4.星を観測する者(脚本)
〇小さい会議室
次の日、アオイちゃんはいつものようにジョージの元に登校してきました。
アオイ「ジョージ先生〜 おはようございます!」
「・・・」
アオイ「あれ?ジョージ先生?」
アオイちゃんが教室代わりの部屋を訪ねましたが、ジョージの姿はありませんでした。
アオイ「これなんだろ?」
アオイちゃんへ
アオイ「お手紙・・・?」
急用が出来てしまったので
自習をして待っていてください。科目は物理です。
ジョージ
アオイ「え〜・・・ 自習、キライ・・・」
アオイちゃんは大人から何かを教わることが好きでした。
カイル「ジョージさんは何処に行くって?」
アオイ「書いてない・・・ うう・・・」
いやいやながらもアオイちゃんは静かに自習をしてジョージを待っていました。
アオイ「アオイ、自習するのやだ! 遊びに行くもん!カイルっ!」
・・・え?
カイル「・・・行っちゃった どうする?」
・・・
・・・
・・・仕方ない。
この記録は既に別の世界への道を歩んでいる。新しい世界は既に発生した。
つまり、既に分岐点を過ぎてしまっている。今我々に出来ることは流れを見守ることだけだ
カイル「・・・そうだね。僕もそう思ってた。 やっぱり、僕たちには止められないのかな──」
カイル「世界の終末を・・・」
弱気になるのはまだ早い。今回はまだ
彼女の中に眠る超新星はまだ臨界点に達していないだろう。
この記録には既に例外も起きている。
細波 万里奈の存在だ。
カイル「うん。特異点である彼女が、この記録にどう影響するか── 上手く行けば、超新星の臨界前に影響させられるかも」
ああ。その可能性はまだある。
しかし、あの女に関しては謎なままだ。
カイル「アオイちゃんに母親がいる世界線は何度も経験したけど・・・ 僕のテレパシーが通じたのは初めてだよ」
・・・何はともあれ、この世界線はいつもの追憶とは何かが違う。
結果次第では新たに出来た平行世界のスコアを満たすことが出来るかもしれない
カイル「とにかく、僕たちは観測を続けよう。 僕はまた、『カイル』に戻らなきゃ」
私もナレーションの役に戻るとしよう。
カイル=スターゲイザー、
引き続き彼女の監視を続けてくれ
カイル「分かったよ、オブザーバー。 全てはこの星を、人類の存続を・・・」
守るために。
・・・
セイレーン伝説・・・
その謎が鍵となるだろう・・・
今回の記録は、いつもと違うぞ・・・
〇堤防
父親「・・・」
漁師「ナミさん、今日は元気ないっスねぇ どうかしたんですか?」
父親「・・・ああ、ちょっとした家庭の事情だ」
漁師「ははっ、浮気でもされました? 万里奈サンに限ってそんなことはないと思いますが・・・」
父親「・・・お前ら、『セイレーン伝説』を知っているか?」
漁師「せいれえんでんせつ? 何ですか?それ」
父親「・・・いや、気にするな。なんでもない」
漁師「・・・そうッスか〜 とりあえず先に漁船入ってますよ」
父親「ああ」
父親(やはり、『セイレーン伝説』を知るものは居ない。あの伝説はとうの昔に消えたはずだ・・・)
父親(あの男・・・ 確実に何かを知っている・・・)
父親「葵・・・ 万里奈・・・」
父親「・・・取りに行くか」
ジョージ「・・・」
〇島の家
母親(セイレーン・・・ セイレーンってなんだろう・・・)
母親(どっかで聞いたことある気がするんだよなぁ〜・・・)
店員「細波さん、今日は元気ないねぇ 体調でも悪いのかい?」
母親「あっ、いえいえ違いますよ。 ちょっと考えごとしてて・・・」
店員「全く・・・細波さんは毎日仕事場に来てくれてるから、お休みを取った方がいいんじゃないかしら?」
母親「えっ、ごめんなさい!私、お邪魔ですか?」
店員「違うよ、やれやれ・・・ その様子だと、旦那さんと何かあったんだろう?」
母親「──っ!」
店員「今日は休みな。 心の平穏は大事だよ」
母親「お、お見通しですか・・・」
母親「うーん・・・ 分かりました・・・今日はめいいっぱい休ませてもらいますね」
店員「そうするといいよ、働き過ぎは身体に毒だからね」
母親「──はい!」
母親「うーっ!それー!」
店員「やれやれ・・・ 若い子はすごいねぇ・・・」
〇島の家
アオイ「おかーさ〜んっ!」
アオイちゃんは外に出て、真っ先にお母さんの元に向かいました。
店員「あら、アオイちゃん。おはようね」
アオイ「おはよっ!」
アオイ「ねえねえ、お母さんはどこにいるの?」
店員「今日のお仕事はお休みになったから、息抜きにでも向かったんじゃないかな」
店員「向こうに行ったから・・・ 海に行ったのかな?」
アオイ「分かった!ありがとう、お姉さん!」
店員「あらぁ〜お姉さんだなんて・・・ なんていい子なんでしょう」
アオイちゃんはお世辞を言うのが得意な世渡り上手な子でした。
アオイ「カイル、アオイ達も海の方いこっ!」
カイル「そうだね。お母さんと合流しようよ」
カイルはアオイちゃんと一緒にお母さんの元へ向かいました。
〇海辺
母親「はぁ〜・・・ やっぱ海のそばは落ち着くな〜」
母親「・・・」
「おや、万里奈さん? 奇遇ですね〜」
母親「・・・?」
ジョージ「おはようございます。いい天気ですね」
母親「わっ!ジョージさん! ビックリした〜・・・」
ジョージ「ははは、申し訳ありません。 ・・・昨日はご迷惑をおかけしました」
母親「い、いえいえ・・・こちらこそ、 ウチの主人がご迷惑をおかけしました」
母親「あの人、急に怒り出して・・・ 一体どうしちゃったんだろ・・・」
ジョージ「・・・きっとお疲れなんでしょう 漁師という職は過酷なものです。 恐ろしい海に何度も立ち向かうのですから」
母親「・・・そうですね。 私、あの人の力になりたいな・・・」
ジョージ「でしたら、歌を歌ってあげるなんてどうです?」
母親「う、歌ですか? ちょっと恥ずかしいんですけど・・・」
ジョージ「・・・海へと向かった旦那さんへ想いを伝えるのです。海は偉大で、寛容だ・・・きっと伝えてくださる」
母親「・・・! 夫への想いを歌に乗せて・・・!」
母親「はいっ! 私、あの人のために頑張って歌います!」
ジョージ「・・・ええ、そうしてください」
母親「ホントは夫に海で歌うのは禁止されてるけど・・・ あの人のために歌うなら許してくれるよね・・・?」
〇海辺
アオイ「あっ!お母さんいた!」
アオイ「あと・・・ジョージさん?」
アオイちゃんは海の傍で話すお母さんとジョージの姿を見ました。
カイル「二人とも、あそこで何してるんだろう」
アオイちゃんとカイルは二人の元に向かいました。
〜次に続く〜
カイル(あ〜・・・ なんかそろそろヤバいんじゃない?)
いいところで次回に持ち越し
うーむ、葵ちゃん
お父さんに似なくて良かったね(余計なお世話)