追憶の、『窓際ハードボイルド』

山縣将棋

追憶の、『ハードボイルド』(脚本)

追憶の、『窓際ハードボイルド』

山縣将棋

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  1996年5月24日あの日は俺が嫌いな雨が降っていた。雨の日は嫌な事しか起こらない

〇荒れた倉庫
堅井 久吾「もう逃げられんぞ観念しろ!」
津村 次郎「まだ奥の手があるぞ、ハードボイルド刑事よ!」
堅井 久吾「ふん、何処に逃げようと無駄さ」
中松 秀一「行っては行けません!津村の罠です!」
堅井 久吾「なぁ中松よ、俺はタフで冷静沈着な男、つまりハードボイルド!失敗なんかしねぇよ」
中松 秀一「し、しかし!」
堅井 久吾「二度も同じ事いわせるなよ中松、お前は黙って俺の後ろをついてくりゃいい」
中松 秀一「せ、先輩!(カッコイイ)」
堅井 久吾「さぁ!行くぞ」

〇開けた景色の屋上
津村 次郎「さぁ来いハードボイルド刑事よ!このロケットランチャーの餌食にしてやるぞ!」
津村 次郎「グハハハハッ!」

〇非常階段
堅井 久吾「この階段を上がれば屋上だきっとヤツが待ち構えているに違いない」
中松 秀一「慎重に行きましょう先輩!」
堅井 久吾「ふんっ、決着をつけてやるさ」
  気付かなかったのだ、雨で靴が濡れて滑りやすくなっていた事とヤツの存在に

〇非常階段
中松 秀一「先輩!足元に何か──」
G「・・・──」
堅井 久吾「うわっ!Gだ!ヤバイぞ!すぐに避難しろ」
中松 秀一「先輩落ち着いて下さい!冷静に!」
堅井 久吾「コイツらは甘やかすととんでも無い事に」
G「・・・──」
堅井 久吾「ホラッ!増えた!とりあえず戻るぞ!」
中松 秀一「せ、先輩!津村は!」
堅井 久吾「どうでもいい!はやく──あっ」
中松 秀一「先輩!」
中松 秀一「起きて下さい!先輩!」
堅井 久吾「・・・──」
中松 秀一「そんな、先輩ァァァァイ!」
  突然出て来たGと雨で濡れた靴のせいで先輩は階段を滑り落ち頭部を強打して亡くなった

〇開けた景色の屋上
津村 次郎「・・・来るの遅くない?」
津村 次郎「焦らす作戦か?よかろう受けて立つ」

〇開けた景色の屋上
  3時間後
津村 次郎「ゴホッ、雨に打たれ続けたせいで熱が・・・目眩もして来たぞ・・・」
津村 次郎「くそ、これも作戦かハードボイルド刑事め──」

  時は流れ──2036年

〇未来の都会
「牡丹」刑事 旧型「悪は許さない!奪った宝石を返しなさい」
強盗団A「クソッ!」
「牡丹」刑事 旧型「何処に逃げようとも無駄だ!」
強盗団A「お前は賢い、だが致命的な弱点がある!」
「牡丹」刑事 旧型「何ッ!?」
強盗団A「それは、電波を動力にしている事さ!」
「牡丹」刑事 旧型「しまった!」

〇地下道
強盗団A「電波が通らない地下なら追って来れないだろ!」
強盗団A「フフッ、チョロイもんだぜ!」
強盗団A「んっ?何だこの音楽?」
「武士は食わねど高楊枝〜♪」
強盗団A「誰だ!」
「武士丸」刑事 カラクリ型「罪を憎んで人を憎まず」
「武士丸」刑事 カラクリ型「拙者、名を武士丸と申す──」
強盗団A「ふんっ、電波が動力じゃないカラクリ型か!先回りするなんて、お前ら賢くなったんだな!」
「武士丸」刑事 カラクリ型「日々精進──いやアップデートでござる」
強盗団A「(コイツ無表情で気持ち悪いな)」
「武士丸」刑事 カラクリ型「さて、観念するのだ」
「武士丸」刑事 カラクリ型「御用改でござる」
「武士丸」刑事 カラクリ型「デリャ!」
「武士丸」刑事 カラクリ型「・・・・・・・・・」
強盗団A「・・・・・・んっ?」
「武士丸」刑事 カラクリ型「狭すぎて剣が壁に当るでこざる──」
強盗団A「・・・・・・」
「武士丸」刑事 カラクリ型「逃げられたでござる」

〇研究所の中枢
中松 秀一「何をやってるんだ!アイツ達は!」
「睡蓮」刑事 新型 「署長、私が行って捕まえます!」
中松 秀一「・・・──」
中松 秀一「ダメだ、君には別の仕事がある」
「睡蓮」刑事 新型 「では、どうするのですか?」
中松 秀一「奥の手を使う!」
「睡蓮」刑事 新型 「奥の手!?」
中松 秀一「着いて来なさい」

