ぎるぺな

氷雨涼

第3話 転校生②(脚本)

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〇教室の教壇
  飛び込んだ教室内は静まり返り、皆こちらを凝視している。机の上で逆立ちしている男子生徒が気になるが見なかった事にしておく
久世 権三郎「・・・誰じゃ?」
陽影 伶「廊下で待ってろって言ってまだ三分も経ってないじゃないですか・・・!」
久世 権三郎「・・・廊下?」
久世 権三郎「・・・」
久世 権三郎「えー・・・転入生じゃ」
久世 権三郎「では授業を・・・」
  『ガラッ!!』
八千代 飛鳥「ごめんなさい遅れちゃいました!! ホームルーム終わってますか!?」
陽影 伶「あ、小学先生」
八千代 飛鳥「混ぜないでください!? あと小学生じゃないですからね!!」
八千代 飛鳥「あれ、君はさっき校門で挨拶した子ですよね? ここは二年三組ですよ、早く自分の教室に戻りなさい」
陽影 伶「ここですけど」
八千代 飛鳥「ここ?」
陽影 伶「はい、ここです」
八千代 飛鳥「ここ二年三組ですよ?」
陽影 伶「そうらしいですね」
八千代 飛鳥「私はここの副担任なんですよ! さすがに他の組まで全員はまだですけど、この組は全員顔も名前も覚えてますよ!」
陽影 伶「凄いですね、でもまあ転校生なので」
八千代 飛鳥「またそんな事まで言って!私は副担任だって言ったじゃないですか、転校生がこの組に来るなら知らないわけがないでしょう」
久世 権三郎「転校生じゃよ」
八千代 飛鳥「え?」
久世 権三郎「今日からこの組に転入するんじゃよ」
八千代 飛鳥「えぇーっ!!」
八千代 飛鳥「いや、なんで私知らないんですか!? 久世先生誰にも言わずに進めちゃったんですか!?」
陽影 伶「職員室に行った時に会った先生方は二人ですけど知ってましたよ?」
八千代 飛鳥「えぇー!?」
久世 権三郎「あ、すまんな、伝えるの忘れとった」
八千代 飛鳥「他の先生は聞いてるのに副担任だけ伝えないってなんなんですか、サプライズ!? そんなサプライズいりませんから!?」
久世 権三郎「いや、普通に忘れとっただけじゃが」
八千代 飛鳥「普通は忘れないんですよ!!」
八千代 飛鳥「もぅー・・・もうですよもう・・・」
八千代 飛鳥「ごめんなさいね、もう授業に移ろうとしてたみたいだし自己紹介も済んでるだろうけど、お名前だけでも聞いていいかな?」
陽影 伶「いえ、廊下に放置された挙げ句に転入してきたって言われただけで終わる所だったので自己紹介なんてしてませんよ?」
八千代 飛鳥「えぇー!?」
久世 権三郎「いやあの・・・それはじゃな・・・」
八千代 飛鳥「何してるんですか久世先生!!」
八千代 飛鳥「というか何もしてないじゃないですか、後でお説教ですからね!」
女子生徒「飛鳥ちゃんぶちギレ案件だねー」
男子生徒「久世先生だもんなー、いつもの事だから気にしてなかったわ」
逆立ち男子生徒「飛鳥ちゃんのお説教とか・・・ご褒美じゃん!!」
女子生徒「マジキモい・・・黙れよお前は」
逆立ち男子生徒「あ・・・サーセン・・・」
八千代 飛鳥「ごめんなさいね、今は時間無いから帰りのホームルームでちゃんとやるとして、今は簡単に自己紹介お願いしていいかな?」
陽影 伶「あ、はい。でも別に言う事も無いので簡単なものだけで十分ですよ」
八千代 飛鳥「だめだめ、こういうのは初めが肝心なのよ」
陽影 伶「はぁ、まあそうですね」
八千代 飛鳥「あ、私は八千代飛鳥(やちよあすか)です、二年三組の副担任なんですよ」
陽影 伶「えーと、陽影伶(ひかげれい)です、親の都合で半端な時期に転校になりました、よろしくお願いします」
女子生徒「ヨロシク~」
男子生徒「よろしくなー」
逆立ち男子生徒「で、陽影は巨乳派?貧乳派?どっちー?」
  『パァン!!』
女子生徒「だからテメーは黙っとけつっただろが」
逆立ち男子生徒「マジサーセン・・・!!」
八千代 飛鳥「あ、あはは・・・よろしくね、とりあえず授業終わったら職員室に来てくれるかな?」
陽影 伶「はい、わかりました。えっと、席は何処に座れば良いんですか?」
八千代 飛鳥「席!? えっ、席用意してるんですよね?」
久世 権三郎「あ、いや、そこの空いてる席にでも」
八千代 飛鳥「そこは今日お休みの連絡があった佐藤君の席じゃないですか」
八千代 飛鳥「ごめんね、二時限目迄にはちゃんと席用意しておくから」
八千代 飛鳥「久世先生が」
久世 権三郎「ワシが!?」
八千代 飛鳥「何か文句でもあるんですか?」
久世 権三郎「ありません!!速やかに運ばせて頂きます!!」
八千代 飛鳥「よろしい」
男子生徒「担任の威厳はどこ行っちゃったんだろな」
女子生徒「飛鳥ちゃんに全部継承しちゃったんじゃないの?」
八千代 飛鳥「もう、何言ってるのみんなで・・・さ、久世先生授業をお願いします」
久世 権三郎「はい」
女子生徒「超従順になってんだけど・・・さすが飛鳥ちゃん」
八千代 飛鳥「もう・・・それじゃ、陽影君は授業終わったら職員室ね、忘れないようにね」
陽影 伶「はい」
八千代 飛鳥「久世先生は席の準備ですよ。 みんな、陽影君何もわからないでしょうから、色々と助けてあげてね」
「はーい」

