6.タイムパラドックス(脚本)
〇水中
母親「♪〜〜〜 ♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜〜」
アオイ(お母さん・・・ こっちにいる・・・!)
母親(・・・!)
アオイ(・・・あれ?)
〇沖合
母親「はぁ〜っ!」
アオイ「び、ビックリした・・・ お母さん・・・」
母親「ふふふ アオイちゃんも来たんだね・・・」
アオイ「うん!」
母親「お父さんへ向けて、心を込めた歌を送ろうと思うの」
母親「一緒に歌おうっ!アオイちゃん!」
アオイ「──うんっ!分かった!」
〇沖合
父親「葵と万里奈が同一人物・・・?」
父親「そんな訳ないだろう! 葵は万里奈が腹を痛めて産んだ実の娘だ」
カイル「うん・・・ きっと、それは間違ってないんだよ」
父親「じゃあ一体・・・」
カイル「既にこの世界はパラドックスを引き起こしているんだ。この事実に気づいた人がいる以上、この世界はもう壊れてしまう」
父親「そ、そんなことって・・・」
だが、まだ希望はある──
超新星が封じられた細波葵が対消滅を起こせば、世界の崩壊を免れた平行世界を作り出すことができる
カイル「・・・やっぱり、そうだよね・・・ アオイちゃんが消える必要が──」
父親「──ダメだ、ダメだ! そんなことは絶対にさせない!」
カイル「お父さん・・・分かってるでしょう? セイレーンと出会った時、この追憶の世界が繰り返しているということに・・・」
父親「──ああ、そうだ、そうだ・・・ この世界は繰り返している。時の袋小路に閉じ込められているんだ・・・」
父親「だったら、永遠に繰り返せばいい・・・ そしたら俺は、葵と、万里奈と、別れなくて済むんだ・・・」
カイル「なっ──! これって──っ!」
馬鹿な・・・!
異惑星の次元転移装置だと!
父親「俺も無為に時を繰り返していた訳じゃないんだ・・・」
父親「倒れていた万里奈の近海に沈んでいたものだ。これで万里奈が時を超えてきたのだろう?」
カイル「まさか・・・ アオイちゃんの超新星爆発を止める時にいつもその機械を・・・?」
父親「・・・そうだ。いつも使っていた」
くっ・・・
つまり、細波 葵の中に臨界間際の超新星の核が封印されていることも知っていたのか・・・?
カイル「つまり・・・ アオイちゃんに超新星の核を埋め込んだのは──」
父親「・・・ああ。宇宙人だ」
カイル「・・・」
・・・やはり、異惑星からの来訪者が仕組んだことだったか
カイル「僕たちの世界ではね・・・ 宇宙人が来訪して、交流していたんだ」
父親「なっ・・・」
カイル「人々は宇宙人の技術を得て、様々な技術革新を成した・・・」
カイル「でも、そんな都合のいいことばっかりじゃなくて、世界に突如問題が発生したんだ」
父親「・・・」
カイル「突然の海面上昇現象── 水位が上がり続け、人が住める場所が無くなっていき、人類は段々と減っていった」
カイル「星から出ていく者、水面に都市を作ろうとする者、残った土地を占有する者── 人類は混沌とした生活を送っていた」
カイル「海面上昇現象は突然起こった・・・ といったけど、実際は『起きていた』ことになったんだ」
父親「・・・?」
カイル「僕たちは時の観測者・・・ 宇宙の技術を使って、地球の時の流れを保存し、管理しているんだ」
カイル「海面上昇現象は感染するかのように過去を全て塗り替えて行った。そして、それが始まった場所が──」
父親「ララバイ島だったわけか・・・」
カイル「全てはこの星の過去に現れ、アオイちゃんに超新星を埋め込んだ宇宙人が悪いんだ」
奴らの目的は地球人に星の技術力を高めさせ、その後に絶滅させることだったのだろう
予定が変わったのか・・・
それとも最初からじわじわと人類を減らしていくつもりだったのか・・・
だが、平行世界のほとんどでアオイちゃんは爆発を失敗している・・・
磁場だけを残し、海面上昇現象だけを引き起こしているんだ
カイル「お父さんがアオイちゃんにその次元装置を使うことで、超新星爆発を止められていたんだね」
父親「だったら──!」
カイル「ダメだよ・・・ 超新星の核が消えたわけじゃない・・・ 対消滅を利用して、核ごと消さないと!」
父親「ぐぅぅ・・・ アオイ・・・!」
父親「・・・?」
・・・!『歌』が始まったか──!
〇沖合(穴あり)
マズイ・・・!
この『追憶』が壊れるぞ!
〇水中
「♪〜〜〜 ♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜」
セイレーンの歌とこの座標がトリガーになっている・・・!
もはや、この世界ごと消えるか──超新星爆発で星ごと消えるかのどちらかだ・・・
「──ィ、アオイ!」
アオイ「ん?お父さんの声?」
母親「ほらっ!やっぱりお父さんに伝わったんだわ!アオイちゃんと歌ったからだね!」
〇沖合(穴あり)
父親「万里奈!」
母親「アナタ〜っ!」
母親「ふふふ〜、私の歌、届いたのね?」
カイル「アオイちゃん!お母さん! 聞いて!」
父親「だ、ダメだカイル!やめろ!」
漁師「お、落ち着いてくれナミさん!」
父親「は、離せ!ダメだ!カイルッ!」
カイル「──っ・・・」
──言うしかないだろ、カイル!
世界のためだ!
母親「ど、どうしたの・・・?」
アオイ「カイル?お父さん?」
カイル「アオイちゃん、お母さん・・・ もうすぐこの世界は消滅する!」
「ええっ!?」
カイル「でも、君たちが消えれば── この世界は・・・」
カイル「人類は助かるんだ!」
母親「な、何を言ってるの・・・?」
カイル「君たちは同一人物なんだよ! アオイちゃん、お母さん!」
母親「・・・!」
アオイ「な、何言ってるの・・・? アオイとお母さんが同じ・・・?」
アオイ「なに・・・今の・・・」
母親「・・・」
母親「・・・どうやら、本当みたいね」
アオイ「え?え?」
母親「私の消えていた記憶── その謎が分かったわ・・・」
アオイ「なにこれ・・・ 体が・・・熱い?」
母親「──っ・・・ 超新星の核・・・だね」
アオイ「今度は・・・寒い・・・」
母親「思い出したよ・・・ 私を救ってくれた──別の『私』のこと」
アオイ「あ・・・あ・・・あ・・・!」
母親「今度は── 私が助ける番!」
〜次に続く〜