7.新世界への分岐(脚本)
〇沖合(穴あり)
カイル・・・脱出しろ。
もう手遅れだ
カイル「いや・・・いやだ。 僕はまだ、諦めたくない・・・!」
死んだら元も子もないんだ!
脱出しろ、その世界から!
カイル「嫌だ!僕はスターゲイザーなんだ! 星を最後まで見届ける!」
馬鹿野郎・・・!
〇沖合(穴あり)
アオイ「う あ あ あ あ ぁぁ!」
母親「アオイちゃん!」
アオイ「いたい・・・いたい・・・」
母親「アオイちゃん!!」
アオイ「おかあ・・・さん・・・」
母親「やっと気づいた・・・ 私の傍に来て・・・?」
アオイ「う・・・ダメだよ・・・ アオイ、消えてなくなっちゃう・・・」
母親「そんなことはさせないよ」
アオイ「えっ──! なんか、楽に・・・」
母親「あ、あはは・・・大丈夫? アオイちゃ──」
アオイ「あ、あれ・・・? 私・・・なんで水の上に・・・?」
カイル「アオイちゃん!お母さん!」
なっ──!
細波 葵の臨海反応が消えてる・・・?
???「アオイちゃん・・・」
アオイ「・・・? わ、私の事・・・?」
???「う ん ・・・ ア オイ ちゃ ん・・・」
???「細波 葵・・・ それがあなたの名前よ・・・」
アオイ「わたしの・・・名前・・・?」
カイル「アオイちゃん── まさか記憶を失って・・・!」
細波 葵の対消滅反応、臨界反応・・・
どちらも消えた・・・?
カイル(まさか・・・!)
アオイ「お姉さん、苦しそう・・・ どうしたの・・・?」
???「く、苦しそうかなぁ・・・? お姉さん、ニコニコしてるよ?」
アオイ「苦しそうだよ!お姉さん!」
???「あはは・・・ 流石に隠せないか・・・」
カイル(お母さん・・・)
まさか・・・自身に移したのか
超新星の核を・・・
カイル「やっぱり、そうか・・・」
???「いい、アオ イ ちゃん・・・」
???「どんなことがあっても、お父さんと一緒に楽しく生きるの・・・」
アオイ「え?え? お姉さんも一緒に行こうよ・・・」
???「お姉さんはここでお別れ・・・ アオイちゃんは助かるのよ」
アオイ「や、やだ・・・いやだよ!」
???「ふふふ・・・ 初対面のお姉さんを気遣ってくれるなんて、なんて優しい子なの・・・?」
アオイ「しょ、初対面、だけど・・・ だけど!」
アオイ「後悔する気がするの!」
???「はは〜〜・・・ すぐ消えると思っ た の に・・・ 案外、長いなぁ〜・・・」
アオイ「うっ、うっ・・・」
???「あ・・・そろそろみたい・・・」
カイル「おか・・・ いえ、お姉さん・・・」
???「ありがと、カイル。 本当のことを教えてくれて・・・」
・・・対消滅が始まるぞ
???「またねっ! アナタっ!アオイっ!カイルっ!」
???「──そして 私たちを見てくれていたあなたもね?」
・・・っ!
まさか、最初から気づいて──!