〇研究開発室
中松 秀一「こんな事態に備えて、もう一体製造を依頼していたのだ!」
「睡蓮」刑事 新型 「凄いです!署長!」
中松 秀一「かつて私が憧れたハードボイルド、タフで冷静沈着な先輩の記憶をチップに移植したモデルだ」
「睡蓮」刑事 新型 「こんな感じの方ですか?」
堅井 久吾 (妄想)「本当に困ったさんだな!」
中松 秀一「違うな!」
「睡蓮」刑事 新型 「はやく見たいです!」
中松 秀一「ハハッ、お披露目だ!それっ!」
「睡蓮」刑事 新型 「・・・──」
中松 秀一「どうだ?凄いだろ?」
「睡蓮」刑事 新型 「す、凄いです署長!」
中松 秀一「さぁ、電源を入れるぞ!」
???「・・・──ここは?」
中松 秀一「先輩!お久しぶりです!」
???「んっ?その声は中松か?どうしたんだその姿は!?以前はこんな姿だったはず・・」
中松 秀一(妄想)「アハハッ、先輩〜!」
中松 秀一「別人です・・・」
中松 秀一「・・取り乱さずに聞いて下さい、先輩は今から40年前の1996年5月24日に亡くなりました」
???「何ッ!?─その日は津村を追っていて・・ハッ!」
中松 秀一「思い出せましたか先輩!」
???「そうだ、あの日俺は階段を上がっている最中に背後から撃たれて。俺とした事が油断していた」
中松 秀一「・・・違います先輩。突然出て来たGに驚いて階段から足を滑らせ転落したんです。その際に頭部を強打したのが致命傷で──」
「睡蓮」刑事 新型 「(完全に自称ハードボイルドね)」
中松 秀一「あの日は外が雨でした靴が濡れて滑りやすくなっていたのに──私が気付いてあげていれば先輩は、くっ!」
「睡蓮」刑事 新型 「(雨とか靴は関係ないから・・・)」
???「・・・・・そういえば津村はどうなった?」
中松 秀一「亡くなりました。屋上で雨にうたれ過ぎて高熱と肺炎を引き起したのが原因です」
???「何ィィ!」
???「何か悪ぃ事したな──」
中松 秀一「そんな事より、驚かないで欲しいのですが今の先輩の体はサイボーグです」
???「サイボーグだと!!」
???((こんな感じか?カッコイイじゃねぇか))
中松 秀一「あそこに鏡があります、よろしければ今の姿を確認して下さい」
???((おおっ!サイボーグ的な歩く音、最高!))
中松 秀一「身体は完全防水で最新の技術が施されています」
???((ヤバイぞ、ハードボイルドを保てねぇ、心臓がドキドキしやがる!))
中松 秀一「さぁ!」
「H95」刑事 サイボーグ型「これが、サイボーグになった俺の──!?」
「H95」刑事 サイボーグ型「・・・ん?」
中松 秀一「どうです?カッコイイでしょ?」
「H95」刑事 サイボーグ型「中松、これは?後で頭を取替えるんだよな?思ってたのと違うんだが──」
中松 秀一「いいえ、そのままですけど・・・因みに頭は、先輩の家にあったPCです。確かWind○ws95でしたかね」
「睡蓮」刑事 新型 「見かけのタフさはハードボイルドですよ!w」
「H95」刑事 サイボーグ型「今、馬鹿にしやがったな?」
「H95」刑事 サイボーグ型「何だ!」
「睡蓮」刑事 新型 「近くの繁華街で立てこもりの事件です!」
中松 秀一「直ちに出動だ!2人はその事件に向え! 宝石強盗は「牡丹」と「武士丸」に任せるぞ!」
「睡蓮」刑事 新型 「了解です!」
「H95」刑事 サイボーグ型「はやっ!」
「H95」刑事 サイボーグ型「(あれっ?中松、俺に指示出した?)」

〇警察署のロビー
「睡蓮」刑事 新型 「機敏に動いて下さい!」
「H95」刑事 サイボーグ型「頭が重くて──動きが・・・」
「睡蓮」刑事 新型 「・・・──」

〇警察署の入口
「睡蓮」刑事 新型 「ここから西に2キロ離れた繁華街です!急ぎましょう」
「H95」刑事 サイボーグ型「焦りは禁物だ、冷静沈着に──」
「睡蓮」刑事 新型 「失礼ですが、現代は秒の時代です・・・」
「H95」刑事 サイボーグ型「・・・──」
中松 秀一「ハァハァ、間に合って良かった!」
「睡蓮」刑事 新型 「どうしたんです?署長?」
中松 秀一「今日の天気は雨だろ?先輩が濡れてしまう」
「H95」刑事 サイボーグ型「完全防水なんだろ?あの事故は気にするな!」
中松 秀一「いえ、身体は全身防水なんですが、頭は防水ではないので──危ないです」
「睡蓮」刑事 新型 「色々と事故ってるじゃない!」
中松 秀一「お、おい!睡蓮!言うな!」
「H95」刑事 サイボーグ型「中松よ・・・本音が出たな」
中松 秀一「先輩は、中にいて下さい。出動は睡蓮だけで」
「睡蓮」刑事 新型 「は、はい」
「・・・──」
「H95」刑事 サイボーグ型「中松、俺の席は?」
中松 秀一「一ついいですか?」
「H95」刑事 サイボーグ型「何だ?」
中松 秀一「私ここの署長なんで、2人だけの時は構いませんが、皆のいる前ではタメ口をやめて下さい。一応階級は先輩より上なんで・・・」
「H95」刑事 サイボーグ型「・・・──」
中松 秀一「自分で電源切ってもダメですよ」