〇散らかった職員室
  一時限目の授業を終えて職員室へ来た、最初来た時と違い教師が数十人居る
陽影 伶「失礼します、八千代先生は居ますか?」
女性教師「あら転校生くん、八千代先生?ちっちゃくて見えにくいものね、あっちの奥の机に居るはずよ」
八千代 飛鳥「こらー、聞こえてますからね! 座ってるから見えないだけですよ!」
  奥の机の辺りでぷらぷらと手が振られている、多少ぴょこぴょこしているのはジャンプしているのだろうが頭は見えない
女性教師「飛鳥ちゃんはほんと可愛いわねー、ほらあそこよあそこ」
  軽く女性教師に会釈をして奥の机に向かう、今は居ないが久世先生の隣の机だったようだ
八千代 飛鳥「ごめんなさいね、短い休み時間に呼び出しちゃって」
陽影 伶「いえ、何処で土下座すればいいですか」
八千代 飛鳥「なんで土下座するんですか!?」
陽影 伶「いや、小学生とかちっちゃいとかミジンコサイズとか色々言ってたので・・・」
八千代 飛鳥「最後の初耳なんですけど!? それはさすがに言われた記憶が無いですよ?」
陽影 伶「あ、言ってはいなかったですね」
八千代 飛鳥「思ってはいたって事ですか!?」
陽影 伶「少しですよ、先生の身長位です」
八千代 飛鳥「少ない表現するのに私の身長を使わないでください!!」
八千代 飛鳥「もう!! 先生は140cmなんですからね、そんなにちっちゃくないですからね」
陽影 伶「10歳の平均身長がそれくらいだったような・・・?」
八千代 飛鳥「むぐぅ・・・へ、平均なんだからもっと小さな子がいっぱいいます・・・」
陽影 伶「同じくらいの数でもっと大きい子もいるんですけど」
八千代 飛鳥「ふぐぅ!?」
陽影 伶「ひゃく・・・よんじゅう・・・?」
  じーっと先生のつむじを凝視しながら呟く
八千代 飛鳥「なっ、なんですか」
  じーーーっと見つめる
八千代 飛鳥「ひゃ、ひゃくさんじゅうきゅ・・・」
  くわっ!! と眼を見開く
八千代 飛鳥「うわーん!! ごめんなさい、138cmなんですー!!」
陽影 伶「なんでそんな微妙にサバよんでるんですか」
八千代 飛鳥「し、四捨五入すれば・・・」
陽影 伶「100cmですね」
八千代 飛鳥「そこからっ!? もうそれ幼児ですよね!?」
八千代 飛鳥「って、そんな事やってる場合じゃなかったですよ、もう時間無いですからちょっと待って下さいね」
  そう言うと先生は机の影の箱をごそごそとしはじめた
陽影 伶「・・・」
八千代 飛鳥「あ、あったあった、ありましたよ」
八千代 飛鳥「これなんですけ・・・」
八千代 飛鳥「どぉーーー!?」
八千代 飛鳥「な、なんで土下座してるんですか陽影君!?」
陽影 伶「いや、さすがにちょっと弄りすぎちゃったかなと思いまして」
陽影 伶「サッセンシタッ!!」
八千代 飛鳥「なんでそんなチンピラの子分みたいな謝り方なんですか!?」
八千代 飛鳥「というかまず土下座を止めてください!!」
  ヒソヒソ・・・ヒソヒソ・・・
女性教師「あらっ、転校生を初日から土下座させるなんてスケ番みたい、流石ね飛鳥ちゃん」
八千代 飛鳥「させたわけじゃないですし、そもそも先生はほぼ最初からずっと近くで聞いてたじゃないですかー!!」
影の薄い教頭先生「・・・あー八千代先生、これはどういう事かね?」
八千代 飛鳥「うわーん!!」