アオイ「嫌だぁ〜!!」
〇沖合
信じられん・・・
対消滅を起こしても尚、世界が存続し続けているとは・・・
父親「アオイ・・・アオイ!」
アオイ「わっ・・・」
カイル(うう・・・ やっと目を覚ました)
アオイ「・・・もしかして」
アオイ「私の、お父さん・・・ですか?」
父親「ああ、そうだ、そうだ・・・ 俺はお前の父親だ、アオイ・・・!」
アオイ「・・・そっか! お父さん、大好き!」
カイル「・・・」
終わったか・・・
結果的に、お前の判断は正しかった。
この世界を消さなかったことによって、新たな『光』となる平行世界が完成した
カイル「ああ・・・ だが、アオイちゃんは・・・」
カイル「アオイちゃんの結果は、なんとも悲しいじゃないか・・・」
・・・記憶を無くした方が、彼女にとって一番優しい結果となるだろう
少なくとも、後ろを振り返ることなく、また新たに人生を歩むことが出来るのだからな
カイル「・・・ああ そうだね・・・」
・・・気を落とすな。
これは『過去』に起きたこと。
『過去』に囚われては先に進めないぞ。
カイル「分かってる・・・」
カイル「分かって、いるさ・・・」
〇海辺
ジョージ「はは・・・ 失敗したか」
カイル「ジョージ・・・ お前の目論見は潰えたぞ」
ジョージ「そのようだね・・・ まさかアオイちゃんと万里奈さんが同一人物だったとはな・・・」
カイル「この記録のループはもう起きない。 お前はもう、消えるんだろ?」
ジョージ「そうだな・・・ 私は創造主に造られた『記録』の中のジョージに過ぎない」
ジョージ「成功しようが失敗しようが、消えるようにプログラムされているのさ」
カイル「迷惑なウイルスだ・・・ 過去に干渉する機械に組み込まれていたなんてな」
ジョージ「ふふ・・・楽しかった また会おう、カイル」
カイル「もう会うことはないね」
ジョージ「はは・・・辛辣だね」
カイル「──!」
アオイ「さっきのワンちゃーん!」
カイル「・・・」
アオイ「・・・あれ? なんか、このワンちゃんって話せなかったっけ?」
父親「ははっ、犬が喋れるわけないだろ」
父親(ありがとうな・・・カイル)
父親「さあ、帰ろうアオイ。 お前の家も思い出さないとな」
アオイ「・・・うん!」
アオイ「またね!ワンちゃん!」
〇近未来の開発室
カイル「うわっ!」
カイル「はぁ・・・ いつも目覚めのタイミングは慣れない」
オブザーバー「お疲れさん、『カイル』。 間一髪だったな」
カイル「・・・ああ、お疲れ様。 新たな分岐世界の観測は出来てるんだよな?」
オブザーバー「今解析班がやってる、心配すんな。 ・・・本当に大手柄だったな」
カイル「そうか・・・」
オブザーバー「今回は本当に無茶をしたな・・・ 今、姿を戻すからな」
カイル「あ、ああ・・・そうだな」
スターゲイザー「はあ・・・ 戻っちまった」
オブザーバー「気に入ってたのか?あの姿」
スターゲイザー「はは・・・まあな。 お前だって、『ナレーション』の話し方似合ってたぞ」
オブザーバー「ははっ、当然だ。 今回の結果を出すためにどれだけ練習したと思う?」
オブザーバー「『記録』の中に溶け込むには、なるべく偶然を装う必要がある・・・そうだろ?」
オブザーバー「さぁ、ここからが大忙しだ。 世界政府の連中に今回の件を報告しないとな?」
スターゲイザー「・・・ああ。 宇宙人なんぞに手を借りるのが間違ってんだよ、ったく・・・」
オブザーバー「この『タイムマシン』も奴らの技術だがな」
スターゲイザー「・・・」
スターゲイザー(『セイレーン』を造り出し、異能をもつ生命としたのは紛れもない宇宙人共だ)
スターゲイザー(奴らは意図的にパラドックスを作り、同じように過去に戻る者が真実に気づく時、対消滅を起こすように仕組んでいた)
スターゲイザー(でも・・・今回は── 完全に干渉し、新たなる世界へ変わった)
スターゲイザー(・・・その世界で、アオイちゃん── 君はきっと、幸せに暮らせたのだろう)
スターゲイザー(決して忘れないよ── 君と、君のお母さんの想いを・・・)
彼らは『時の監視者』。
全ての事象を観測する者達。
彼らの手によって、人間達の文明、地球は守られた。宇宙人の魔の手から・・・
この先もきっと、人類は彼らの手によって、様々な苦難を乗り越えていくことが出来るだろう・・・
〜〜 Fin 〜〜