〇個人の仕事部屋
  数時間後
中松 秀一「先輩、この書類お願いします!」
「H95」刑事 サイボーグ型「・・・分かりました署長」
  自分専用の個室と言えば聞こえがいい、窓際に近い席が俺の仕事部屋になった
中松 秀一「先輩、機嫌直して下さい。僕は先輩を尊敬してますよ!その証に凄い機能を付けてますから!」
「H95」刑事 サイボーグ型「どのような?」
中松 秀一「ホラッ!そこ!」
G「・・・──」
「H95」刑事 サイボーグ型「は?」
中松 秀一「Gを瞬殺できる機能です!」
中松 秀一「あと、コレをどうぞ──」
「H95」刑事 サイボーグ型「何だこれ?」
中松 秀一「声に反応するスピーカーです。便利ですよ!」
「H95」刑事 サイボーグ型「中松よ・・・──」
中松 秀一「どうです?気に入りました?」
「H95」刑事 サイボーグ型「今の俺の気持ちだ!」
中松 秀一「そんなぁ〜」
  こんな、俺に付いたあだ名がある

〇研究所の中枢
「牡丹」刑事 旧型「なぁ、最新の刑事どうだった?機能は?」
「睡蓮」刑事 新型 「何をするにしても遅いわ、そして自らをハードボイルドとか思ってる辺りが痛いわね」
「武士丸」刑事 カラクリ型「それに付け加えて、窓際でござる」
「牡丹」刑事 旧型「なら、あだ名は「窓際ハードボイルド」だな!」
「睡蓮」刑事 新型 「フフッ、面白いわね!」
「武士丸」刑事 カラクリ型「・・・──時代遅れ、要するにお荷物でごさる」
「牡丹」刑事 旧型「無表情なのが怖いよお前──」
「武士丸」刑事 カラクリ型「・・・──」
  「窓際ハードボイルド」というあだ名が付いた日、その日も俺の嫌いな雨が降っていた。決まって雨の日は嫌な事しか起こらねぇ

〇個人の仕事部屋
「H95」刑事 サイボーグ型「なぁ中松よ」
中松 秀一「何です?」
「H95」刑事 サイボーグ型「俺って必要か?」
中松 秀一「あ、当たり前ですよ、どうしたんですか?」
「H95」刑事 サイボーグ型「内心、古くて、ダサいヤツと思ってんだろ?」
中松 秀一「思ってません!あっ!!仕事に戻らないと! それでは先輩、し、失礼します!」
「H95」刑事 サイボーグ型「・・・絶対に必要ねぇだろ俺」
スマートスピーカー「すいません、よく聞き取れませんでした。もう一度おっしゃって下さい」
「H95」刑事 サイボーグ型「二度も同じこと言わせるなよ──」
  1996年から2036までの40年。時代は変われど変わらない事があるそれは──
  どうしようもない悪党達とタフな俺の胸に刻んだハードボイルドさ!

次のエピソード:マズいコーヒーとタバコ!

コメント

  • 「追憶の、『窓際ハードボイルド』」はSFジャンルの作品で、1996年の事件から40年後の未来を描いています。この作品は、復讐と時代の変遷をテーマにしており、登場人物たちの葛藤や成長が描かれています。

    物語は、雨の降る日の出来事から始まり、主人公たちが犯罪組織との戦いに挑む様子が描かれています。特に、主人公の中松秀一が先輩の堅井久吾の死をきっかけに署長となり、AI搭載アンドロイド刑事と共に犯罪者を追い詰める姿は感動的です。

    作品は、未来の都会や地下道など様々な場面で展開され、緊迫感とアクションがあります。また、新型の刑事「睡蓮」の登場も魅力的で、先輩である堅井久吾との再会シーンは感慨深いものでした。

    この作品は、SFファンにはたまらない内容で、ストーリー展開がスリリングでありながらも感情移入できる要素もあります。登場人物たちの成長や過去の思い出の重要性が描かれており、読者を引き込む力があります。

    「追憶の、『窓際ハードボイルド』」は、SFファンには必読の作品であり、緊張感と感動を同時に味わえる作品です。

  • シリアスとコメディの緩急が凄まじすぎて、とにかく面白すぎます!ハードボイルド、現在においても落ち着いてしまった空気があるのに、2036年なら猶更ですよね……
    さらに時代遅れなWind○ws95の活躍も楽しみです!

  • ランクブルーおめでとうございます👏👏
    羨ましい限りですね👍
    スチルもかっこいい、AI なのか?でもちゃんとタップの画風に合ってる感じがします!
    40年経っても劣化せずにハードボイルドの魂を持ってるなんて、36年ぶりのトップガンでも衰えてなかったトムクルーズみたいですねww
    ハードボイルド コメディーということで続きが楽しみです!!

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