〇教室
  休み時間が終わるギリギリの所で二年三組へ戻ってきた、結局用件は今日使用する分の教科書を渡された
  残りの教科書は放課後渡すとの事で、また職員室へ行かなければならないのがちょっと面倒臭いとも思う
  教頭先生については、ただふざけあってただけで問題無いと平謝りで押し通したらなんとかなった、と思う
  八千代先生には何故か感謝された、原因の十割近くがその感謝してる相手にあることを忘れてそのまま純粋に生きていって頂きたい
女子生徒「あ、陽影君の席届いてるよ、あそこの窓際の後ろの席だよ」
女子生徒「久世せんせーが死にそうになりながら運んで来たんだよ、飛鳥ちゃんおこだったもんねー」
  女子生徒が指差す先には、椅子に座り魂が抜けた様にぐったりしながら荒い呼吸を繰り返す久世先生がいた
久世 権三郎「コヒュー・・・コヒュー・・・」
  コーナーポストが見えてきそうなほど真っ白に燃え尽きている
  『キーンコーンカーンコーン!!』
  授業が始まるので、運ばれてきていた席につく、掃除もされていて綺麗で落書きもないようだ
  『ガラガラガラ』
男性教師「席に着けー、授業始めるぞ。こらそこ、授業中は逆立ちは止めろよ」
男性教師「今日は教科書の25ページから・・・」
男性教師「って何で久世先生そんなお迎え待ちみたいな状態でまだ居るんですか!?」
久世 権三郎「ゼヒュー・・・少し・・・コヒュー・・・休んどるだけじゃから、気にせんで授業やってくれい・・・ゴフッゴフッ」
男性教師「いやとてつもなく気になりますよ!? 本当に大丈夫なんですか!?」
陽影 伶「あ、久世先生。 職員室で八千代先生が待ってましたよ」
久世 権三郎「・・・ど・・・どんな様子じゃった?」
陽影 伶「最初は笑顔だったんですが、僕が職員室を出る時には半泣きで教頭先生と話し合っていました」
久世 権三郎「なっん・・・ゴフッゴフッ!?」
男性教師「よくわからないですが、久世先生は早く職員室に戻られた方がいいのでは?」
久世 権三郎「こ・・・これ以上はワシの心の臓がもたんわ、保健室に厄介になるとしようかの」
  そう言い遺すと久世先生はよぼよぼと教室を出ていった
男性教師「・・・えー、では改めて授業をはじめます?」
男子生徒「いや、疑問形で言われても困るんすけど」

〇まっすぐの廊下
  四時限目までを終えて昼休みになった、昼食は用意してきていないので、売店か学食になるだろう
陽影 伶(さーて、今日はなんか変な人にばっかり会って疲れたし、売店でパンとか買うよりは学食の方がいいかなぁ)
陽影 伶(ってそういえば、何も考えずに廊下に出てきちゃったけど売店も学食も場所がわからないんだった・・・)
男子生徒「おーい陽影、お前飯どうするんだ? 弁当とかじゃないんだろ?」
  後ろから声を掛けられた、まだまったくクラスメイトの名前も覚えるどころかほとんど聞いてすらいないので誰なのかは・・・
陽影 伶「あ、『逆立ち尻ガン見男』略して逆尻君」
坂尻 達見「うおぃ!! ちょっと待てどういう事だごるぁ!?」
坂尻 達見「オレは坂尻だ!!」
陽影 伶「うん、逆尻君だよね」
坂尻 達見「何故だかわからんがお前は違う漢字を宛ててる気がするぞ!?」
坂尻 達見「坂道の『坂』に尻で、達人の達に見る。 『さかじりたつみ』だ!!」
陽影 伶「逆立ちの『逆』に尻で、逆立ちの立に見る。『さかだちしりみ』だね?」
坂尻 達見「全部違う!!」
陽影 伶「尻は合ってるけど?」
坂尻 達見「お前完全に解っててやってるだろ!?」
陽影 伶「うん。 で、なんだっけ逆尻君」
坂尻 達見「くそ・・・まだ直ってない気がするがもうそれでいいよ、オレも陽影って呼ぶしその『君』はいらねーよ」
陽影 伶「そう? じゃあ何、逆尻」
坂尻 達見「ああ、飯行くんだろ? でもまだ校内わからんのじゃないかと思ってな、売店と学食くらい案内するぜ」
陽影 伶「おお、逆立ちして尻見てるだけじゃなくて良い奴だったんだな」
坂尻 達見「ちょ、まて、そもそも尻を見てたわけじゃねえよ!?」
陽影 伶「まあそれは置いといて助かるよ、なんか今日は変な奴らばっかりでちょっと疲れてたからしっかり食べたくてさ」
坂尻 達見「置いとかないで欲しいし、多分変な奴の筆頭はお前だろ」
坂尻 達見「でもまあいいか、ここの学食は結構美味いから良いぜ、安くて量も結構融通してくれるしな」
坂尻 達見「一緒に食おうぜ、こっちだこっち」
陽影 伶「やっぱりなんか変だけど良い奴だな」

