最終話(脚本)
〇田舎の病院の病室
何気ない日常の一ページ
何度目かの季節をまたぎ、季節は冬になった
病院の一室で女性が一人座っている
私「今日も寒いね。最低気温-2度だって」
私「暖かくしないとね。私も大事な時期だし気を付けないと」
私「そうそう、今回は全教科80点以上だったんだ」
私「これなら志望校に行けると思う」
私「志望校に行ったら何しようかな」
私「医療の勉強でもしようかな」
私「って言うのもね。ここに来ると考えるんだ」
私「私はもっと時間があるんだから頑張らないとなって」
私「勇気をさ、もらえるんだよね」
私「・・・・・・もうあれから何年経ったんだっけ?」
私「周りから『あんたももう大人なんだから』ってよく言われるけど」
私「嫌だよねあれ」
私「あんたも私もさ。時間が経って身体が成長して・・・・・・そうしたらいつから大人になるんだろうって」
私「18歳って人によって全然違うよ。私は・・・まだ大人にはなれてない」
私「だからさ。こうして毎月のように悩みが出てくるし、毎月吐き出したくなるんだ」
私「私の中での大人ってね。そういう弱い様子や態度はあんまり見せないの」
私「まぁ私には無理だけどね」
私「でももし、母さんみたいに子どもを産んだら変わるのかな」
私「子どもか・・・・・・考えてみると悪くないかもね。一生に一度くらいは」
私「良かった。またここに来て新しい事に気づいた」
私「もし子どもが出来たらあんたに紹介するからね」
私「絶対にあんたにも挨拶させるんだから」
私「そしたらさ・・・・・・また一緒に夏祭りに行こうよ」
私「きっと楽しいからさ、約束ね」
私「・・・・・・さてと」
私「これ今月も置いておくから。それじゃあね」
女性がベッドの隣に手紙を置く
席を立ち彼女は後ろを振り返らずに手だけを上げた
手紙の中には彼女の想いが綴られていた
「『弟へ。こうして手紙を書くのはもう何回目だろうね』」
「『相変わらず私は、元気でやってるよ』」
「『長いようで時間ってあっという間だよね』」
「『当時はおじいちゃんが死んじゃったことがショックだったけどさ。今はおばあちゃんも死んじゃって』」
「『思うんだよね。人って死んだらみんな燃やしてお墓に入るでしょ』」
「『その時は骨になるじゃない。骨になったらさ、段々と顔忘れていかない?』」
「『私はずっと覚えていられる自信はないな』」
「『あんたはどう思う?』」
「『私がもし先に死んで骨になっててても、私の顔・・・思い出してくれるのかな』」
「『私も勝手な事言うけどさ、忘れないでいてほしいな』」
「『今のあんたには見えてないけど、これからも私はあんたの顔を見に来るよ』」
「『なんて言うかさ。こういう状況になって初めて意識するんだなって』」
「『一度無くさないとさ。気づけないんだよね』」
「『だからさ、これからは気を付けていくよ』」
「『・・・・・・長々と話しすぎちゃったね』」
「『これがいつ読まれるか。そもそも何通目の手紙かも、覚えてないけど』」
「『いつか必ず読まれるって信じてるから』」
「『それじゃあまたね。姉より』」
手紙がまた積まれていく
季節も想いもまたいで繰り返す
それはもう後戻りする事はない
前にしか進まない
それを噛みしめるように
彼女はまた・・・・・・手紙を書き続ける
余韻のある美しいラストですね!
前話の後にはどうなったのか、そしてプロローグの意味について、全て想起させてくれる最終話、ズシリと胸に響きました!