だけ考えようよ」
弟「姉ちゃんが辛いときは僕が付いてるからさ。大丈夫だよ」
私「なに・・・言ってるのよ。まだ私はあんたになんか頼らないんだから」
弟「だよね。知ってる」
弟「あっそうだ。姉ちゃん僕・・・気になる事があるんだけど」
私「・・・・・・」
弟「あそこにさ、とうろうが引っかかってるみたいなんだよね」
私「・・・・・・・・・」
弟「あれだけかわいそうだから、助けてあげてもいいよね」
私「・・・・・・うん。いいよ」
弟「ありがと姉ちゃん」
弟「あっそうだ。あと一つだけ」
私「え?」
弟「もう、我慢しなくて大丈夫だから」
弟「姉ちゃんは頑張ったよ」
弟「僕は姉ちゃんとお祭りに来れて、最高の思い出が作れて楽しかった」
弟「だから、もう大丈夫だよ」
私「あんた・・・・・・ちょっと何言って」
弟「──姉ちゃん。ごめんね・・・僕、本当は気づいてた」
弟「今年のお祭りは、これが初めてじゃないんでしょ」
私「!?」
弟「姉ちゃん笑ってくれてたけど、ホントはずっと苦しかったよね」
弟「辛かったよね」
私「・・・・・・私は苦しんでなんかない」
私「楽しいよっ! あんたと一緒だからこんなに楽しいの」
私「だからほら、こんなに笑ってるでしょ?」
弟「ありがとう・・・でもいいんだ姉ちゃん」
弟「僕は・・・これから死んじゃうんでしょ?」
私「!?・・・・・・・・・」
弟「全部、思い出したんだ」
私「え?」
弟「ごめんね姉ちゃん。僕が・・・僕が全部悪いんだ」
弟「僕が姉ちゃんを巻き込んだんだ」
私「どういう・・・事?」
弟「僕、姉ちゃんともっと一緒にお祭りが過ごしたかった」
弟「ずっと楽しみにしてから、最後まで一緒に居たかった」
私「・・・・・・・・・・・・」
弟「僕もドジだよね。川に落ちちゃうなんてさ・・・」
弟「なんとか出来たらよかったのに・・・」
弟「川の中は真っ暗で息が出来なくて。苦しくて不安でこのまま一人になるのは嫌だったんだ」
弟「だからお願いした」
弟「このまま死にたくないって」
弟「姉ちゃんともっと一緒に過ごしたいって」
弟「それで目が覚めたらね・・・姉ちゃんとまた会えたんだ」
弟「ずっと姉ちゃんと過ごせる。願いが叶ったと思って嬉しかった」
弟「でも・・・・・・そのせいで姉ちゃんを苦しめた」
弟「僕のわがままが、姉ちゃんをこの世界に閉じ込めたんだ」
私「・・・・・・・・・・・・」
弟「でも、もう大丈夫」
弟「これで本当に終わり」
私「終わり?」
弟「うん、だってさ。僕の願いはもう叶ったから」
弟「姉ちゃんといっぱい遊んで、いっぱい笑って楽しかった」
弟「だからね。もう終わらせる」
私「あんた・・・・・・」
弟「ありがとね。姉ちゃん」
私「・・・・・・・・・・・・」
私「・・・・・・いい加減にしてよ」
弟「え?」
私「私だって同じ気持ちだったっ!」
私「あんたともっと一緒に過ごしたかったんだから」
私「一人でカッコつけないでよ!」
私「ずるいよ・・・・・・」
弟「姉ちゃん・・・・・・」
弟「言ったでしょ。次は僕に勝たせてって」
弟「だからたまには負けてよ。僕は姉ちゃんに勝って先にいきたいんだ」
私「バカ・・・・・・」
私「私は姉ちゃんなんだから。弟のわがままくらいいつだって受け止められる」
私「だから今日だけは・・・・・・負けてあげる」
弟「ふふっ、ありがとう姉ちゃん。大好きだよ」
私「──でも、勘違いしないでね」
私「次は絶対に私が勝つんだから」
弟「・・・分かった。ホント姉ちゃんらしいや」
弟「僕に姉ちゃんが居て、ホントに良かった」
弟「ありがとう・・・またね」
私「待ってっ、待ってよっ!!」
私「(弟が目の前にいるのに手が届かない)」
私「まだ話させてよ」
私「(目の前の世界が段々と暗くなっていく)」
私「そうやってあんたいっつも勝手なんだから」
私「(最後に弟がこちらを振り返る)」
私「(笑顔だ・・・・・・)」
私「絶対・・・・・・待ってるからっ!!!!」
私「(弟に届くようにずっと忘れないように力いっぱい叫んだ)」
私「(そして何とかギリギリで笑顔をつくった)」
私「(たくさん泣いたせいで目の周りは赤いし)」
私「(笑うなんて無理だと思ってたけど)」
私「(カッコ悪い姉を見られるのはもう嫌だったから)」
私「(私も笑ってお別れがしたかった)」

次のエピソード:最終話

コメント

  • 衝撃です!この「ループ」する世界、主人公側の何らかの事情によるものかと思っていたら、弟くんの意思によるものだったとは……
    姉弟の愛情、信念、決意、とても心を打たれました!

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