〇コンビニのレジ
坂尻 達見「・・・でだな、坂尻って名前は先祖が坂を物凄い勢いで滑り降りるので有名だったそうでな」
坂尻 達見「坂尻神って呼ばれてたらしいんだが、さすがに神は名乗れないって事で坂尻に落ち着いたらしいんだ」
陽影 伶「坂神だったらなんか普通だし良かったね」
坂尻 達見「まあちょっと変な名前だし、すぐ覚えて貰えるのは悪くはないな!!」
陽影 伶「あ、ここが売店だね」
坂尻 達見「そうそう、それで学食はあっちの・・・」
暁 灯可里「ちょっと待てーーーい!!」
坂尻 達見「うぇっ!? なにっ!?」
暁 灯可里「やっと来たと思ったら・・・なんか尻の話をして秒で帰るとかどういう事よ!!」
坂尻 達見「え、入店したら買わなきゃ出れないとかルールあったっけ!?」
暁 灯可里「答えなさい!! れーちゃん!!」
坂尻 達見「れーちゃん?」
陽影 伶「もう、学園でまでその呼び方は止めてって言ったよね、おばさん」
坂尻 達見「ちょっおまっ、売店のおねーさんにおばさ・・・って呼んで生きて帰った奴はいないんだぞ!?」
暁 灯可里「・・・なによその殺人鬼」
陽影 伶「ああ、おばさんって歳がそれなりの女性って方じゃなくて、叔母ね、母親の妹」
坂尻 達見「おお・・・あっえっ、そうなの!?」
坂尻 達見「そういやお前名前『伶』だっけ、だかられーちゃんか」
暁 灯可里「そうよ、昔から『れーちゃん』『あかりおねーちゃん』って呼び合って仲良し姉弟だったんだから」
陽影 伶「いや、叔母と甥ね」
坂尻 達見「仲良しなんだな、良いことじゃないか」
陽影 伶「そもそも言葉を話始める前から耳元で『あかりおねーちゃんだよ』『あかりおねーちゃんって言って』『あかりおねーちゃんなのよ』」
陽影 伶「だいぶ長い間『あかり』『おねーちゃん』じゃなくて『あかりおねーちゃん』が名前だと思い込んでた位繰り返されたんだ」
坂尻 達見「そ、それは・・・大変だったな」
暁 灯可里「愛よ」
陽影 伶「はいはい、じゃ遅くなるし早く学食行こうか」
暁 灯可里「えぇー、イートインだってあるしここでいいじゃないの」
陽影 伶「満席じゃん」
暁 灯可里「ちょっと待ってなさい、蹴散らしてくるから!!」
陽影 伶「ただの客を蹴散らさないの、またいつか来るから」
暁 灯可里「えー、いつかっていつ? 何分後?」
陽影 伶「もういいから、学食どっち?」
坂尻 達見「あ、おう、あっちあっち」
暁 灯可里「もーう!! 今日は帰ったら家族会議だからね!!」
  無視して売店を出ていった
坂尻 達見「なあ、帰ったらって?」
陽影 伶「ああ、親が仕事の都合で海外に数年行くことになってね、その間叔母さんの所に住む事になったんだよ」
坂尻 達見「おう・・・大変・・・そうだなあれは」
陽影 伶「もう慣れたけどね、大変は大変だよね」
  ため息をつきながら売店を後にして学食へ向かった

次のエピソード:第4話 転校生③

コメント

  • こんばんは
    お邪魔します〜
    このお話はキャラクターがイキイキしていますね
    特に先生陣が好きで飛鳥先生はちっさくても土下座させるし、久世先生www今回wwwだ、大丈夫ですか?って
    めちゃめちゃ弱って保険室って大丈夫ですか?て思いました😂👍

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