第三涙 願う事(脚本)
〇後宮の一室
瑚蓮(これん)「佐須良・・・」
佐須良(さすら)「ん?」
瑚蓮(これん)「・・・うるさい・・・」
佐須良(さすら)(瑚蓮が・・・冷たい!!)
佐須良(さすら)(えぇぇい!!!! めげてたまるかっっ!!!!!!)
佐須良(さすら)「・・・おぉ・・・ それはすまなかった・・・」
佐須良(さすら)「だが・・・どうした? そんなに泣き腫らす程・・・ 夢見が悪かったのか・・・?」
瑚蓮(これん)「・・・一つね・・・ 思い出したんだ・・・」
瑚蓮(これん)「『神さまに祈る事』・・・」
佐須良(さすら)「っ!!!!!!」
瑚蓮(これん)「・・・どうして・・・ 今まで・・・ 忘れてたんだろ?」
瑚蓮(これん)「・・・昔は あんなに・・・ 毎日毎日・・・ バカみたいに・・・」
瑚蓮(これん)「神さまに 『叶わない願い』を・・・ 祈っていたのに・・・」
瑚蓮(これん)「私・・・ いつの間に・・・」
瑚蓮(これん)「その願いも神さまの事も・・・ 忘れてたんだろ・・・?」
瑚蓮(これん)「都合が良いよね・・・ 最低だ・・・私・・・」
瑚蓮(これん)「願うだけ願って・・・ あんなに大好きだった『聖河さん』の事も・・・ 忘れていたなんて・・・ ごめんなさい・・・」
瑚蓮(これん)「・・・ごめんなさい・・・」
佐須良(さすら)「・・・そなたは悪くないッッッ!!!!!!」
佐須良(さすら)「・・・悪いのは・・・ 全て・・・我だ・・・!! だから・・・ 謝るでない・・・」
瑚蓮(これん)「・・・佐須良?」
〇後宮の庭
何度も
何度も・・・
”そなたの幸せ”を願う・・・
思い出したくない記憶なら・・・
呪いたくなるような記憶なら・・・
『忘れてしまえ』と・・・
願った
憶えているのは
自分だけでいい・・・
そなたが笑顔でいられるならば・・・
そなたは・・・
忘れたままでいい・・・
〇後宮の廊下
紫苑(しおん)「ハハハッ!!!! 視てみろよ!?兄者!!!!」
紫苑(しおん)「瑚蓮のあの泣き顔──!!!!!!」
萱草(かんぞう)「ハハハッ!!!!!! よくやった!!紫苑!!!! 酒が進むな!!!!!!」
「ん〜〜〜!!!!!!」
紫苑(しおん)「人の不幸は蜜の味ってね!!」
萱草(かんぞう)「絶望の味付けは・・・ やはり格別だな!!!!」
萱草(かんぞう)「この調子で ガンガン不幸に染めてやろう!」
〇御殿の廊下
菖(しょう)「迂闊だったわ・・・ まさか 食べた記憶の一つが蘇るなんて──!!!!」
佐須良(さすら)「我も・・・ 記憶が蘇るとは思わなかった・・・」
菖(しょう)「アタシが食べた瑚蓮の記憶は四つ・・・」
菖(しょう)「記憶が蘇る事で 瑚蓮の欠けた感情も蘇るでしょうね・・・」
菖(しょう)「瑚蓮の様子は・・・ どうだったの?」
佐須良(さすら)「忘れていた事に自責の念を抱いて・・・ 泣いておった・・・」
菖(しょう)「今回、蘇った記憶は・・・ 『聖河(せいが)』の記憶・・・ 瑚蓮を愛した星神の記憶よ」
菖(しょう)「元々、瑚蓮は優しい子だけど・・・ 『憐憫の心』が 蘇ったみたいね・・・」
菖(しょう)「記憶を取り戻す度に・・・ 『本来の瑚蓮』に戻ると思うわ・・・ ・・・だけど・・・」
佐須良(さすら)「我は瑚蓮に・・・ 悲しい思いはさせたくないっ!!!!!!」
菖(しょう)「・・・わかっているわよ・・・」
菖(しょう)「戻った記憶は・・・また食べて消す訳にもいかないし・・・」
菖(しょう)「これ以上、残りの平行世界の記憶が蘇らないよう注意する必要があるわ・・・」
菖(しょう)「・・・突然、記憶が蘇ったのは・・・ 『夢に介入して来た何者か』の 仕業でしょうね」
佐須良(さすら)「夢に介入できる奴等など・・・ 彼奴らしかおるまい!!!!!!」
菖(しょう)「・・・ええ・・・」
佐須良(さすら)「・・・だが・・・彼奴らは・・・ 数々の悪行から・・・ 閻魔に捕らえられていなかったか?」
菖(しょう)「・・・一時釈放されたみたいね」
佐須良(さすら)「・・・一時釈放されてる間にも悪行を為すか・・・ 最悪だな!!」
菖(しょう)「・・・」
佐須良(さすら)「・・・大丈夫か?菖?」
菖(しょう)「これは・・・ アタシの恨みを晴らす絶好の機会かもしれない・・・」
〇神社の石段
瑚蓮(これん)(・・・今更・・・ 神さまに祈る事を忘れていた私が・・・)
瑚蓮(これん)(・・・神さまに・・・ ・・・聖河さんに・・・)
瑚蓮(これん)(・・・懺悔するなんて・・・)
瑚蓮(これん)「・・・迷惑かな・・・?」
瑚蓮(これん)「・・・都合が良すぎるかな・・・?」
瑚蓮(これん)「・・・でも・・・!!」
瑚蓮(これん)「謝りたい・・・!!」
〇神社の本殿
瑚蓮(これん)(・・・聖河さん・・・ 今まで祈りに来なくて ごめんなさい・・・)
瑚蓮(これん)(・・・祈る事を・・・ ・・・聖河さんの存在を 忘れてて・・・)
瑚蓮(これん)(ごめんなさい)
お参りに来た子ども「あ! 見て! 笹の葉が舞ってる!!」
瑚蓮(これん)(・・・)
瑚蓮(これん)(こんな薄情な私を・・・ 許してくれるの・・・?)
棗(なつめ)「瑚蓮さん?」
瑚蓮(これん)「!? な、棗さん!?」
棗(なつめ)「珍しいわね? こんな時間に・・・ 何か神様にお願い事かしら? ──って・・・」
棗(なつめ)「どうしたの!? ヒドイ顔よ!?」
瑚蓮(これん)「・・・あ・・・ いや、コレは・・・その・・・」
棗(なつめ)「全部言わなくていいわ・・・」
瑚蓮(これん)「えっ!?」
棗(なつめ)「フラれたんでしょ!?」
瑚蓮(これん)「えっ!?」
棗(なつめ)「で? どっちにフラれたの!?」
瑚蓮(これん)「え・・・えーっと──」
???「瑚蓮──!!!!」
瑚蓮(これん)「!?」
佐須良(さすら)「こんな所にいたのか! 迎えに来たぞ!!」
瑚蓮(これん)「佐須良!?」
棗(なつめ)「フラれた相手は・・・ もう一人の方ね・・・」
瑚蓮(これん)「えっ!?」
棗(なつめ)「ご機嫌よう!」
佐須良(さすら)「おぅ? 瑚蓮、こちらの方は? 知り合いか?」
瑚蓮(これん)「私と同じ五節の舞姫の一人、棗さんだよ! 会合で、会ったでしょ!?」
佐須良(さすら)「お? それはすまなかった! 我は瑚蓮しか見えておらぬ故・・・」
棗(なつめ)「あら? 惚気?」
瑚蓮(これん)「いやいや・・・ 違うから!」
棗(なつめ)「隠さなくてもいいのよ? 瑚蓮さん・・・ でも・・・そっか・・・ ふーん・・・」
瑚蓮(これん)「???」
棗(なつめ)「・・・こっちの彼と上手くいっているのね? 心配して損したわ・・・」
瑚蓮(これん)「えっ!?」
棗(なつめ)「二人の邪魔はしちゃダメよね! ・・・では、瑚蓮さんに佐須良さん またね」
瑚蓮(これん)「なんか・・・ 勘違いされた・・・ような・・・?」
佐須良(さすら)「我は勘違い、大歓迎だがな!」
瑚蓮(これん)「佐須良・・・」
佐須良(さすら)「もう日が暮れるぞ 帰ろう、瑚蓮」
瑚蓮(これん)「うん」
〇草原
佐須良(さすら)「瑚蓮・・・」
瑚蓮(これん)「ん?」
佐須良(さすら)「手を・・・繋いでも・・・良いか?」
瑚蓮(これん)「えっ!? いいけど・・・!?」
佐須良(さすら)「ヘヘッ! では、遠慮なく!!」
佐須良(さすら)「瑚蓮の手は・・・小さいなぁ・・・」
瑚蓮(これん)「佐須良の手は大きくて・・・あったかいね・・・」
瑚蓮(これん)(ちょっとドキドキするけど・・・ 不思議だなぁ・・・ 佐須良と手を繋ぐと・・・ 安心する・・・)
佐須良(さすら)「・・・」
佐須良(さすら)「・・・辛い時は・・・」
佐須良(さすら)「言うのだぞ?」
瑚蓮(これん)「???」
佐須良(さすら)「我は・・・ いつだって・・・ そなたの味方だからな?」
佐須良(さすら)「・・・過去を思い出して・・・ 辛かろうが・・・」
佐須良(さすら)「過去に囚われず・・・」
佐須良(さすら)「今を幸せに・・・ 生きてくれ・・・」
瑚蓮(これん)「過去に囚われず・・・?」
佐須良(さすら)「ああ」
瑚蓮(これん)「佐須良は・・・ 私の何を知っているって言うのっ!?」
瑚蓮(これん)「私の過去の事・・・ 知りもしないのに!! 気安く 私の過去を蔑ろにしないでっ!!」
瑚蓮(これん)「囚われているかどうかは 私の気持ち次第でしょう!? 勝手に・・・!!」
瑚蓮(これん)「勝手に・・・ 決めつけないでっ!!!!」
佐須良(さすら)「こ、瑚蓮ッッッ!!!!!!」
佐須良(さすら)「・・・」
佐須良(さすら)「・・・知っておる・・・」
佐須良(さすら)「・・・いくつもの・・・ そなたの悲しい過去を・・・」
佐須良(さすら)「知っておるからこそ・・・」
佐須良(さすら)「我は・・・」
佐須良(さすら)「我は・・・ そなたの過去を・・・」
何度でも
『消してくれ』と
願うだろう
これまでの各エピソードが繋がりつつあり、物語世界の全容が見えそうになる、読んでいて高揚感を覚える第三話ですね😊瑚蓮の過去の記憶の謎、菖が食べて消さなければならなかった理由、とても興味を掻き立てられます☺
そして棗の登場と勘繰り(!?)が絶妙なタイミングですね!ガラリと変わる空気が楽しいです😆
2人がいい感じで終わるのかと思っていたらコレンが怒ってやっちゃったな〜な最後でした
彼女に何があったのか、なぜサスラがあんなに献身的なのかこれからどんどん分かってきそうですね🤔
来週も楽しみにしてます😋